HIGHFLYERS/#47 Vol.4 | Jun 17, 2021

チャンスは、その辺にいくらでも転がっている。高いハードルを超えると、その先にある何かを掴めるような気がしている

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka / Cover Design: Kenzi Gong

イラストレーターの五月女ケイ子さんインタビュー最終話は、プライベートのことや、チャンスと成功について伺いました。なるべく無理をせず、日常生活で楽しいことを見つけながら暮らす五月女さん。日々心がけていることが、あのユニークな作品の数々に繋がっていることがわかるインタビューでした。また、成功者だと感じる人についても、面白い視点でお話しくださいました。他にも、五月女さんが今、気になることや、生活の中心である子育てで感じていること、そして、これから実現したいことなどをお聞きしました。
PROFILE

イラストレーター 五月女ケイ子

山口県生まれ。横浜育ち。中学の部活は卓球部。高校はダンス部。 大学では映画学を専攻し映画研究部に在籍。卒業後、独学でイラストレーターになる。最初の仕事は雑誌 『Hanako』。 「徹子の部屋」のほかの部屋はどうなっているのかを図解したイラストをきっかけに現在のスタイルを手に入れる。 2000年、BSフジの番組『宝島の地図』のコーナー『新しい単位』 のイラストを手がけ、これがのちに30万部を超えるベストセラー単行本となりアジア各国でも発売される。 『淑女のエチケット』(扶桑社)『愛・バカ博』(扶桑社)『レッツ!!古事記』(講談社)『親バカ本』(マガジンハウス)など独自の目線の著作も多数。 細川徹+佐伯新によるコントユニット『男子はだまってなさいよ!』 の舞台に出演したり 「タモリ倶楽部」 に出演したりテレビ・ラジオ・舞台など幅広くマルチに活躍中。 2018年には台湾で展覧会「五月女桂子的逆襲」を開催。 国内のみならず海外でも人気のLINEスタンプ「五月女ケイ子のごあいさつ」や「淑女のご挨拶」スタンプは大好評発売中!

今、心がけているのは、1日1日を楽しく過ごすこと。陽の光を浴びて、楽しみながら、頑張りすぎないように続けることが大事

イラストレーターを目指す方たちにとって、夢を実現化するのに必要なことはなんだと思いますか?

毎日毎日とにかく描くこと。 描き続けていると、だんだん表現方法が豊かになってくるし、引き出しも増えて、緊張もしなくなります。

絵を描いて緊張するってどういうところなんですか?

若い方の作品を見せていただく機会もありますが、目指しているからこそ、肩に力が入ってると感じることがよくあります。私も元々緊張しやすいので気持ちがわかるんですが、このスタイルになってからは、シルエットとか、表情とか、違うと思ったら、どんどん上から絵の具で描き足していっちゃう。「これでいいんだ」と思える様になってからは、緊張しなくなりましたね。一筆書きは今でも緊張しますけど(笑)。

改めて五月女さんの作品を見ると、やっぱりすごく力が抜けてる気がしてきます。

消しゴムを使ってちゃんと消していない時さえあって、デザイナーさんに「こんなに汚い原稿初めて見た」って言われたこともあります(笑)。完成形で出さなくてもいいとか、ちょっと間違っていてもいいとか、絵って終わりがありませんから、自分が終わりと思うところが完成。そのぐらいの開き直りが大切かも。それすら味にしてしまえっていう。

では、普段から習慣にしていることを3つ挙げるとしたら?

早起きです。昔、仕事ばかりしていた時には、朝の4時に寝て、昼の2時に起きて仕事する生活を繰り返していて、寝る時に日光が入らないように、窓に襖を持ってきて蓋をしたりしてたら、ちょっと病んできちゃって。今は陽の光を浴びて、むしろ楽しみながら頑張りすぎないようにやってますね。疲れた時はお茶を飲むとか、無理をしないためのルールが多いかもしれないです。

今ちょうどいい感じで、バランスが取れてお仕事していますか?

どうかな。でも今は子育てが主になっているので、娘が中学生になったら、はっちゃけようかな。 子育ても楽しいし興味深いし、「何だろう、これ」みたいな、今まで出会ったことのないことの連続で、日々面白い材料をたくさん見つけられている気がするので、いつかどこかで放出される日が来るといいなと思っています。

好きな言葉、本、映画などは何ですか?

好きな言葉は、ありきたりだけど「明けない夜はない」かなあ。何か気になると眠れなくなったりするけど、だいたい寝ると治ります。睡眠って偉大ですよね。やっぱり「寝ると治る」が好きな言葉です(笑)。映画はたくさんありますけど、特に小津安二郎の「お早よう」っていう映画がずっと好きです。小津作品にしては珍しく、子供がうまくオナラを出すために奔走したりと、かなり砕けた感じの作品なんですけど、それを美しい色調と構図で見せるので、その対比がすごく面白くて。しかも、「お早よう」という言葉って、すごく普通のことですが、実は日々の潤滑油になっているということを小津流に伝えてくれているので、当たり前を大事にして、日常を楽しく過ごそうっていう気持ちにさせてくれるんです。

五月女さんが近頃気になっていることはありますか?

世界の朝ごはんが気になっています。先日、専門店でフィンランドの朝ごはんを食べたんですけど、びっくりしました。パイの中に、卵に見えて卵ではないものが入っていたり、ジャムを作る途中みたいな感じの甘いベリーのスープとかが出てきて、すごく不思議で興味深かったです。もっといろんな国の朝ごはんを知りたいなって思いました。

五月女さんが生きていく上で一番大事にしていることは?

1日1日楽しく過ごしたいです。それが長期の幸せに繋がるというか。子供と喧嘩しても必ず仲直りして、わかりあってから寝たいし、何か楽しいって感じて寝たい。そうじゃない日もあるけれど、そういう時は、寝れば治ります(笑)。

では、チャンスとはどういうことだと思いますか?

見つけ出すのは難しいのかもしれないけど、その辺にいくらでも転がっているもののような気がします。勘違いでもいいので、それをいかにチャンスって思うかも大事な気がします。

今まで、これってすごいチャンスだったなって思ったことはありますか?

逃したチャンスも結構あると思いますが、特に若い頃は、高いハードルがある仕事はプレッシャーでめげそうになっていたんですけど、その負の気持ちを振り切って頑張って乗り越えた時の達成感は、何にも代えがたいものがありました。ものすごい量の仕事を短期間でやらなきゃいけなくて、それをやり遂げた後の爽快感もそうですけど、ハードルを超えるたびに、強くなれてきた気がします。逆に、掴む前にあきらめてしまうのは、もったいないって思うようになりましたね。

五月女さんにとって成功とはなんですか?

うーん、難しいですね。そうだなあ、日々嫌だなって思うことが少ないのが成功なのかな。あとは、昔からタバコ屋のおばさんに憧れているんですけど、ああいう風にじっと座っている姿が、すごくカッコいいなって。自分の現状を認めて「動じない」でいられるということが、人生の成功なんじゃないかと思います。私は色々なことに動じちゃいますから、まだまだです(笑)。

では、成功する人としない人の違いはどこにあると思いますか?

過去にあったことも、後悔ではなくて肥やしに変えられる人。ダメな時でも、「なんとかなるさー」って自分を信じられる人は、強いと思います。

3年後、5年後、10年後のご自身はどうなっていると思いますか?

3年後は、娘が中学校に上がるくらいだから、そろそろはっちゃけ始めていたいですね。5年後は外国ではっちゃけて、インスタにたくさんイラスト動画をアップしようかな。(笑)。10年後は生きてるかなぁ。長生きしたいですね。なので、できればその時の自分には、ヨガでもなんでもいいので、なにかしらの運動をしていて欲しいです。

理想の女性像は?

ユーモアがありつつ、強くなさすぎず、らしさを失わない状態で、世間と渡りあえる人がかっこいいなと思いますね。

最後に、まだ叶っていない夢があったら教えてください。

少女漫画家になること。

いつ頃までに叶えたいですか?

80歳くらいまでに。そのくらいになったらできるかもしれないです。

撮影協力:WOODBERRY COFFEE 荻窪店
住所:東京都杉並区桃井1-2-2
TEL : 03-6454-7785
https://woodberrycoffee.com/
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