HIGHFLYERS/#27 Vol.3 | Feb 8, 2018

祈るのが日課。映画「アンブロークン」の敵役に抜擢され、アンジェリーナ・ジョリーとの出会いが数々の新しい扉を開いてくれた

Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka / Photo Retouch: Koto Nagai / Cover Image Design: Kenzi Gong

MIYAVIさんインタビュー第3回目はアメリカでのライフスタイルや、俳優としての新たなチャレンジとなったアンジェリーナ・ジョリー監督の映画「不屈の男 アンブロークン」に出演した当時のことなどを伺いました。MIYAVIさんはこの世の目に見えない力を信じていて、自身の先祖やライブをする土地の魂などに思いを馳せて祈りを捧げるそうです。また、血流や体温を考えてエクササイズを行うことも習慣にしていらっしゃいます。そのようなライフスタイルが定着したのには、アンブロークンで、ハリウッド女優で映画監督のアンジェリーナ・ジョリーにオファーされた役柄(実在した渡辺睦裕軍曹役)が影響しているそうです。彼女との出会いのエピソードから、俳優とミュージシャンの大きな違いという興味深いお話、また、影響を受けた難民支援の活動についても話してくださいました。
PROFILE

アーティスト/ギタリストMIYAVI

エレクトリックギターをピックを使わずに全て指で弾くという独自の“スラップ奏法”でギタリストとして世界中から注目を集め、これまでに約30カ国300公演以上のライブと共に、6度のワールド・ツアーを成功させている。2015年にグラミー受賞チーム“ドリュー&シャノン”をプロデューサーに迎え全編ナッシュビルとL.A.でレコーディングされたアルバム『The Others』をリリース。2016年に8月にはLenny Skolnikをプロデューサーに迎え『Fire Bird』をリリース。また、アンジェリーナ・ジョリー監督映画「Unbroken」(2016年2⽉ 日本公開)では俳優としてハリウッドデビューも果たした他、映画『Mission: Impossible ‒Rogue Nation』日本版テーマソングのアレンジ制作、SMAPへの楽曲提供をはじめ様々なアーティスト作品へ参加するなど、国内外のアーティスト/クリエイターから高い評価を受けている。2017年11月には日本人として初となるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の親善大使に就任し、難民支援活動をおこなっている。

ミュージシャンと役者は似て非なるもの。自分はミュージシャンとして、MIYAVIという役柄を毎日100%演じている

現在生活の基盤はアメリカだそうですが、日常のルーティンとして、毎朝欠かさずやっていることなどはありますか?

普通に朝起きて、水を飲んで、シャワーを浴びて、ストレッチして、チューブやダンベル、ボールなどを使って全身エクササイズをしてます。実際、ジムに行くことや、太ってしまうということ自体が本来不自然なことだと思うんですよね。今はクリックひとつで色んなものが自宅に届いてしまう便利な時代になりましたけど、昔は食事をするにも、まず狩りに行ってたわけでしょ。基本的に身体を動かさない時代なので、血流と体温、および室温などを把握しながら、毎朝リセットするためにエクササイズとストレッチを続けています。

祈りを捧げることを日課としている

スピリチュアルなことにもすごく時間を割いているとお聞きしました。

エクササイズの後に毎日お供え物をします。お酒、お水を祀って、マフィンやクッキー、果物などを供えてますね。実際、自分自身も、ファンの皆さんもそうですが、音に感動したり、心が動いたりすること自体、目に見えることではないじゃないですか。要するに、肉体というものとは別に、波動や、想い、魂という、目に見えないものは存在していて、俺たちミュージシャンはそれを仕事にしているわけです。実際に自分がここにいるのも、神のように生まれてきたわけでもなく、両親がいて、両親にもそれぞれの両親がいて、色んなところに繋がっているじゃないですか。そこに対してのお祈りをするし、知らない地方に行った時とかも、そこの土地の人たちや土地にいる魂に対しても祈る感じですね。お邪魔します、というか(笑)。

そういう感覚はいつ頃からお持ちなんですか?

やはり「不屈の男 アンブロークン」という映画をやってから強くなりました。出演が決まって、当時決死の思いで戦場に行った人たちの本を読ませてもらいましたし、製作直前、直後も実際に靖国神社に行かせてもらって、ロケ現場では毎日祈っていました。以前からお祈りはしていましたけど、特にその頃からしっかりするようになりました。

あの映画に出演したことはMIYAVIさんの中で大きな出来事だったのですね。

もちろん大きかったですね。アンジー(アンジェリーナ・ジョリー)との出会いも含めて沢山のドアを開いてくれましたし、色んなことにチャレンジするきっかけを与えてくれました。実際死んでしまったら、当然肉体もなくなるし、地位も名誉も財産も持ってはいけないわけじゃないですか。人生におけるミッションとして、後世に何を残せるのかみたいなことをすごく意識して考えるようになりましたね。

凄く難しい役だったと思うのですが、やることに抵抗はなかったのですか?

抵抗はありましたよ。元々、アンジーと出会うまでは、自分にやる資格があるのか、そしてやれるのか迷いましたし、実際にプロフェッショナルとして演技の経験もない自分によく任せてくれたなぁと思いました。

出演のオファーは突然来たのですか?

はい。役柄が特殊なので、彼女自身もカリスマ性のある存在感を探していたそうです。囚われている捕虜の人たちへの威圧も含めて、ミュージシャンやロックスターが良いんじゃないかということでインターネットで自分を見つけてくれたみたいで、そこからオファーをもらいました。最初は自分の中でためらいはありましたけど、実際に彼女が東京に来て初めて会った時に、「これは、単なるアメリカと日本の物語や、戦争でどっちが勝った負けたの話でもなく、一人の人間の、葛藤、トラウマを乗り越え、最終的に人を許すという境地に辿りつくまでの強さを描きたい。そして彼の勇気と許すという境地まで辿りつけたその生きる軌跡を届けたい」という彼女の熱意を伝えられました。自分にとってはすごくセンシティブな役柄ではありましたけれども、実際にそのメッセージを伝えるためであれば、すごく意義のあることだと思ったし、何よりも彼女の熱意に呼応したかったので、できる全てを尽くして協力したいと思い、挑戦させてもらいました。

あのような大規模のハリウッド映画に出演されるにあたり、演技のコーチはつけたのですか?

「ラストサムライ」の渡辺謙さんや「バベル」の菊地凛子さんをキャスティングしたキャスティングディレクターの奈良橋陽子さんにアクティングコーチをして頂き、本当にたくさんのことを教えてもらいました。彼女が教えてくれたのは、「演技をするとは、演技をしない」ということです。ミュージシャンとしてはある種MIYAVIという役柄を100%毎日演じているようなものなんですけれども、役者というのも、自分を空にして、ニュートラルな状態にして、役の人物を自分の体に憑依させ、かつ自分の身体や声を媒体として表現するものです。ミュージシャンと俳優は、カメラの前でパフォーマンスして表現するという意味では、凄く似て非なるものだということを知りましたね。

憑依するというのは普通簡単にできるものではないと思いますが、それまでミュージシャンとして活躍されてきたMIYAVIさんが、なぜ憑依できてしまうのでしょうか。

自分にも二人の娘がいますけれども、自分があのような環境下で自分の家族を守るためにどうするのかと考えた時、僕は何でもすると思うんですよね。戦争という状況下なんて遥かに僕たちの想像を超えているんでしょうけど、イマジネーションの中で彼らに対して憎しみましたし、彼らがもし俺の家族に手を加えたり攻撃したりすることがあれば、俺はなんだってするだろうし、常にそういう気持ちで現場にはいました。凄く緊張感もありましたし、敵役だったので他の共演者とも意識して距離を置きました。それに、何よりアンジーや陽子、映画「ショーシャンクの空に」を撮られたDP(映像監督)のロジャー・ディーキンスなど本当に素晴らしいスタッフのおかげだと思います。難しい物語なので実際に現場はピリピリしがちでしたけど、なによりもアンジーのリーダーシップと、一人ひとりと一緒に取り組む彼女の熱意と姿勢に助けられましたし、共演者がみんないい人たちでしたし、素晴らしい雰囲気で臨むことができました。本当にプロフェッショナルな現場でした。

映画と音楽は、違う分野だと感じましたか?

クリエーションという一点にかける熱量は、映画だろうが音楽だろうが、ファッションだろうがあまり違いはないですけれども、実際、映画は総合芸術なので映画の中に音楽もあればファッションもあって、演技や音響も含めて、色んなものがひとつになって作品になっていますよね。そういう意味では規模が大きいですし、音楽をやっている環境とは違う雰囲気とテンポ感でしたね。

映画以外にもアンジェリーナさんに影響を受けたことはありましたか?

彼女の難民問題への貢献、および活動にもインスパイアされて、自分もレバノンとタイの難民キャンプに行かせてもらいました。改めてエンターテイメントや娯楽というものが、 難民問題や紛争などの世界情勢からすごく離れたところにいると実感しました。実際にアンジーに会う前までは、難民問題やUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のことを知らなかったですし、まさか自分のキャリアの中で水色のUNHCRのキャップを被って難民キャンプに行くなんて思ってもいなかったですけど、現場で状況を見ていく中で、自分にも何かできるんじゃないか、そして、そういう活動自体がかっこいいものだと自分たちが提示していけば何かしら変わっていくんじゃないかと思うようになりました。俺たちが未来の地球にとってプラスになる活動をかっこ良く示して、若い世代の子たちにこういう生き方もかっこいいと思ってもらいたいし、世界情勢も含めて自分なりの形で作品を作って、聴いてくれる人たちをポジティブにしたいと思うようになりました。

2017年11月に、日本人初となるUNHCR親善大使に就任したMIYAVI。写真は、レバノンの難民キャンプを訪れた時

次回へ続く

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 ジャケ写真があればここに配置。掲載不可の場合は、トルツメになります。

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2017年11月8日発売/配信開始

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  3. Fight Club / MIYAVI vs EXILE SHOKICHI
  4. Banzai Song / MIYAVI vs VERBAL(m-flo/PKCZ®)
  5. Bumps In The Night / MIYAVI vs Masato(coldrain)
  6. No Thanks Ya / MIYAVI vs ちゃんみな
  7. Flashback / MIYAVI vs KenKen(LIFE IS GROOVE, RIZE, Dragon Ash)
  8. All My Life / MIYAVI vs HYDE
  9. Forget You / MIYAVI vs シェネル
  10. Slap It / MIYAVI vs 雅-MIYAVI-
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  • 「MIYAVI 15th Anniversary Live“NEO TOKYO 15”」ドキュメント映像

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