HIGHFLYERS/#27 Vol.1 | Jan 11, 2018

初期衝動に立ち返り、ギタリストとしてのアイデンティティと存在意義を再確認。今新たな転機を迎えた心境を語る

Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka / Photo Retouch: Koto Nagai / Cover Image Design: Kenzi Gong

今回HIGHFLEYRSに登場するのはギタリストのMIYAVIさん。エレクトリックギターをピックを使わずに全て指で弾くという独自の“スラップ奏法”でギタリストとして世界中から注目を集め、これまでに約30カ国300公演以上のライブを行なっています。昨年はアーティスト活動15周年を迎え、6度のワールドツアーを成功させると共に、4月にベストアルバムを発売。ホームグラウンドである日本においては、都内15本対バンライブを行うなど精力的に活動するMIYAVIさんに、サッカーに夢中だった幼い頃のことからギタリストとしてスターになるまでの軌跡や、ハリウッド映画に出演した時のエピソード、海外での活動や世界について感じていることなどを伺いました。第1回目は昨年の11月8日に発売した対戦型コラボレーション・アルバム「SAMURAI SESSIONS vol.2」や12月に行なったツアーについて、またギタリストとして新たな過渡期を迎えた心境や2018年の抱負を伺いました。
PROFILE

アーティスト/ギタリスト MIYAVI

エレクトリックギターをピックを使わずに全て指で弾くという独自の“スラップ奏法”でギタリストとして世界中から注目を集め、これまでに約30カ国300公演以上のライブと共に、6度のワールド・ツアーを成功させている。2015年にグラミー受賞チーム“ドリュー&シャノン”をプロデューサーに迎え全編ナッシュビルとL.A.でレコーディングされたアルバム『The Others』をリリース。2016年に8月にはLenny Skolnikをプロデューサーに迎え『Fire Bird』をリリース。また、アンジェリーナ・ジョリー監督映画「Unbroken」(2016年2⽉ 日本公開)では俳優としてハリウッドデビューも果たした他、映画『Mission: Impossible ‒Rogue Nation』日本版テーマソングのアレンジ制作、SMAPへの楽曲提供をはじめ様々なアーティスト作品へ参加するなど、国内外のアーティスト/クリエイターから高い評価を受けている。2017年11月には日本人として初となるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の親善大使に就任し、難民支援活動をおこなっている。

5年ぶりに発表したSAMURAI SESSIONS。もっとギターで世界中の人たちをワクワクさせたい

昨年はアーティスト活動15周年を迎えて、11月にアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.2」を出されました。一年の活動を振り返っていかがでしたか?

ソロデビュー15周年ということで、自分的にはあまり意識はしていなかったんですが、改めて、アルバム「SAMURAI SESSIONS Vol.2」を含め、自分のギタリストとしてのキャリアにおける“DAY2”という新しいフェーズに突入できたこと、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の親善大使(アンバサダー)に任命されたことなど、今後の活動の基盤となっていくであろう非常に有意義な一年になったと感じています。

2017年11月8日にアルバム「SAMURAI SESSIONS Vol.2」を発売されましたが、なぜあのタイミングだったのですか?

前作のVol.1から時を経て、一昨年「Fire Bird」というスタジオアルバムを出させてもらったんですけれども、「もっとギターで世界中の人たちをワクワクさせたい」「ギタリストとしてのアイデンティティを確立したい」という原点に立ち返り、ギターで表現することにさらにフォーカスした作品を作りたいと思っていたんですね。「Fire Bird」以前までは、どちらかというとリズム、スラップも含めて縦軸、主にリズムでの表現が大部分を占めていたんですけど、今回は横の流れ、フローと言うか、メロディー、“ギターで歌う”ということに焦点を置きました。自分の中ではFire Birdを出したことで、ギタリストとして、翼を得て、自由に表現できるようになったと感じていたので、そのネクストステップとして、プロデューサー、およびコンポーザーとしての視点をより持って、楽曲がより一段と生きる形で創作したいと思うようになり、今度はたくさんのシンガーにオファーをさせて頂きました。「MIYAVIが世界中をロックしている絵」を目をつむって想像した時に、やっぱり、ギターで人の心を躍らせてるんですよね。なので、その絵により近づけていったという感じですね。

『SAMURAI SESSIONS vol.2』 発売記念ツアー“Day 2 Begins”にて。 左下は同アルバムでコラボしたアーティストのひとり、SHOKICHI Photo by Yusuke Okada

Vol.1とは参加されているアーティストがガラッと変わりましたけれども、どのように選んだのですか?

今回は、作品をより高みに到達できるような、今一番日本でアツいと思うアーティスト達とやらせてもらいました。実は今回の「SAMURAI SESSIONS Vol.2」企画以前から、アメリカやアジアのアーティストとはすでにコラボレーションが始まっていたのですが、それとは別にホームグラウンドでもある日本のマーケットに向けて、日本のアーティスト達と作ってみようと思って実現したのが今回のアルバムです。

Vol.1のプロデューサーである亀田誠治さんも1曲参加されていますね。

はい。Vol.1は、アーティストと音でぶつかり、その瞬間に生じる熱量と摩擦を一つにパッケージングするということで、亀田さんにプロデュースしてもらい、非常に熱心にかつ丁寧に仕上げて頂きました。今回は、LAに拠点を移してからずっと一緒にやっている制作チーム、および、プロデューサーのレニーと一緒に作りました。三浦大知くんと一緒にやった楽曲に関しては、クインシー・ジョーンズが日本で公演をした際に、僕と大知くんを繋げてくれた亀田さんにお願いして、特別にベーシストとして参加してもらいました。

プロデューサーのレニーとレコーディングしている様子

改めて「SAMURAI SESSIONS Vol.2」を聴いてみていかがですか?

何より、彼らのプロフェッショナルで熱意のあるパフォーマンスとクリエーションによって、本当に素晴らしい作品になったし、MIYAVI 一人では辿り着けなかったところまで行けたと思います。やはり自分一人で作る時とは違うので、各アーティストと共有、コンセンサスを取りながら、かつ自分の頭の中で鳴っている音、描いている絵というものを具現化していく、という意味では大変でしたけど、スリリングで刺激的なプロセスでしたね。あとはこれを一つのフォーマットとして、MIYAVIの音やスタイル、そしてメッセージを普遍的にできればもっと可能性が出てくると感じていて、またここから生まれる新しいケミストリーや、先の展開に自分自身もワクワクしていますね。

では、また新しいところに辿り着いたんですね。

そうですね。昨年から「Day 2 Begins」というタイトルでツアーを回って、今また新しいチャレンジが始まったところです。これからまだ誰も経験したことのないものを作ろうとしています。自分たちが応援してくれる人たちに約束できることっていうのは、必ずしもファンのみんなが望むものかどうかはわからないけれども、そこに対してのアティテュードとそこに向かっていくベクトルだと思っています。そういう意味で挑戦していく過程も一緒に楽しんでもらえたらなと思います。

今回のアルバムも含め、これからの活動はそういう風にファンの方には見て聴いてほしいということですね。

例えば、どこかにご飯を食べに行く時って、食べたいものを食べに行くじゃないですか。でもMIYAVIのショーは寿司屋なのにたまにカレーが出てくるような、ある種メニューのない店みたいなものなので、今までもそうだったように、これからもある種、応援しにくい部分はあると思うんですよね。でもそこに対して、まず自分が信じて美味しいと思うもの、そして自分なりの熱とこだわりと誇りは約束しているし、ファンの皆はそれを応援してくれているんだろうなぁと感じています。

今回のアルバム制作を通して、新しいフェーズに来たとおっしゃいましたが、今までにもギタリストとして転機はありましたか?

転機はいくつかありますね。チャプターごとに分けるとするならば、DAY0はメジャーデビューして、27歳の時にソロとして独立するまでの間。その後がDAY1で、レコード会社をEMIに移籍して、スラップスタイルを含め、「WHAT'S MY NAME?」という楽曲を含めてギタリストとしてのアイデンティティを確立し始めた時期ですね。ちょうど“サムライ・ギタリスト”と呼ばれ始めた頃です。その時期にドラマーのBOBO君と出会って、リズムに対しての意識が変わり、本当にたくさんのことを学ばせてもらいました。

なるほど。そこから 今回のツアーのタイトルにある「Day 2 Begins」へ向かって行くのですね。

そのDAY1を経て、前作の「Fire Bird」のリリースから、今はDAY2にシフトしていっている過渡期と捉えています。ギターでメロディーをどう歌っていくのか。ギタリストとしてのアイデンティティと存在意義、それは自分の弾き方だけじゃなくて、今までのロックという歴史の中で、たくさんの先人が築いてきたものから自分が影響を受けたものを、ロックフォーマットだけではなく、未来の音楽や次世代のギターミュージックをどうやって作っていくのか。それはたぶん自分に与えられたギタリストとしてのミッションだとも思うんです。それが昨年の東名阪のツアーから始まったんですけど、そういう意味では今も大きなターニングポイントだと思います。

今までのパフォーマンスで、最も記憶に残る最高だったものを一つあげることはできますか?

それは、昨日のパフォーマンスですよね。常に今が一番だと思っています。例えば韓国でライブをやった時に、お客さんの熱気の湿気で漏電して照明が全部飛んでしまったので、最後までずっと蛍光灯でライブしたり、ブラジルでは、お客さんにもみくちゃにされて、アクセサリーを全部取られた上、楽屋に戻るとひっかき傷で自分が全身血だらけになっていたりとか色んな記憶に残るハプニングもありますけどね。でもパフォーマンスという意味で言うと、常に今が最高だと思うし、今の自分が絶対にベストだと思ってやってます。

韓国で行われたライブ

いつも精力的なMIYAVIさんですが、今年の抱負を聞かせてください。

音楽、映画、ファッション、この3つはすごく近しいところにあるので、自分というフィルターを通して、もっといろんなことに挑戦して、自分らしく表現していきたいです。あとは、先ほども話した通り、やはりそこに込めるメッセージ、アティテュード、何を伝えたいのか、何のためにやってるのかをもっと明確にしていきたいです。近々の活動を通じて、そこらへんがもっと見えてくると思います。

次回へ続く

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 ジャケ写真があればここに配置。掲載不可の場合は、トルツメになります。

MIYAVI「SAMURAI SESSIONS vol.2」
2017年11月8日発売/配信開始

ジャンル/キャリア/国境さえも超えたアーティストと真剣勝負を繰り広げる対戦型コラボレーション・アルバム第2弾!

  1. 1. Dancing With My Fingers / MIYAVI vs 三浦大知
  2. Gemstone / MIYAVI vs SKY-HI 
  3. Fight Club / MIYAVI vs EXILE SHOKICHI
  4. Banzai Song / MIYAVI vs VERBAL(m-flo/PKCZ®)
  5. Bumps In The Night / MIYAVI vs Masato(coldrain)
  6. No Thanks Ya / MIYAVI vs ちゃんみな
  7. Flashback / MIYAVI vs KenKen(LIFE IS GROOVE, RIZE, Dragon Ash)
  8. All My Life / MIYAVI vs HYDE
  9. Forget You / MIYAVI vs シェネル
  10. Slap It / MIYAVI vs 雅-MIYAVI-
  11. Long Nights feat. Sonita / MIYAVI (デジタル配信限定商品)
  12. The Making Of “Dancing With My Fingers” Music Video [Music Video] / MIYAVI vs 三浦大知

iTunes「SAMURAI SESSIONS vol.2」予約URL:http://po.st/it_miyavi_ss2

◆初回限定盤(CD+DVD/5,000(税別) TYCT-69120
【CD】全10曲収録
【DVD収録内容】

  • 「Dancing With My Fingers」MIYAVI vs 三浦大知 Music Video
  • 「MIYAVI 15th Anniversary Live“NEO TOKYO 15”」ライブ映像5曲
  • 「MIYAVI 15th Anniversary Live“NEO TOKYO 15”」ドキュメント映像

◆通常盤(CD/3,000(税別) TYCT-60108
【CD】全10曲収録

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