HF/#4 Vol.1 | Jan 14, 2014

驚きと喜びを創出する

前澤 友作

Text: Miwa Tei / Photo: Atsuko Tanaka / Cover Design: Kenzi Gong

“着る楽しさ”を再発見でき、私たちの生活に定着している日本最大級のファッション通販サイト“ZOZOTOWN”。“想像と創造”の由来を持つ“ZOZO”の名の通り、独創的な手法と想いが伝わるコンセプトは、多くの共感を生みビジネス業界に新たな価値を創出しています。誰も開拓していない世界に貪欲に挑戦し、豊かな人生をクリエイトする人を追い続ける本誌HIGHFLYERSに今回登場して頂くのは、ZOZOTOWNの創業者であるスタートトゥデイ代表・前澤 友作氏(38歳)。「やらなかった後悔は無い」と言い切る前澤さんの“未来は今”を体言する生き方と正直な言葉には、人の心を惹き付ける力があります。千葉県幕張に所在し、高いモチベーションに溢れる広大なオフィスで、過去・現在・未来について語って頂きました。
PROFILE
前澤 友作

株式会社スタートトゥデイ代表取締役 前澤 友作

1975年千葉県生まれ。早稲田実業学校卒業後、渡米をきっかけに輸入CD・レコードのカタログ販売を開始。'98年、有限会社スタート・トゥデイを設立し、バンドでメジャーデビューを果たすも、2000年、バンド活動は休止し会社経営に専念。同年、カタログ販売をオンライン化し、アパレル商材の取扱いを始め、次々と個性的なオンラインセレクトショップをオープン。'04年、その集積として、ファッションを中心としたショッピングサイト「ZOZOTOWN」を開設。'07年、東証マザーズに上場(3092)。’12年2月、東証第一部に上場。現在、事業を通して「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」という企業理念の元に集まったスタッフと日々「楽しく働く」ことを大切にしながら理念の達成を目指す。

驚きと喜びを創出する

 「会いたい人に会いに行き、人生の歩き方を聞く」。今回の取材趣旨に際して、前澤さんにお時間を頂けたことを光栄に思います。

「会いたい人に会いに行く」というスタンスは、とても有意義なこと。僕自身、尊敬する会社の経営者の方には、自分でアポイントメントの電話をし、すぐ会いに行きます。面白いと思う本を読んだら、筆者の方に会って話を聞きにいきます。そういうことは、当たり前によくやっていますね。

 最近、感化された出会いとは?

少し前ですが、孫 正義さん(ソフトバンク株式会社代表取締役社長)とお会いできたことは光栄でした。朝からゴルフをして、食事をして終日ご一緒させて頂いたのですが、ゴルフにも真剣で、お話に惹きこまれる。社会の中で多くの共感を創出されている方のお話には、人を驚かす説得力があると思います。

 “社会の中で多くの共感を創出する人”。それはまさに、ZOZO事業で600万人以上という会員の共感を掴んだ前澤さんご自身のスタンスそのものに映ります。

いえ。まだまだチャレンジの過程です。ただ、こんなサービスを立ち上げたら会員の皆様に喜んで頂けるのではないか。総会の場でこんな発表をしたら、社員にとって達成感があるのではないか。決算説明会でこんな数字を提示できたら、株主の皆様に驚いて頂けるのではないか。常に驚きと喜びがある状況を求め、考え抜くことは続けています。人様に驚いて、喜んでもらえることがビジネスのゴールであり、それがなければ仕事の意味は無いので。例えば今、この取材にしても、何か一つでも驚きを提供できればと思っています。

 600名近い社員さんが働く広大な社屋空間と高いモチベーションに驚かされています。38歳にして、これ程までの規模の事業を築いた前澤さんにとって、現在のステイタスは昔から思い描いていたものでいらっしゃいますか?

高校生ぐらいの時から、サラリーマンにはならずに、変わったことをしているだろうなという漠然とした予想はありましたが、まさか社長になり、ましてや会社を上場させるとは思わなかった。そういった意味では、思い描いていた自分像とは違います。ただ、ひたすらに好きなことをこだわり抜き、気付けばその好きなことがシゴトになっていたという実感です。

 好きなことをシゴトにするということは、どういうことですか?

素晴らしいことです。「好きなことをシゴトにするなんて無理ですよね」とか言ってくる人に好きなことを訊くと、大して好きではないことが多い気がします。「好きな人ができない」と言っているのと同じで、最初から本気で探していないのでは。「これが自分の人生だ」と思えるぐらいに情熱を傾けられることは、気付けばシゴトになっているのは当然だと思います。対して、まさか好きになるとは思わなかったものが、ある日突然好きになることもあり得ます。例えば、僕はワインにハマっているのですが、お酒は元々好きにしてもワインを薀蓄並べて偉そうに飲むのは大嫌いだった(笑)。それが本当に素晴らしいワインを飲んでみたら一気に入れ込んでしまった。車もそう。昔は走ればいいぐらいに思っていたのが、本物と思える車に乗って価値観が変わり、今は大好きでこだわっている。好きなことは無理して見つけるものではないですが、柔軟になんでもトライしてみるのはいいことですよ。

 会社経営を通じて、まだ叶ってはいないものの、確実に実現化しているビジョンとは?

働き方の変革です。弊社では“ろくじろう”といって9時から15時の6時間労働(昼休憩無し)スタイルを1年半前から実践しています。ユニークな時短制度としてメディアに取り上げて頂く機会も増え、スタッフたちの話しも単刀直入になり、有意義な成果が見られます。しかし、現段階では世間一般の8時間労働を6時間に変えただけの、あくまでカタチ上のチャレンジ。本質には至っていないと僕は考えます。時短を続けていくなかで、働くことの意義やシゴトとの向き合い方を一人ひとりが考え、各々が答えを見出せることにゴールがある。ウチのスタッフだけじゃなく、弊社の取り組みを知った人たちにとっても、8時間労働に疑問を持ち、考えるきっかけにもなって欲しい。経営者が時短に取り組んだ結果、働き甲斐を取り戻した事例として注目されるように、前向きな展開を期待している挑戦です。

 会社に身をおき、8時間どころかそれ以上の過剰労働をこなす人が多いのが現状です。疲弊して感覚も麻痺していくような……。

じわじわ疲れるのって良くないですよ、本当に。私見ですが、今仮に日本社会が週休4日制になったとしても日本の経済が悪くなるようには思えない。むしろ、月から金まで8時間労働を続けることによって、無駄なもの、無駄な発言、無駄な悪いことが発生しているんじゃないかな。本当に必要な生産量とお金の流通量を超えて、全てが過剰な方向に向かっていることに危機感を感じます。朝早く起きて、短時間で集中して成果を上げて、いい人といい時間を過ごす。人間らしい豊かな暮らしは、もっとシンプルな方法で叶うはずなんです。

 前澤さんの方向性が明快に伝わってくる御社「スタートトゥデイ」が、社会人生活のファーストスタンダードとなるスタッフさんに明るい未来を感じます。実は「前澤社長とはどんな人物?」という質問を、取材前にスタッフの皆様へさせて頂いたところ、「右脳と左脳のバランスが抜群」「やんちゃなのに真面目」「有言実行」「普通の人が100%と思うことのさらに上をゆく」「近寄りがたいイメージでも、気取らない兄貴っぽいところもある」……。などの意見が集まりました。

社長の僕が有言実行じゃないと会社は大変なことになるので当たり前ですが(笑)、スタッフが言ってくれることはいつも嬉しいし、本当に可愛いですよ。ただ、もっと挑戦に貪欲であってもいい。世間知らずでいいから、人が驚くような発言や技術、破天荒なアイディアを提案してほしい。20代は、とにかくいっぱい挑戦をして恥もいっぱいかいていいんです。僕も本当に世間知らずだったので、数えきれないほど恥をかいてます。若くから社長面して、語彙力も無いのに公然の前でスピーチしたりして、不勉強の様がVTRに残っていたりすると、もう最悪ですね(笑)。

 「20代は挑戦して恥をかけ」。さらに30代にやっておくべきこととは?

30代は、多少の成功体験が欲しい年代。成功体験が次の挑戦意欲を駆り立てるので。この時期に手ごたえをある程度掴まないと、精神的・肉体的にもキツくなる。何か一つでもいいから、考えていることやっていることが実を結ぶように、意識と行動を同時進行させる年代だと思います。

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