HIGHFLYERS/#18 Vol.4 | Aug 18, 2016

今は国境なき医師団の活動を伝えることが使命。夢は、より良い社会を日本語で発し、世界に届ける

作家/クリエイターのいとうせいこうさんインタビュー。最終回となる4回目は、いとうさんの考える成功について。ブレずに同じことを長く続けていくことや、他人を含めて好循環を起していくことの大切さ、そしてまだ叶っていない夢のお話を伺っています。また、今進行中のプロジェクト、「国境なき医師団」の取材についてもお話してくださいました。
PROFILE

作家/クリエイターいとうせいこう

1961年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。 編集者を経て、作家、クリエーターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。 音楽活動においては日本にヒップホップカルチャーを広く知らしめ、日本語ラップの先駆者の一人である。 アルバム『建設的』(1986年)にてCDデビュー。 その後『MESS/AGE』(1989年)、アルバム『OLEDESM』(1992年)、『カザアナ』(2008年)などをリリース。 また他アーティストへの作詞提供曲として、やや『夜霧のハウスマヌカン』、大竹まこと『俺の背中に火をつけろ!』、ももいろクローバーZ『5 The POWER』など多数。 近年ではロロロへの加入や、レキシでの活動、DUBFORCEへの加入などがある。 著書に小説『ノーライフキング』エッセイ集『ボタニカル・ライフ』(第15回講談社エッセイ賞受賞)『想像ラジオ』(第35回野間文芸新人賞受賞)『存在しない小説』『鼻に挟み撃ち 他三編』『我々の恋愛』など。 執筆活動を続ける一方で、宮沢章夫、竹中直人、シティボーイズらと数多くの舞台をこなす。 みうらじゅんとは共作『見仏記』で新たな仏像の鑑賞を発信し、武道館を超満員にするほどの大人気イベント『ザ・スライドショー』をプロデュースする。 テレビのレギュラー出演に「ビットワールド」(Eテレ)「オトナの!」(TBS)「せいこうの歴史再考」(BS12)「フリースタイルダンジョン」(テレビ朝日)などがある。 「したまちコメディ映画祭in台東」では総合プロデューサーを務め、浅草、上野を拠点に今年で9回目を迎える。

利他的最高。自分と他人のために好循環を起していれば人生大丈夫

現在進行中のプロジェクトや書き途中の小説はありますか?

しばらくはノンフィクションをやろうって、マネージャーに無理言って今年は3回国境なき医師団のキャンプに行く予定でスケジュールを空けてもらってます。3月にハイチに行って、色んな病院や医療が行き届いていないところ、お金のために動いてない医者や看護婦、現地スタッフなど素晴らしい人達に会ってきて、猛烈に皆に伝える使命があるって勝手に感じているのですが、少なくとも2年間は行きたいと思っています。

今、ノンフィクションを書くときが来たんですね。それは、自分から求めて始まったものですか?

これも面白くて、僕が国境なき医師団にずっと寄付してきたのを医師団の人に取材されたのがきっかけなんですよ。その時に、国境なき医師団の活動内容を僕も周りの人もよく知らないことを話したら、彼らは多くの人に活動を知ってもらうにはどうしたらいいか悩んでいるって言う。だから、「僕が行って書くっていうのはどうですかね?」って途端に思いついて言ったら、「え、いいんですか?」ってなって、もちろん僕は書きたいから、そこからトントン拍子に始まっちゃったの。YAHOO!JAPANが、専門家じゃないと持てない“YAHOO!JAPAN個人”っていうページを僕に持たせてくれて、YAHOO!の中で評価される記事は9カ国語に自動的に訳されることがあるのを聞いて俄然やる気になってます。

今のいとうさんにとって、国境なき医師団の取材でノンフィクションを書き続けることがライフワークの中で大きなミッションとなっているのですね。

そう、これが今の僕の一番大きい仕事ですね。広報の人と一緒に現地に行って、国境なき医師団に参加している菊地紘子さんっていう日本人女性に会って長いインタビューをしたんですけど、先日彼女から、僕のその記事を翻訳アプリで各国の言葉に直して皆が読んでるっていうメールが来て、フランス人のあいつも、スイス人のあの子も読んでるって思ったらもう涙が出るほど感動して、さらにやる気満々になっちゃってさ。だから、もうすでに目標を達しちゃったんですよ。

まだ叶ってない夢はありますか?

僕が書いたものが全世界で読まれてほしいですね。トルコならオルハン・パムク、アメリカならジョン・アーヴィングやスティーヴ・エリクソン、フランスならミシェル・ウエルベック、そういう作家達が僕の小説を読んで褒めてくれたらもう死んでもいいくらい幸せですね。日本では、学生の頃から素晴らしいと思っていた柄谷行人さんが自分の小説を褒めてくれてたり、大江健三郎さんからも「想像ラジオ」に関して長い手紙を頂いたりしたので、もう夢が叶ってるじゃないかって思うし、実際に何か利益があるわけでもなんでもないけど幸せですよね。だけど僕、やっぱりこれで死ぬのは嫌です。たまたま死んじゃうならいいけど、まだ届けたい人はいるし、とにかく言語の違う人達に早く読んでほしいですね。

いとうさんにとって成功とは何ですか?

自分が思いついたことが出来るようになることです。見返りがあるかどうかは全く考えずブレずにやっていくと、不思議なことですがやっぱり人生の後半来るんですよね。例えば国境なき医師団のことを伝えたいという思いを、お金は関係なくブレずにやっていると、思いもしなかったのに、僕の書いたものが世界で読まれるきっかけになるわけじゃないですか。違う目標で進んでいたら全部がそこに入り込んできちゃう。人は成功を身近なところで求めようとすると悪循環の回転しか起きないけれど、周りのためも含めてものすごい好循環を起こしてる人間には良いことしか起きないって思ってるの。良いことがあれば悪いこともあって死ぬ時はトントンだって良く言われるけど、僕はあまりそう思ってない。ブレずに同じようなテンポでじーっとやっていくってことが大事で、それがそのまま成功なんですよ。誰かがTwitterで書いてたけど、だいたい名人になる人は一日に2時間とか3時間必死にそれをやることを10年、20年続けてるんだって。突然名人になれるわけじゃないけど、好きだからそれが苦じゃないんだよね。良く好きなことが見つからないっていう人いるけど、ちょっとでもかけらがあったら無理に好きになってみたらいいよ。例えば蚕にしても、最初は何だろうと思ったけど、種をもらって育ててみたら、好きになるきっかけが出てくるわけじゃないですか。そしたら楽しいじゃん、毎日。

今まで見た中で印象に残る映画や本、ライブなどはありますか?

今まで見たライブの中で一番凄かったのは人形劇を使ったベックのライブ。僕、人形劇が好きなんですよね。ベック達が演奏してる後ろに人形劇の額縁があって、そこで同じ衣装を着た人形達がずっと演奏しているんだけど、後半その人形達が額から出てきてベックの肩に乗りながら演奏するの。ライブが終わってアンコールまでの間、スクリーンに楽屋が写るんだけど、そこで人形達が「うふふー」ってベック達の汗を拭いてて、その後が毎回違うんだけど、ある時は隣の楽屋にレディオヘッドがいるっていう設定でそこに乱入したり、またある時は東京タワーをぶち壊したりして、大暴れした後に廊下に出て歩いてくると人形達がベック達本人になって出てくるんだよね。何がファンタジーで何がリアルかが分からなくなっちゃうわけよ。皆が最先端のかっこいいCGを使う今の時代に、最も古いバーチャルを使うベックのセンス。人間はアナログで簡単にマジックを起こせるんですよね。俺もああいうファンタスティックなことをやりたいんだよ。

成功者と聞いて思い浮かぶ人はいますか?

成功者って人生も良くないといけないみたいに思われがちだけど、例えばフランツ・カフカは、今、彼の作品が世界でこんなに読まれていると思ってもいませんからね。自分で書いた物を全部焼いてくれと親友のマックス・ブロートに渡したのに、彼は焼かずに出版しちゃったんですから。そしたら全世界がカフカに影響されて、未だに我々はカフカの下にいる。でも、カフカは現世では貧乏だったし、全く成功してないし、誰にも評価されなかった。じゃあカフカは本当に成功者ではないのかって考えると、やっぱり誰よりも成功してると思うんだよね。だから成功を本人が味わうか、味わないかなんてことは小さいことだと思うんです。僕ももちろん成功したいですけど、100年後のことを考えてるから現世の成功にこだわることはないです。

いとうさんの弟子になりたいって言ってくる人はたくさんいらっしゃいそうですね。

来るけど絶対無理だもんね。僕が興味あることを全部興味ある人っていないもん。蚕飼ってるかって言ったら飼ってないよね(笑)、好きじゃないもん。だから僕の弟子になるのは無理なんです。それに、僕の弟子は僕の弟子になるような人間じゃないですよ。人に付こうとするような人間は僕じゃないから。

そうですね(笑)。もしなりたい人がいたらなんとアドバイスしますか?

「Going Your Own Way. 最終的に君の作品が僕に届く」って言うしかない。僕の周りには、あいつのお笑いがいいなとか、この人の作品素晴らしいなとか、次はどういう映画を撮るんだろうとか、どういうアルバムを創るんだろうとか思う人がたくさんいるんですよ。彼らは僕より年下だし、僕がバトンを渡していくんだもん。そういう気持ちですよね。

インタビューを通して、いとうさんはとても利他的な方だと強く感じました。若い頃からそうなのですか?

僕は利他的が最高なんですよ。きっと若い頃からそうなんでしょうね。利己的な喜びなんて本当に小さなものだし、そんなつまらないものはないよね。ボブ・マーリーは、選挙前に政党2つを仲良くさせようとして銃撃されたのに、翌日皆の前に出てきちゃうんだよ。それって確実に打たれて死ぬもん。そういう凄い人達をいっぱい見て育ってるから、かっこいいと思った人の前で恥ずかしいことは出来ないなっていう気持ちですかね。

それでは最後に、未来のより良い社会を考えた時、どんな社会を思い浮かべますか?そしてそれを実現するためにはどうしたらいいと思いますか?

今の日本は凄く閉じてしまって、市民の声があまりちゃんと上まで届かないような社会になっちゃった。もの凄く憂慮してます。やっぱりきちんと意見が言える世の中でないとおかしいし、男女参画と言いながら日本は全然逆になっちゃってるから良くない。ハイチ出身のエドウィージ・ダンティカや、コロンビアのガルシア・マルケス、チェコのミラン・クンデラなどの素晴らしい作家達は、皆亡命しているんですよ。彼らは亡命した国で、その国の言葉や自分の母語を活かして世界や祖国に向けて小説を書くんですが、それが作家の使命だってよく分かったの。僕もそれでいいんだなって。一時の売上げだけで世界は全く評価しないし、そんな小説は100年後残らない。だからこの国を追われるようなことがあっても、作家にとってそれは世界標準だし、意地があるから僕はものを言い続ける。より良い社会であるために、出来れば僕らしく日本語で発していきたいと思ってます。

取材協力:Black Terrace
〒153-0042
東京都目黒区青葉台3-1-12青葉台イーストビル4F
03-6416-3894
http://www.black-terrace.com/
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いとうせいこう
「いとうせいこうフェス」
〜デビューアルバム『建設的』30周年祝賀会〜

祝! いとうせいこうデビュー30周年!
レジェンド的名盤『建設的』から30年を祝し、いとうせいこうと彼を取り巻く多彩すぎるジャンルのアーティストが集結する、音と笑いの2晩限りのお祭り騒ぎ!
『再建設的』収録曲熱演もあれば、「せいこう秘蔵ネタ」のひな壇トークも!
2日間=合計約9時間のノンストップ音楽バラエティショー!
来たれ若者と元若者! 伝説を目撃せよ! 踊れ! 笑え! 騒げ!

詳しくは特設サイトへ!
http://seikofes.jp
2016年9月30日[金]開場17:30 開演18:30 10月1日[土]開場15:30 開演16:30
会場:東京体育館[千駄ヶ谷]
来場者特典としてみうらじゅん考案の”引出物”付き

チケット先行受付
▪cubit club最速先行 http://www.cubeinc.co.jp
各1日券:10,000円
2日間通し券:18,000円(cubit club限定)
2日間通し券+いとうせいこうトリビュートアルバム『再建設的』セット販売:20,000円(cubit club限定/6月29日[水]昼12時までの受付)
* 全席指定/税込価格

プレイガイド先行
▪チケットぴあ http://t.pia.jp/
▪ローソンチケット http://l-tike.com/
▪e+ http://eplus.jp/
▪楽天チケット http://ticket.rakuten.co.jp/
各1日券:10,000円 *全席指定/税込価格

一般発売日:8月7日[日]
お問合せ:ディスクガレージ 050-5533-0888
企画・制作:キューブ

いとうせいこうトリビュートアルバム
『再建設的』発売決定!
いとうせいこう、大竹まことwithきたろう&斉木しげる、岡村靖幸、ゴンチチ、サイプレス上野とロベルト吉野、スチャダラパー、須永辰緒、高橋幸宏、田口トモロヲ、竹中直人&Sandii、真心ブラザーズ、ヤン富田、ユースケ・サンタマリアwith KERA&犬山イヌコ、RHYMESTER他多数参加! 詳細を刮目して待て!

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