「笑いと元気を届けたい」。熱海五郎一座『黄昏のリストランテ』で剛力彩芽が挑む新たな役柄と、俳優として成長を遂げるまでのプロセスに迫る

2025/04/28

豪華キャストが集結する“東京喜劇”の名門・熱海五郎一座。今年の公演『黄昏のリストランテ ~復讐はラストオーダーのあとで~』に、剛力彩芽さんがゲスト出演されます。「身を預ければどうにでもしていただける安心感がある」と語る剛力さん。個性派ぞろいの一座の中でどんな彩りを加えるのか、新たな一面を見せてくれる舞台に期待が高まります。インタビューでは、公演に向けての意気込みをはじめ、仕事で常に大切にしていること、今後の夢についてなど、たっぷりと語っていただきました。

「楽しさ」を軸に、真摯に向き合う

―熱海五郎一座の最新作品にゲスト出演されることに関して、改めて心境をお聞かせください。

素直に嬉しいですし、大先輩の皆さんとご一緒できるのは本当に楽しみです。台本がまだできていないので、どんな感じになるのかまだよくわからないのですが、「身を預ければどうにでもしていただける」という安心感があります。

―共演者の方々とはこれまでお芝居でのご一緒は?

お芝居では初めてです。お芝居以外では、東さんがバラエティ番組でご一緒させていただいたことはありますが、しっかりお芝居するのは初めてなので、すごく楽しみです。

―座長の三宅さんに関してはどんな印象を抱いていますか?

常に面白いことを考えてる方なんだろうなっていう印象があります。

―三宅さんが「剛力さんも羽田さんも笑わせる演技が大好きそうな匂いがする」とおっしゃっていましたが、実際はどうですか?

コメディは好きですけど、自分がうまいとは思ってないので少し不安はあります。でも「笑わせよう」とせずに、真剣にやれば自然と面白くなる気がしていて。そこは信じて、身を委ねたいと思っています。

―また、「素敵な笑顔の俳優さん」として選ばれたと聞きましたが、その点については?

とても嬉しいです。昔から元気なイメージがあると言っていただくことが多くて、自分ではあまり意識していなかったんですけど、多分笑い声が大きいのと、ずっと笑ってるからか、そういう印象なのかもしれないですね。

―笑顔であることを、常に意識していたりしますか?

そうですね、意識はしてます。でも、良くも悪くも大人になるにつれて感情が表に出やすくなった気はします。本当に仲の良い人とかだと、「今、彩芽あんまり機嫌良くないな」とかわかってくれたりして。本当は出しちゃいけないんですけど、良い意味で素直に出せるようになったのかな。昔は笑ってないといけないというか、笑顔で元気なイメージに捉われていたのが今はフラットになったのか。でも基本は笑ってるのが好きだとは思います。

―素敵な笑顔になるためのアドバイスはありますか?

え〜、なんだろう。でも私、活動を始めた最初の頃はモデルになりたかったので、鏡の前でずっと笑顔の練習をしてたんです。ひたすら鏡を見て、モデルさんの笑顔を真似しながら、この角度でこうとか。宣材写真を初めて撮った時、笑顔が硬いって何度も言われて、それはどういうことだろう?って、ウインクの練習とかをずっとしてた記憶がありますね。

―当時憧れていたモデルさんは?

『Seventeen』のモデルさんはみんな憧れてました。特に佐藤ありささんが大好きで、すごくかわいいし綺麗だし、チャーミングな姿はずっと目標にしてたかな。

―では改めて、舞台『黄昏のリストランテ』を観にくる方達にどんなことを期待してほしいなどあれば教えてください。

どんな感じになるか全然わからないですけど、あのメンバーがいるので絶対に面白いのは間違いないと思います。以前熱海五郎一座の舞台を観に行かせていただいた時、こんなに舞台で大笑いしたのは久々というくらい笑ったので、私もそれ以上のものを届けられるようにお芝居を頑張りたいです。笑うって心が癒されることでもあるし、すごい楽しかったとか、元気が出たとか、来ていただく方達にもそうなってもらえたらとても嬉しいです。

―笑いは元気の源ですもんね。ちなみに最近一番笑ったことは何かありましたか?

ついこの間まで舞台をやっていたんですけど、そこの現場が楽しすぎて、みんなとずっと大笑いしていた印象があります。客席に聞こえるんじゃないかっていうぐらい、本番中もみんな大笑いしていて。

―じゃあ今元気ですね、きっと。

すごい元気です。体力的には疲れていても、この辺り(顔と心)は元気みたいな感じですね(笑)。

―剛力さんのインスタグラムのプロフィールに「自分を信じること・周りを愛すること・明日を夢見ることが幸せの3原則」とありますが、ご自身のモットーですか?

そうです。これは漫画家・矢沢あいさんの『天使なんかじゃない』という漫画の最後で、在校生に贈られた言葉なんですけど、めちゃめちゃ素敵だなと思って、大切にしている言葉です。この漫画に出会ったのは私が中学生の頃で、それから私のバイブルになりました。いい言葉が多すぎて、何回読んでも泣けるんですよ。年齢を重ねるごとにグッと来る部分が違ったりして、当たり前のことを言ってると思うことでも、これって忘れがちなことだよなって、大切にしようと思う言葉がたくさんあります。

―自分を信じ続けるのって難しいこともあると思いますが、剛力さんにも落ち込む時はありますか?

めちゃめちゃあります。最近は意外とないですけど、落ち込む時はとことんまで落ちます。基本能天気というか、考えるのがすごい苦手ではあるけど、良くないことってずっと考えてしまったりするじゃないですか。とことん考えて、自分って本当にダメ人間だみたいなとこまでいったら、「もういっか、これ以上考えても答え出ないな」って考えるのをやめちゃう瞬間があって。そういう悩みとか考え始めたことって、意外と最初の直感で答えが出ていたりするんですよね。なので考えるのを一回やめて、普通に生活してると、ある時「これってこういうことだったのか」とかって解決策が出てきて、やっぱり最初に思ったことで間違いなかったんだってなったりする。

―確かに。でも1回落ちることも大事なんですね。

そうですね、やっぱり辛いとかマイナスな要素もないとハッピーなことってわからないですし。最近友達に「“揺らぎ”ってすごい大事だよね、人間って揺らいでるよね」って、「心電図に例えると、元気な時は揺らいでいるけど、弱くなるとだんだんとフラットになっていくから、揺らぐことってすごく大事なんだ」と言われて、本当にその通りだなと思いました。

―揺らぎ、素晴らしいです。ところで、モデル業や演技をする上で大切にしていること、逆にやらないようにしていることなどはありますか?

昔から一番大事にしてることなんですけど、現場で関わってくださるスタッフさんや、私のマネジャーさん、ヘアメイクさんとか、その場にいるみんなが楽しくないと嫌なので、楽しいと思える空間にしたいです。逆にやらないことは、できるだけ自分の感情を表に出さないこと。でも、ちゃんと自分の意見を言ったり、思いを伝えたり、コミュニケーションを取ることは大切だと思っています。

―役作りでは、どんなことを意識されますか?

役の背景や、その人がどんな人生を送ってきたのかを想像します。生きている人として演じたいし、基本的に「愛」がある人が好きなので、お芝居してる時も何かしらの愛を大切にしてる感じはありますね。

―10歳の時から芸能活動を始めて、これまで数々のドラマやCM、映画、舞台などに出演するなど多方面でご活躍されてきましたが、ご自身の活動の転機となった出来事を挙げるとしたら何になりますか?

作品としては、やっぱり月9ドラマ『大切なことは全て君が教えてくれた』に出たことですかね。先日そのドラマの監督に久々にお会いして、初登場のシーンを撮影した時の話になりました。私が全然うまくできなくて、30テイクくらいして撮影が押してしまい、監督に「みんな、あなたのために待ってくれているんだよ」と言われたり、最後に「良かったよ、みんなにちゃんとお礼して帰りなね」って言われて、色々なことに気付かされたことを思い出しました。その監督からは他にもお芝居についてや、現場での在り方、役者としての立ち振る舞いみたいなものを教えていただきました。

―では、剛力さんの理想の人間像は?

芯の強い女性が好きです。強さを前面に出すのではなく、ブレない何かを持っている人。この言葉を選ぶのはちょっと違うかもしれないですけど、何かを突き詰めていたり、自分の好きなことをとことんやっている方って「変態」だなって思っていて、すごく魅力的でかっこいいし、素敵って思うんです。この間、Netflixシリーズ『極悪女王』でライオネス飛鳥さん役をさせていただきましたが、あの方の強さはめちゃめちゃ好きです。自分のプロレスを全力で追い求め続けて、輝きみたいな芯の強さは今でもブレてないし、こういう女性って本当にかっこいいと改めて感じました。

―最近ハマってることはありますか?

私は昔から野菜が好きなので、野菜の勉強をしたいのと、日本の文化や歴史にもすごく興味があります。食やお着物、言葉とかを勉強したいと思っています。

―社会で起こっていることで、気になることはありますか?

いっぱいあります。簡単に言えることではないと思いますけど、最近いろんな現場でよく耳にするのは、「これを言ったらセクハラになるのかな?パワハラになるのかな?」とか、そういうことをすごく気にされている方が多いように感じます。もちろん私自身含め、一つ一つ言葉を選んで言わなきゃいけないし、大切なことではあるんですけど、自分の思いや意見が言えない環境になるのは寂しいなと思います。やっぱり言語でコミュニケーションが取れるのは人間ならではなので、もう少し砕けてというか、コミュニケーションを取れるような環境であったらいいなと。だからこそ日本の言葉を勉強したいと思うのかもしれないですね。

―では、剛力さんにとってチャンスとは?

チャンスと聞いて、すごくキラキラってしました(笑)。やっぱりそれに気付くか気付かないか、かな。ちゃんとそこを掴み取れる人でいたいです。

―今までで掴んだチャンスで一番大きなチャンスと言ったら?

いっぱいありますけど、7歳の時に、遊園地でスナップ写真を撮らせてくださいとお声がけいただいて、やらないと言わなかったこと。私は小さい頃はすごい人見知りで、知らない人と喋るなんて無理って、母の後ろにすぐ隠れるようなタイプだったんです。でも写真を撮ってもらうのは大好きだったんで、その時は喜んでやりますみたいな感じで受けて。その撮影が楽しすぎて、「私はモデルになる」と母に宣言しました。あのチャンスを掴めて本当に良かったと思います。

―早いうちに掴めましたね。

夢ができた瞬間だったので。あとは30歳で『極悪女王』に出たことも一つのチャンスだったと思います。運の良さと、人との出会いは誰にも負けない自信があります。

―では、成功とは何ですか?

現場が楽しくないと嫌だという意味では、携わってくれた方に楽しかったとか、名残惜しいと言ってもらえること、あとは見てくださったり応援してくださる方が笑顔になってくれることは一つの成功かなと思います。これからもそこに向かい続けるんだろうなと思っています。

―愛が深いです。

姪っ子が今2歳なんですけど、できることがどんどん増えていって、ある意味全部成功してるというか、例えば寝返りを打てるようなったり、立てるようになったことも成功だし、そう思うと毎日成功してると言えますよね。そんなふうに、私も毎日「今日も1日成功した」って思える人でいたいですね。

―最後に、まだ実現していないことでこれから挑戦してみたいことを教えてください。

畑をやりたいです。先ほども言いましたが、野菜がすごく好きなので野菜の勉強をしたいと思ってます。野菜がどういうふうに育てられて、どういう生産者さんがいるとか、自分が食べるものを知るってとても大事なことだと思うので。

―楽しみですね!ちなみに一番好きな野菜は何ですか?

私の中で殿堂入りはトマト。フルーツトマトも好きですけど、周りの皮と身の間の周りの層が厚い、野菜っぽいトマトが好きです。あとは白菜、ごぼう、もやしもすごい好き。ごぼうはおだしとして使うことが多いんですけど、味が変わります。

―では、自分で育てるとしたらまずはトマトですかね。

大きいトマトを育てて、いつかトマト農園をプロデュースできたらいいですね。

 

Text: Atsuko Tanaka/Photo: Atsuko Tanaka & Shusei Sato / Photo retouch: Koto Otoha

衣装協力/ZIN KATO
スタイリスト/津野真吾(impiger)

 

東京喜劇 熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第11弾
黄昏のリストランテ ~復讐はラストオーダーのあとで~

日程:2025年6月2日(月)~27日(金)
ご観劇料:(税込)1等席 12,500円
2等席 9,000円
3階A席 6,000円
3階B席 3,500円
桟敷席 13,500円

 

作:吉髙寿男

出演・構成・演出:三宅裕司

出演:渡辺正行 ラサール石井 小倉久寛 春風亭昇太 東 貴博(交互出演) 深沢邦之(交互出演)

劇団スーパー・エキセントリック・シアター

ゲスト出演:羽田美智子 剛力彩芽