HIGHFLYERS/#33 Vol.4 | Feb 21, 2019

人が気付かないことに気付いてるかどうかがチャンス。自分の成功を成功と決めつけなければ、成功は底なしにやってくる

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka / Cover Design: Kenzi Gong

KenKenさんインタビュー、最終回はチャンスと成功についてを伺いました。そして、楽器は人間性とリンクしていることや、KenKenさんがベースを弾く理由も教えていただきました。さらに、プロを目指している人へのアドバイスをお願いすると、今まで独学で極めてきたKenKenさんならではの回答が返ってきました。そんなKenKenさんの考えるチャンスや成功とはどのようなものなのでしょうか。最近は世界への扉が開かれたことを強く感じているKenKenさんが、これから叶えようとしている夢についても伺いました。
PROFILE

ベーシスト KenKen

カリスマ的な存在感と抜群のベースプレイ、音楽と向き合う姿勢が様々なアーティストに愛され、多くのミュージシャンからラブコールを受け続け音楽シーンで多岐にわたる活動を行う現代のベースヒーロー。ロックバンド・RIZEやDragon Ash、ムッシュかまやつ&山岸竜之介とのLIFES IS GROOVE、the dayなどのベーシストとして活躍する。8歳のときから本格的にベースを始め、数多くのバンドやサポートを行い、10代で2枚のソロアルバムをリリース。 スターリンからジャニーズまでジャンルや世代をまたぎ30をも超えるバンドに参加し、常に新しい自分を発見するチャレンジスピリットや、手が小さくても演奏できる様にとミニベースをリリース。プレイ動画を合わせた教則アプリなどの開発にも参加し、次世代のミュージシャンへ向けた活動も行なっている。 ゲーマーとしても才能を発揮し、兄 金子ノブアキと共にファミ通で7年もの間にわたりコラム連載を行った。 また、「下北沢南口商店街振興組合渉外事業部アイコンアーティスト」に就任し、地元”下北沢”の地域振興にも積極的に参加している。 他、東京都障害者スポーツ啓発プロジェクトなどを始めとし、CMや映画、アニメ、ゲームなど数々の音楽プロデュースやラジオ生放送番組のナビゲーターをレギュラーで務めるなど演奏家以外の活躍など新しい挑戦を常に続けている。

ベースは優しさの楽器。人の気持ちを考えてプレイする、攻めだけじゃないところがこの楽器の魅力だと思う

KenKenさんにとってベースの一番の魅力はなんですか?

ベースは優しさの楽器だと思う。全体を見なきゃいけない役割の楽器なんで、人が嫌な気持ちになる前に何かを直してあげるような、人の気持ちを考えてプレイするところが魅力なんじゃないですかね。攻めだけじゃないところがこの楽器を好きな理由なのかもしれない。

KenKenさんの人間性そのままですね。

リンクしてるんでしょうね。楽器は全部カッコいいけど、その中でもベースが一番カッコいいと思ってる(笑)。魅力って、何も知識がない人が見た時にすごいと思うかどうかだと思うんです。それってテクニックじゃないんですよね。人から出てるものだったり、バイブスというものなのかもしれないけど、そこで勝負できるかどうかなのかなとはいつも思ってます。

では、ミュージシャンとしてトップを目指している人にアドバイスをするなら何と言いますか?

プロとの境目は実はないから、アマチュアバンドと言えどもステージに立ったら全員プロだと思わなきゃいけないと思ってるし、本当にただ好きなことだけをやればいいと思う。何かに合わせる必要もないし、周りがYesって言っても自分はNoって思うんだったらそれを絶対に貫くべきだと思うしね。自分の正解は自分にしかわからないから、自分を信じて突っ走って、心が折れないようにしていかないといけないと思うんで。そうなった時にやっぱりやるのは好きなことだけでいいと思う。水木しげる先生もそう言ってたから間違いない(笑)。この前個展を観に行ったらそう言ってたんで。

え?水木しげる先生がお好きなんですか?

凄く好きです。京都で個展があったんだけど、考えがリンクするところがたくさんありました。

どういうところがリンクしたんですか?

「私は怠け者に見せる頑張り屋なんです」って言ってるところ。人には楽にやってるように見えていても、実は裏で超頑張ってればいいっていうのはよくわかる。ピシっとしてるよりは、面白くユルくやってるように見せて、でも実は裏で超考えて、肝心な時にしっかり動いてるっていうね。とにかく人のためにしたことは絶対自分に返ってくると思って、何でもしてあげたらいいと思う。僕がリンクしたのはそういうところだと思います。

今、なんだか宗教家と話してるような気がしました(笑)。

俺、多分向いてると思う(笑)。

ところで、KenKenさんにとってチャンスとは何ですか?

アンテナを張ることじゃないですか? チャンスは自分がどれだけ高いアンテナを立てているかどうかだと思う。人が気づかないことに気づいてるかどうかなんですよ。それをガッと掴む。その時そのチャンスを掴む能力がちゃんと自分に備わってないと、チャンス自体に気づかないから。

KenKenさんがアンテナを立てていたことで掴んだチャンスって今までありましたか?

それは小学校3年生で誰よりも早くベースを始めたことだと思う。あとは竜之介に出逢ったこと。僕の人生の中で、毎回何かのターニングポイントで出逢うキーマンが必ずいるんです。まず、スティーヴ・エトウさんっていうパーカッショニストの方、そしてムッシュですよね。あとは、21歳の時に9歳の竜之介に会って、それまでずっと続いていた若さへのコンプレックスが消えて、呪いが全部解けた感じだったの。「若いって素晴らしいじゃん!」みたいな。本当は若いって武器だし、そこに億劫になる必要は一つもない。「この子が俺みたいな気持ちにならないために、全力で自分のことより何かをしよう」って思ったのはそこが初めてだったかも。だから未だに超親友だし、一緒にいるとキャピキャピするし(笑)。でも誰よりも解り合ってると思ってる。一番大事なのはそういうところかな。

竜之介(左)と

素晴らしいですね。それでは、KenKenさんにとって成功とはなんですか?

一番最初に思い描いた夢や、さらにそれを超えていくこともあると思うし、僕は 成功してるとは1ミリも思ってないですけど、成功っていうのは多分底なしにあるんだと思う。つまり、“自分で決めちゃいけない上限”ってことなんじゃないですかね。成功したって思った時点から人間て絶対に成長が止まるんで。停滞しちゃうってことは後退していくのと一緒。だから自分の成功を成功と決めないことじゃないですか、多分。

確かにそうですね。

でも、幸せだと感じている時は成功してる時だと思えばいいと思うよ。それが別に金をゲットすることなのかもしれないし、友達がたくさんいることなのか、めちゃめちゃいい女を抱いた時なのか、その幸せは人それぞれでいいけど、何か幸せを感じた時は必ず成功してるよね。やっぱ本当に辛い時って何をやっても辛いからね。いくら美味い飯を食おうが、いい演奏を聴こうが、カワイイ子とデートしようが辛いし。

KenKenさんが最近幸せを感じたのはいつ、どんな時でしたか?

お袋をニューオリンズに連れて行った時かな。お袋が高校生くらいの感じに戻ってるのを見て、「ああ、これはまじで久々にちょっといいことしちゃったな」って思った(笑)。それが一番幸せを感じた時だな。その後、日本に帰ってきてから、大屋形船宴会をやったの。家族とか自分の好きな人だけ50人呼んで、どか〜んと宴会した時に久々に幸せすぎて泣いた(笑)。素晴らしい会だったんですよ。それをみんなが楽しんでくれたっていうのが凄く嬉しかったなぁ。

本当に利他的な方ですね。

そうですか?逆に好きな人がこんな人数いるのだけでも人生成功ですからね。またあの会ができる日が来ればいいなと思って生きてます。

成功してる人と成功してない人の違いはなんだと思いますか?

勝つことは大事なんですよ、絶対。でももっと大事なのは勝ち方だと思う。人に恨まれながら勝ってる人は、僕はあまり成功とは思わないけど、多分その人は何かを犠牲にしてまでもお金や地位が欲しかったりするんでしょうね。でも僕は金が無くなっても今みたいな人たちが周りにいることの方が成功だと思うんで、その幸せに気付いてるかどうかじゃないですかね。成功と失敗は表裏一体だと思いますね。

KenKenさんが世界を変えられるとしたら、それはどんなことだと思いますか?

僕が死んだ後でも僕のことを覚えてる人が山ほどいた時かな。自分が何かを変えることは現世ではないと思う。自分が死んだ後に、ベースを始める人が俺のことを避けて通れないかどうかだと思うし、そこまでの人間になった時に多分世界をどんどん変えていけるんだと思う。それは50年後なのか100年後なのかわからないけど、自分がベーシストとして人の資料になるような人間になった時ですね。

なりますね、必ず。

なりたいですけどね。

では、まだ叶ってない夢があったら教えてください。

叶ってない夢ばっかり(笑)。もっと外国で成功したいかな。まずは日本一になることを目指していたけど、結局その“一”っていうのは自分で決めることじゃなかった。人がどう思ってくれるかどうかだけだからね。俺はそうは思わないっていう人もたくさんいるだろうし。だったらそれをさらに上回る世界一になるべきなのかなと思う時期にすごく来てますね、最近。

世界一って例えばグラミー賞を獲るとかですかね?

まぁ、わかりやすく言うとそういうことなのかもしれないですね。自分がなりたかったのって今までだったら、例えば日本人のギタリストと言えばCharだったり、布袋さんだったり、そういう名前がすぐパッと出てくる人になることだった。でも、ベーシストで誰もが知ってる人って、いかりや長介さんくらいかな(笑)。そういう風に、老若男女、全然音楽をやってない人たちにパッと自分の名前が出てくるようになるくらいのアイコンになることをすごく意識してきましたね。

最後に、3年後、5年後、10年後のKenKenさんはどうなっていると思いますか?

どうでしょうね。その頃にこの国にいるのかも謎ですけど(笑)。未来の像というのはぶっちゃけあまり見えてないけど、むしろ想像がつかないところまで行きたい。どんな状況でも人に何かを合わせるのではなくて、自分に正直に生きてる人間だったらいいね。あと、例えば年間ライブが170本決まったとして、ライブがあるってことはもちろん嬉しい反面、自分の未来の1年が決まっちゃうことでもあるし、もっと何か凄いことが来た時もそこには行けなくなるわけで、10年後、20年後というのはやっぱりそういうものにフレキシブルに動けるような人間でいたいですね。もしかしたら火星まで行ってるかもしれないしね(笑)。それはわからないけど、とにかく人に優しく生きていきたいです。もうそこだけです、僕は。

素晴らしいです。ところでKenKenさんはよく泣くと、この前おっしゃってましたよね。

すげぇ泣く(笑)。今も話しながら何回か泣きそうになった。でもミュージシャンはそれくらい感情豊かでいいと思う。昔、みのもんたさんの「午後は〇〇おもいッきりテレビ」ってあったじゃないですか。あれの「おもいッきり悩み相談」のコーナーで、ある奥さんの悩みとかを聞いて、かわいそうって泣いたこともあります(笑)。 でも、ベースは、それくらい人の気持ちが敏感に伝わってしまうような人じゃないとできない楽器だと思ってるんでね。あとは、信じられない光景を見た時とか、人が人じゃなくなってる瞬間を見た時とかに泣いちゃったりするけど、そういう機会をどんどん与えられる人間でありたいなって思いますね。 ミュージシャンは結局は自分で産み出していかなければならないので、やっぱりそれは自分を信じるということ以外には方法はないのかなと思います。

自分を信じるってどういう風にできるようになりました?

僕の場合は、自分に自信がつくまで練習したことだと思う。「どうしたら緊張しないで本番に向かえますか?」とかよく聞かれるけど、絶対自分なら大丈夫だって思えるレベルにまず一回行かないと一生緊張するよね。

それはひたすら練習するのみ?

そうですね、あとは自分のオリジナリティーをちゃんとわかってるかどうか。“何をやるか”よりも“誰がやるか”の方が大事だと思ってるんで。俺ももちろんカバー曲をやったりするけど、やっぱりその曲を作った人の生演奏が一番感動するじゃん。あの感動はやっぱりオリジナルだからこそのものだし、それを作れる人であるというのも自信を持つことに繋がるんじゃないかな。

取材協力
PLUSTOKYO
東京都中央区銀座1丁目8-19 キラトリギンザ12F/RF
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