HIGHFLYERS/#36 Vol.4 | Aug 15, 2019

豊かさは心の中にある。命は限りあるものだからあまり拘らずに、小さな成功を重ねながら次の自分に向かうことが大切

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka / Photo Retouch: Koto Nagai / Cover Design: Kenzi Gong

布袋寅泰さんインタビュー最終回は、布袋さんのプライベートについてやチャンスと成功についてを伺いました。以前、HIGHFLYERSで奥様の今井美樹さんをインタビューさせていただいた時に、布袋さんとの出逢いが今井さんの人生を大きく変えたとおっしゃっていましたが、今回は、布袋さんの人生にとって、今井さんはどのような存在なのかをお聞きしました。また、日常生活で必ず行うことについてや、歳を重ねることによって起こったご自身の心境の変化についてもお話してくださいました。そして、現在もトップミュージシャンとして多くの芸術に興味を持ち、日々アンテナを張って暮らす布袋さんが持つ関心ごと、また、布袋さんにとっての成功や、3年後、5年後のご自身についても伺いました。
PROFILE

ミュージシャン布袋寅泰

日本を代表するギタリスト。 日本のロックシーンへ大きな影響を与えた伝説的ロックバンドBOØWYのギタリストとして活躍し、1988年にアルバム『 GUITARHYTHM』でソロデビューを果たす。 プロデューサー、作詞・作曲家としても才能を高く評価されており、クエンティン・タランティーノ監督からのオファーにより、「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY(新・仁義なき戦いのテーマ)」 が映画『KILL BILL』のテーマ曲となり世界的にも大きな評価を受け、今も尚、世界で愛されている。 2012年よりイギリスへ移住し、4度のロンドン公演を成功させる。2014年にはThe Rolling Stonesと東京ドームで共演を果たし、 2015年海外レーベルSpinefarm Recordsと契約。その年の10月にインターナショナルアルバム「Strangers」がUK、ヨーロッパで CDリリースされ、全世界へ向け配信リリースもされた。 2018年も国内外問わず、精力的な音楽活動を行い。10月にはベルギー、フランス、スイス、イタリア、イギリス5カ国でのヨーロッ パ・ツアーを開催し、海外のオーディエンスの心を掴み、11月から12月30日にかけて全19公演の国内ホールツアー『HOTEI Live In Japan 2018 ~ TONIGHT I'M YOURS TOUR ~supported by ひかりTV』を開催。このツアーはニュー・アルバムのリリースに合わせたものではなかったにも関わらず、各地でソールド・アウトが相次いだ。 そして、2019年5月29日に「ギタリズム」シリーズ最新作となる『GUITARHYTHM Ⅵ』が発売した。アルバムリリース後には全24公演からなる「HOTEI Live In Japan 2019 〜GUITARHYTHM Ⅵ TOUR〜」がスタートしており、今年も精力的な活動が続いている。

自分の音楽に繋がるものは映画もアートも、常にアンテナを張っている。時には娘のプレイリストを聴かせてもらい情報収集することも

奥様の今井美樹さんは、以前のインタビューで布袋さんとの出逢いが人生を大きく変えたとおっしゃっていましたが、今井さんとの出逢いは布袋さんの人生にどのような影響を与えましたか?

彼女の言葉と全くそのまま同じです。やっぱり人生において人との出逢いって大きいですよね。 彼女は僕の良き理解者であるし、僕の音の熱狂的なファンでいてくれる。彼女は彼女自身がシンガーとして悩みもがき苦しんでいた頃に、僕の音楽を聴いて光を感じそこから抜け出したという経験から、僕が迷った時には、「布袋寅泰がそこで迷ってちゃダメ!」って力強く言ってくれるんです。彼女のおかげで、僕は“布袋寅泰”でいられるっていうのはもちろんありますね。

娘さんの成長を見て、何か感じることはありますか?今の娘さんを取り巻く環境は布袋さんの若い頃と随分違うのではないでしょうか。

英国に移ったのは、もちろん僕の夢を追いかけることが大きな理由でしたけど、僕ら家族にとっても新しい視野を広げる良いチャンスだと思っていました。初めは美樹さんも娘も、「なんでパパの都合で私達まで」って思っていたかもしれないけど、今や娘は流暢な英語を喋るし、世界の中でアジア人としてのアイデンティティみたいなのも、きっと自分自身の中にしっかり芽生えているだろうと感じています。

将来の夢を話すことはありますか?

何になるのでしょう。歌もダンスも上手いけれど、アーティストやミュージシャンにはなりたくないって言ってる。僕らも誰かにやれと言われてスタートしたわけじゃないからね。無理強いは決してしません。

でも何かのきっかけで心境の変化があるかもしれないですね。

エコノミーやビジネス、テクノロジーなど、今の世界を作っているものには興味があるみたいですよ。彼女の人生は彼女が決めればいいけど、せっかく英語を勉強したんだから、いつか日本で英語を生かした仕事をしてみたいとか、そんなことも口にするようになりました。途中からいきなり異文化の現地校に通い始めたわけだから、辛く苦しい大変な経験をしたと思うけれど、逞しいですね。

素晴らしいですね。ところで、布袋さんが日常で必ず行っていることはありますか?

残念ながら愛犬を昨年亡くしてしまったのですが、彼女が生きていた頃は、雨の日も風の日も、冬の日も夏の日も、朝起きたら必ず1時間半ロンドンの街を歩くことをが毎日の日課でした。最近はこんなこと言うとイメージに合わないかもしれないけど、僕も美樹さんも自宅の小さな庭にハマっていて、まず朝が来たらガーデンの扉を開けて、「さて、今日も庭の草花は元気かな?」なんて観察しています。自分でも「歳をとったな」と苦笑いしてしまいます。

素敵ですね。

昔は意味不明な難解でぶっ飛んだ映画や音楽が好きだったけど、最近はシュールレアリズムより物静かな風景画に惹かれるし、歳を重ねていくと自らの歩幅も見えるし景色も変わってくる。でも、こうやって自分に映るものっていうのは自分自身を反映しているんだろうし、最近は歳を重ねるのも楽しいなって思うようになってきました。日常の静かな時間にいろんなものを感じられるゆとりがやっとできてきたのかなと思いますね。とは言えステージやツアーは過酷ですから、体のメンテナンスにはもちろん気を使います。レコーディング期間中はどうしてもスタジオにこもりっきりで、あまり体のことを考えずにパブでビールを飲んだり、カロリーも気にせずハンバーガーをモリモリ食べたりしちゃうけど、いよいよステージが近づいてくると、ランニングや筋トレ、食事制限などコンディショニングには気を使っています。

ギターは今も欠かさず練習されるのですか?

ギターは毎日時間を決めて真面目に練習するようなタイプではないんだけど、アートや映画は頻繁に観ますね。本を読むことは随分減ってしまったけれど、代わりにインターネットの中で自分の知らない世界を探したり、何か表現に繋がるようなものに常にアンテナを張って、自分をアップデートしたりするようには心がけています。

最近気になるものや、注目してるものはありますか?

Netflixは面白いですよね。映画は最近どこか不自由なところが否めないけど、すごく個性的かつ挑戦的なことをやってるなって思います。 また音楽も、昔は限られた情報を頼りに探して手に入れるものだったけど、今はネットや無限のジュークボックスのようなサブスクリプション・サービスで様々な音楽に出逢えるから面白いですよね。娘は最近、ヒップホップなどの新しい音楽を聴いていますけど、彼女のプレイリストを聴きながら新しいものを収集することもあります。

娘さんからも色々情報が来るのですね。

僕は名前もわからないけど、結構ディープなものを聴いてますよ。でも僕も14歳でロックに目覚めてクレイジーなロックを聴いて育ったわけだから、16歳の彼女が新らしい音楽に影響されるのもわかるような気がするし、もっと冒険しなさいとも思うしね。

それでは、布袋さんにとってチャンスとはどういうことですか?

待ってても来ないものでしょう。やっぱりチャンスは捕まえるもの。ありきたりかもしれないけど、追いかけるものだし、なかったら探すもの。そして、そのチャンスを生かすも殺すも自分次第。でも大きいチャンスだけが全てじゃないし、小さいチャンスって結構大事な気がするんですよね。自分自身にも言い聞かせてるけど、日常のちょっとしたチャンスに気づける感性や、反応できる自分でいなきゃなと思います。ちょっと視野が変わるだけで、世界が変わるじゃないですか。

では、布袋さんにとって成功とはなんですか?

成功は次に行くためのエネルギー。ゴールじゃないですよね。例えばお金持ちになることも一つの成功だけど、それでおしまいじゃないじゃない?お金持ちになって得たお金の使い道もセンスだろうし、ものが多ければいいわけでもない。豊かさというのは心の中にありますからね。人は歳を重ねるものだし、命は限りのあるものだから、あまり拘らずに、ひとつひとつをクリアしながら次の自分に向かうこと。ダメだダメだって思わずに、大きな成功より小さな成功を大切にして、それをポジティブに自分が一歩前に進む力に変えていくことが大切だと思います。

3年後、5年後、10年後の布袋さんはどうなっていると思いますか?

3年後、僕は還暦ですね。どうなんでしょうね。歳は取りましたけど、今もまだどこか子供のままなんですよね。だから変わらないんじゃないですか? いい歳の取り方をしたいってみんな言うけれど、それはつまり、自分らしく、変わらぬところは変わらず、変わるところは受け入れていくしかないって事だと思うしね。「あの時は良かった」って振り返れば思い出は眩しいし、そういう気持ちは今の自分にもあって、青春の思い出や反省もある。でも、3年後も5年後も、死ぬまでやっぱり、「今日が一番自分らしい」っていう風にポジティブにいられたらいいなって思う。僕には音楽という無限の道がありますから、そこを自分の歩幅で追いかけていく。そうしたらまた今ではない自分がいると思うし、そうやってきっとおじいちゃんになっていくんでしょうね。

今、眩しい思い出とおっしゃいましたが、もしも時が戻るとしたらどこに戻りたいですか?

そうね、やっぱり14歳の時に、初めてロックンロールを聴いて身体中にビリビリっと電流が走ったあの瞬間に戻ってみたいと思う。夜空を見上げては宇宙の深さに思いを馳せ、読書とファンタジーが好きな夢見る田舎の少年が、T・レックスやデヴィッド・ボウイを聴いた瞬間から世界が変わった。英国ロックにどっぷりハマって完全に人生変わりましたから。あの瞬間にもう一度戻ってみたいな。それから40数年経って、まさか自分がイギリスに暮らし世界に向けてギターを弾いてるなんて想像もしていませんでしかたらね。

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布袋寅泰『GUITARHYTHM Ⅵ』発売中

UNIVERSAL MUSIC STORE限定販売:完全数量限定盤 GUITARHYTHM Ⅵ BOXセット
【CD+GUITARHYTHM Ⅵグッズセット】PDCV-1034 10,000円(税抜)
LIVE Blu-ray付 初回生産限定盤 【CD+BD】TYCT-69141 8,900円(税抜)
LIVE DVD付 初回生産限定盤 【CD+2DVD】TYCT-69142 8,400円(税抜)
通常盤 【CD】 TYCT-60138 3,000円(税抜)

  1. Welcome 2 G VI
  2. Middle Of The End
  3. Doubt
  4. Shape Of Pain
  5. Black Goggles
  6. Give It To The Universe (feat. MAN WITH A MISSION)
  7. Calling You, Calling Me
  8. Thanks a Lot
  9. Clone (feat. Cornelius)
  10. Secret Garden
  11. Freedom In The Dark
  12. 202X
  13. Tracker
【HOTEI Live In Japan 2019 〜GUITARHYTHM Ⅵ TOUR〜】
  • 8月23日(金) 埼玉 大宮ソニックシティ
  • 8月24日(土) 愛知 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 8月29日(木) 神奈川 神奈川県民ホール

前売り/全席指定 8,000円(税込)
※3歳未満入場不可(3歳以上有料)
※お子様の会場における安全責任は、同行保護者に負っていただきます。

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