小江戸川越の冬の風物詩「川越コーヒーフェスティバル」が9回目の開催へ。モンゴルと台湾も加わり、大人気コーヒーショップが全国から集結する2日間。堀込泰行や奇妙礼太郎などの音楽ライブも見どころ(MIA MIAオーナー、ヴォーン・アリソンインタビュー)

2024/11/15

コーヒーを通してさまざまなクロスカルチャーを実現し、川越の街に新しい風を運びたいという思いで2017年に始まった川越コーヒーフェスティバル(主催:川越コーヒーフェスティバル実行委員会 / 株式会社KAYAWORKS)。今年も室町時代から続く由緒ある蓮馨寺で今月末に開催される。9回目を迎える今年の テーマは「not only coffee but COFFEE」。色々なドラマがある日常に、この2日間だけはコーヒーのことで頭の中をいっぱいにして、美味しい食と素晴らしい音楽に囲まれた至福の時を過ごしていただきたいと開催に向けて準備を進めている。

見どころはまず、人気実力共にトップレベルのコーヒーショップが全国から川越に一堂に介するラインナップ。 海外でも大人気の「LEAVES COFFEE」や毎年長蛇の列をなす「REDPOISON」や「Life Size Cribe」、世界2位のブリュワーで、今年日本王者に返り咲き悲願の世界一を目指す畠山大輝さんの「Bespoke Coffee Roasters」、コーヒーカクテルで世界的に名高い藤倉正法さんの「BarxBarxBar WATARASE」など話題のお店が、沖縄、福岡、石川、富山、福井、宮城、静岡、栃木、兵庫、群馬、神奈川、東京、埼玉から参加する。また海外からは昨年に続いてモンゴルの人気店ROC、台湾からはOasis Coffee Roastersの初来日が決定。飲み比べチケットシールを購入すると、気になるお店のコーヒーを選んで好きなだけテイスティングができるシステムだ。

1回目から参加の「G☆P COFFEE ROASTER」の実豪介(左上)、モンゴルの人気店「ROC」は2年連続(中央上)、カフェラテが大人気の「Life Size Cribe」は全9回皆勤賞(右上)、今年のオリジナルマグはバーコードの中にコーヒーの文字をデザイン(左下)、グルメバーガーの名店「Burger Mania」(中央下)、天然酵母で作るコンビニエンスストア高橋のパンやドーナツはお昼には完売する(左下)

フードは、恵比寿の伝説のグルメバーガー「バーガーマニア」を筆頭に、「コンビニエンスストア高橋」が昨年お昼に即完売したドーナツやパンを提供するほか、300年続くさつまいも農家「オイモカフェ」はさつまいもスイーツ、初参加の埼玉・小川町の 「KIKI WINE CLUB」は日本のナチュラルワインをセレクト、 地元川越からは「カフェパトリシア」が、季節の人気メニュー・ビーフストロガノフと、レモンケーキなどのコーヒーに合う焼き菓子を揃える。

また音楽ライブは、12月1日に元KIRINJIとしても知られる堀込泰行が初出演。そして5回目となる奇妙礼太郎のほか、Nenashi、Qnel 、NAGAN SERVER x 寺久保伶矢、luvisという今注目すべきアーティストばかりの豪華ラインナップが揃った。音楽好きな来場者が多いコーヒーフェスなので、毎年のアーティスト招致にも力を入れており、今年もコーヒーと素晴らしい音楽とのクロスカルチャーが体現できることを目指している。

音楽ライブでコーヒーフェスを彩る豪華アーティスト。奇妙礼太郎(左上)、堀込泰行(中央上)、Nenashi(右上)、Qnel(左下)、NAGAN SERVER x 寺久保伶矢(中央下)、luvis(右下)

そこで今回は、川越コーヒーフェスティバルに4回目の参加となる、東京・東長崎の大人気コーヒーショップ「MIA MIA (マイア マイア)」のオーナーで、モデルとしても活躍するヴォーンと、 主催者高綱かやとの対談を実現。つねにユニークな企画で来場者を喜ばせるヴォーンと長年交友関係が続く主催者が、カジュアルな雰囲気のなか、コーヒーやカフェについて、 今思うことを率直に話し合った。

フォースウェイブの鍵は、“サードプレイス”。バリスタが社会的に果たす役割をもう一度考える時期が来た。カフェを街になくてはならない存在にしていきたい

 

 —今年も出てくれてありがとう!実はヴォーンは、MIA MIAがオープンするずっと前の2017年川越(コーヒーフェス)の1回目から関わってくれてるの。覚えてる?

そうだっけ?(笑)

—そうよ。ちょうどオーストラリアから来日していたThe TWOKSのツアーに川越コーヒーフェスを組み込んでくれたの。あの時は、まだステージもなかったよね。

そうだ!あのベルの前をステージにしたよね!コンクリートにみんなで体育座りして聴いてたの。あのツアーのベストパフォーマンスだったよ!(笑)。でもあの時から川越コーヒーフェスはかなりの人が来てくれたよね。僕たち、もう4回目?

—確かにそうだったね。MIA MIAとしては4回目の参加、どうもありがとう。ところで、ヴォーンはそんなにたくさんのイベントに積極的に出店しないじゃない?なんで川越には毎年出てくれるの?

川越は出る。なんかいろいろ理由があるんだけど、個人的にも主催の方が好きだから(笑)。それが一番だけど、ここは本当にすごいことやってるんだって。パーフェクトフェスだよ。コーヒー屋さんもトップオブトップの超美味しいコーヒー屋さんが集まってるし、お寺の雰囲気も最高だし、フードも音楽のレベルもまじやばいよ。まじ!いろんなフェスが全国であるけど、コーヒーと音楽と人、それから場所がこんなに完璧なのは珍しい。お客さんのために豪華にしてるのが良くわかる。

—ありがとう(泣)。音楽は、1回目からなかなか日本で聴けない音楽を呼んでくれたヴォーンのおかげなの。あれでお客さんは、「このフェスなんかちょっと違う」って思ってくれたと思う。そしていつも蓮馨寺の入口のおびんずる様のパネルの横には、なぜかヴォーンの等身大パネルがあるのよね。

すいません、勝手に置いて。

2017年の記念すべき第1回川越コーヒーフェスティバルに出演したオーストラリアのアーティストThe TWOKS(左上)、MIAMIAが初参加した2021年のブースにてバリスタ三木隆真とヴォーン(右上)、ヴォーンの等身大パネル、The TWOKSと主催の高綱かやとヴォーン(中央下)、蓮馨寺に鳴り響く音楽に合わせて踊るヴォーン(右下)

—(笑)。ところで、ヴォーンはお店も経営して、モデルもやって、その前は音楽のマネージャーとか社長秘書とか、いろんな仕事をやってきた。それって一見いろんなことに見えるけど、一貫している共通点はあるの?

共通してるのは、1日のほんの小さなことで、人を幸せにできる仕事かどうか。お店を持ってからは、よりそれを強く感じるようになった。美味しいコーヒーを提供したり、ちょっと荷物を持って軽くしてあげたり、良い音楽を聴いたりしてもらったら、お客さんの1日が良くなる。 忙しい毎日の中のちょっとしたことの積み重ねなんだけど、それがいつかビッグインパクトを与える瞬間があるんだよ。

—なにかビッグインパクトを与えたことってあった?

スタッフに子供ができたり、お客さん同士が結婚したり。あとは、CADOTA(イタリアンレストラン。昨年川越コーヒーフェスに出店)をMIA MIAの隣に呼べたことも大きい出来事だった。人生は楽しいけど、それぞれが抱えてる不安やトラブルがあって大変なときもたくさんあるし、1人では何もできないけど、僕たちにしかできないこともあるから。それを少しずつでも続けていってるの。

—素晴らしい話!ところでMIA MIAは最近どうですか?

お店はまだまだだけど、5年経ったらベイビーじゃないよね。だから少しずつ成長していきたい。ここ1年くらいラジオ体操をやってるんだけど、すごく良い。ラジオ体操やったほうがいいよ。みんなが朝集まってラジオ体操やって、「あの話聞いた?」とか「大丈夫?」とかちょっとした会話が始まっていくんだよね。毎回20人とか30人とか来てくれるよ。

—すごい!ヴォーンは川越コーヒーフェスでも面白いブースをいつも作ってくれるもんね。数年前、ライブのあとに奇妙さんが、MIA MIAのブースでのんびりコーヒー飲んでた光景は素敵だったな。

川越コーヒーフェスでも椅子置いて、ゆっくりしてもらって、お客さんも会話してもらって。去年は並んでる人には、前後の人と共通点を一つ見つけてくださいってクイズを出して、面白かったらシールもらえるっていうゲームをしてた。それで席に座ってコーヒー飲み始めると、やっぱりお互いを知ってるからちょっと空気が違うよね。今年も川越で何かしようって考えてる。

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—とっても楽しみにしてます!ところで、最近のカフェやコーヒー界隈については思うことはありますか?

正直、ちゃんと街のために存在しているお店やバリスタは、なかなか見つけられないかな。ソーシャルアイソレーションは深刻だと思う。会話や挨拶が少なくて、元気がないスタッフを見かけることもある。少しでいいから、お互いが挨拶できる街になれば、もっと良くなると思う。

—確かに、カフェやコーヒーショップの姿は変わって来ている気はする。

昔、サードプレイスって言われていたチェーンのコーヒーショップの中には、イートインの代わりにモバイルオーダーとドライブスルーを増やしている店もある。コロナの影響だったり、お客さんとのトラブルを減らすために、なるべく人と人とが接触しないようにしているんだって。でも悲しいよ〜。お店から椅子をなくして、機械をアップグレードして、コーヒーを早く作ってテイクアウトの回転を良くするように変えているなんて。もちろん仕事の前にさっと寄って会社に行くのも大事だよ。でもビルがあるだけで、座るところがないなんて、街がどうなっちゃうのか心配だよ。

—チェーン店がそうなっちゃうのは、悲しいけどわかる気もする。では、ヴォーンにとって良いお店って?

味は5%、残りの95%はBIG  LOVE。コーヒー豆が凄いのはもうわかったよ。そんなことより、昔はカフェは社会のハブだった。知識を交換したり、アイディアを討論したり、デモも始まる場所だった。今の時代にそこまでクレイジーなことをすることはないけど、個人店に行っても、チェーン店やコンビニと変わらない。カフェの仕事はタスクが多いし、一杯の美味しいコーヒー作るのも大変だけど、それだけにフォーカスしたらそれで終わっちゃうんですよ。

—確かに、とても大事な話!

僕たちのしていることは、サービス産業だよね。ホスピタリティはただ食べものや飲み物を与えるのではなくて、そこにちゃんと心を込めることだし、お客さんが何を求めているのかちゃんと聞くことです。そして、若い人たちも色んな人の人生をカフェで感じてほしい。カフェにはいろんなお客さんが来てるから、その人と心から挨拶して、ちょっとした会話をするだけでいいのに。たくさんのカフェには今、悲しい音が響いてるよ。

—ところでヴォーンのそのBIG LOVEなカフェカルチャーはどこから生まれたの?

僕はメルボルンで育ったから、コーヒーカルチャーはもう僕の血のように身体中に流れてる。メルボルンは6時半にはもうお店が忙しくて、バリスタはアーティスト、ミュージシャン、先生とかしてるカスタマーをみんな覚えていて、彼らもバリスタのことを覚えてて、お互いがリスペクトしてる。そこではフレンドシップ、グッドバイブス、いろんなことが起きる。とにかくコミュニティなんだよね。

—メルボルンと東京のカフェカルチャーを見てきたヴォーンが、バリスタにとって大切だと思うことってなんですか?

バリスタの一番大事なことは、お店をオープンするときに、今日は誰が来るんだろう、誰に出会えるんだろうというマインドセットを持つことだと思う。それがないなら機械で良いよ。みんな身体を酷使して大変だけど、私たち人間ができるのは、 勉強して知識や興味を持って、愛を持って人に接すること。そしたらバリスタもお客さんも周りの人もみんなのライフが良くなると思うんだよ。バリスタだってお客さんだって、みんな人との繋がりを必要としてる。だから、まだまだいろいろ整理して考え続けなくちゃだけど、やっぱりサードプレイスはフォースウェーブになり得ると思うんだよね。

—すごく良い話が聞けました。川越コーヒーフェスティバルはたった2日間だけど、毎年バリスタに再会するために楽しみにしてくれているお客さんが多いから、今の話はとても心にぐっときた。愛を持って人に接しましょう!今年も、まさにBIG LOVEな9回目の川越コーヒーフェスティバルにできたら良いな。

川越ってお店もお客さんも、わざわざ全国から来てくれるじゃない?それはすごいよね。今度9回目?じゃあ来年10回目のアニバーサリー??どうする?10回目、なにしようか!盛大にしなくっちゃ!

—まずは今年を無事に迎えられますように。あとはヴォーンに託しました(笑)。よろしくお願いします!

 

【川越コーヒーフェスティバル2024 】

not only coffee but COFFEE

日時 2024年11月30日、12日1日

時間 10時から16時30分

場所 蓮馨寺 川越市連雀町7−1

入場料 500円 飲み比べシール 4枚1200円

入場券付き記念のミニマグ飲み比べ4杯分 2800円など

official website  : kawagoecoffee.com

 

ヴォーン・アリソン プロフィール

コーヒーの街、オーストラリアのメルボルン出身。 カフェ経営者、モデル、英語教師、音楽プロモーター、コーヒーパーソナリティなど、複数の肩書きを持つ。 主な活動は、海外アーティストの日本ツアープロデュース、コーヒーについての執筆活動、モデル活動、そして東長崎にあるMIA MIAの共同創立者。

ヴォーン・アリソンは2023年にBicultural  Soulsに出演している。当時の記事はこちらからhttp://www.highflyers.nu/bs/vaughan/

高綱かや プロフィール

埼玉県川越市出身。米国へ単身留学し、2006年にステラアドラー演劇学校を卒業。舞台や映画に出演する傍ら、LAとNYで11回に渡り書道の個展を開催。また、アメリカ滞在中の10年で米国のコーヒーカルチャーを多く取材し、雑誌の執筆や通訳、コーディネートも担当した。帰国後、2017年に「川越コーヒーフェスティバル」をスタート。他に大手百貨店のコーヒー企画やPRも。川越の「カフェパトリシア」「リトルパトリシア」のオーナーで、コーヒー好きのQグレーダー。Insta: @kawagoecoffee