【本音と本気を引き出す】~理想と現実のギャップに立ち向かう~
選手達は「甲子園に行きたい」という想いがありつつも、理想と現実のギャップに苦しみ、「本当に行けるのか?」という不安な気持ちや、様々な感情を抱えていた。その想いや葛藤に、監督とコーチはどのように向き合い、乗り越えたのか。
抱えていた問題
■可能性に蓋をする選手達
逆転負けが続いていた県立相模原高校野球部。試合で勝つために最後に大切になってくるのは底力。しかし、選手達の本気度が欠けていて、自分達の可能性に蓋をしていると監督は感じていた。
佐相監督:甲子園に行きたいという目標を掲げていながらも、実際は甲子園を目指しているような雰囲気とはかけ離れていて、練習の質や空気感も良くなかったです。選手達の本気度が感じられず、彼らは自身の可能性に蓋をしてしまっているようにも見えました。
解決方法
■チームの目標に向けて、自分の本音をオープンに自己開示し合う機会をつくる
選手たちが本音で話せる場を作り、甲子園へ行くという目標への想いと、それぞれが今感じていることをオープンに話した。個々に自己開示を行うことで、メンバー全員の呼吸と意識を合わせていった。
佐相監督:東コーチに、目標に向けて本音で話せるチームミーティングを行ってはどうかと提案されました。そこで、コーチ主催のミーティングを開き、選手達に「本当に甲子園に行きたいのか」「目標に対して行けると思っている人は?」と聞いてみたところ、手を挙げたのは二人だけでした。そこで、チーム全員に、チームについて感じていることや、甲子園に行くために必要なこと、大切なことなどを率直に挙げてもらったのです。
得られた結果
■選手達の諦めない粘り強い姿勢
目標に対しての想いを明確にし、本気度を確かめ合ったこと、目標に向けて必要なことが明確になったことで選手達の行動に変化が起きた。2018年春季神奈川県大会地区予選での試合で、9回表で逆転された時、次の9回裏で選手達の本気度が発揮された。
佐相監督:みんなで話した結果、甲子園に行くために必要なのは「ピンチの時も平常心を保ってプレーする」ということが見えてきました。そして、迎えた翌春の神奈川県大会地区予選の強豪の向上高校戦では、諦めない粘り強い戦いをし、9回表で逆転された後、9回裏で逆転し返し、勝利を手にすることができたのです。選手達の、負けそうになってもあきらめず戦い続けられる姿を見ることができました。
向上高校戦
コーチ補足
■自分の想いや感じていることを率直に伝える
東コーチ:「甲子園に行きたい」という理想と、実際のチームの練習や試合の状況にはギャップがあり、選手達は危機感を感じているように見えました。そこで部員それぞれが、自分の想いや感じていることを本音で話せる場を作ることが必要と感じ、監督に提案をしたのです。ミーティングでは、選手達から「普段の練習や試合で感じていたけれど、伝えることが出来ずにいた」と、今までやれていなかったことや、やった方がいいと思っていたことなどがたくさん出てきました。このように、うわべでもネガティブでもなく、一人ひとりが目標・目的や未来に向かって、本音でポジティブに、かつ率直に話せる安心安全な(安心して話せる)場作りが大切です。
現役時代に強打の外野手として活躍。大学卒業後は中学教師として約25年を過ごし、そして高校の教師、野球部の監督になって、多くの勝利を勝ち取ってきた佐相監督。根性や野球界のレジェンドと言われ、多くの甲子園を目指す高校球児が監督を求め、神奈川県立相模原高校に入学してきた。そんな厚い人望を持ち、野球に熱い情熱を注いできた佐相監督にとって成功とは何かを聞いてみた。
佐相監督:自分が今思っている以上のことを成し遂げられた時が成功だと思います。これまで60年生きてきて、毎年レベルアップしているのを感じますが、それも成功と言えますね。自分が諦めない限り成功は続くし、その時もまだ監督をやっていたいです。