HIGHFLYERS/#22 Vol.4 | Apr 13, 2017

夢は映画を撮ること。スピルバーグ制作総指揮の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のように何度観ても面白い作品を作りたい

Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka / Cover Image Design: Kenzi Gong

リオオリンピックの閉会式で行われたフラッグハンドオーバーセレモニーのチーフも務めた映像ディレクターの児玉裕一さんインタビュー最終回は、児玉さんの思うチャンスや成功について。夢を実現するためには、自分がやりたいことは一度仕上げて形にしてみることが大切だとおっしゃってくださいました。そんな児玉さんは、現場の空気に臨機応変に対応できる余白を残すため、ご自身のパソコンのデスクトップはフィックスしないのが主義だそうです。最後までユニークで発想力に富んだ興味深いお話をたくさんしていただきました。
PROFILE

映像ディレクター児玉裕一

1975年生まれ。東北大学理学部化学系卒業。 卒業後、広告代理店勤務を経て独立。 2006年より「CAVIAR」に所属。2013年9月「vivision」設立。 CMやMVなどの映像作品の企画/演出から、ライブの演出まで幅広く従事。 2015年よりロンドンのクリエイティブエージェンシー「CANADA LONDON」にも所属し、海外の広告も手がける。

CMやMVは失敗出来ない。クライアントやアーティストの渾身の作品を託されたからには、毎回ホームランを打ち返す気持ちで取り組むことが大切

リオオリンピックのフラッグハンドオーバーセレモニーでは、チーフ映像ディレクターを務められました。大きなプロジェクトだったと思いますが、いかがでしたか?

じっくり時間をかけて取り組みました。方向性が決まりさえすれば、あとは作業を分担して撮って作っていくだけなのですが、あの8分間をどう演出するかが決まるまでがとても大変で、納期に間に合うかどうか心配でした。8分と時間も短いし、詰め込みすぎた感じはあったんですけど、色々な条件のもと、出来る限りのベストを尽くしたつもりです。

ところで、今の児玉さんは昔思い描いていた通りになっていますか?

なってないですね。こういう風になっているのはあまり想像してなかったし、科学者になっていると思っていたので。

今頃白衣を着ていたはずなんですね。でも、大学時代に描いていたCMクリエイターになる夢は実現されたと思うのですが、振り返ってみて何が実現に導いたのだと思いますか?

やりたいと思ったことは、とりあえず自分で一回仕上げてみたことでしょうか。それで出来なかったら、向いてないということだから。

プロジェクトを仕上げて行くために、普段から習慣にしていることはありますか?

習慣じゃないかもしれないですけど、パソコンのデスクトップはめちゃくちゃ汚いですね(笑)。習慣にしていることは特にないですけど、現場に持って行くビデオコンテはカッチリ決めても、ふとした拍子に踏み外せる気持ちは持っておくようにしています。僕一人で作れるものなんてそんなに大したものではないので、現場の空気感とか一緒に作っている方達の力を借りているという気持ちを常に思っています。音楽家や美術家などのクリエイターの力、チームワーク、それからいい意味での現場のノリとか、そういうものが発揮出来る現場を作るのが監督の役目かなと思うんで。

臨機応変かつ俯瞰してチーム全体を把握できることは、監督に必要な資質ですもんね。

いや、そんなこともないと思います。色んなタイプの監督がいて、「俺の言うことを聞け!」っていう頑固な現場もあるだろうし。僕はそういうタイプではないですが、スタッフを守るためだったら怒る時もあります。誰よりも僕は声がでかいし、感情的にもなりますよ。スタッフには好かれていたいです(笑)。

こうしてお話している姿からは、あまり怒るような方には思えないですね。それでは、児玉さんにとって、チャンスとはどういうことだと思いますか?

そうですね~、チャンス…、常にチャンス(笑)。いや、今がチャンス。今買わないと売り切れちゃうとか、そういうことですかね。買うか、買わないかとか、それを掴むか見てるかとか、みんなが敬遠するものとか、見逃してるものとか。

児玉さんは、チャンスがある時は掴もうとすることの方が多いですか?それとも見てることの方が多いですか?

どうなんでしょう、見逃すこともありますけどね。ピンチはチャンスってよく言う人いますよね。でも、クリエティブディレクターの佐々木宏さんが「ピンチはクイズだ」って言うのを聞いて、なるほど、確かにピンチをクイズって思うとなんだか楽しいし、答えたくなっちゃうと思いました(笑)。だから「ピンチはクイズでチャンス」ってことですね。アンディ・ウォーホールの有名な言葉に「誰でも15分間だけは世界的な有名人になれる」というのがありますけど、まさに今はそういう時代だと思うし、あとはどういうでかいチャンスを掴むかということだけですね。それはもしかしたら大ピンチかもしれないですけど。そのクイズに答え続けるかどうか。それと運ですね。僕はたまたま運が良かっただけだと思ってるんで。

振り返ってみてこのチャンスは拾って本当に良かったと思うことはありますか?

仙台にいた頃、映像を納品しに行く時に慌てすぎて、自分の事務所の階段から落ちて、後頭部をパックリ割ってしまい、辺り一面血の池みたいにしたことがあるんです。少しだけ気を失ったりして。その時死んでもおかしくなかったのに死ななかった。これはチャンスとは言わないけど(笑)、運は良かったです。

成功する人と成功しない人の違いはなんだと思いますか?

運が良いか悪いかですかね。だって、何でこの人が世に出ないんだろうみたいな凄い人はたくさんいるじゃないですか。

児玉さんから見て、最も成功していると思う人は誰ですか?

スティーヴン・スピルバーグですね。あんなに名作をバンバン作って、今でも作り続けているって脅威的ですよね。彼が制作総指揮を務めた「バック・トゥー・ザ・フューチャー」なんて、何回観ても面白い。死ぬまでに、ああいうものにひとつくらい関わることが出来たらいいなと思います。

児玉さんにとって成功とは何ですか?

難しいですねぇ。いつかはしてみたいもの。

もう成功なさっているんじゃないですか?

いやいや、でもきっとスピルバーグでさえ作品が失敗に終わることもありますから、いつまでも成功することは出来ないものですよね。人は成功したり失敗したりするものだと思うんですよ。だからどれだけ成功出来るかというのは、あまり長いスパンの話ではなく一瞬の話だと思う。今回の撮影は上手く行ったけど、次の撮影は失敗する可能性もあるわけで、なるべく一瞬一瞬を成功するように頑張ることが大切だと思います。

児玉さんのような映像ディレクター/映像作家になりたいと思う人にはどんなアドバイスをしますか?

全部成功する気で、勝ちに行く気でやればいいんじゃないですかね。多分、失敗してもいいって話はないんですよ。ミュージックビデオでもコマーシャルでも各クライアントなりミュージシャンから渾身の商品や作品を託されるわけだから、毎回ホームランで打ち返さないといけないということだと思います。

まだ叶ってない夢があったら教えて下さい。

映画を撮ることかな。まだ撮ったことがないので、いつか映画は一本作りたいなと思ってます。

オファーはいっぱい来てそうですけど。

オファーがある方はこちらにお願いします(笑)。

海外のお仕事もされているんですか?

海外では「CANADA LONDON」というエージェンシーに所属しています。まだそんなに多くは作っていないですが。

若手の映像作家やディレクターで注目している人はいますか?

山田智和くんですね。ミュージックビデオもCMもショートフィルムもやっていらっしゃるのですが、どの作品も抜けがよくて、いつも嫉妬してます。

これからの若手の映像作家が売れていくために、求められる資質はどんなことだと思いますか?

クオリティーなんじゃないですかね。僕らの時代は結構勢いと、誰もがやってないことをやってみれば道がひらけた時代だったんですけど、今はもうある程度の機材も出揃ったし、色んな手法も出ちゃったから、これからは本当にその作品の品格とか質が問われると思います。

日本の映像業界で変わったらいいのにと思うところはありますか?

お金が上手く分配されるといいなと思います。やはりCMに資金が集中しちゃうんですよね。それも正当な価格ではあるんですけど、スタッフが同じでも映画やミュージックビデオにはCMと同じ金額を支払えないので、バランスの良い価格というのがなくて、CM以外の現場では作ってる人の熱意に頼りがちな部分があるんです。自分も熱意を持って他の人がやらないものをやり続けてきたからチャンスがあったとも思うんですけど、そういうのが良いような悪いような、その辺のバランスがあんまり良くないですよね。他にも、例えば権利に関しても、ミュージックビデオの権利が僕ら側にはないというのも残念です。

海外と比べてみてどうですか?何か良い解決方法はあるのでしょうか?

海外ではもっとオープンに出来ていることですが、日本ではCMをどれだけ作っても自分のサイトで公開は出来ないから非公開なところでこっそり見てもらうようなことになっちゃう。YouTubeにしても日本国内でしか見られないようにロックがかかっているものもあって、海外の人達に見てもらえないんですよね。日本には優秀なディレクターがたくさんいるのだから、そういうところが変わっていって、彼らが海外でも活躍できるようになっていけばいいと思っています。

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