挑戦をシェアする
“世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。”という御社の企業理念は、シンプルながら心に響きます。どのような想いでこの理念を打ち立てたのでしょう?
直接的なきっかけは2001年9月11日に起きたNYの同時多発テロです。それまで僕は、音楽との二足のわらじで、理念など持たずに、自分の好きな音楽や洋服を多くの人に知って欲しいという気持ちだけで突っ走ってきた。当時のあの9.11の出来事を、僕は日本で映像を通してしか見ていないのですが、言葉では表せないショックを受けました。自分はそもそも何のために何をしているのか……。少しでも社会のために、世界のためになることをやっていかねばと思い、音楽を止めてビジネスに専念しようと決めました。その時打ち立てたのが“世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。”という企業理念です。今思い返せば26歳だった2001年は、激動の年でした。
自分のためだけではなく社会や世界のために、という精神は御社の社会貢献活動で実現されています。東日本大震災の際は、チャリティーTシャツプロジェクトで売り上げの3億5397万円を全額寄付(2011年)。遡って、イラク戦争への反戦に賛同したブランドとの企画では600万近い全額寄与(2003年)。また、御社の地元・千葉マリンスタジアム改修に際しては個人で1億円を寄与(2011年)。こうした活動をできる御社、また前澤さんの姿勢に真性の“成功の徳”を感じたのですが。
それらはその都度、嘘偽りなく本心からやりたいと思ったからやったことにしか過ぎません。僕は、CSRとか声高に言いたくもないし、特別な寄付やボランティアをすることが企業の社会貢献と考えていないんです。そもそも、良い商品やサービスを外に向けて生み出していくことが社会活動であり、会社の存在理由の本質はそこにあると思っているので。ここで働くスタッフのためであり、ここで働く人が作った商品を買ったり使ったりして下さる方のためでもあり、この会社を応援して下さる株主の皆様のためになる商品とサービスを創るために、ただひたすら真面目に会社を続ける。それこそが自分にとっての社会活動と考えています。
前澤さんが今最も力を入れている、新しい商品とサービスを教えて頂けますか?
国内最大のファッションコーディネート検索サービスとなる“WEAR”です。メインテーマは“Wear for Connection”。店頭でのバーコードスキャンという機能があるほか、着こなし方の検索やコーディネートの投稿も可能です。コーディネートを投稿すると、世界中の人たちが「君の着こなしはいいね」と言ってくれる。たった1つの服から広がる“つながり”を想定した新サービスです。僕自身は、ZOZOTOWNを超えると思っています。売上やユーザー数といった話をしているのではなく、世の中に与えるインパクトという点で。 “着る”楽しさを再発見するきっかけになってほしい。僕も入り込んで進めていて、ワクワクしていますね。
新しい挑戦を続ける御社スタートトゥデイで「自分もチームに加わり社会人生活を始めたい」と熱望する学生が多いのも納得です。新年度の採用活動も始動されたばかりです。
そうなんですよね。でも実は、自分の中では「意欲のある若者をふるいにかけるような採用活動を何故続けているのか?それでいいのか?」という自問自答を繰り返しています。簡単だと思うんですよ、頭のいい人たちだけ、得意分野がある人たちだけを集めて、そこに特化したビジネスでなんとなくの利益を上げることは。逆に難しいのは、好きなことや得意なことが見つけられなかった人がそこに入ることで人生が変わる会社であり、そういう会社こそが必要なのではないだろうかと。いつかは、どんな人でも老若男女誰でも働ける環境、かつ働いた人の個性や素質が生かされる会社を目指したい。それが会社をもっともっと大きくしたいと走る僕の原動力のひとつになっています。
個人と社会に対し“考え方を考える”発想に感化されます。前澤さんはこの先、ご自身の人生をより良く向上されるためにどう進もうと考えていらっしゃいますか?
僕は、これからも相変わらず挑戦を続けていくのでしょうが、その中で成功することもこけることも含めてスタッフの彼らに継承していきたい。“挑戦をシェアする”ことが、今後の僕の課題だと思っています。彼らと体験をシェアすることが、僕にとっての新しい挑戦にもなるので。そのためには、つい自分でやりたがってしまう性分を抑えなくては(笑)。
最後に、社会をより向上されるために、どう生きるべきと考えていらっしゃいますか?
今僕たちが生きている日本は、世界に対して参考になる働き方、生き方ができる稀な国かつ国民性だと思います。僕たちが世界を牽引していくぐらいの意識を持って働くべき、生きるべきだと考えます。日本人は、協調性があり真面目。“おもてなし”じゃないですけど、人を思いやる利他の精神も持ち合わせている。人生とシゴトは、地道でコツコツとしたものの蓄積ですが、正義感と使命感を持って臨めば価値ある挑戦に変わる、と僕は考えています。