HIGHFLYERS/#22 Vol.1 | Mar 2, 2017

椎名林檎等のMVや、カンヌなど世界3大広告賞グランプリ受賞の「UNICLOCK」も話題に。児玉裕一の「より伝わる表現」とはどこから来るのか

Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka / Cover Image Design: Kenzi Gong

今回HIGHFLEYRSに登場するのは、映像ディレクターの児玉裕一さん。児玉さんは、資生堂やNTT、サントリーなど大手企業のコマーシャル(以下、CM)を始め、東京事変や椎名林檎、サカナクション等のミュージックビデオの作品のほか、最近ではリオオリンピックの閉会式で行われたフラッグハンドオーバーセレモニーのチーフ映像ディレクターも務められました。また2008年に手掛けたユニクロのウェブ広告「UNICLOCK」においては、カンヌ国際広告賞、クリオ賞、ワン・ショーの世界3大広告賞全てでグランプリを受賞するという快挙も成し遂げています。少年が夢中になりそうなマシンやオブジェで溢れた、まるでおもちゃ箱のようなオフィスで、最新作品のお話や制作プロセスについて、また幼い頃に影響されたテレビ番組や映像などについて伺いました。
PROFILE

映像ディレクター児玉裕一

1975年生まれ。東北大学理学部化学系卒業。 卒業後、広告代理店勤務を経て独立。 2006年より「CAVIAR」に所属。2013年9月「vivision」設立。 CMやMVなどの映像作品の企画/演出から、ライブの演出まで幅広く従事。 2015年よりロンドンのクリエイティブエージェンシー「CANADA LONDON」にも所属し、海外の広告も手がける。

「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」や「狙われた学園」、「Merry X’mas Show」やとんねるずのマイケル•ジャクソンなど、若い頃に刺激を受けた映像はほとんどがテレビだった

現在はどんなプロジェクトに取り組んでいらっしゃるのですか?

最近は広瀬すずさんやジャスティン・ビーバーが出演するソフトバンクの学割シリーズのCMや、水曜日のカンパネラのミュージックビデオ「一休さん」などを手掛けました。「一休さん」では、とにかくコムアイさんを魅力的に撮ることと、楽曲の良さがきちんと伝わるように努力しました。

特に注力された点などありますか?

歌詞がぶっ飛んでいるので、そこから映像をイメージすることがなかなか出来ずに非常に苦労しました。「多幸感を表現してほしい」というオーダーのもと、楽曲が持つ「キュン」とするところをどう描くか、また、吉幾三みたいなラップ部分の可笑しさも伝えたいし、タイトルの「一休さん」感もどうしても外せないしと、それら全てをどう表現するか、すごく悩みましたね。結局、川崎の「ウェアハウス」というゲームセンターをロケ場所に決めて、そこからインスピレーションを得ながらストーリーを考えました。実際に現場に行って、コムアイさんが一休さんに手を引かれながら走っている映像が浮かんできたので、それを着地点に「コムアイと一休さんのラブストーリー」を考えました。そして、歌詞の「PUNKな破戒僧になりそう」の「破壊僧」を「爆弾魔」に結び付け、最終的に一休さんは連続爆破犯という設定に。コムアイならそんな相手と恋に落ちそうなんて思ってもらえそうだし、あまりハッピーに終わらなさそうな物語ってキュンときますよね(笑)。

一休さんのキャスティングも良かったですね。

一休さんには、常識はずれのダンスと端正な顔立ち、美しいスタイルで坊主頭のえんどぅくんを真っ先に思い浮かびました。彼はまさに“現代のSUPER一休さん”。それまでえんどぅくんがメディアに出る時はコミカルな演出が多かったのですが、今回は純粋な使命感に燃える美少年として出演していただきました。実はえんどぅくんとは、彼が18歳の頃に安室奈美恵さんの「NEW LOOK」というミュージックビデオに出演していただいた縁があって、仕事を長くやっていると色んなことが繋がっていくなとしみじみと思いました。仲間やOiPのキャスティングのおかげで多幸感あふれるフロアを演出することが出来ましたし、最終的にはコムアイさんがキメるとこをキメて、奇跡的な仕上がりになったと思います。

昨年は音楽祭の舞台演出もされたそうですが、いかがでしたか?

浜松市がユネスコ創造都市ネットワークに加盟したことを記念して開かれた音楽祭「世界音楽の祭典IN浜松 2016」の舞台演出を手掛けました。音楽監督を務めた三宅純さんからお誘いを受けて、このコンサート全体の演出や映像を制作したのですが、浜松のコンサート会場で浜松の市民のみなさんに出演してもらって、浜松で生まれた楽器たちを使用して映像を制作しました。

毎回新しいプロジェクトのお話がきてから作品制作を始めるまで、どのようなプロセスを辿るのですか?

色々なケースがあるんですけど、コマーシャル(以下、CM)の場合は、すでに出演者などは決まっていることが多く、代理店のプランナーやクリエイティブディレクターの方が考えた文字コンテや絵コンテなどの原型をベースに、「これを15秒、30秒でどういう風に表現したらより伝わって面白くなるかな」と僕の方で味付けしていきます。

その“より伝わって面白くなる表現”のアイデアはどこからやってくるのですか?

いや〜、それがなかなかやって来ないんです(笑)。出てくるまで粘ると言うか、待つというか。最後にひらめいて書き出すとつじつまが合っていく瞬間があるんですけど、それが来る迄は時間がかかりますね。だからその瞬間が来るように、締め切りをギリギリまで伸ばして机に向かい続けます(笑)。

御自身の作品として常に気をつけていることや一貫してこだわっていることはありますか?

僕の場合は、自分の作品というよりほとんどクライアントありきの仕事なので、相手に喜んでもらえるかとか、見た人がどう思うかとかの方が大切で、自分の作品という気持ちはそこまで強くないんです。ただ、「絶対こっちの方が良いと思いますよ」と提案したり、「伝わらないものを作っても仕方ないんじゃないですか」と意見を言ったりすることはありますね。

現在はミュージックビデオとCM作品を両方作っていらっしゃいますが、どちらを作る方が好きですか?

CMもミュージックビデオもどちらも好きです。CMばかりやってると、ミュージックビデオをやりたくなって、ミュージックビデオばかりやってるとCMをやりたくなるんです。ミュージックビデオはCMと違って、曲だけが決まっていて映像はこちらに委ねてもらうという事が多いのでわりと自由に考えるんですけど、予算がCMの大体10分の1くらいなので、情熱と苦労を重ねないと良いものにはならないですね。尺が凄く長いものを作らないといけないのに予算が少ないと、演出面がやっぱり多少薄まっていくので、どう上手く構成してみせるかというテクニックも必要だと思います。CMの予算でミュージックビデオが作れれば最高なんですけどね(笑)。

東京事変の「ハンサム過ぎて」では作詞もなさっていましたが、映像以外の部分を手掛けることもあるのですか?

いや、あれはたまたま。歌詞通りのミュージックビデオを作ったら面白いのではないかと言われ、「ハンサム過ぎて」というタイトルと曲はすでに決まっているから、そこに詞も書いて欲しいと頼まれて作りました。元々歌詞は日本語で書いて、英訳してもらったんです。CMの場合はコピーライターという専門家がいて彼らにはかなわないので、普段は言葉のプロにお任せしています。

幼い頃に見たものなどで、印象に残っている映像はありますか?

ほとんどテレビから影響を受けていますね。「狙われた学園」とか「スチュワーデス物語」とか、あの頃の映像の記憶が結構あって、時々フラッシュバックするんです(笑)。他に「時をかける少女」などもそうですけど、角川映画のあの独特な雰囲気は深層心理に刷り込まれていると思います。江戸川乱歩か何かのドラマに出てきた水中バレエのシーンとか、昔はトラウマになりそうな映像がいっぱい流れてましたよね。他にも「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」では、路地で100人を一斉に走らせて驚かす100人隊とか、巨大な歩く大仏を作ったりするのを観て、こんな事でもテレビならやって良いんだと子供心に思いました。あの時代はあれがスタンダードだったというか、テレビってハチャメチャなもんだと思っていたのがどこかありますね。

他に、クリエイターになるにあたって影響を受けた作品があれば教えてください。

年齢ごとに思い出す作品は変わるんですけど、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」と「AKIRA」を映画館で観た時は衝撃を受けましたし、今も引きずっています。他にはマイケル・ジャクソンやMCハマーのミュージックビデオとかですね。でも当時はMTVが家で観れるような環境ではなかったから滅多にミュージックビデオを見られる機会がなくて、とんねるずがミュージックビデオを完コピーした映像から、「マイケル・ジャクソンて面白い!」って本家の素晴らしさを知るなんてこともありました(笑)。あとは子供の頃、桑田圭祐さんや忌野清志郎さん、Charさんにアン・ルイスさん、山下洋輔さんなどが出演されていた「Merry X’mas Show」っていう音楽番組があったんですよ。そのビデオを父が録画していて、何度も観ました。桑田佳祐さんと忌野清志郎さんがリングでマイクバトルしたり、明石家さんまさんと吉川晃司さんがカップルという設定で、「きよしこの夜」を歌ったり(笑)。また、Charさんが全ての楽器を一人で演奏するのを一つの画面で見せたりしていて、そう言った手法はYouTubeとかで最近よく見ますけど、とにかく全てがクオリティーの高い仕上がりで、今観てもかっこ良いと思います。

では、児玉さんがこれまで制作したミュージックビデオやCMの中で、一番やりがいのあった作品、強烈に残っている作品などはありますか?

うーん、なんですかね。完成するとわりと一気に忘れてしまうのですが、いつもだいたい、直近の作品が「今まで一番大変だったな」と思います。

作品を拝見すると、足や身体のラインが印象に残るものが多く、フレームからはみ出ている部分の想像をかき立てられるのですが、何かこだわっている部分や好きな表現の仕方はあるのですか?

結果的に毎回そうなっているのですが、常に身体の綺麗な動きは撮りたいと思っています。例えば、被写体の歩き方からでも映像を観ている人はリズムを感じ取れるし、身体の動きを映像に入れると画にリズムを付けやすいんですよ。特にミュージックビデオではその効果を出しやすいですね。

音とダンスで時刻を表現し、世界3大広告賞を総なめしたユニクロの「UNICLOCK」も、バレリーナ達がとても美しかったですね。

美しい人達を撮ると、美しく撮れるっていう(笑)。美しい人達は撮ってる側も観ている側も、テンションが上がりますよね。

「ノンバーバルな“時計、ダンス、音楽”というコンテンツをWEB上で表現している」ことが広告賞の評価の対象となったそうですが、どの様なところに注力しましたか?また、受賞を知った時の感想を教えてください。

「ユニクロの服を使ってWEB上で時計を作りたい」というお題をいただいて、企画してあの様な演出を考えました。もっとテクニカルな方法もあったと思いますが、見た目はとてもシンプルにして、映像が持つ質感やトーンで勝負してみたいと思って。あと、「時報」という音が以前からとても好きだったので、あの音をベースに何か出来ないかと思っていたのもありました。美しく、いつまでも観ていたいと思われるようなものにするために、音の気持ち良さやロケ場所、キャスト、ダンス、そしてそれらのバリエーション数にも気を配りましたね。受賞を知った時は、日本でやってることが世界中の人に受け入れられたという驚きと喜びがありました。

次回へ続く

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