HF/#7 Vol.1 | Jul 30, 2014

出逢いを引き寄せ、人を巻き込む

池貝 知子

Text: Miwa Tei / Photo: Atsuko Tanaka / Cover Design: Kenzi Gong

際立った能力と貪欲な行動力で人生をクリエイトする人を追い続けるHIGHFLYERS。Vol.7は、日本の音楽界にこの方有り。第一線で活躍し続けるヴァイオリニスト・葉加瀬太郎さんの登場です。多くの人の日常と心の風景に寄り添う音楽を創り続けてきた葉加瀬さん。「人を喜ばせ、自分も楽しみ尽くす」姿勢は圧倒的な人間力に溢れ、“葉加瀬サウンド”同様心を動かされます。25周年を来年に控え、最新作『Etupirka~Best Acoustic』を発表されたばかりの葉加瀬さんに、人生の核となるものについて大いに語って頂きました。求心力と熱量の高さは桁違い。“超”個性的なその生き方に迫ります。
PROFILE
葉加瀬太郎

Artist葉加瀬太郎

際立った能力と貪欲な行動力で人生をクリエイトする人を追い続けるHIGHFLYERS。Vol.7は、日本の音楽界にこの方有り。第一線で活躍し続けるヴァイオリニスト・葉加瀬太郎さんの登場です。多くの人の日常と心の風景に寄り添う音楽を創り続けてきた葉加瀬さん。「人を喜ばせ、自分も楽しみ尽くす」姿勢は圧倒的な人間力に溢れ、“葉加瀬サウンド”同様心を動かされます。25周年を来年に控え、最新作『Etupirka~Best Acoustic』を発表されたばかりの葉加瀬さんに、人生の核となるものについて大いに語って頂きました。求心力と熱量の高さは桁違い。“超”個性的なその生き方に迫ります。

出逢いを引き寄せ、人を巻き込む

 葉加瀬さんが登場された途端、場の雰囲気が華やかに。撮影時は、オープンなホスピタリティに溢れるご対応に感動しました。

おもてなしというか、基本的に僕は気を遣うのが好きなタイプなんですよ。かまってもらうのではなくてかまいたい人(笑)。とにかくみんなが楽しんでいる空気が大好きだし、そういうムードを作るのは上手な方だとは思います。

 それはもう、資質でしょうか?

毎朝、目を覚ましてからベッドから出るまでに僕が考えることといえば、「今日はどこに行って誰々と会う。さて、何て言って笑わせようかな」ということ。オチを付けずにはいられない。何故なら僕が生粋の関西人だから(笑)。でも、持ち前の資質かといえばちょっと違う。僕の場合は、素でエンターテインできるタイプではないと自覚しているので。周囲から求められているパーソナリティーに近づけるべく、自分の中で一度台本を作り、「よし、今日も1日楽しませて、自分も楽しむか」って向かう感じ。

 ご自分も日常を楽しめるように、意識されている習慣はありますか?

これは無意識の習慣といえるかもしれませんが、思えばこの20年間というもの、僕は人に対して怒ったことは一度も無いですね。2人の子供たちに対してもそうなので、これは家内から逆に怒られていますが(笑)。怒りの感情で何かが解決するとは僕は思わない。注意をすることはあっても、人に対して怒りの感情をぶつけることは無いですね。

 人との向き合い方で、他にも“無意識の習慣”はありますか?

例えば、僕は人を待たせるのが大嫌いなんですね。そういうのが平気な人、またそれが似合う人もいるわけで、そういうタイプも全く嫌いじゃない。むしろ「そんな風に生きられたら」と思うんだけど、自分にはできないという話。人に会う時も、遅くても5分前には約束の場所に行っている。これから始まる楽しい会話を想像しながら、人を待つことが好きなんでしょうね。

 「日本の音楽界に葉加瀬太郎氏ありき」といえる確固たるポジションにいらっしゃるわけですが、今現在のスタンスは、ご自身が思い描いていた姿と合致しますか?

いや、全く思ってもないところに来ています(笑)。今僕は46歳なんですが、実は40歳で一度ヴァイオリンを置こうと思っていたんですよ。コンサートも減らし、作曲やプロデュース業にシフトしようとずっと考えてきた。それが、いざ40歳にさしかかる頃になってみたら、コンサートの数は増えているし(笑)、ヴァイオリンも、もっと上手に弾きたいと切実に願う自分がいた。ひとつのことをやり続けることの凄味、職人的な美学に40手前で覚醒してしまった。そして今、40代後半になった僕の日常はというと、毎日ヴァイオリンを弾きまくり、毎年アルバムを発表し、さらに今年は無謀にも47都道府県ツアーに挑戦するという(笑)。想定外の展開ですが、自分の価値観が音を立てて崩れていく時というのは、成長できる絶好の機会なんですよ。価値観が変わると、物の見方と見え方、音の聴き方と聴こえ方も変わってくる。すると、自分の作品の作り方や演奏に対する姿勢も変わってくる。こうした変化は凄く面白い。

 25周年を来年に控えた今、音楽に対する向き合い方はどの様に変化していると実感されますか?

「音楽っておもしれぇ!」。最近つくづく、そう思うんですよ。今自分が幸せである理由の芯はそこにあるなと。ヴァイオリンを続けてきて良かったと心底思う。この年になってようやく、という感じ。今が一番、僕なりのヴァイオリンを上手に弾ける自信があります。

 自信があるとは、最強のことと思えます。

ヴァイオリンを徹底的にトレーニングしようと7年前にロンドンに拠点を移したあたりから、色々見つめ直し、やり直してきたことの答えが少しずつ出てきた。ひとつクリアしたら、また違う課題が生まれて、こればかりは永遠に正解にはたどり着けないのだけど。そこに向かう気力は、まだまだ充分にあります。

 その圧倒的なバイタリティの源とは?

生き方は毎日の積み重ねだからさ。この仕事を選んだから、こういう人間になっているわけで。皆さんにおだてられて(笑)、喜んで頂けるのなら、なんだってやりたいし、出来る。だって嫌なことやってないんですから。これは出逢いの運のお陰様としか言いようが無いけど、皆さんあっての自分。周りのサポートに応えるには、基本ポジティブでいなくては。

 ご自身の“人間力”を俯瞰された時、一番強いと自覚される力は何だと思われますか?

“出逢いを引き寄せる力”でしょうか。出逢いというものは、意外と色々なところに転がっているけれど、一期一会であることがほとんど。その出逢いを、いかにしてこちら側に引っ張り込むかということに尽きるのではないかと。自分にとって必要だと思った相手には、僕は割と食い下がります。そして巻き込んじゃう(笑)。突如、憧れの人に遭遇する場面があったとする。果たして声をかけるべきか否か、人は躊躇するわけです。緊張もするし、勇気も要る。そっけない態度を取られるケースもあるでしょう。でも、アタックしないことには何も生まれない。「また逢った時に」なんてことは、そうそう起こらない。人との交流しかり、後から「あの時ああしていれば」というやらなかった後悔は、僕はしたくない。これは若い人たちにも言いたいのですが、若い時なんて恥をかいてなんぼ。「この人といたい。もっと知りたい」と思う人に対しては貪欲にアプローチした方が、絶対に人生は楽しくなると思う。

 これぞ“最強にして最高”と思われる出逢いとは?

家内(女優の高田万由子さん)との出逢いでしょうね。出逢った時、僕は23歳、彼女は20歳。交際期間は8年と割と長かったのですが、初めて逢った瞬間から「この女性と結婚する」と確信しました。いや、この女性と結婚したら、僕は幸せになれると思いました(笑)。対外的にはサービス精神全開の僕ですが、男女関係においては完全に甘え上手。腕枕をするという男の在り方は無理なんです。してもらわないと(笑)。

 大切な商売道具の腕ですから(笑)。

ハハハ、そういう言い方も有りだね(笑)。向こうが「しょうがないわね」と思ってくれるような関係性が心地いい。実際、彼女にはずっと頼り切っている。これを言うとビックリされるかもしれないけど、まだ結婚する前、付き合い出して2年目の頃からずっと、僕は彼女に通帳を預けてお財布の管理を全てしてもらっているわけ。お金の計算とか役所での手続きとか、僕が本当にダメなことを彼女はよく知っているから(笑)。病院も大の苦手。言い訳じゃないけど、番号で呼ばれるような場所に行くと、恐怖感というか体質的に、もう無理。お金の管理を家内に任し、仕事のジャッジは僕の事務所に託し、家内からは“他力本願寺”って呼ばれているんですが(笑)、ぐうの音も出ません。

 “他力本願寺”という語彙にセンスが(笑)。お二人の出逢いも運命的でしたか?

衝撃的でした(笑)。初めて家内と逢ったのは大学3年の時です。僕はクライズラー&カンパニーの前身となるバンドをやっていたのですが、「お前のバンドのファンで、凄い家に住む東大生のお嬢さんがいるから」と友人に誘われて、彼女の実家に行ったんです。都内一等地にある500坪の洋館でさ。一人娘の彼女に部屋数を訊いたら「う~ん、わからない」と。こういう人生を送る人もいるのかと驚きでした。

 正真正銘の深窓の令嬢ですね。

そう。彼女にとってみれば、政治家や資産家など、親が決めたお見合い結婚をする運命のはずが、芸術家と結婚するとは大穴だったんじゃなかろうか(笑)。義父がまた厳格を絵に描いたような人物でね。狩猟が趣味で、暖炉の前で鉄砲を磨いたりしていてさ(笑)。一般的には引くシチュエーションだけど、僕は強烈に惹かれた。こんな面白い人たちと家族になりたいと思った。かくしてその直感は正しかった。

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葉加瀬太郎

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