シェイクスピアが身近に感じる作品に。臨場感やリアリズムを大切にして、チーム一丸となって作品に向き合いたい
この作品が人生2度目の外部出演の舞台とお聞きしました。
とても楽しみです。先日、詳細を知らずにフライヤーの撮影に行ったら、自分の衣裳に腹巻と雪駄が置いてあって、「え?ヴェニスの商人だよなぁ。これが鄭義信ワールドか!」と思いました。もともとの原作は喜劇の傑作として知られていますけど、鄭義信版になると、シェイクスピアの悲劇の部分がたくさん出てきます。この作品に触れることで、シェイクスピアをより深く、多面的に楽しめるのではないかと思います。

全編関西弁とのことですが、東京ご出身の岸谷さんは、言葉はどうなさっているんですか?
全て関西弁の台詞を録音してもらって、今、それを聴きながら猛勉強しています。まず音符を覚えて、イントネーションが入ってから感情を入れていくんですが、やっていて分かったのは、関西弁にすることによって、ガラっと雰囲気が変わるし、シェイクスピアがすごく身近に感じるんですね。まるで同じ街で彼が一升瓶持って飲んでるんじゃないかなって思うくらい、遠くの土地の話なのに身近に感じます。400年以上の時を経て、シェイクスピアと一緒にヴェニスの商人を作っているんだっていう意識がある。その部分を大切にしていけば、臨場感とリアリズムがたっぷり出てくるんじゃないかと思っているので頑張りたいです。
台本はもう読まれましたか?今の時点(12月の製作発表時)での感想をお聞きしたいです。
製本が今日出来てきました。シェイクスピアの原作「ヴェニスの商人」はもちろん知っていたので、どの程度まで鄭義信ワールドに変化させているのかとか、過去の公演からどのくらい変化しているのかとか、いろんなことを考えながら1度目を通しました。劇中に出てくるのは、性格も生き方も、育った環境もまったく異なる登場人物たちなのに、 突拍子もない個性的なキャラクターの集まりが、一つになって演劇を作って魅せていくんです。この作品が一瞬にして一つの大きなチームに包まれて、こんなふうにまとまるんだっていう驚きがありました。それから、この作品が全編関西弁である理由もはっきり分かりました。「歌うシャイロック」は、初めて演劇を観る人でも、シェイクスピアは難しいと思って敬遠してきた人でも、とても理解しやすいと思います。
タイトル通り、歌われるんですよね?
音楽劇でもあり、音楽も歌詞もすべてオリジナルです。楽しく歌って踊って、笑って泣けるシャイロックになっていると思います。

岸谷さんの演じるシャイロックについて、シェイクスピアの原作では、世界中の大俳優たちが何度も舞台や映画で演じていると思いますが、自分の中でのシャイロック像はまた全然違うものが出来上がっていますか?
演劇って見逃しちゃうとなかなか観られないじゃないですか。特に昔の作品だと残っていないことが多いので、全部は観られてないです。だから題材や、過去に演じてきた役者さん達は関係なく、やっぱり鄭さんが作り出すシャイロックをどう自分自身が作り上げるかということだと思いますね。
共演されるメンバーの方々と初めてお会いした時の印象を伺いたいです。台本を読んだ時のそれぞれの役の印象が重なり合ったり、すんなり入ってきたりする部分はありましたか?
そうですね。中村ゆりちゃんは愛すべき娘の可憐さと、守ってあげなきゃいけない弱さの両方を持ち合わせていて、真琴つばささんはテレビのバラエティとかに出ていらっしゃる時のように頭の回転が速いし、そこにいるだけで元気をくれます。二人ともそれぞれのキャラクターに合っているものがいくつもありましたね。

舞台会見にて。娘・ジェシカ役の中村ゆり(右)と貴婦人のポーシャ役を務める真琴つばさと
鄭さんとは、なぜ自分をキャスティングしたのかみたいなお話はされましたか?
(聞くのを)忘れてました。鄭さんとは、僕が主演で、今まで一緒に3本映画を撮っているし、NHKの正月時代劇で主演と作家としてでも組んでいますから、 またいつか一緒に何か作れるだろうと思っていたので、そのクエスチョンは忘れてましたね。これから話してみます。
今回14年ぶりの外部出演ということですが、出演の決め手みたいなものはあったのでしょうか?
外部出演に関しては、本当にいつもスケジュールの問題なんです。僕は自分の演劇を作る時、脚本を書いて演出をしてキャスティングして、フライヤーとか美術を決めてってすべてやっているので、本当にものすごい時間がかかるんですよ。そうするとその期間に別の演劇のネタが入ってこないっていうか。映画やテレビドラマは種類が違うのでそこに入ってきても大丈夫なんですけど、舞台はなかなか難しいです。頭の中が自分の演劇を作ることでいっぱいになっちゃうんですよね。ただ、不思議なことに、今まで止むを得ずクランクインとクランクアップがちょっと重なることはあっても、被ったことってほとんどなかったんです。演劇はあまりにもスパンが長いんで、そこにドラマや映画が入ってくることは多々あるんですね。でも演劇同士は頭の構造上、重なれない。だから、今回は鄭さんが俺の来年のスケジュールを知ってたんじゃないかっていうくらい気持ちの良いハマり方をしてくれて、「えー!嬉しいな」って感じでした。地球ゴージャスの公演が22年の秋で、「キンキーブーツ」はこの間終わったし、本当に気持ち良く引き受けることができました。

それはよかったです。ところで、舞台中のライフスタイルというか、必ず舞台の時にやっているルーティンとかジンクスみたいものがあれば教えてください。
舞台の時に限りませんけど、毎日半身浴をしています。それからほぼ毎日ロードワークに行っています。ウォーキングからランニングで、ストレッチして、2時間ぐらいのコースを走って、戻ってきてから半身浴に入る。朝早い撮影がある時とかは半身浴だけなんですけど、舞台の時は必ず半身浴してストレッチしてから稽古場に行って。地球ゴージャスの稽古場は、立ち稽古とか本読みに入る前に、毎回1時間半体を動かすルーティーンがあるんですよ。そこでみんな2ヶ月間、毎日同じことをやるんです。ヨガで精神統一から入って、その後息が切れるほど走り込みとかをやって。きっと今回もルーティーンができるんじゃないかな。
次回へ続く

『歌うシャイロック』
作・演出 | 鄭義信 |
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出演 | 岸谷五朗 / 中村ゆり / 岡田義徳 / 和田正人 / 渡部豪太 / 小川菜摘 / 駒木根隆介 / 福井晶一 / マギー / 真琴つばさ |
制作協力 | (株)レプロエンタテインメント |
企画・製作 | 松竹株式会社 |
京都公演 | 南座 2023年2月9日(木)~2月21日(火) |
福岡公演 | 博多座 2023年2月25日(土)~2月27日(月) |
東京公演 | サンシャイン劇場 2023年3月16日(木)~3月26日(日) |
公式HP | http://shylock-stage.com/ |