HIGHFLYERS/#32 Vol.4 | Dec 13, 2018

出雲大社に奉納した日に海外移住を決心。地に足をつけて、自分の感動してきたことを世界中の人々に伝えていきたい

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka / Cover Design: Kenzi Gong

書道家・武田双雲さんインタビュー最終回は、最近大きな転換期を迎えたという武田さんの近況とこれからのことについて、そしてチャンスと成功についてを伺いました。まもなく、海外に移住することが決まっている武田さんは、これまで約20年続いた書道教室を辞めることを決意しました。そして、今までの活動を世界に広げていくために新しい環境へ飛び込んでいきます。いつも大きな波に乗ってチャンスや成功を掴んでいく武田さんが思うチャンスや成功とはどういうものなのでしょうか。これから叶えたい夢と共に伺いました。
PROFILE

書道家武田双雲

1975年熊本生まれ。東京理科大学卒業後、NTTに就職。 約3年後に書道家として独立。NHK大河ドラマ「天地人」や世界遺産「平泉」 など数々の題字を手掛ける。 独自の世界観で、全国で個展や講演活動を行っている。メディア出演も多数。 文化庁から2013年度文化交流使に任命され、ベトナム~インドネシアにて活動、2015年にはカリフォルニア州オーハイにて個展を開催。『書を書く愉しみ』(光文社新書)『ポジティブの教科書』(主婦の友社)(30万部突破)『のびのび生きるヒント』(青春出版社)など、著書も多数出版。武田双雲オフィシャルウエブサイト

最高の環境を手放し、大好きな仲間と離れることはとても辛い。自分の意思とは無関係に、大いなる流れに乗って流されている感覚

これまでを振り返って、武田さんの人生で一番の大きな転機はいつでしたか?

もちろんNTTを辞めた時でしょうね。

そこから独立して書道家になって今年で18年目を迎えたわけですが、書道家としての転機はいつですか?今までのお話を伺うと、武田さんのことをもはや書道家と言っていいのかわからないですけど(笑)。

今年は絵描きになっちゃってるし、俺もわからなくなってるんですけどね (笑)。実は、今年がもの凄い転換期なんですよ。僕、もうすぐアメリカに移住するんです。

ええ!今年移住するんですか?

いや、教室があるんでもう少し先ですけど、海外に行くたびに好奇心が出てきちゃって、いろんな国で活動したいっていう気持ちがごまかせなくなってきちゃったんです。僕は、自分の感動してきたことを世界中に、人類規模で伝えたい気持ちがあるんですよ。

書道教室はどうされるんですか?

去年、書道教室を辞める宣言をしたんです。今まで生徒さん達とも凄くいい関係を築いてきたし、みんないつも笑顔で問題は起きないし、書家として独立した人達もたくさんいるし、尊敬できる最高の生徒さん達に囲まれてきました。満席状態が10年続いてある意味収入も安定していますし、最高な状態なものを辞めなきゃいけないってなかなか辛いものです。でも、書道教室があると海外に長期間は行けないから、今まで地に足をつけて自分個人の活動ができなかったんです。

移住を決めたのには、何かきっかけがあったんですか?

出雲大社からオファーがきて、書を奉納した日に決めました。その日は妻の誕生日だったんですけど、夜に妻を起こして、「今、大事なことを決めちゃったんだけど」って僕が言って、「何?」って聞くから、「書道教室辞めるんだ」って言いました。僕は本気だったけど、妻は、「馬鹿じゃない」って寝ちゃって。それで師匠でもある母ちゃんに電話して、「書道教室辞めることになった」って言ったら、「は?」って。でも母親は直感でわかったみたいで、「覚悟は決まってるね」って言われました。さすが息子のことだからわかるんでしょうね。

出雲大社に奉納した時

書道教室の生徒さんたちの反応はいかがでしたか?

生徒さんにまず伝えたら、みんなボロボロ泣いちゃって、僕ももうボロボロですよ。なんでこんな悲しい想いをしてまで辞めるんだとも思いました。すごい不思議な体験じゃないですか。大好きな書道教室を辞めなければいけない理由はないし、辞めてまで世界で活動したいかと言ったらそういう訳でもなくて、言葉にするのは難しいんですけど、導かれてる感覚って言うんですかね。大いなる波に乗っちゃった感じなんですよ、俺の意思じゃないから。あの時出雲大社で感じたのは、個人の意思ではなくて、「これから大いなる流れに乗って流されていきます」みたいな感覚だったんですよ。

自分に降ってきたような感じですか?

カッコよく聞こえるけど、決めちゃったというか、突然腹が座ったんです。モヤモヤしていた霧がパッと晴れて、辞めることを決心できました。すると、それからすぐにアメリカの家が決まりました。たまたま運良く税理士さんからそろそろ不動産とかもいい物件があったら購入を考えてみたらいいんじゃないですかって言われていたみたいで、珍しくうちの経理担当の妻が行こうって。それで今年くらいから僕は突然色に目覚めて絵を描き始めたらさらに自由になっていって、書道家・武田双雲からさらに新しい方向に羽ばたいている感じです。

そういう波に乗るのは、日頃から何か心がけが重要なんですか?

そうですね。仕事とかプライベートとかを分けずに、全てのものにどれだけ丁寧に触れられているかをゲームするというか、普通に関わればいいものに対してでも、ちょっとチュッとしてみたり、感覚的にイチャイチャするんですよ。新婚とか付き合いたてのカップルの感覚で、森羅万象と触れるんです。僕はそれを「感謝所作」って呼んでいますが、偏見無しに愛おしいっていう感覚で触れて、それをずっと広げていくんです。やっぱり人間だから不安だったりネガティブになったりするし、僕も気が小さいしビビりだし、絶対危ないことはしたくないタイプだし、痛い思いも危険なことも、喧嘩もしたくない。平和主義なので、穏やかでハッピーな世界で楽しく生きていきたいんです。そのために、 愛おしい気持ちで全ての人や物に対して、判断せずに丁寧に接するんですよ。

感謝所作と言うのですね。

もともと書道ではそれができてるんです。書を書いてる時はすごい愛おしい気持ちになるし、半紙も大好きですし。それを日常生活にもやってみたら、家族との関係も良くなるし、いいことばかりが広がっていくんですよ。要は、いい感じで生活を生きるんです。例えば小さい頃から雨が嫌いだった人が、雨を愛おしんでみると雨が好きになるんですね。雨の音とか匂いとか、雨の感覚が好きになると、雨が降ると嬉しいことが重なったりする。あと、それまで頭痛持ちだった人の頭痛が治ったりもします。また、ネガティブになるようなニュースなどの情報を減らして、自分が感謝所作を実践することを心がけていると、ネガティブな人とは縁がなくなっていくんです。

とても興味深いです。では、武田さんにとってチャンスとはどういうことだと思いますか?

僕にとってチャンスは全てです。全部がチャンスで奇跡で、チャンスは常に来ているというか。例えば水差しがここにあるのもチャンス。だって偶然であるわけじゃないですか。たまたま地球ができて文明ができて、誰か職人がこれを作って、誰かが色や素材を持ってきたり、あらゆる人やものの集合となったりして、常に出逢っていて、チャンスだらけの世界って感覚ですかね。全てに内在しているという感覚。

それでは、武田さんにとって成功とはなんですか?

僕はずっと成功している気がします。今、空気があるのは、たまたま生命が生まれる水と空気と、炭素と水素のバランスがあって、自分もたまたま生き、命がここまで繋がれてきて。今生きててこうして話してるだけで奇跡が起きてるんだって。既に成功している感覚ですね。

気持ちがいいくらい明確ですね。もしも若者で武田さんのようになりたいという人がいたらなんとアドバイスしますか?

僕のようになりたいと思ってもいいんだけど、僕には絶対なれないから。顔がまず違うし、訛りも違うし、全部違うよね。書道のお手本みたいに、参考程度ならいいかもしれないけど、せっかく生まれ持った細胞と遺伝子の固まりなのだから、その人にしかない個性をフルに活用して欲しい。

武田さんが書に出逢ったように、何かに出逢うにはどうしたらいいんですかね?

何かに出逢うっていうか、全てが出逢いなんで。みなさんが着てる洋服も、ご両親も、自分の細胞もそうだし、物も住む場所も全て出逢ってるんですよね。今の時代にも出逢ってるし、地球にも。今僕らが住んでる宇宙なんてほんの泡の一部でしかないことがだんだんわかってきているんで、本当に奇跡の出逢いばかりなんです。まずは何かに出逢う前にもう既に出逢いまくっている無限のものと仲良くダンスをするというか、気持ちよく共鳴していくことが大事かなと思います。

最後にまだ叶ってない夢があったら教えてください。

僕は毎年6月9日に「世界感謝デー」というのをやっているんですけど、世界中が同時に感謝しまくったらどうなるかっていうのを実験したいんですよ。クリスマスみたいなものを世界各国で同時にやりたくて。

今年の世界感謝デーの様子

なんで6月9日ですか?

最初は2月だったんですけど、中国人は旧正月で忙しいし、6月が世界中で一番暇な時期って言われてるから。それで6月6日がいいと思ったんだけど、アメリカ人からその日はオーメンの日だって言われて、じゃあ俺の誕生日が6と9だし、陰と陽でいいんじゃないかって。まあいつでもいいんですけどね(笑)。とにかくその日は戦争とか事件とかあるかもしれないけど、お互い感謝して「ありがとう」を言いまくって、とにかく感謝所作をしてみたら、人類の未来は大きく変わっていくような気がしているんです。やり始めてもう7、8年なんですけど、このムーブメントを世界中に広げていきたいなと思ってます。

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