【最大のピンチを最高のチャンスに変える】~想定外に備え、想定内を増やす~
これまでよりもランクが上の相手と戦う時、ポジティブな側面にフォーカスすることも大事だが、想定外のネガティブなことが起きた時に、それに対応できる状態も作っていくことは、リングという名の戦場で戦うアスリートとして大切だ。人生にも同じような事が時として起こる。そんな時の施策として、丹羽選手は最大のピンチをチャンスに変える方法を身につけた。
抱えていた問題
■自分よりランクが上の相手との戦いに勝つための施策がない
2連続勝利を勝ち取り、さらに上のトーナメントを組んでもらえることになった丹羽選手。これまでよりもランクが上の選手達と戦う為、彼らに勝つにはどうしたらいいのか悩んでいた。
丹羽選手:トーナメント戦で過去にチャンピオンだった選手達と戦うとなると、自分のパンチが当たっても相手がブレない可能性が高いし、これまで食らったことのないキックをもらうかもしれない。もしダウンを取られてしまった場合に、どうしたらいいのか、最悪な状況になったとしても、そこから勝つ為には何をしたらいいのか、具体的な施策がありませんでした。
解決方法
■最大のピンチを最高のチャンスに変える
そんな丹羽選手に対して、台本コーチは「最大のピンチを最大のチャンスに変える」為に、ダウンを取られた時に、また最高の自分の状態に戻れるためのコーチングを行った。
丹羽選手:いざという時の為に、ダウンしてしまったという最悪のシナリオもしっかり描いておこうと台本コーチに提案いただき、ダウンを取られてからどんなイメージで、どんな風に立ち上がれば、また最高の自分に戻れるか、一緒に探求してもらいました。「ダウンした時、何を描いたら復活できそう?」「どんな気持ちの持っていき方をしたら立ち上がれそう?」などと問いかけてもらい、探っていったんです。すると「立ち上がった時にダウン前よりパワーが上がって、機能も、エネルギーも上がって、“進化”したら最高!」というワクワクする気持ちが湧き上がってきました。さらに、「それってどんなイメージ?」と聞かれて、思わず「人類の進化」と答えていました。サルから人間へ進化する、あの「人類の進化」ですね。実際にダウンして、「人類の進化~♪」と声に出しイメージしながら立ち上がってみたんです。何度かそういったシュミレーションをしていく中で、ダウンした後の切り替え方を身につけつけられると、ワクワクさえしてきました。
得られた結果
■ダウンを取られ、ピンチの場面もチャンスに変えることができた
2019年4月に開催された「REBELS.60」の63kg初代王座決定トーナメント決勝タイトルマッチで稲石竜弥選手との1戦。ラウンド1からダウンを取られて、突然のピンチに見舞われた。しかし、それは想定内として起きた出来事となり、屈せずに立ち上がれたと語る。
丹羽選手:開始44秒でダウンを取られてしまったんです。ですが、想定内のこととして、実際に「人類の進化~♪」というイメージで立ち上がることができ、その後のラウンドではパワーアップした意識状態で相手に向かっていくことができました。シュミレーションした通り、最悪な状況でも最高の状態に戻ることができたんですね。結果的に、最終ラウンドでダウンを奪い返し、逆転勝利を手にして、チャンピオンになれました。
コーチ補足
■想定内を増やし、ピンチをチャンスに変える準備をしておく
台本コーチ:「今を頑張る・今ここを生きる」ことは、どちらも大切なことですが、それにプラスして「最悪な出来事を想定して準備」をしておくことも、最高のパフォーマンスを発揮するためには重要です。また、その準備は、「最悪な出来事を引き起こさない為に」するものではなく、「万が一最悪な出来事が起こったとしても大丈夫」、もしくはそれさえ超えて、「最悪な出来事が起きてむしろラッキー!」と思えること、つまり、ピンチを最高のチャンスに変えるためにするものです。具体的には、まず自分のピンチの場面を実際に体で表現してみます。そして「ピンチから脱出した後、どんな気持ちや身体の状態になっていたら最高か?」また、「ピンチから脱出し、最高な状態へ向かっていく自分のイメージは?」など、頭でイメージしながら身体も同時に動かして探求していきます。この作業を繰り返していく中で、丹羽選手の「人類の進化」ような「自分らしい」イメージが湧き出てくると「ピンチがあった方がラッキーかも」と考えられるようになります。それを繰り返し練習して、それが自分の感情や感覚と一致すると、「むしろピンチになった方がうまくいく」とワクワクさえしてきます。