【「ルーティンで、「今、ここ、この瞬間の自分」のみに集中する】~試合直前に集中力とパフォーマンス力を上げる簡単な方法~
2017年の秋は、ヨーロッパの大会(9月にドイツとトルコ、10月にオーストリア)に連続して出場した篠原選手。未来への不安や結果、成果に意識が向いたり、雑念や思考に囚われたりしている状態から、「今ココ」(今、ここ、この瞬間の自分に意識を向けること)に集中。自分の感覚や潜在意識から自然と身体が動いていくような、良い状態の自分を作ることに重点を置いて試合に臨んだ。
抱えていた問題
■試合中に雑念だらけで今ここに集中できない
2017年9月8、9、10日にドイツで行われた「KARATE 1 PREMIER LEAGUE」で、意識を今に集中させて試合に臨んだ篠原選手。しかし、実際は雑念だらけで相手のペースに呑まれてしまったと語る。
篠原選手:5回戦負けだったドイツでの大会では、試合直前の緊張のせいで「負けたらどうしよう」「カッコよく勝たなあかん!」と焦っていました。「今自分がすべきことはここで勝つことや!」と、心の中で自分に話しかけて意識を集中させようと試みましたが、実際には雑念だらけで「今いったらやられるかな?」「ここで技入るかな?」などと考えてしまい、どの技も中途半端で、相手からも隙を取られてしまいました。
解決方法
■コートに入る前に深呼吸を3回、たったそれだけで意識を集中させる
“今ココ”に集中するためには深呼吸することが効果的だと知り、実際に取り入れた篠原選手。意識を呼吸に集中させることで集中力が一気に上がったと語る。
篠原選手:9月23、24日に行われたトルコでの大会では、試合前に阿部コーチとLINEをして、その時に「“今ココ”に集中するためには、セッション前に毎回行っている深呼吸をやるのも効果的」と教えていただき、今までは「正直“今ココ”ってなんだろう」と思っていましたが、その時に初めてイメージが掴めた気がしました。何も考えないで呼吸だけに集中して、深呼吸を3回。同時に呼吸の音に意識を向けながら、吸う息で体にポジティブなエネルギーが送られてくるようなイメージをしました。
得られた結果
■深呼吸で集中力を上げ、無敵状態を体験
意識をコントロールするために深呼吸を3回行ったら、試合中は集中力が上がり、今までにないほど集中力の高い戦いをすることができたそう。
篠原選手:トルコの大会では結果は7位でしたが、敗者復活戦の時、3試合やって、3試合とも負ける気が一切ありませんでした。まるで、終始、無敵状態な感覚です。出した突きも、思った通りに決まり、狙う時も、狙おうとしていなくても、「ここだ!」と思って打ったら確実に入るような感覚でした。
トルコの大会後に行われたオーストリアでの大会。写真提供/空手道マガジン月刊JKFan
コーチ補足
■より高い集中力を意図的に作ることで、ゾーンに入ることができる
阿部コーチ:格闘技はどのスポーツよりも、少しのミスでも結果に直結してしまいます。なので、「試合前にいかに自分が攻撃しやすい集中状態を作るか」が最も大事になってきます。セッションでは、そのために具体的に何ができるかを話し合いました。そこで、主に「“今ココ”に集中するワーク」を行いました。基本的に集中力を高めるためのアプローチの仕方は3つあります。言葉、身体、意識の3つです。篠原選手は、身体のアプローチに含まれる3回の深呼吸を試合前に行ったことで、超集中状態を対戦中に体験したのです。このように極限の集中状態に入ることを「フローに乗る」や「ゾーンに入る」と言います。
コーチングを始めてから1年と満たないが、メンタルを強化していくことの大切さを実感している篠原選手。11月25、26日には沖縄で「KARATE 1 SERIES A」の大会、そして12月10日に全日本空手道選手権大会が控えているそうだ。「以前は自己をコントロールするという概念について無知でした。コーチングを通してその方法について知れて良かったですし、これからも自分にはコーチングが必要だと考えています」と語った。ブレない目標の作り方を手にし、自分の強みも自信に変え、意識的に集中力を上げられることを知った今、次への新たな挑戦へと歩み出している。最後に篠原選手にとって成功とは何かを聞いてみた。
篠原選手:挑戦し続けていくことです。僕は幼少の頃からずっと空手を続けていますが、何しろ空手が一番好きで、僕にとって一番輝ける場所が空手道なのです。そして今、2020年東京オリンピックに向かって挑戦している最中です。