IMPRESARIO KEYS
#15 | Jan 25, 2023

国内外のいくつもの大会で優勝を勝ち取った若きBMXレーサー。“かっこ良く楽しんで走る”大切さを胸に、世界に向けて掲げるあくなき挑戦

Interview & Photo: Atsuko Tanaka / Text: Atsuko Tanaka & Yukie Hashimoto

「IMPRRESARIO KEYS(インプレサリオ・キーズ)」第15回目のゲストは、BMXレーサーの増田優一選手。幼い頃からBMXを始め、5歳で初レースに出場、2度目に出たレースで優勝を手にする。10歳の時には世界選手権大会で3位を記録し、18歳で全日本選手権ジュニア部門で優勝、その2年後のジャパンカップと大東建託シリーズ(2021年)でも優勝を飾り、さらに全日本選手権(2022年)でも予選からの完全勝利という偉業を成し遂げた。そんな絶好調の増田選手がコーチングに出会ったのは2年前。コーチングを活用してどのような変化を遂げていったのか、3つの事例を用いて解説していく。
PROFILE

BMXレーサー増田優一

5歳でBMXを初めて、10歳で世界選手権3位になり、4年に1度のユースオリンピックに出場。ジュニア、U23全日本チャンピオンになった大阪出身のBMXライダー。現在は大阪体育大学に通いながら、パリオリンピックを見据え、ロサンゼルスオリンピックを目標に、活動をしています。

スポーツメンタルコーチ台本尊之

コーチング歴12年。コーチングとアドラー心理学で金メダリストをサポートしたスポーツメンタルコーチ。最高のパフォーマンスを発揮するメンタリティ『ゾーン』をつくることを得意とし、これまで主に中学部活生から日本代表選手まで1,500名以上のアスリートをサポート。コーチングとスポーツメンタルをわかりやすく教えることに定評があり、企業研修などのビジネス講師や体育系大学のスポーツ心理学講師なども務める。

【いいマインドがいいパフォーマンスを発揮させる】〜五感の刺激から、いいマインドの状態を思い出す〜

『過去に成功した実例を振り返り、どうすればそれが再現できるのか五感を使って思い出し、活用する』

実際のレースでうまくいった場面を再現して、自分にとってベストな感覚を見つけることが出来た。次に、ハイパフォーマンスを安定して発揮するための方法を模索した。

抱えていた問題

■競技結果を左右するスタートのタイミングにムラがある

当時の増田選手は、競技の結果を大きく左右するスタート時の動きだけでなく、タイミングにもムラがあった。いいスタートもあるが悪い時もある。毎回コンスタントにスタートできないことが課題だった。

増田選手:「強い選手は失敗が少なく、毎回同じタイミングと速さでスタートします。安定していいスタートを切り、レース中も「あいつ調子良さそう」と周りに思わせることで、他の選手は自分のレースに集中出来なくなる。レース前の練習でそう思わせられるかを含め、駆け引きなんです」

レースのスタート時、構えている様子(増田選手は左から3番目)

解決方法

■「BMXレーサーはカッコよく楽しく走る」という憧れの選手の概念を思い出す

いつからか結果ばかりを意識し、自分の中で一番大切にしている、小学校の頃初めて入れてもらったチームのモットーの「楽しく乗る」を忘れている自分に気づいた。そこで、そのチームのステッカーを見て、その気持ちを思い出しスタートを切ってみることにした。

増田選手:「BMXなので、がむしゃらに走るというより、ジャンプやスピード感でカッコいい走りをするのが一番。みんなが飛ばないところを飛んで目立ったり、最後はクールにジャンプ決めレースを終える。そんな「BMXレーサーはカッコよくなくてはいけない」という考えを、小学生当時のチーム代表の佐伯進(当時三浦進)から吸収し、「楽しく走る」という概念を教えてもらったことを思い出しました。それを忘れずにいることで自分の走りをしやすくなることが分かったので、当時のチームのステッカーをヘルメットの中側に貼り、緊張とプレッシャーに押しつぶされそうな時はヘルメットを被る前にそれを見て、その時の気持ちや楽しかった瞬間を思い出すようにしました。その結果、ポジティブにスタート出来るようになりました」

ヘルメットの内側に貼ったチームのステッカーをレース前に見て、大事なマインドを思い出すようにした

得られた結果

■最高のスタートを切れ、2022年11月に2つの大会で優勝!

「楽しく走る」が自分にとってのいいマインドであることが明確になり、いいスタートを決められる頻度が増え、レース展開も前に出ることが出来るようになった。そして2022年11月の JBMXF大東建託シリーズ第5戦大阪大会と、全日本選手権U23カテゴリーで優勝を手に入れた。

増田選手: 「BMXのレースって1発勝負なんで、スタート前はすごく緊張するんです。余裕で100%勝てる大会でも、少しでも遅れたら不利になり負ける可能性が出てくるので、結構身体も強張ったりして。でもそのステッカーを見ることで、「よっしゃ、やったろう」とか「こういう走りをしようかな」と楽しい気持ちになれました。また、2、3か月の間いろいろ試すうちに、「失敗しないように」というより、「こういう走りを見せてやろう!」という考えの方が良いパフォーマンスが出ることがはっきりと見えてきました。11月の大会でも、バッとスタートを切れて、「よっしゃ決まった!」って感じで、スタート後ももうがむしゃらに前を狙いに行けたので良かったです」


コーチ補足

■五感を活用して自分にとっていいマインドを思い出す

台本コーチ:過去の良かったレースや練習をいくつか思い出してもらうと、小学校の頃の「楽しく走る気持ち」があると、ものすごくいいスタートが切れそうということがわかってきました。そこで、レース本番でその気持ちをどうすると思い出せそうか、五感を活用しながら探求していきました。例えば、かっこ良くジャンプしている身体感覚を思い出す、あの気持ちを象徴する音楽を聴く、尊敬する代表の言葉を思い出す、飛んでるシーンをイメージするなどです。その中から「ステッカーを見る」というアイデアが出てきたので、大会のどのタイミングで(前日、レース直前、自転車乗る前など)ステッカーを見ると良さそうかを探っていったところ、ヘルメットの中側に貼って、レース本番の直前に見るのが良さそうとのことで、試してみると見事に成功しました。

コーチングはさらなる問題を解決する。次は、最近の事例を

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