HIGHFLYERS/#40 Vol.1 | Mar 5, 2020

ピークは20代前半と言われるゲームの世界。30代後半になった今、いかにプロとして成立するかを考え、鍛える日々を送る

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka / Cover Design: Kenzi Gong

今回HIGHFLYERSに登場するのはプロゲーマーの梅原大吾さん。数々の対戦型格闘ゲームの大会で勝利を手にし、「世界でもっとも長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」、「最も視聴されたビデオゲームの試合」など数々のギネス記録を持つ、格闘ゲーム界のレジェンドです。姉の影響で幼少期よりゲームを始めた梅原さんは、11歳の時に出会った格闘ゲームにハマり、一気にゲームの世界へ。その後、ゲームから離れて数年間を過ごした時期もありましたが、紆余曲折を経て2010年に復活してからは、日本初のプロ格闘ゲーマーとして世界で活躍するようになりました。現在、プロゲーマーとしては最多の4社とスポンサー契約を結び、世界中で行われる数々のゲーム大会に出場しています。移り変わりの激しいゲームの世界で、長年プロとして活躍するレジェンドの半生を伺いながら、普段から努力していることや勝ち続ける秘訣、ゲーマーとして大切なことなどを4回にわたってたっぷりお届けします。第1回目は、最近の活動内容やプロとして10年経った今感じていること、また、世界のプロゲーマー事情と日本の違いなどを伺いました。
PROFILE

プロゲーマー梅原大吾

日本初プロゲーマー。15歳で日本を制し、17歳で世界チャンピオンのタイトルを獲得。以来、格闘ゲーム界のカリスマとして、22年間にわたり世界の頂点に立ち続ける。 2010年4月、米国企業とプロ契約を締結、日本初のプロゲーマーとなる。同8月「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネスブックに認定される。2016年、さらに2つの認定を受け、3つのギネス記録を持つ。 米国大手ゲームサイト「Kotaku.com」が、「奇跡の逆転劇」として知られる2004年の『Evolution Championship Series』※ における伝説の一戦を「プロゲーム史上最も記憶に残る名場面」第1位に選んだほか、2016年にはESPN.comが「格闘ゲーム界のマイケル・ジョーダン」と称するなど、世界のゲーム界ではウメハラの名を知らぬものはいない。 2019年4月には『Newsweek Japan』誌により「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれる。 現在、レッドブル、HyperX、Twitchのグローバル企業3社のスポンサード・アスリートとして世界で活躍する。 ※通称 EVO -- 世界最大の格闘ゲーム大会

世界中に競技者がいるeスポーツの世界。大会の賞金が生涯年収と同等レベルの国の選手や、ゲームの英才教育を受ける選手も増え続けている

最近は主にどのような活動をされているのですか?

今活動のメインとなるのは、プロツアーと呼ばれる年間を通して世界各地で行われるゲームの大会に出ることです。これは、インターネットを通して配信され、世界中の人が観戦します。スポンサーのロゴの入った服を着てゲームをしている様子が配信されて、そこからスポンサー費をいただくというシステムが成立しているので、注目度の高い大会に出ることがメインになっています。スポンサーって普通はチームに付くことが多いんですけど、僕の場合、個人に4社ついているんです。

Suguru Saito / Red Bull Content Pool

それは梅原さんの実力がすば抜けているっていうのが理由ですか?

まだプロゲーマーというのが確立されていなかった頃 、2010年に初めてプロとしてスポンサーがついたのが僕だったんですが、その前から格闘ゲームの世界の第一人者というか、“元祖”というか、“2D格闘ゲーム=ウメハラ”みたいに知られていたので、元祖というのに対して思い入れのあるファンも多くいて。その時のスポンサーはそういうことをわかってサポートしてくれたんだと思います。自分で言うのはおこがましいですが、その知名度とステータス、つまり影響力を買ってもらっていると思います。

ゲームの大会は、梅原さんが幼い頃からあったんですか?

はい。格闘ゲームというジャンルが出たのは僕が11歳の時でした。規模は様々ですけど、それ以来大会自体はずっとありますね 。

では今のeスポーツの大きなムーブメントって大体いつくらいに始まったんですか?

ムーブメントの一番大きなきっかけとなったのは、大会が配信され、より多くの人に観られるようになったことですね。それ以前は、会場に来た人しか大会を観ることができなかったので、観客は多くてもせいぜい1000人くらいで、企業が興味を持つほどの規模ではなかったんです。でもeスポーツだと、視聴人数は少ないと言われている格闘ゲームの世界でさえ、大きなイベントになると10万人くらいになります。

Suguru Saito / Red Bull Content Pool

すごい数ですね。色々拝見すると、梅原さんは今でも1日5、6時間くらいはゲームの練習をするんですよね?

ゲームの練習時間って説明するのが難しいんですが、ただやるだけなら1日10時間以上でも余裕なんですけど、競技のための練習は上達しないと意味がないので、そのために意識的に練習するとなるとせいぜい4時間くらいが限界。相手がレベルの高い選手だと、さらに集中しなくてはいけないので3時間くらいです。反対に相手のレベルが低いと、どんなに本気でやろうと思っても本気が出ないので、やはりある程度レベルの高い選手と練習しないといけない。またそれとは別に、野球でいう素振りもすごく大事ですね。海外や地方など、あまり対戦相手に恵まれてないようなところの人たちはとにかく一人でできることを一生懸命やってます。

ところで、練習の一環として、他競技のアスリートのように筋トレのようなこともされるのでしょうか?

どう役に立つかわからずにやっていた時期はありましたね。 最近鍛えてるのは目です。具体的には、この技を見てからボタンを押す、みたいな感じで、ゲームの中で意識してやってますね。格闘ゲームをやっている人って動体視力がいいんですよ。前にアメリカでアスリートの動体視力を調べたら、1番はアイスホッケー選手で、2番がeスポーツ選手だったんです。動体視力は相当いい人たちが多いんですけど、目と手しか使わないんで、意識的に鍛えている人はあまりいないです。

動体視力を意識的に鍛えてみようと思ったきっかけは?

実は、格闘ゲームは、選手のピークが20代前半と言われるゲーム界では特殊。動体視力の衰えが原因で、他のジャンルのゲームは早い段階でトップ選手の入れ替わりがある。ただ、格闘ゲームはそれに依存する部分がそれらのゲームより少ないんです。それにしたって、動体視力を鍛えることはできるし、それ以外の戦略や技術面は磨いてきたのだから、年齢とともに衰えていくものを放ったらかしにしておくのは良くないなと思ったんです。

年齢を重ねることで、プロとしてご自身の衰えを感じることは他にありますか?

目の衰えに関しても、自覚があったわけではないんですよ。ただ若いプレイヤーたちを見てると、確かに一つの技に対する対処が早いので、やっぱり本当に衰えてきたんだなと思います。 それ以外は衰えたなって感じることはないですね。

では精神的な部分においてはどうですか?

若い時やプロ一年目の時は、がむしゃらだったというか、「絶対なんとかしてやるぞ」っていう気持ちが強かったんですけど、あの頃の狂ったようなモチベーションは年齢と共になくなってきてます。今は、「いかに仕事として成立させるか」を考えます。要は狂ったようなやる気っていうのは、爆発力はすごいけど、それを継続することはできないので、ゲームを仕事にした以上は続けられるくらいの努力をするように変わってきましたね。

ゲームの業界にいらして、世界のゲーマーと日本のゲーマーの違いを感じるところってありますか?

eスポーツはどこからでも参加できるので、個人戦の場合は世界中に競技者がいますが、発展途上の国では、賞金がその国の生涯年収と同じということもあるんですね。3年前の「ストリートファイターV」の世界大会(「カプコンカップ2017」)で優勝した選手はドミニカ人(MenaRD選手)なんですけど、ドミニカって物価が日本と比べて10分の1くらいだから、賞金が3千万となると、一回優勝しただけで一生分稼いだことになるんですよね。日本人からするとそれで人生安泰とはならないけど、国によっては人生が変わるような額になるので、人生を変えるために参加している選手は目の色が違うっていうか、とにかく気合入ってますよね。 そういう点では平和な日本とは大きな違いを感じますね。

たった一度優勝すれば人生変わるんですものね。

あとは、 韓国や中国などではeスポーツって本当に人気な職業で、一般的な仕事より圧倒的に稼げるから、若い選手の取り組み具合が本当にすごいんですよ。実際に韓国で有名になった選手は、中国に10億円とかで引き抜かれるなんてこともあるんです。そういう世界です。

すごい額ですね。日本人にはそういう選手はいないんですか?

世界で一番流行ってるゲームは、日本はまだ発展途上の段階にあると思います。その反面、格闘ゲームは国技なんて言われたりしています。

世界で一番流行ってるゲームには、どういうものがあるんですか?

その時々で変わるんですけど、息の根が長いのはLOL(League of Legends /リーグ・オブ・レジェンド)という、5対5でやる、リアルタイムストラテジーっていうジャンル。シュミレーションゲームにアクション要素を入れたようなゲームで、もう10年くらい人気が続いています。あとは「オートチェス」(Dota Auto Chess)っていうリアルタイムで行うチェスとか、FPSっていう銃撃戦のジャンルのものとか、そういうのは優勝賞金が50億とかで規模も桁違い。韓国や中国が強い分野ですね。こうやって見ると、一番賞金が高い大会でもせいぜい3千万の格闘ゲームがいかにゲーム界ではマイナージャンルか、っていうことがわかりますよね。

日本人が、世界で一番人気のゲームで強くないのには理由があるんですか?

中国や韓国は、子供の頃からゲームの英才教育をしているんです。日本でeスポーツが世間に認知されたのって最近じゃないですか。国が認めて推奨し始めて間もないんで、世界のトップクラスのレベルはまだ出てきてないって感じですね。10年後くらいにはいい選手が出てくる可能性はあると思いますが。

日本も、プロゲーマーという職業に憧れる子供がこれからどんどん増えそうですね。

なりたい仕事にはなりそうですけど、それだったら多分YouTuberの方が、選択肢も多いし、ウケが広いですよね。もちろん大変でしょうけど、ゲーマーに比べて目に見える競争がないし、これは僕の勝手な憶測ですが、反射神経を養ったりする明確な訓練がいらない分、アイデア勝負でいけそうで、敷居が低そうに見えるんじゃないかなという気はしますけどね。

取材協力:タイトーステーション 新宿南口ゲームワールド店
住所:東京都新宿区新宿3-35-8
電話:03-3226-0395
https://www.taito.co.jp/gc/store/00001459

次回へ続く

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