K-SUKE
マジシャンになることを志したきっかけは何ですか?
小学生の頃に、目の前でプロマジシャンのカードマジックを観たのがきっかけです。ルパン3世のストーリーをテーマにしたカードマジックだったのですが、その時にマジックを披露してくださった方の事を今でも探しています。いつか会えたら、お礼を言いたいです。
自分のスタイルを言葉で表すと?
「フリースタイル」です。僕はショーを構成する時に細かい台本を作りません。目の前にいるゲスト、観客の皆さんの反応や、その時々の状況に応じて、演じるマジックの内容を変えたり、見せ方を変える事が出来ます。そこが他のマジシャンと大きく違う所かもしれませんね。
いつからそのスタイルに?きっかけはありましたか?
19歳の頃です。当時、アメリカで修行をしていて、師匠に現地の日本人の間で有名な寿司屋さんに連れて行って頂いた時の事です。そのお店の板前さんは、僕達に注文を聞かなかったのですが、食べたいネタが自然に出てくる。まさに魔法でした。その板前さんは僕たちの会話を細かく聞いたり、僕たちの雰囲気を見ながらネタを出すと言っていて、その時に「これだ!」って思いましたね。マジックショーでもこの感覚を提供出来たら、本当の魔法に見えて最高だなと感じました。
オリジナルでいるために気をつけていることは?
他の同業の方のお仕事を拝見する際に、“その人がこだわっている部分”を観察するのでは無くて、“その人がこだわれていない部分”を観察することが大切だと思っています。そうすれば自然に自分だけのスタイルが出来ると信じて勉強しています。
最近気付いた自分に足りないこととは?
スイッチのオンとオフの切り替えの早さ、ですかね。元々自信はあったんですけど、最近になって有名なタレントさん達とお仕事をさせて頂く機会が増えて、「自分はまだまだだな」と感じます。
通っていた学校はあなたにとってどんな場所でしたか?
「マジックの練習の場」です。職員室で先生に質問をする時に、手にコインを隠しながらペンを持ったりしていて、それでバレなかったらOKみたいな(笑)。でも、最近お世話になった先生方にお会いした時に「お前ずっとコイン持ってたよな、言わなかったけど。」と言われて赤面しました。
高校は進学校だったとのことですが、日本の大学へ進学するという選択肢はありませんでしたか?高校卒業後の進路を決めた時の心境を教えて下さい。
その選択肢は無かったです。当時の自分の夢や目標に対して、日本の大学に進学する必要は無かったと感じていました。むしろ、いち早くプロとしてマジックを自分の生業にしたかったです。
ご両親は賛成しましたか?反対しましたか?
賛成してくれました。「やりたい事が見つかったのだから、そちらを選びなさい。早いに越した事は無い。」と、応援してくれました。
活動の中で学んだことのうち、学校教育では教えられなかった大事なことはありますか?
人を楽しませるというところだと思います。目の前の人に、自分の芸や自分の姿を見せて最高の時間を過ごしてもらうという事。教科書や授業では学べない部分ですよね。
あなたにとって「個性」とは何ですか?
自分の「個性」は自分で見つけるのが難しいですよね。どんなに頑張っても、自分のことは外から見れない。だから、仲間や他人からの評価は自分の「個性」を知る上で重要だと思っています。
仲間や他人からは、あなたの個性をどの様に思われていますか?
“高級感”と言われます。確かにハイブランドのVIP顧客向けのパーティーや高級ホテル、会員制のラウンジ等でもショーが出来るというのは、一つの強みかもしれないですね。
マジシャンになるために、一番必要なことは何だと思いますか?
とても深い話になりますが、やはり超常現象を披露するわけですから、“不思議な事を起こせる者”としての雰囲気を持つ事は必要です。普通の人が現象を起こしても、何かトリックを使って上手い事をしたとしか思ってもらえないですよね。ミステリアスなオーラはマジシャンには必要不可欠です。
下積み時代の一番辛かったこと、嬉しかったことは何ですか?
辛かった事といえば、やっと立てたステージで大怪我をした時です。ようやく人前で披露出来る事になった「イリュージョン」をやっている最中に、諸事情があって思いっきり足を切ってしまい、衣装が血だらけになってしまったんです。それでも途中で止めたらイベントが台無しになってしまうので、やりきりました。演者側の問題なんてお客様からしたら関係無い。エンターテイメントをする事の厳しさを知った瞬間でした。嬉しかった事は、僕のマジックをたまたま見た小学生の男子2人組が感動してくれて、彼らの小学校でマジック部を作ってくれた事です。それを聞いた時、「絶対に彼らが誇れるようなマジシャンになってやる」と決めました。
憧れの人や尊敬している人は誰ですか?
海外のマジシャンですが、David Blaineという人ですね。パフォーマンスも素晴らしいのですが、何が凄いって海外のセレブ女優と、よくスキャンダルになるんですよ。マジシャンの中でそういうレベルに行っちゃった人って彼だけなんじゃないかな?と思います。そこを尊敬してしまいます(笑)。
マジック界で言う一流なマジシャンというのは、どこが違いますか?
やはり誰が相手でも、相手が何人いても、テレビ画面越しでも、空気を掴んで場の一体感を確実に作り出す事が出来る。一流と呼ばれる方々は、この空気作りが凄いと思いますね。
好きな歌、映画や本などで一番影響を受けたものは?
伊坂幸太郎さんの本はマジックショーを創るときの構成の参考にしている事が多いです。あの絶妙なタイミングで、張られた伏線が回収されていく感じをショーの中でも表現出来たらと影響されました。
社会で起こっていることで、気になることは何ですか?
やはり最近のデジタル技術の向上は気になります。技術の進歩に合わせて、僕たちも演じるものを対応させていかなくてはと思いますね。例えば、ほぼ無音で飛行出来る超小型のドローンだとか、紙のような薄さと質感を持った液晶などが開発されると、今まで不思議だったものが不思議でなくなってしまう時代が来ると思うのです。
マジシャン・ビジネスを魅力的に語って下さい。
未だにマジシャンは「人を騙す職業」だなんて仰る方もいますが、僕にとっては違います。数あるエンターテイメントの中で、唯一「不思議さ」で魅せるエンターテイメント、それがマジックです。特別なトレーニングを重ねてきた自分の成果が人前に出て評価される。そこが魅力ですね。
国内と海外のマジック業界の違いはどんなところですか?
日本国内では有名でなくても、マジックだけで生活をしていけるマジシャンが実は沢山います。これを国外のマジ シャン達に話すと、みんな驚くんです。海外の場合は、有名なマジシャンになれば膨大なお金を手にする事が出来る反面、無名なマジシャンは自分で考えたマジックを売るなど、他の仕事をしつつ、マジシャンとして活動していると見て取れます。国内の場合は、マジックバーや高級レストランなど、マジシャンが契約して活動出来る場所が多く存在しますし、海外に比べると一流でなくてもそれなりに良い出演料が支払われているといったイメージがあります。なので海外の方が「何としても成功してやろう!」というハングリー精神がある気がします。
K-SUKEさんの最も得意とするマジックは何ですか?
「シーンマジック」と呼ばれる新ジャンルです。人から借りたものや、たまたまその場にあるものを使ってその場でショーを創るマジックの事です。自分はこれが一番、本物の魔法に近いものだと思っています。
自分のやっていることで、日本や世界が変えれるとしたら、どんなところだと思いますか?
自分がメディアの露出を増やしたいと思っている事には理由があります。僕のパフォーマンスを通じて、もっと沢山の方々にマジックの魅力を伝えて浸透させたい。そしていつか外を歩いている方々の会話の中で「映画でも観に行く?」というような感覚で「マジックでも観に行く?」と言って頂けるような世界を創りたいです。
他人が思う自分の像と、実際の自分自身との差があると感じる部分を教えて下さい。
マジシャンなので器用とか完璧主義と言われることが多いんですけど、実際は真逆で、不器用です。同業の方からは一匹狼と言われる事も多いのですが、結構な寂しがりやだと思います(笑)。
一気に視界が開けた瞬間や、自分が成長したと実感した出来事があったら教えて下さい。又、その時の感想も教えて下さい。
マジックショーはお客様との会話のキャッチボールの上に成り立つものなので、例えば「邪魔をしてやろう」という気持ちでマジックを観られていると、調子が狂ってしまうんですよね。でも、ある日急に、そのキャッチボールを殆ど自分からコントロール出来るようになった瞬間がありました。単純に場数を沢山踏ませて頂いた中での突然の成長だったと思いますが、目の前のゲストとの呼吸を合わせるコツを掴んだというか、、。マジシャンとして一歩進めた事を感じた瞬間でした。
3年後、5年後、10年後の自分はどうなっていると思いますか?そして、どうしたらそれになれますか?
3年後は今よりも高い知名度を持って、テレビや雑誌等のメディアで頻繁に使って頂けるようなマジシャンタレントになっていたいです。5年後は30歳。「マジシャン・K-SUKEの映画」なんかが公開されたら嬉しいです。東京オリンピックも開催されるので大きな舞台でのショーも視野に入れています。10年後は先にも答えたように“映画を観る様な感覚でマジックが観れる世界”を実現していたいです。その頃には日本中にマジックを観るためのシアターが沢山あったら素敵ですよね。もちろん、それを実現するためには沢山の若いマジシャンが必要だと思っています。だから、自分が今のちびっ子達の憧れのマジシャンになるしかないんです。幼い頃に自分がそうして貰ったように!!
取材協力: MAGIC TOKYO O
03−3796−2727
取材コーディネート協力: Makoto Komiya