運を活かし人生に集中する
前澤さんの中で、立ち直れそうもないほどの大きな挫折というのは・・・・・・?
無いです。あったとしても僕は数時間で切り替えられるので。シンプルに「まっ、いっか。人生色々だし。色んなこと言う人もいるさ」ですよ。
タフなマインドをどのように持続されているのですか?
いや、メンタルはそんなに強い方ではないんです。自覚しているからこそ切り替える。会社にこれだけ人がいて、感受性が高いスタッフも多いので、僕がブレるわけにはいかない。ビジネスでうまくいかないことがあっても、さっと引き上げて次を目指します。過去には執着しない。それより、前に向かって今やるべきことの方がずっと大切なので。音楽の道に進まなかったことも、あの時自分で選び、区切りを付けた。だから未練も後悔も全くなく、今のシゴトに集中できているのだと思います。
“選択”が得意であるとお見受けします。
ビジネスにおいての選択は、大体の答えがあり計算できるものなので、僕の場合簡単なんです。ただ、どう生きるのが人として正しいのかなど、答えのない人生の選択は本当に難しいですね。ごまかしごまかしで生きる人間にはなりたくない。いつでも正々堂々と生きていきたいとは思っていますが。
“運”については、どう思われますか?
間違いなく運はいいです。いいタイミングで閃く運が強い。そしてまた、いいタイミングでいい人に出会うんです。出会い運は本当に恵まれている。だからこそ、こんな素晴らしい運を与えられたのは何かのサインだと考え、何かしなくてはという使命感に駆られるんです。
最強の出会いと確信するエピソードを教えて頂けますか?
ZOZOTOWNが成長する経緯に、UNITED ARROWS(ユナイテッドアローズ)様の参加という大きな転機があります。ZOZOTOWNを開設する1年前の2003年、当時社長をされていたユナイテッドアローズの重松現会長が弊社に興味を持って下さり、おひとりでふらりとこの幕張のオフィスに来られたことがありました。その日は僕と30分ほど談笑されて帰られたのですが、その後時をおかず「一緒にやりましょう」とご連絡を頂きました。このご縁をきっかけに、契約ブランド数が俄然増え、メディアへの露出が始まり、上場もして……と、正の連鎖が起こりました。あの時、あのタイミングで、重松さんのご決断が無ければ今はないかもしれないと思う豊かな巡りあわせには、心から感謝しています。
日々の中で意識している習慣はありますか?
「集中」です。いかに短時間で効率を上げるか。朝9時に出社してから15時の終業後も夜までぶっ通しでいくつもの会議をこなすのが社内における僕のスケジュールですが、その間集中力は一度も途切れません。集中力をそぐ昼食を摂らないのも一つの習慣でしょうか。集中力とは成功体験と一緒で、一度体得すると達成感が生まれる。その体感を繰り返すことによって精度と持続は高まります。それ以前に、何事も集中すると楽しいんですよ。レコードや服を集めていた若い頃、ありとあらゆるバイトを体験しましたが、その頃から、どうせやるなら最短時間で最高の結果を残してやろうと思って働いていました。スーパーのレジ打ちでも、商品番号を暗記していかに早く終わらせるかということに喜びを感じてやっていましたね。
逆に、排している習慣とは?
「情報量」でしょうか。要らない情報は入れたくないタイプで、テレビもほとんど見ないし、情報のアンテナはむやみやたらに広げないですね。限られた方をTwitterでフォローしているんですが、その中には特定のジャンルの情報を収集する能力に長けている方もいる。そういった方や信頼する幹部たちが寄せる情報を取り込むぐらいですね。音楽もほとんど聴かない。かつて自分が作り手側にいたからか、本当は今でも好きなものだからなのかはわかりませんが、感じるものや受ける影響が多すぎて僕には重すぎるんです。何かをしながらBGMとして音楽を聴くというのも絶対できない。もし音楽を聴くなら、一人静かに集中して聴くか、数年に一度ライブに行って身体で感じるかのどちらかですね。
本から受ける影響というのはどうでしょう?
『Weの時代』という本を読んだ時は、読後すぐに筆者の浜野安宏さんに会いにいきました。20年ほど前に発表された本ですが、一人ひとりが連帯して協調する時代がくるということを既に書かれているんです。アメリカにある浜野さんの別荘にも招いて頂き、先見性溢れるお話が共感できて興味深かったですね。長島龍人さんが書いた『お金のいらない国』という本もすごく好きです。もしこの世にお金が無かったら、人々の暮らしや価値観はどうなっていただろう?ということが、絵本タッチでわかりやすく説明されています。どちらも本当に素晴らしい作品だと思います。
継続されている趣味はありますか?
ゴルフです。長いこと週2ペースで回っていますが、これはリフレッシュするための趣味というより、もはや別のシゴトをしているイメージ。それぐらい真剣に取り組んでいます。心身の乱れが顕著にボールに出るので言い訳できないんですよ。これまで自分がやってきたことの中で思いどおりにいかないものナンバーワンですね。