【思い込みに気づき、捉え方を変える】〜発想を変えることで、問題をポジティブに捉える方法〜
2012年からコーチングを受けることで、成果が現れ、毎月、スカイプや面談などでセッションを行ってきた高橋選手と小田桐コーチ。約5年間の中で一番印象的だったセッションについて語ってもらった。それは、全く想像し得なかった発想で、漠然とした失敗から安定感のあるパフォーマンスに切り替えることができる瞬間となった。
抱えていた問題
『小さなミスの連続で、試合のペースを崩す悪循環を繰り返していた』
練習の数をこなして大会に臨んでいたにも関わらず、安定して自分の力を出し切れない。演技中に些細なミスが重なり、ポイントを失ってしてしまっていた。
高橋選手:2011年の全日本選手権の頃、 試合時の意識は、「落ち着いてやろう」といった抽象的で大雑把なものだったせいで、些細なミスや配点の大きいミスを犯していました。ミスを犯すことでペースが崩れ、それの繰り返しで試合全体のペースを崩すという悪循環でした。結果的に日本代表選考からも落選し、その時は、もう限界なのかなといった気持ちでした。そして、試合後は課題出しをして、その課題をどのように減らせるかばかりを考えていました。
解決方法
『「課題を減らす」から「チェックポイントを増やす」にした途端に変化が起きた』
課題を克服する、すなわち無意識に体が動くという状態を目指していたが、感覚だけに依存すると、それがズレた時は失敗してしまう。高橋選手は課題を要素として細分化し、意識し一つずつ丁寧に行うことで、安定したパフォーマンスを得られることに気が付いた。
高橋選手: 試合後は、たくさんの課題をどうやったら一つずつ減らしていけるかばかり考えていたのですが、セッション中にコーチに「課題は減らさないといけないものなのか?減らさなかったらどうなのか?」と聞かれて考えが一変したんです。それまでは、課題を克服し、無意識下で技をこなせることが大事だと考えていたのですが、それからは「課題」を「チェックポイント」と考えるようにして、一つひとつを順番に丁寧にこなしていくことにしました。そして、例えば直転という技で鉄棒のように一回転する際、ただ回るだけでなく、身体はちょっと前目に倒して、深めに座って、手は強くかける、というふうに細分化してチェックポイントを増やしていったのです。以前は大会前の最終調整として、練習の数をこなすだけでしたが、それ以降はウォーミングアップ時も一つひとつのチェックポイントを思い出すようにして、 「イメージ」と「身体」がセットになっている確認をする作業を増やしました。
チェックポイントを記載したノート
得られた結果
『ミスをしても大崩れしなくなったのはチェックポイントを意識したから』
「課題を減らさなければいけない」から、「チェックポイントを増やしていく」という発想に変え、細かく競技中の動きを細分化していった結果、安定的なパフォーマンスを出せるようになり、全日本選手権、世界選手権でも連覇を達成。
高橋選手:試合中はできるだけ多くのチェックポイントを積み重ねていく感覚になり、毎回安定して自分の力を出し切れるようになりました。例えば側転してる最中は「右手に注意して」とか、身体がさかさまの状態にいる時は「体のラインをまっすぐ意識して」といったように、演技中に注意しなければいけないポイントが頭の中でBGMのように駆け巡っている感覚です。ちょっと崩れても次のチェックポイントから直せばいい。大崩れしなくなったことで、常に無意識と意識の間で演技に集中することもできるようになりました。そして、実際にラートに触れなくても自分の感覚とポイントを一致させられるように練習した結果、大会でもその通りにできるようになりました。2012年に全日本選手権で初優勝して以降も、同じようにチェックポイントを意識していき、その後、男子個人総合は5連覇しています。現在まで世界選手権の男子個人総合2連覇を含むと、合計で7回優勝できました。
受賞した数々のメダル
コーチ補足
『チェックポイントを書き出し、身体に染み込ませて意識と無意識の間で演技をする』
小田桐コーチ:このセッションを行った時は、まずイメージの中で演技をしてもらい、気をつけるべきチェックポイントを書き出す作業をしてもらいました。チェックポイントを書き出した後、理想の演技をしている時はチェックポイントに対してどんな感覚かを尋ねてみたところ、「チェックポイントが身体に染み込んでいて、意識と無意識の間のような感覚で演技をしている」ということがわかりました。高橋選手は、理想の状態が明確にイメージできると、目標に向かって着実に行動をして、イメージを実現できる選手です。理想の演技をしている時の感覚が明確になり、本番までにチェックポイントを身体に染み込ませるというやるべきことが明確になった結果、本番で安定して高いパフォーマンスを発揮することができるようになりました。
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