【相手との関係性を視覚化・体感して人間関係を好転させる】~どんな人とも上手くいく人間関係構築法~
加藤選手はどんな少年でしたか?
とにかく、やんちゃで負けず嫌いでした。妹にも負けたくないぐらい、とにかくなんでも1番になりたくて。負けた時は泣いて悔しがって、勝つまでやるような子供でした。小学校のサッカー少年団にいた時は、チームメイトに思ったことをそのままストレートに言ってしまうような子だったので、それを反省して、中学生になってからは相手が傷つかないように、伝え方を改善するようになりました。
14歳でアルゼンチンにサッカー留学したきっかけはなんだったのですか?
中学の時に入っていたサッカー部は、雨とか雪になると部員が5人くらいしか集まらないような部だったので、これではダメだと思い、もっと上手くなりたいから海外に行かせてほしいと親に伝えました。最初は三浦知良選手のようにブラジルに行くことを考えていたんですが、留学代行会社の人がスペイン語で治安も良いアルゼンチンを勧めてくれて、中二の終わりから春休みを跨いで2ヶ月間行ってきました。
アルゼンチンでの忘れられない衝撃的な経験は?
ある日、ボカ・ジュニアーズというチームの試合を観にスタジアムに連れて行ってもらったのですが、それが衝撃的でした。5万人のファンに埋め尽くされたスタジアムで、客は飛んで跳ねて応援しているし、ゴールが決まるとものすごい量の紙吹雪が飛んできて、終始スタジアム中が響いて揺れているんです。その時に「ここ(アルゼンチン)でサッカーしたい」と強く思いました。
その後はどのようにしてプロデビューを果たしたのですか?
高校は大阪で一番強い公立高校に行くことにし、卒業後、すぐにアルゼンチンに渡りました。最初の頃は、午前中に練習に行って、午後に語学学校に行って勉強するという生活からのスタートでした。入団テストに落ちて契約が結べなかったら日本に帰る覚悟をしていたのですが、20歳でトップに上がることができて、CAウラカンというチームに入り、思いの外とんとん拍子で1軍に上がり、プロデビューを果たすことができました。 そのチームには5年いて、その後は、インド、タイ、香港のチームでプレーしました。
CAウラカン在籍時。下段の左から2番目
コーチングはどのようなきっかけで受けることになったのですか?
2012年に、タイ・プレミアムリーグのBECテロ・サーサナFCに移籍してすぐ、監督やチームメイトとの関係がうまくいかなかったり、自分の成績も思うように残せず、どうしたら良いのか悩んでいた頃、同年末に日本へ一時帰国した際に、知り合いの紹介で山之上コーチと出会ったんです。当時はコーチングについてよく知りませんでしたが、信頼している人からの紹介だったので、すぐに取り入れてみることにしました。
抱えていた問題
■監督やチームメイトとうまく通じ合えず、出場機会を失っていた
2013年、タイのナコンラチャシーマFCに移籍した加藤選手。新しいチームに入って一番苦労したことは監督とチームとの人間関係だと語る。加藤選手は他の選手よりも技術面で優れているはずなのに、サッカー以前の人間関係で上手くいかなかったことで試合に出してもらえない日々が続いていた。
加藤選手:BECテロ・サーサナFCからナコンラチャシーFCに移籍した最初の頃は、思うようにチームに馴染むことができませんでした。初めはチームメイトのタイ人の立場になって考えられず、こうなって欲しいという願望はあっても中々合致しなかったり。監督とも挨拶はするけれど、信頼されていて仲が良かったわけではなかったのでしばらく試合に出してもらえず、自分のモチベーションが停滞していました。
解決方法
■監督とチームメイトの立場に立って自分を客観的に見た。まずは「握手して挨拶」から
試合に出て理想のプレーをするためには、試合に出る以前に、より良い人間関係を構築していくことが必要だったという。
加藤選手:監督の立場になって、「自分は監督の目にどんな選手として映っているのか」「監督はどんな選手を使いたいと思っているのか」などを考え、試合に出してもらえる選手の「在り方」をベースに、自分に何ができるかを考えました。まずは監督に対する態度を改めようと、自ら監督のところに行って、握手をして挨拶をすることから始めました。その後はチームメイトの立場になって考えて、彼らが望む日本人助っ人選手の自分を想像しました。“技術があり、フレンドリーで、励ましてくれて、練習時も声をかけてくれる”自分を、実際に実践してみたのです。
得られた結果
■監督とチームメイトの信頼が増し、会話が増え、試合でも実力を発揮
監督やチームメイトとの関係性が良くなったことで、同リーグで得点ランキング7位、15得点を記録することができた。
加藤選手:監督への挨拶をきちんとするようになると、監督が僕にも話しかけてきてくれるようになり、話しやすくなったお陰でプレーについて色々と質問ができるようになりました。そして、監督が言うような動きを試合で実践してみたら、それからどんどん試合に出れるようになっていきました。だんだんとチームメイトからも信頼を得られ、パスも集まってくるようになり、2013年シーズンには得点ランキング7位で、15得点を記録することができました。
コーチ補足
■イスを使用した「ポジションチェンジ」で関係性を視覚化し、突破口を見出す
山之上コーチ:組織やチーム内の人間関係を改善してより良い結果を出すために、「ポジションチェンジ」というスキルを使います。良い関係を築きたい対象の人物と自分の関係性をイスに置き換えて視覚化することで、脳内にある相手との見えない距離感を見えるようにします(その人との関係が近い場合はイスを近くに置き、遠い場合は遠くに置く、など)。そして、はじめに自分の立場から自分の感じていることを吐き出し、次に相手の立場に立って、相手の目線から考え、感じてみます。最後に、客観的な視点(俯瞰目線)に立って、二人の関係性を見たときに「本当はどうなりたいのか?」を問いかけます。このプロセスで重要なのは、まず最初に自分とコミュニケーションをとることです。なぜなら自分の思いを整理できていない状態で自分の気持ちを我慢していても、相手の立場に立って考えることはできないからです。自分の気持ちを一旦吐き出した状態で相手の立場を考えると、本当に望んでいる関係性も素直に出てきます。その結果、自分が今やるべき行動も自然と分かるのです。
次は、今までで一番視界が開けたコーチングについて