HIGHFLYERS/#40 Vol.4 | Apr 16, 2020

地位や名誉を得ても、人生窮屈だったら意味がない。成果を残して認められた結果、人生が広がり豊かになっていくことが成功

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka / Cover Design: Kenzi Gong

梅原さんインタビュー最終回は、チャンスと成功について。そして人生で一番嬉しかった昔の出来事や、将来に描いていることについてを伺いました。逆境好きだとおっしゃる梅原さんは、今、世間がeスポーツとしてゲーム業界に地位を与え出したことについても異論があるそうで、とてもユニークな発言をいただきました。本の出版、漫画のモデル、ギネス獲得、ドキュメンタリー特集など、ご自身がやりたかった全てを実現させ、ゲームで食べていくという一番の目的も叶った今、次に望んでいらっしゃることはあるのでしょうか。また、10年後のご自身がどうなっていたいか、についてもお聞きしました。
PROFILE

プロゲーマー梅原大吾

日本初プロゲーマー。15歳で日本を制し、17歳で世界チャンピオンのタイトルを獲得。以来、格闘ゲーム界のカリスマとして、22年間にわたり世界の頂点に立ち続ける。 2010年4月、米国企業とプロ契約を締結、日本初のプロゲーマーとなる。同8月「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネスブックに認定される。2016年、さらに2つの認定を受け、3つのギネス記録を持つ。 米国大手ゲームサイト「Kotaku.com」が、「奇跡の逆転劇」として知られる2004年の『Evolution Championship Series』※ における伝説の一戦を「プロゲーム史上最も記憶に残る名場面」第1位に選んだほか、2016年にはESPN.comが「格闘ゲーム界のマイケル・ジョーダン」と称するなど、世界のゲーム界ではウメハラの名を知らぬものはいない。 2019年4月には『Newsweek Japan』誌により「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれる。 現在、レッドブル、HyperX、Twitchのグローバル企業3社のスポンサード・アスリートとして世界で活躍する。 ※通称 EVO -- 世界最大の格闘ゲーム大会

許される限りはずっとプレイヤーを続けていたいけど、いつか限界が来た時は、すごく解放された気持ちになるかもしれない

今までの人生で一番嬉しかったことを教えてください。

父親にファミコンを買ってもらった時かな。 ファミコン欲しいなってずっと言っていたけど、子供が買ってもらうものにしては高いから、クリスマスとか特別な日じゃないと、って諦めていたんです。そうしたら突然、父に「大吾、ファミコン見に行くか?」って言われてデパートに一緒に行ったんですよ。それでも子供だからどういう展開が待っているのかまったく想像もしていなくて(笑)、僕が「これファミコンって言うんだよ〜」って言ってたら、店員さんに「これください」って父が言ったんですよ。そんなサプライズ初めてだったし、本当に買ってもらえるなんて微塵も思ってないからびっくりして、めっちゃくちゃ嬉しくて、「こんな嬉しいこと生きててあるのか」って思いました(笑)。 その時が一番嬉しかったかな、5歳くらいの時です。

いいお話ですね。では、これまで自分が一番成長したと感じたことは?

毎年、多方面から講演の依頼を頂くんですが、慶應義塾大学で講演したときですかね。その講演は、僕の配信チャンネルを通じて多くの人に生配信で観て頂いてとても好評だったんです。それまではただのゲーム少年という気持ちでいたけど、こんなことをするようになったんだなあって、なんだか他人事のように思いました 。

普段、習慣にしていることを3つあげて下さい。

ゲーム以外で言うと、散歩は習慣です。どこでも歩くのが好きです。ただひたすら歩く時もありますし、考え事をする時は必ず散歩をしながら考えます。

好きな言葉、本、映画などはありますか?

子供の頃は脱獄ものが好きだったんですよ。最近わかってきたことですけど、おそらく自分の性格からして、とにかくマイナスな状態に燃えるんですね。苦境にあるとかアウトローの主人公の話にワクワクするんですよ。映画も 「ショーシャンクの空に」とか「大脱走」とかすごく好きで、なんでも脱獄ものは全部観たんじゃないかな。

逆境好きとは、面白いですね。

eスポーツって言われるようになった今、ゲームが否定されもしないし、反対に称賛されるような時代になってきちゃって、苦しい当時を経験してきた僕らからするとありがたい反面、正直拍子抜けしているんです。僕の願いとしては、 「あんなものやめさせろ」っていう勢力がeスポーツに現れないかなって求めています(笑)。そうしたら「何を!」っていう感じでやる気が出てくると思うんですよ。手放しで褒められたりとか、認められたりっていうのがすごく苦手な性格もあってだと思うんですけど、 上手くいくってわかってることとか全然好きじゃない。配信の企画も考えるんですけど、上手くいった企画はもうやらないんですよ。もちろん誰もが皆やると思って話をしてくるんですが、上手くいくってわかってるのになんでやるの? つまらない!やる価値ないでしょう?って(笑)。上手くいくかどうかわからないことはすごくワクワクするんです。

Jason Halayko/Red Bull Content Pool

それでもしも上手くいかなかった場合ってどうするんですか?

うわぁ、って思って反省します(笑)。でもやっぱり上手くいくってわかってることができないんですよ。30歳を過ぎる頃までは、みんなそういう考え方だと思ってました。でも最近はみんな上手くいくってわかってることをちゃんと楽しくできるんだ、僕の感覚はみんなと違うんだなと自覚し始めました。

ところで、 チャンスとはどんなことだと思いますか?

ピンチとチャンスって隣り合わせですね。自分では平均してあんまり上下のない、ムラのない努力をしてきてるつもりなんですけど、それでもここは頑張りどころだろうっていう、一番やらなきゃいけないチャンスの場面はある。それはある意味ピンチでもあるんです。つまりチャンスを活かせる人はここっていう時に、きちんとモードを切り替えて頑張れる人だと思うんですよね。ここ頑張りどきなのに頑張れない人は、チャンスを掴めていないんじゃないかと思います。

では、梅原さんにとって成功とはなんですか?

例えば金銭的に豊かになるとか、名声を得るとか、地位が上がっていくようなことが一般的にあげられると思いますが、そういうことは個人的には成功の指標だとは思っていません。お金を手にして社会的に偉くなっても、人生窮屈だったら成功とは言えないなと思うんです。もちろんそういうものも大事なんだけど、“成功”することによって、精神的にというか、心が広がっていくような、豊かになっていくような感覚がないとって思うんですね。いろんな成果を残して、認められて、結果として人生が広がる、それが自分にとって成功っていうことですね。

社会で起きていることで興味があることは?

日本の子供の数が少ないっていうのはすごく寂しいですね。
インドネシアのように人口の多い国にゲームの大会で行くと、出生率が高いことも相まって、子供が多いんです。子供がたくさんいると大人も明るくなる気がするんですよね。ワクワクするじゃないですか、未来を持った人間がたくさんいるってことだから。だからなんとか子供が増えないかなっていうのは日本に対して唯一思うことですね。

では、梅原さんのなさっていることで世界が変えられるとしたら、それはどんなことですか?

そんな大それたことは考えてもみないですが、eスポーツの中での格闘ゲームの地位っていうのを上げたいという気持ちはありますね。eスポーツの地位は向上しているけど、格闘ゲームってeスポーツの世界では競技者人口は一握りにすぎないし、注目度もそんなに高くないんです。でも地位が上がれば自然と格ゲープレイヤーも影響力を持つことができるだろうし、そうなったら、もしかしたら変えられることが出てくるかもしれないですよね。まずはもっと影響力を持てるように多くの人に格闘ゲームの面白さを伝えてファンを増やせたらと思います。

Chris Bahn / Red Bull Content Pool

私のようなゲームがわからない人は、どうやって格闘ゲームに入っていったらいいのでしょうか。

そうですよね。 ビデオゲームは普通のスポーツに比べると、盛り上がりどころがわかりづらいと思うんですよね、点数が入ったというような明確なサインがないんで。そこは課題ではあるんです。ただ、結局ファンって人につくわけなので、そういう魅力的なキャラクターのある人が増えれば、「あの人が好きだからこの格闘ゲームを観てます」みたいな人が増えていくのかなとは思いますね。

まだ叶っていない夢があったら教えて下さい。

ないんですよね。もう自分のやりたいことを一つ一つ叶えることができました。本も出せたらいいな、漫画になったらいいな、ギネスなんてもらえたらいいな、ドキュメンタリーができたらたらいいな、とか、なんとなく妄想していたことは全部叶ったし、むしろ最大の夢は「ゲームで食っていく」っていうことだったんで。

Yusuke Kashiwazaki/Red Bull Content Pool

最後に、3年後、5年後、10年後のご自分はどうなっていると思いますか?

まだまだ格闘ゲームを最前線でやっていきたいです。配信を通して世界のファンとの交流を深めていますが、定期的に自分で企画するイベントもやっているので、それを通してひらめくアイデアを実現していけたらいいなと思います。 終わりがあるわけではないんで、許される限りはずっと同じことをやっていたいです。

10年後も?

やっていたいですね。でも、もしも「もう無理だな」って思うときが来たら、逆にすごく解放された気持ちになるかもしれないですね。全力でやって、これが僕の限界なんだなって思えたら、ようやくゲームの呪縛から解き放たれる気もしますね(笑)。

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