チャンスとはリスクを恐れないこと。僕の周りの成功した人は皆、人と人との繋がりを大切にしている
10年近くメディアアートに携わっている間に、メディアアート業界は大きく変化しましたか?
テクノロジーを用いた作品はどんどん大衆化して、誰でも使える当たり前のものになりました。例えば、SnapchatやSNOWのように顔に絵が合成されるようなスマホのARアプリは、僕が広告のコミッション仕事で作成した「facetracking happy halloween!」を発表した2011年頃はパソコンでしか出来なかったし、顔のパーツ解析自体が珍しいものだったけど、5年経ったら誰でも当たり前の様に使うものになる。そういったことが色んなところで起きている気がします。
次から次へ新しくなっていく環境に身を置いて、不安を感じることはないですか?
そうですね。皆が同じ状況だと思うので不安になることはないですが、大変にはなって来ています。
ところで、生活のリズムはどのような感じですか?日々の生活で習慣にしていることはありますか?
海外出張が多いのでヨーロッパに行く際は夜型にするなど、時差ボケには特別気をつけていますね。特にパフォーマンスの本番ものは集中力が要されるので。
音楽はいつも真鍋さんの身近にあるものだと思いますが、今一番好きな音楽は何ですか?
今は何でも聴きますが、新しい音楽だと、シカゴのハウスとロンドンのダブステップとヒップホップが合わさったBPM160(Beats Per Minuteの略/ BPM160の場合、1分間に160拍)くらいのジューク/フットワークというジャンルを聴いてます。ここ数年はMachinedrumがやってることを追いかけてる感じかもしれないですね。
聴いている音楽が、真鍋さんが手がけるメディアアート等に影響することはあるのですか?
どうなんですかね。作品づくりとは違いますが、例えばケンドリック・ラマーのプロデューサーの一人でもあり、Timetableというレーベルを主宰するノサッジ・シングとは、 「NO REALITY TOUR 2016」で僕が映像を作ってコラボレーション・パフォーマンスを行い、 LAや世界最大級の音楽フェス「コーチェラ」などを一緒に回りました。確かノサッジが僕のTwitterをフォローしていて、僕が最近彼の曲を聴いてるってつぶやいたら、ノサッジから連絡をくれたのがきっかけだったと思います。プロジェクトの話はいくらでもあるけど、ちゃんと予算をつけて形にするのが中々難しいので、実際仕事になるのは本当に限られています。ツアーのプロジェクトも実現するのに4年くらいかかりました。セッティングが結構大変だったり、条件が厳しかったので中々受け入れてもらえないんですよね。
Nosaj Thing at Coachella, in Indio, CA, USA, on 22 April, 2016
© Goldenvoice/ © Coachella/ Nate Watters
ところで、真鍋さんの周りはとても有能な方が多いと思いますが、ご自身の人生を変えた出逢いをあげるとしたらどなたを思い浮かべますか?
10年前とか15年前、芽を植えただけでまだ花が咲くかどうか分からなかった時代から、今のようになることを信じて一緒にやってきたメンバー、特に今の会社の役員チームの、齋藤(精一)と千葉(秀憲)、石橋さんとの出逢いは凄いことだと思います。あとはやっぱりMIKIKOさんと、電通のクリエイティブ・テクノロジストの菅野薫くんです。広告代理店の人を挙げるのはちょっと珍しいと思うんですけど、僕らの世界って結局他のフィールドの人達と繋がらないと広がっていかないんですよ。もともと僕たちがシアターとかミュージアムでやっていたものを、まずMIKIKOさんがエンタメの世界で広げてくれて、菅野くんがスポーツやカンヌ広告祭などの国際的なイベントで広げてくれました。出来ればお世話になった方全員のお名前を挙げたいくらいですが。
それでは、チャンスとはどういうことだと思いますか?
リスクを取ることだと思います。株の投資でも何でもそうですけど、リスクを取らないと絶対にリターンがないですよね。チャンスってことはリスクが結構ある状態だと思うんで。それはどんなプロジェクトにおいても同じことが言えると思います。
今まで、精神的にどん底だと感じた時はありますか?
不安とまではいかなかったですけど、僕が昔いた会社を辞めた時でしょうか。後に一緒にライゾマティクスを立ち上げた齋藤は既に広告代理店で働いて稼いでいたのに、僕はほぼ収入がないような状態だったんで。でもそこまでいくと、半分諦めているからガツガツすることはなかったです。
真鍋さんのようなメディアアーティスト/プログラマになりたいという若者がいたら、どんなアドバイスしますか?
僕が今やっているようなことは、10年前はブルーオーシャンだったけど今はそうではないので、この先10年後を見据えて、飛距離が出ることを見つけて欲しいと思います。
HIGHFLEYRSのテーマである「成功」について聞かせて下さい。真鍋さんにとって成功とは何ですか?
自由があることです。
成功する人と成功しない人の違いは何だと思いますか?
一番はやっぱり運だと思うんですけど、すごい古くさいことを言っちゃうと、最後の最後は仁義とか、人と人との繋がりとか、人間関係みたいなところを大事にするかどうかのような気がします。僕の周りにはそういうことを大切にする人が多いと思います。
まだ叶ってない夢があったら教えて下さい。
平常運転、現状維持が出来て、今の状態が続いていけばいいなぁと思っています。