お金がなくても一緒にサウナに行って喋って、裸で、動物に戻る。そこでは上も下もなく、本当に皆平等。サウナって最高です
最近はどのようなライフスタイルを送っていらっしゃいますか?
だいたいずっと出張に出ていて、朝も夜もサウナに行って、その間に仕事。パソコンいじったりしながら仕事して、運動できたらしてって感じかな。夜は誰かとお食事が入ってる。土日は札幌の家に帰りたいけど、最近は月3、4日しか帰れなくなってる。
ご自宅にはサウナはないんですか?
ない。ストーブはめちゃくちゃいっぱいあって、何年も前に図面も作ってて、場所も部屋も全部決まってるのに、それを実際に作る暇がなくなっちゃった。人のサウナばっかり作ってるから、自分のが一番最後になっちゃって寂しいよね。
ストーブまでご自身で作られるんですか?
フィンランドから輸入しているんですよ。なぜなら、日本って施工も込みになっちゃっていて、サウナストーブだけでは買えなかったんです。それだとやっぱり面白いものって作れない。ストーブさえあれば、いろんなデザイナーさんが入って自分たちで設置して、もっと面白いものできるでしょ。
フィンランドから輸入しているストーブ。他にも多種類ある
サウナ以外に今夢中になってることや注目してることはありますか?
ビジネス的には、散骨の会社をやりたいと思ってる。俺自身別にお墓に入りたいわけじゃないし、どうせだったらサウナか水風呂に撒いて欲しい(笑)。これからどうしようって思っているので、すごく興味がある分野。ほかに今、個人的にやりたいのは、サウナのめっちゃくちゃ面白い水源とか、絶景の所に自分たちのサウナをどんどん作っていくこと。プロデュースはよくやるけれど、自前で運営している施設はまだないから。
めぼしい場所はありますか?
ある。「寒の地獄旅館」っていう大分の霊泉があって、「冷」泉じゃなくて、文字通り「霊」泉で不思議な水なの。硫黄のめっちゃ冷たい水風呂で、7月から9月の間だけ冷たいから、夏の間しか営業してなかったの。僕は昔からそこにサウナを置きたいって言ってて、今、オーナーと計画中。 あとは日本全国のサウナを置きたい所に自前でサウナを置いていって、楽しむみたいなことをしていきたいね。
左:寒の地獄旅館の水風呂 右:寒の地獄旅館のオーナーと
ますます楽しみですね。SAUNACHELIN(サウナシュラン)も、盛り上がっていますね。
サウナシュランは、いろんな施設が切磋琢磨して、面白いものをどんどん作るところが多くなればいいなっていう思いもあってやってます。それで、昔は勝手に選んで賞状を送りつけていた(笑)。毎年やっていて、今はJALさんが協賛したりしてくれてるけど、ランキングをお前らがつけるのか、って怒られそうなものだけど、1位とか2位とか順位をつけた方が話題になりやすいのでランキングにしています。
お医者さんとサウナ学会の活動もしていらっしゃいますね。
サウナ学会は、本当にサウナが健康にいいことを証明したくて始めました。以前は、サウナを知らない温泉の専門家が、サウナから急に水風呂に入るのは良くないとか、必ず雑誌とかで言ってたんですよ。だけど、世界中に昔からあるのに、そんなわけないだろうと思ったんですね。心臓外科は心臓の負担のこととか、循環器系、眼科や耳鼻咽喉科だって違った見解があると思うし、皮膚科だって皮膚科なりのサウナに対しての観点があると思うので、みんなに意見を言ってもらいたいんです。過去には相撲取りが倒れたら全部サウナのせいにさせられたこともあったので、ああいうのをどうにかやめたいっていうのが一番のきっかけだったね。知り合いの医者に声をかけて、「学会を作るからちょっと手伝ってくれ」って言って。
すごい行動力ですね。学会を作って何か発見はありましたか?
色々実験したりすると、やはり脳や身体に良い部分が解ってきました。論文が集まってきたりしているしね。今後はおそらく、法律を変えなきゃいけないところがあります。1948年に出来た法律があって、今とは全然違うナンセンスなことをいまだに守らなきゃいけないので。それをどうにかしないと、水着でも男女が一緒にサウナに入れない地域もある。裸で入るって言ってるわけじゃないんだし、そういうところもちゃんと変えていくようなサウナ活動もしないといけないかもしれない。恩返しっていう観点が根元にあるから、サウナを擬人化してるんだけどね、サウナ“いいやつ”だからさ(笑)。
では、親方にとってチャンスとはどういうことだと思いますか?
チャンスの時って感じるんだよね、「これ、何かあるかもしれない」とか。でも、好きなことがあったら、もうチャンスかもね。例えば歌手になりたいと思って目指すんだけど、歌が下手だとするでしょう。でも歌い続けてると、もしかしたらその先にレコーディングの仕事とか、アーティストのボイストレーニングの仕事とか関連する何かがあるんだけど、好きな方に進んでいかないと絶対にその分野は見えない。好きでやってみたいならまず進むべき。例えば美容の方に行きたいんだったら、ヘアメイクさんもあるけど、もしかしたらハサミを研ぐ仕事が向いてるとかね。その進む方向、行かなきゃいけない方向は、分かるような人間になってると思ってて、嫌だなと思ったらそっちは行っちゃ駄目な方向だし。嫌だと思ったら絶対もう無理なんだよね、疲れちゃうし。好きな方向に行けば何かある。
今まで掴んだチャンスの中で一番だなって思うのは?
サウナじゃない?まだ大したお金にはなってないけど、お金のところじゃなく、掴めた果実はすごく大きかった。サウナが好きで、T シャツ一枚たった数万円から始めて、サウナのプロデュースとかやってみたいなって昔から言ってたことを今本当にやれてるから。幼なじみとか同級生たちもその話を聞いてたから、「本当に実現したね」みたいに言ってくれてる。「 女性がサウナハットをかぶってサウナに行くようになったらウケるよな」って、大輔と笑いながら言ってたのが現実になってるし、若い子達がどんどんサウナに行ってイメージが変わったらいいなって言ってたのが本当にそうなってるでしょう。見たかった世界がどんどん広がっている感じはします。
サウナ愛好家の仲間達と、エストニアのムースカサウナにて
では、親方にとって成功とは何ですか?
自分のやりたいことができたら成功かもね。だから僕は大成功ですね(笑)。
成功してる人と成功してない人の違いがあるとしたら?
やって楽しいことをしてたら成功してると思うんだよね。別に失敗しても、やりたいことをやってるんだったら成功してるじゃん。それは成功としてもいいんじゃないかなと思うけどね。
ご自身以外で、世の中でもっとも成功してるなと思う人は?
大輔(サウナ師匠)、成功してるよね。アイツもやりたいことやってるからさ。
まだ叶ってない夢があったら教えてください。
めちゃくちゃいっぱいある。ゴローズのアクセサリーが好きで、まだ欲しいものがいっぱいある。あとは、アイスランドのブルーラグーンとか、行ってみたい。他にもまだ行けてないサウナに行ってみたいし、温浴とか、やりたいことはまだまだいっぱいある。
3年後、5年後、10年後のご自身はどうなってると思いますか?
サウナおじさんみたいになってるんじゃない?今もそうだけど(笑)。色々自分が作った施設ができてきてるから、そういうのをずっと見ていくのは楽しいだろうな。10年後はどうなってるんだろうね。サウナ界のうるせえ親父みたいなのだけはなってたくないと思う(笑)。いいパイセンみたいになってたらいいよね。
最後にサウナの醍醐味をお聞かせください。
お金がなくても一緒に行って喋って、裸で、動物に戻る。サウナストーブを見てると、人間が焚き火に寄ってる感じに見える時がある。人間が本当の根元である動物に1回戻れるというか。しかも何もつけてないから威張ることもできない。裸で威張ってもしょうがないから(笑)。俺はフェラーリ持ってるんだって言ったって鍵もないし、リシャールの時計持っててって言ったってサウナに持ち込めないし、いいものって言ったって、2、3000円のサウナハットくらい。だからみんなフラットになれるんだよね。サウナに上手いも下手もないし、サウナの中では本当に皆平等、上も下もない。そういう感じがあるから、サウナっていいんだよなぁ。最高です。