32 Vol.1 | Nov 1, 2018

「楽」を人生の一文字にしたことで自分に軸ができた。何と言われようが、仕事は緊張より楽を選ぶし、真面目より楽しいを選ぶ

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka / Cover Design: Kenzi Gong

今回HIGHFLYERSに登場するのは、書道家の武田双雲さん。伝統文化としての書道の枠を飛び越え、NHK大河ドラマ「天地人」の題字や、明治神宮前駅の「希望」というタイトルのパブリックアートなど数々の代表作を創り出すほか、さまざまな企業やアーティストとコラボレーションし、作品を提供しています。また、国内外で個展を開催するほか、「ポジティブの教科書(主婦の友社)」や「人生に幸せ連鎖が起こる! ネガポジ 変換ノート(SBクリエイティブ)」など、自己啓発的な書籍を50冊以上出版し、作家としても活躍されています。ユニークな創作活動や考え方が常に注目される武田さんは、大学卒業後NTT東日本に営業マンとして2年半勤務し、その後書道家として独立し今年で18年目を迎えました。様々な経験を経て、今の境地に至った武田さんの、幼い頃のことから今までの遍歴、そして未来の活動予定などを4回にわたってお届けします。第一回目は、武田さんが大切にしている一文字「楽」について。楽(らく)や、楽しいとはどういうことか、そして、今武田さんが行なっている創作活動について、また、今興味のあることなどを伺いました。インタビュー中、常に笑いが絶えなく明るい雰囲気だったのは、18年間に培った武田さんの日頃のトレーニングに秘密があったのかもしれません。科学的に心の状態を分析して研究することで様々なジャンルの専門家と対話を繰り返すなど、書道家という言葉では語りきれない武田さんの活動についてもお聞きしました。
PROFILE

書道家武田双雲

1975年熊本生まれ。東京理科大学卒業後、NTTに就職。 約3年後に書道家として独立。NHK大河ドラマ「天地人」や世界遺産「平泉」 など数々の題字を手掛ける。 独自の世界観で、全国で個展や講演活動を行っている。メディア出演も多数。 文化庁から2013年度文化交流使に任命され、ベトナム~インドネシアにて活動、2015年にはカリフォルニア州オーハイにて個展を開催。『書を書く愉しみ』(光文社新書)『ポジティブの教科書』(主婦の友社)(30万部突破)『のびのび生きるヒント』(青春出版社)など、著書も多数出版。武田双雲オフィシャルウエブサイト

CONTENTS

心を整えるとはどういうことかを科学的にも研究中。引き寄せの法則はそのまま自分の人生に当てはまる

武田さんの書は、「楽」という文字がとても印象的です。

「楽」は、僕の人生の一文字です。もともと、ふわふわしていてあまりこだわりがないタイプだったんで、独立した時に一つくらい軸になる文字を決めようと思ったんです。この一文字を心に決めたことが僕の大きな転機でした。「楽」とは、考え方とか思想ではなくて、楽しい心の状態ってことなんですけど、簡単に言うと「楽(らく)」と「楽しい」だけを守って生きようと決めたんですね。18年が経った今、原点回帰しています。

「楽」とご自分で決めたらしっくりきたんですか?

そうなんですよ、相性が良かったんですかね。例えば歯磨きする時でも、歩いている時でも、妻と話してる時でも、ちゃんと楽しんでいたり、リラックスしたりしてるか、相手の機嫌を伺っていないかをチェックします。仕事も緊張よりは楽を選ぶし、真面目よりは楽しいを選ぶ。別に他を否定するわけじゃなくて、誰に不謹慎と言われようが、苦しいことは選ばないって自分で決めちゃったものだから。

それは慣れるとできるものなんですかね。

慣れですよ。自分の家族や仕事、友達を苦しませてないか、楽しませられているかを常に頭の中で考えています。でも自分が疲れたら意味ないし、気を使って楽しませようとしてたらこっちは無理していることになるしね。

そう考えたら難しいですね。

実は難しいでしょ。自分が苦しみながら人を楽しませてもダメだし、逆に自分だけ楽しんでいてもダメだし。自分だけならできても、他人はコントロールできない。だから、上機嫌って実はすごい深いんですよ。僕はそれをずっと研究していて、50冊以上本を出版しましたけど、それはある意味自分の修行でもあるんです。

テレビなどで拝見するよりも、実際の武田さんは目がキラキラしていますね。

多分18年間頑張ったからですね(笑)。頑張ったっていうより楽しんできたから。

武田さんのアトリエには、書ではなくて、絵がたくさんあってびっくりしました。

これらは一応書なんですよ。僕は絵が描けないです。書の文脈で西洋の画材、油、水彩、アクリルを使って、今は墨汁とアクリルを混ぜたもので描くのにハマってるんです。描き始めたのは今年からですね。

今年からとは、何かきっかけがあったんですか。

書はストイックな世界だったので、ちょっと浮気心で、一回くらいやってみようかなって、油絵セットを買ったら黒以外の色もいいなって楽しくなって、ハマっちゃって。初めてメイクして口紅つけて喜んでる女子の感覚ってこんな感じだと思う(笑)。

絵を描く時と書を描く時って、頭の中は違うんですか?

違います。書は、小さい頃から母親に教わってきた技術があるからコントロールできる世界なんです。その何十年かけて積み上げたコントロールする世界を破壊していくのが書道アート。つまり書はコントロールからはみ出すために、あえて自分から冒険しに行かなければならないんだけど、絵に関しては、2歳児が初めて水たまりをびちゃびちゃしてるような、技術も何もない初体験で、ただ楽しくてしょうがないんです。初めてのおもちゃをいじっている感じですね。

こちらでは書道教室も開かれていらっしゃいますが、ここに通っている生徒さんは今何人くらいいらっしゃるんですか?

300人くらいです。年齢層は40代が一番多くて、小学生から80代までいらっしゃいますね。教室は週4日(9コマ)で、最終週だけはお弟子さんが教えてます。

生徒さんはどういう目的で学ばれている人が多いのですか?武田さんの書道教室に来る生徒さんは字が上手くなりたいことだけが目的じゃない気がしますが。

まぁ楽しみたいっていうのが一番じゃないですかね。もちろん上手くなりたいんでしょうけど、みんなこの雰囲気を楽しんでいて、常に笑いが絶えない教室です。本当にワイワイお茶飲みながらって感じで。

書道教室の模様

書道には流派があるんですか?

書道会ごとに段と級がそれぞれにあるから、それを流派と言うならそうかもしれないですね。

書道教室にこんなに絵がいっぱいあったら、習いにきたお子さんがびっくりしませんか?

全然しないですね。だって僕の趣味ですけど、ここにギターもあるし。

武田さんに憧れて書道家になった人はいませんか?

いっぱいいますよ。

私も小さい頃から書道教室に通っていましたけど、書道教室を通して書道家になるっていう発想は昔はなかったですよね。

僕もないですよ。そもそも自分が書道家だっていう意識もないです。自分の中でジャンルという発想が存在しないので、よくよく考えると、「武田双雲って書道家なんだ」っていう感じですね。活動に関しては、型破りというより、型がないタイプなんですよ、ボーダーレスっていうか。自分が何者かを決めない方が楽ですね。

書の作品を拝見すれば書家だと思いますが、明治神宮前駅に展示してある作品を見ると画家のようにも感じますし、武田さんがご自身のブログの言葉を拝読すればお寺の住職のような気もしてきます。

明治神宮前駅の作品は、希望という字を崩して書いたものです。画数は本来の「希望」に絶対に合わせるのが鉄則ですけどね。住職と言えば、僕、お坊さんとの対談も多いですよ。

明治神宮前駅に展示されている作品「希望」

ところで、最近は昔よりテレビでお見かけしなくなったなと思っていました。

合っていると思います。俺がコントロールしているわけではないのですが、テレビの出演依頼が多い時期とか、講演会が多い時期とか、海外が多い時期とか色々あるんですよ。事務所の人たちは、「その時先生が興味があるものが引き寄せられてくる」って言いますね。例えば、“上機嫌”とういことに対して凄く興味があったら、「上機嫌についての本を書きませんか?」ってオファーが来るんですよ。

それは凄いですね。

僕、運がいいんです。無理やり何か動かなくても、自然とそうなっていくんです。例えると、サーフィンで波待ちしてないのに、なんだろうってとりあえず乗ったら、気持ちよくてどこまでも乗れちゃったっていう感覚。見えないところにコーチがいて、ポンていつも背中を押してくれて、乗ってみたら凄くいい波で、「ありがとうございまーす!」みたいな感覚ですかね。

それはいつ頃からですか?

特に25歳で独立してからですね。そこからどんどん開花している感じで、いま18年経って、ますます日ごとに楽になっていくというか。自分に興味があることがお仕事に繋がっていくんですよ。

今は何に興味があるんですか?

今はアートですね。そしたら海外から個展のオファーが来た(笑)。よく言う“引き寄せの法則“がそのまんま当てはまるタイプですね。アメリカの引き寄せ本の翻訳を読んだ時に、「あ、説明してくれてる、俺の人生」って思いましたよね。

武田さんの書がそういったことを引き寄せるんですかね。

いや、書は単なる象徴だから。僕らが思ってることの感覚が共有して振動してるんですけど、その振動に合わせて粒子ができるんです。その粒子がたまたま集まってきて、振動数に見合った物質に変わっていくんですよね。それが量子力学の最先端なんですけど、それらがいわゆる引き寄せになる。

そういえば、武田さんは科学もお好きなんですよね。

もともと僕、宇宙が好きで、科学が大好きなんですよ。それで、科学者の会っていうのを僕が開いて、脳科学者の茂木(健一郎)さんや、日本内分泌学会理事長で慶應義塾大学医学部の伊藤裕教授、物理学者で東京理科大学の山本(貴博)准教授とか、いろんな科学者と対話を繰り返してます。最近、自分が小さい頃から興味を持っていた宇宙のことと、楽しいとか楽っていうことが、非常に結びついてきていますね。

科学者の会にて

科学と楽しいや楽も結びつくんですね。

つまり、楽しい波動でいると、ちゃんと僕を楽しませてくれる人が来るし、楽に興味を持つと、僕を楽させてくれる人が来る。僕によって楽になってくれる人も来ますよ。つまり、以心伝心という世界は、今や科学で証明できるわけです。

そういうことを通して、武田さんが伝えたいことは何ですか?

僕は今、「心を整える」とはどういうことかに凄く感心があって、それを伝えたいと思っています。どんな考え方をするかということよりも、どういう心の状態かっていう方が大事なんですよ。だから簡単に言うと、機嫌がいいっていうのは本当の意味で凄く大事なことですし、仏教、キリスト教やイスラム教などの宗教を作ることにも繋がるんです。それを例えばスポーツで学ぶ人もいるだろうし、千利休だったらお茶を通して悟ったわけで、全て基本的には心を整えるってことですよね。

なるほど。武田さん、書道家としての範疇をとうに超えていますね(笑)。

そうですよ。書は僕を表現してくれて、いろいろなことを気づかせてくれる大切な道具です。つまり、僕の心の状態っていうものが、どうなっているかの研究が今とても面白いんです。

次回へ続く

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SOUUN TAKEDA ART CALLIGRAPHY EXHIBITION
「武田双雲展『楽』」

  • 日時:2018年11月10日(土)~11月25日(日) ※初日は14:00開館
  • 開催時間: AM11:00~PM6:00 (月・火曜日定休)
  • 場所:アートサロン和錆(わさび) 名古屋店
  • 住所:〒461-0002 愛知県名古屋市東区代官町19-21
  • 電話番号:TEL:052-932-2125
  • 入館無料
  • 詳細はHPにて。
    http://www.wasabi-artsalon.jp/souuntakeda2018

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