ON COME UP
#17 | Sep 13, 2016

ネット世代の表層も、闇もリアルに言語化するシンガーソングライターの大森靖子

Interview: Hamao / Text & Photo: Atsuko Tanaka / Photo Retouch: Koto Nagai

未来に向かって躍動する人たちをフィーチャーする“On Come Up”。第17回目のゲストは、8月24日から3部作で「ピンクメトセラ」などのシングル曲をリリースしている、ガーリーでロックなシンガーソングライターの大森靖子さん。武蔵野美術大学在学中に弾き語りを始め、激情型などと称される独自のスタイルを確立。大森さんは、元「モーニング娘。」の道重さゆみさんをこよなく愛するアイドルオタクでもあり、現代の若者の潜在的な闇をリズミカルに言語化したり、緩急激しく観客の情緒をかき乱す圧倒的なライブパフォーマンスを演じたりする、サブカルを突き抜けて顔を覗かした新たなポップスターである。どの様にしてそのスタイルにまで到達したのか、器用に何でも上手くこなす幼少期や、激しく揺れ動いた少女時代、歌が届いていかないことに悩んだ青年期や、結婚と出産などの半生と共に語ってもらった。
PROFILE

シンガーソングライター大森靖子

新少女世代言葉の魔術師。超歌手。弾切れも気にせず畳み掛けるように言葉を撃ちまくるジェットコースターみたいな弾き語りや、ときにギターすら持たないアカペラによる夜のパレードのような空間制圧型ライブの評判が広がりメジャーデビュー直後2014年11月26日、道重さゆみさんモーニング娘。卒業、現在道重再生待ち。 斬新と不思議と諦念とワガママと創造と焦燥に生きるかわいい女の子とおっさんLOVE。

大森靖子

小さい頃はどんな子供でしたか?

小さい頃は絵や作文、習字とかが得意で、基本的に何でも出来るタイプの子供でした。ピアノも習っていて、練習は結構苦痛だったけどJ-POPをコピーしたりして楽しんでました。でも中学受験の時に私より勉強が出来る子がいることが分かって、全て崩れ去ったんです。1番じゃなきゃ意味がないって思ってたし、1番になれないことの恐怖もあったから勉強しなくなっちゃった。それからは挫折し続けて、色んなことから逃げてましたね。

大森さんにとって、通っていた学校はどういう場所でしたか?

私立の進学校に通ってたんですけど、学校には可愛い子がいっぱいいて、手紙とかいっぱい落ちてるし、手紙交換とかするとプリクラくれたりするし、そういう素材が多い場所だなと(笑)。プリクラをもらうことや、かわいい子と一緒に帰るとかご飯しに行くことに命をかけてたんです。

学生の頃は金髪だったそうですが、いつ頃からどういう心境で?

中学1年か2年の夏休みの時。あんまり何も考えずに「金髪かっけー!」って(笑)。進学校だったから、ちょっとのことで目立っちゃうんですよ。学校内でもヤンキー扱いされてあぶれるし、学校外で遊んでいる人にも「あいつ進学校だから」って扱いされてあぶれてましたね(笑)。

活動で学んだことのうち、学校教育で教えてくれなかった大切なことは?

学校はあんまり行ってなかったから、そんなに教えられてないです。

逆に学校で教えられたことの中で大切なことは?

・・・ない(笑)。でも学歴がある方がいいので、ずっと卒業だけはした方がいいと思ってました。

ご両親はどういう方だったのですか?

母親は元教師で、父親は公務員です。若い頃は反発してよく喧嘩もしましたね。今話しても、やっぱり父はちょっと変わってるなって思いますけど(笑)。

大学の時に愛媛から上京されて、東京という街は来てみていかがでしたか?

初めて来たのは大学受験の時。本当は109に行きたかったんですけど、真っ黒なギャル達が入り口を占拠していると思っていたので、恐くて行けなかったんです(笑)。愛媛の人にとって109は神みたいな存在だったから。結局無印とカラオケにしか行けませんでした。

昔から歌うのが好きだったそうですが、歌手としてやっていこうと思い始めたのはいつ頃から?

大学生の時に付き合っていた彼氏がメロコアのバンドをやっていて、メンバーの一人でさぼりがちな人の代わりに私がライブで歌うようになりました。その時はまだ歌手でやっていこうとは思っていなかったんですけど、既に曲も作り始めていて、そのバンドではやれない自分がやりたい曲を書きためてました。本気で歌手でやっていこうと思い始めたのは、ソロで弾語りを始めてから。最初の2~3年は客が1人とか2人とかいうこともしょっちゅうでしたけど、私は売れるって思い込んでましたね。根拠のない自信があったんです。

普通だったらめげてしまいそうな状況ですが、大森さんはなぜ売れると思っていたのですか?

他の皆がやっていることの逆を意識して、誰もやっていないことを探してやっていたから。例えば弾語りは、その頃他の女の子達がやっていたピアノではなくギターでやろうと決めて、弾き方もカッティングを綺麗にならしたり指弾きするのが主流だったから、私は凄い強いストロークでやることにしました。自分は良い曲作ってるし、かっこいいから売れると思ってたんですけど、すごいショックなことがあって。2011年にある監督と私のドキュメンタリー映画を作っていたんです。そうしたら、知り合いのミュージシャンの女の子が、監督に「何で頑張ってないあの子のことを撮るんだ」って言ってるのを聞いて、「えっ、私頑張ってないんだ…」と思って。じゃあもっと頑張らないとって、それまで以上にたくさんのライブに出るようになりました。

大森さんの弾語りのスタイルはどうやって築かれたのですか?

同じイベントに出演してる人気のないバンドの人の良くないところを一つずつ真剣に分析したことがあったんです。その時に弾語りはメロディーが良くても眠くなりがちだから、眠くならない曲を作らなきゃいけないと気付いて。私は元々喋るのが早いんですけど、歌う時も早口で言葉数を多くするようにして、歌詞には面白いものや引っかかりのある言葉を使って、前のセンテンスとの組み合わせが面白くなるようにしました。作り上げるのに3年くらいかかったかな。その頃は地べたに座って下を向いて歌ってましたね。

レーベルや事務所に入ることなくご自身で活動を続けた後、2014年にエイベックスからメジャーデビュー。数多くのミュージシャンがいる中、大森さんが選ばれた理由はどこにあると思いますか?

他に弾語りをやっていた女の子達は25歳くらいまでにデビューして、CDを出したらそれで終わってしまった子達が多かったんです。女の子って初めは器用で何でも出来ちゃう人が多いけど、そこから先の頑張りが難しかったりする。私は逆に若い時に売れなかったから、その期間に勉強出来たし、自分の音楽に向き合う時間が取れた。メジャーデビューする前に、自分の中で継続していくぞという基盤が出来たのが良かったと思います。それがないままエンジンかかっていたら、多分追いつけなくて途中でもういいやってなってたかもしれないですね。

 

WORLD HAPPINESS 2016

メジャーデビュー後に、音づくりで変わった点などありますか?

メジャーデビューするということは、それまでの私のライブを見たことのない人達も聴くことになるから、今までのファンを意識した音楽作りをしても通用しなくなってくる。前は弾き語りだったから、客が眠くならない様に緊張感のある言葉をず〜っと歌ってないといけなかったんだけど、音源やYouTubeで遠くにも届くような作りにしなければならなくなるので、音的に楽しい言葉を使ったりして楽しみました。言葉から感じる感情も、ライブと音源からでは感じる強度が違うから、そういう点で音楽の作り方は変わってきたと思います。

音楽の道で生きていくと決めてから、悩んでふさぎこんでしまった時期もあったそうですが、その時と比べると今は周りにたくさん人がいると思いますが、その違いに何か感じることなどありますか?

インターネットと共に育った世代で趣味で繋がってるツールもいっぱいあったので、家にいても1人という感覚はなかったし、周りに人がいてもいなくても同じですね。ネット上で彼氏が10人くらいいたことがあって(笑)、メチャ楽しかった。言葉だけで人を好きになれるのってすごいですよね。学校では言えないことを言えたり、どっちの世界がリアルか分からなくなってました。

最近気付いた自分に足りないことは?

いっぱいあります。どうでもいい人との関係を持続するのとかは絶対出来ないです。社会的にこれはやらないといけないとかいうのも出来ない。あとは社交。人見知りではないので普通に人と喋ることは出来るんですけど、挨拶はこうしないといけないとかいうのは出来ないです。

憧れの人や尊敬する人は?

道重さゆみさんです。道重さんは、「モーニング娘。」での活動を12年間やりきってくださり、膨大なデータも残し卒業して下さっているので、ファンとしてはそろそろ会いたいですが、会いたいということが本人の負担になったらどうしようと考えてしまい何も言えない感じです。あと、つんく♂さんと小室哲哉さんも尊敬してます。女の人の夢を叶えるのを手伝う仕事をしていてかっこいいです。

好きな歌や映画や本など、影響を受けたものは?

本はあまり読まなくて、夏目漱石の「こころ」と、大槻ケンヂさんの「グミ・チョコレート・パイン」全シリーズ3巻だけ。それ以外の本は最後まで読めたことがなかった。自分の歌詞もそうなんですけど、本って内容が前後でちぐはぐしていることが多いので、全部理解出来なくて全然先に進まないんです。あとは、ジョージ朝倉さんの漫画を買い漁り、何度も読んだ記憶があります。一番のお気に入りは「ハートを打ちのめせ!」でした。歌はJ-POPの売れているものを全部聴いてました。カラオケが大好きだったんで、カラオケで歌うためだけにCDをレンタルして聴いて歌いに行ってましたね。

今年の1月に出版された「かけがいのないマグマ」では、辛かった出来事も赤裸々に語っていらっしゃいます。詩人で小説家の最果タヒさんと組んでみて、また読者からの反応はいかがでしたか?

若い子達には勇気とか肯定感を持ってもらえたみたいで、反応はすごい良かったです。過去の出来事については、私には辛かったという感情はなくて、淡々とあった出来事をひたすら最果さんに喋りました。最果さんもそれを気持ち良く感じて、そのままいい感じの文章にして下さった。最果さんのことは前から存じていて、お互いがお互いのファンだったんです。私が「魔法が使えないなら死にたい」というインディーズ2枚目のCDを出した時に、最果さんがCDを聴いたとTwitterに書いて下さって、それからやりとりをさせてもらうようになりました。

3作でシングルをリリースされるいうことで、8月24日に「ピンクメトセラ」と「勹″ッと<るSUMMER」、「ウエディング・ベル」をリリースされました。「ピンクメトセラ」はWebアニメとして、7月から放送が始まった「逃猫ジュレ」のテーマソングにもなりましたが、どんな想いを込めて曲を書いたのですか?また、ジュレ役として声優に初挑戦されたそうですが、やってみていかがでしたか?

t.o.Lさんの脚本をどう私の身の回りの現代落とし込むか、ということを考えて作りました。好きなものと嫌いなものがどんどん現れる“リンシノモリ”に迷い込んだ逃猫ジュレが、記憶をなくしているところから始まる物語で、何かからずっと逃げていて。私はずっと携帯で育ってきた人間なので、そこに捨ててきたものが人格を持ったらどうなるかとか、Siriの都市伝説とかを組み合わせて携帯やコンピューターが知能を持ち始めたらどうするかという設定にして歌詞を書きました。声優は楽しかったです。ジュレの面倒くさいことからすぐに逃げちゃうところが自分と一緒だなって思いました。

「勹″ッと<るSUMMER」のコンセプトは?

私にとってのカリスマはヤンキーなんですけど、自分の世代の共通言語というか、みんなに届かなかった、とても大事なことを歌にしたいと思いました。例えば他校生のカバンを彼氏にもらっている女の子はかっこいいとか、この香水つけている人がかっこいいとか、今はどうでもいいようなことに、昔は命をかけてたじゃないですか。そういう瞬間を生きている人のノリみたいなものを詞にしました。

大森さんは2年前に結婚されましたが、「ウェディング・ベル」は、81年にヒットしたSugarのカバー曲ですね。どういう経緯でやることになったのですか?

私がこのカバーをずっとやりたいと思ってたんです。人前であんな恥ずかしいことする結婚式なんてものをしたくないから、私は結婚しないって思ってたくらい結婚式が大嫌いだったんですけど、「ウェディング・ベル」の世界観にある結婚式はすごく楽しそうに見えた。決められた喜びと幸せに対して「幸せです」と言っているところに、全然関係ない女が壊しにやって来るっていう設定がすごく好きなんです。MVでは結果自分の呪いと向き合うような構成にしています。

10月1日に始まるツアー「TOKYO BLACK HOLE TOUR」では全国12カ所を周りますが、達成したいことや今回新たに挑戦してみたいことがあれば教えて下さい。

アルバムでは色々なアレンジャーに関わってもらっていて、音的には多様になっているものをライブで上手く表現しなきゃいけないなと。それが出来るメンバーを揃えて、自分という核をどっしり構えて、強くて速い印象の音楽に堅さをプラスしたものを表現したいなと思ってます。大体のイメージは出来てるんですけど、終わった頃には多分すごい疲れてると思う(笑)。

社会で起こっていることで気になっていることは?

最近起こっている事件やニュースは大体全部気になってます。

結婚したことで、どんな変化がありましたか?

結婚は人生を継続する意味を教えてくれたかな。このままの私でいいって言ってくれる人が現れたので、良かったです。

旦那さん、素敵な人なんですね。

 はい(照)。

母になったことでの変化はありましたか?

母になったことで変わったことは、あんまり自分では分からないです。子供がカワイイしかない。

大森さんが思う理想の女性像とは?

斬新で理解出来ない人。既存のカワイイに甘えない人がいいです。自分もそうなりたいし、自分が見ていたいと思う女性もそう。

他人が思う自分の像と、実際の自分自身との差があると感じる部分を教えて下さい。

ファンは分かってくれてる人が多いと思うけど、私のことをよく知らない人達に思われてる自分と、実際の自分は大分差があると思います。例えば、ネットのニュースに“ファンとキスするアイドル”とかすごいことを書かれることもありますけど、私はいたって普通に人間の活動をしてると思います。

自分でやっていることで日本や世界を変えられるとしたらどんなところだと思いますか?

10年後、20年後に面白いことしようとする人が20~30人は増えていると思います。

一気に視界が開けた瞬間や、自分が成長したと実感した出来事を一つ挙げるとしたら?

2013年にCLUB QUATTROでやったワンマンライブかなぁ。大きなライブハウスでのライブは初めてだったんですが、自分で企画して色んな人を巻き込んで、必死に600人のお客さんを集めました。その中には、客が全然いない頃からずっと応援し続けてくれていたファンや、知り合いがたくさん集まってくれていたんです。そしてアイドル好きだった私のために、皆がサプライズでピンク色のサイリウムを用意してくれていて。ピンク色に輝く客席と、たくさんの知ってる顔を見て、自分の人生の中で自分のためにこんな光景が起こるなんて思ってなかったので、本当に感動しました。それまで下を向いて歌ってたんですけど、その時からお客さんの顔を見ながら歌うようになりました。

大森さんにとって成功とは?

やめないこと。

今後やってみたいことを教えて下さい。

人はいずれ死ぬということを最近感じてるので、絶対に会っておきたい人がいたら、会えないとは思わずに、会えると思い続けています。つんく♂さんとは、道重さんのニューヨークでのライブを見に行った時に初めてお話させて頂いたんですが、その後つんく♂さんの容体が急変して、日本に緊急帰国して手術されたんです。そういうタイミングで声を交わせたことを思うと、会いたい人には無理やりにでも会っておきたいなと思います。

3年後、5年後、10年後の自分はどうなっていると思いますか?そして、どうしたらそれになれますか?

子どもを育てていると3年なんてあっという間と友人が言っていたので、そうならないようにひとつ一つのことを忘れないように体験していきたいです。それと30歳までに武道館でライブしたい。この年齢じゃないとできないライブがあり、それを武道館でやりたい。あとは近いうちヒット曲が書ければいいな。何が売れるか分からないので、継続的に曲は書いていこうと思ってます。

大森靖子 Information

The Truth

New SG「ピンクメトセラ/勹″ッと<るSUMMER」
2016年8月24日(水)発売

【CD ONLY】¥1,000(税抜)/AVCD-83671
M1:ピンクメトセラ
M2:勹″ッと<るSUMMER
M3:ウエディング・ベル

【CD+DVD】¥2,500(税抜)/AVCD-83670
(CD)
M1:ピンクメトセラ
M2:勹″ッと<るSUMMER
M3:ウエディング・ベル
(DVD)
1:ピンクメトセラ(Music Clip)
2:勹″ッと<るSUMMER(Music Clip)
3:ウエディング・ベル(Music Clip)

【CD+DVD(ファンクラブ限定盤)】¥3,500(税抜)/AVC1-83672
(CD)
M1:ピンクメトセラ
M2:勹″ッと<るSUMMER
M3:ウエディング・ベル
(DVD)
大森靖子2016前半ライブ映像【海を割るおっさんのパンティ】

TOWER RECORDS
TSUTAYA
HMV
amazon


大森靖子2016年全国ツアー「TOKYO BLACK HOLE TOUR」
10月1日(土) AKITA● 湧太郎 國之譽ホール <弾語り>
open16:00 start17:00
10月8日(土) NAGASAKI● 旧香港上海銀行長崎支店記念館 <弾語り>
open18:00 start 18:30
10月9日(日) OITA● 別府ブルーバード劇場 3F <弾語り>
open18:00/start19:00
10月14日(金) NAGOYA● CLUB QUATTRO <バンド>
open18:00/start19:00
10月15日(土) SENDAI● MACANA <バンド>
 open18:00/start18:30
10月22日(土) OKAYAMA● CRAZYMAMA KINGDOM <バンド>
 open17:00/start18:00
10月23日(日) FUKUOKA● BEAT STATION <バンド>
 open17:30/start18:00
10月29日(土) SAPPORO● PENNEY LANE24 <バンド>
 open17:30/start18:00
11月4日(金) HIROSHIMA● LIVE JUKE <弾語り>
 open18:30/ start19:30
11月10日(木) OSAKA● BIGCAT <バンド>
 open18:15/ start19:00
11月11日(金) MATSUYAMA●サロンキティ <バンド>
 open18:30/start19:00
11月18日(金) TOKYO● ZEPP TOKYO <バンド>
 open18:00/start19:00

■チケット
(東京以外)オールスタンディング¥4800(税込)
(東京のみ)1階スタンディング¥5500(税込)
(弾語り公演) 全自由¥3,800円(税込)
※ 入場時ドリンク代別途必要。

一般発売:2016年8月27日(土)10:00より全公演一斉発売
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