HIGHFLYERS/#52 Vol.4 | Apr 14, 2022

チャンスとは運と縁。全ては必然で何事も繋がっているから、やってきたこと全てに意味がある

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka / Web: Natsuyo Takahashi

演出家、潤間大仁さんのインタビュー最終回は、習慣にしていることや、影響を受けた映画など、パーソナルなことを中心にお伺いしました。今世界で起こっていることで気になることには、演出家視点のご意見をいただいています。また、HIGHFLYERSでいつもお聞きしているチャンスや成功については、時間をかけて真剣に答えてくださる姿がとても印象的でした。
PROFILE

演出家 潤間大仁

シンガポールやサウジアラビアなど、世界中で開催される日本の伝統花火とテクノロジーを融合したエンターテイメントショー「STAR ISLAND」の総合演出を務め、2019年のシンガポール開催では、500機のドローンと花火の競演を実現させ、50万人を熱狂させた。生のパフォーマンスとテクノロジーを融合した、没入感溢れるダイナミックなマルチメディア・エンターテイメントショーを得意とし、アーティストライブ、オリジナルショー、プロモーションイベントなど幅広く活躍している。2015年、「Precious SKY FASHION SHOW feat. GUCCI」は「第1回JACEイベントアワード 広告インパクト賞」を受賞。 2017年、「未来型花火エンターテインメントSTAR ISLAND」は、内閣府主催「クールジャパン・マッチングフォーラム2017 審査員特別賞」を受賞。2020年、500機のドローンを使用した夜空のスペクタルショー「CONTACT」は「第6回JACEイベントアワード 最優秀賞・経済産業大臣賞」を受賞。2021年、東京 2020 パラリンピック競技大会閉会式では、クリエイティブディレクターとして演出チームに参加。

リアルなイベントも、これからは社会問題への問いかけだけでなく、問題解決していくことや、その原動力になる場所になることが必要

普段から心がけている習慣があれば3つ教えてください。

色々な人に感謝をするということですね。人との繋がりや縁を大事にする、人に感謝する、とかっていうのは常に心がけてはいます。あとは、楽しいことが好きなので、無意識に楽しいことを探してるとは思いますね。もともと映画好きなので、 Netflix 、Hulu、アマゾンプライム等で、常に何かしらを観ているとは思います。「イカゲーム」も「愛の不時着」も、評判になるものはなんでも観ますよ。それから最近は、アートもいろいろ学んでいます。

アートとは具体的にどういうものですか?

一般的に今現代アートとかメディアアート、デジタルアートとかをよく目にするようになってきたと思うんですけど、僕が気になるのはアーティストよりも、アートが生まれるまでの歴史的な部分というか、西洋と日本の違いや流れ、文化的な部分などです。アートも人間の生活に紐づいているものなので、そのあたりを一回ちゃんと勉強してみようかと思っています。ちょっと違うアプローチで、作品作りもトライしてみたいと思ってます。

今まで影響を受けた音楽、映画、本などありますか?

小学校1、2年の頃、最初に映画館で観た映画が「 E.T.」で 、そこから「インディ・ジョーンズ」、「スター・ウォーズ」と、スピルバーグの映画は全て観てきました。いつか僕も宇宙人に会えるんじゃないかとか、いつか自分も冒険に出たいとか、作品を通して見える海外の文化に興味を持つことがたくさんあった気がしますね。小学校高学年の時は英会話教室に行っていたし、中学校1年生の時にサンフランシスコで2ヶ月間ぐらいサマーキャンプに参加したし、幼い頃からアメリカ文化にすごく影響を受けてきました。

実際に生のアメリカを体験してどうでした?

もちろん英語もできない中で、自分と同年代の子達といろんなコミュニケーションを取って遊ぶんですけど、当時は目に触れるもの全てが新しくかっこ良く見えていました。中1でサッカーをやってたので、当時は長髪が許されなかったのですが、アメリカに行ったら、ロン毛やモヒカンの子が同じ歳でいたりするわけです。すごいな、かっこいいなぁとか思ってましたね。

今、世界で起きていることで興味があることはなんですか?

今SNS文化が発達して、いろんな映画や音楽、カルチャーを比較的安易に見れるような状況にはなってきたんですけど、そこはオンラインばかりなので、リアルなイベントも同じようにリアルに国境とか人種・性別を超えるようなものがもっと求められるだろうなっていう気はしています。SDGsだとかいろんなことを社会課題みたいに言ってるけれど、 問いかけだけじゃなくて、どうやって解決していくかだとか、そのための原動力を得られるような場所を作るかっていうことが、これからのイベントには求められてくるのかなと。それから問題意識に対する日本と海外の温度差も気になります。そういうところも含めて、どういう風にイベントを通して感じてもらうのかは必要になってくるだろうなって思います。

では、潤間さんにとってチャンスとはなんですか?

運と縁ですね。基本的に全部必然っていうか、来たもの、起こっているものは受け入れてやるべきものだって思っているし、 決して自分だけで起こっていることではないので。当然温めていたアイデアであったりとか、新しいことがやれるチャンスという意味でのチャンスはあるんですけど、 「これはチャンスだからやろう」と思って仕事している時があんまりないですね。

これまでの人生を振り返って、あの時が一番のチャンスだと思う出来事は?

ないかもしれない。全部が繋がってるんで、これは意味がなかったって思うことがあんまりないですね。何から始まってるのか、何がきっかけになっているのかがわからないぐらい、今の職業への辿りつき方もそうですし、そういう意味では全部がチャンスですね。だから無駄な縁はないということですかね。

潤間さんにとって成功とはなんですか?

難しいですね。仕事的に言えば、仕事はクライアントの人と、それを観に来てくれた人が喜んでいること。あとそれに関わった人たちが楽しそうにしているっていうのが成功と感じられる部分ですね。個人的にだと、まだ達成されてないから、これから目指していくところなんですかね。それで言うと、自分にとっての成功は、何が成功なのかを探している状態かもしれない。部分、部分の成功はもちろんあると思うんですけど。

今潤間さんが「この人成功しているな」ってパッと思い浮かぶ人はいますか?

わからないです。何を以って幸せかとか成功とかって本当にわからないので、あんまりそういうふうに見ていないかもしれないです。何を以って成功って言えばいいか、人から見れば成功していると思われていても、成功してないって本人が思っていたら成功じゃないので、あんまり成功に対する感覚がないですね。

潤間さんが世界を変えられるとしたら、それはどんなことだと思いますか?

世界を変えられるかわからないですけど、僕は僕で今関わっている仕事の中でやりきって、僕が生きてる間にできないことは、その次の世代に繋がるような仕事の仕方はしたいなと思ってます。今いる時代の人たちだけで手を取り合うのも重要だと思うんですけど、3歩進んで2歩下がるじゃないですけど、そういうことを繰り返しながらちょっとずつ前に行こうとしてるのが人間だとしたら、何か大きいことを考えるよりは、今目の前の仕事だったり、自分の周りの人達と一緒に幸せを考えるというか、自分も含めてどうしたら楽しく仕事ができるんだろうとか、仕事を通して関わった人たちがみんな幸せになるんだろうかって考えていくことの積み重ねだと思ってます。

3、5、10年後のご自分はどうなっていると思いますか?

基本的には全く変わってない気がします。もしかしたら携わっている仕事や活動してるフィールドが大きく広がるかもしれないですけど、個人的には多分同じように悩んで、同じようなことを言ってる気はします。

まだ叶っていない夢があったら教えてください。

STAR ISLANDで言うと、シンガポールとサウジアラビアで開催できたんですけれども、 世界ツアーはしたいなあと思いますね。またそれを追従するように、日本生まれのいろんなイベントを作って、海外のいろんな所でやりたいですね。アメリカのラスベガスとか、サンフランシスコやニューヨークみたいなベイエリアでもやりたいし、他もヨーロッパとか、カナダのモントリオールとかもいいですね。やりたい所がいっぱいあります。

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