【目的を見つけて行動を自動化する】 ~自分の本当の目的の見つけ方~
最終章は、最近受けたコーチングを聞いた。それは、単なるサッカー選手としての表面的な肩書きが語られるものではなく、加藤友介という一人の人間がサッカーを通してどのような人生を生きたいのかという真相に迫るものだった。
抱えていた問題
■体が疲れやすくやる気が出てこない
2017年2月に移籍した香港プレミアリーグ、名門クラブ南華足球隊(サウス・チャイナ)で行われた4月の試合、対タイポーの前、練習では体が動くのに試合では動かない、すぐに疲れやすくなる等、フィジカルについての悩みを抱えていた。
加藤選手:今年に入ってから特に、体が疲れやすく、練習では動くのに試合になると動かなくなることが多々あり、それが原因でいつものようなやる気が出てきませんでした。サッカーは11人の団体競技なので、たとえ一個人の問題だとしても、その影響はチーム全体に伝わってしまうものなのです。
解決方法
■そもそもの目的や自分の未来と向き合うことで自分の意図を明確にしていった
そもそもサッカー選手として何のために頑張っているのか?自分の目的の原動力を見つける質問をしていくことで、忘れてしまいがちな本来の自分の望みを知るセッションを行ったと語る。
加藤選手:通常は上手くいかない時、上手くいってる時の状態を思い出して、その状態を再現してみたりしますが、この時は「サッカーを何のためにやってるのか?」「サッカーの何が好きなのか?」「本当はどうなりたいのか?」など、原点を考えるようにしました。そのように、目的や未来と向き合うことで、本来自分が向かいたい方向を明確にしていきました。
山之上コーチと、スカイプを通してセッションを行う
得られた結果
■「家族にプレーを見せたい」という目的を持ったら、自然と体が動くようになった
自分の中心にある思いを明確にすることで、腹の底から意識が据わることを体感。加藤友介という一人の人生の中にあるサッカーというものが、どのような役割を担っているのかが分かったことで迷いがなくなりやる気に満ちてきた。
加藤選手:デビュー当初は自分に家族はいませんでしたが、今は奥さんがいて、子供もいます。芯の部分でサッカー選手として上手くなりたいというのは今もありますけど、日本で子育てを頑張ってもらっている奥さんや自分の子供に、フィールド上でプレーしている自分の姿を見せてあげたいという思いが出てきました。「こういうピッチに立って、二人が観客席から観てくれていて、そこでこんなゴールを決められたら本当に最高!」と、具体的な未来をイメージしたら、次の試合はそのゴールに向かって全力でやろうと、意識がガラッと変わりました。すると、自然に体も動き出したのです。
コーチ補足
■「原因論」のような、何がいけなかったのか?ではなく「目的論」で、これから何ができるのか?を明確にしていく
山之上コーチ:アドラー心理学に「目的論」という考え方があります。それは、原因論のように「なぜこうなったのか?」「何がいけなかったのか?」等、過去や原因を探すのではなく、「本当はどうなりたいのか?」「これから何ができるのか?」と、未来と目的に向かって考えるのです。コーチングでは、コーチが選手にアドバイスするのではなく、選手自らが答えを出して、行動をしていきます。目的が明確でないと、行動もできないのでモチベーションも一緒に下がってしまいます。今回の加藤選手のように、「自分が描く未来のために、この試合は全力でやるぞ!」となって初めて意識にスイッチが入るのです。同じ状況でも、人それぞれ未来と目的は違います。しかし、どんな時も自分の中にある、「どうなりたい?」「何ができる?」を明確にしていけば、いかなる状況でも自らを動かすことができるようになります。
14歳で自らサッカーの道を切り開き、アルゼンチンへと渡った後、日本人海外プレーヤーとして様々な国を転々としてきた加藤選手。ここでは語られていない多くの困難も異国の地で乗り越えてきた勇気あるプレーヤーでありながら、インタビュー中はとても柔らかい物腰で、終始笑顔で爽やかに答えてくれた。
山之上コーチと出会い、コーチングを取り入れてからどのように変わったかを尋ねてみると、「サッカーにおいて、昔はマイナス思考だったのがプラス思考になってきたのを実感します」と答えてくれた。そして最後に成功とは何かを聞いてみた。
加藤選手:なんとなく、夢の終わりなんじゃないかなと思います。成功.....夢を叶えた人が成功した人なのではないかと思うんですが、まだ僕は成功していないので分からないです。