【意識の向け先を変える】~自分らしさ・自分の強み・自分の成長に意識を向ける~
今行っていることと、自分の未来や人生とのつながりが感じられたことで、トレーニングのスケジュール化や、次のレースまでの期間の取り組みなどを、しっかり考え行動できるようになった。最後に、大事なレースで勝てない時の意識の向け先について考えてみた。
抱えていた問題
■目標のS級に手が届きそうなのに、考えすぎて身体が動かない
2023年前半当初は体調不良などもあり厳しいシーズンとなっていたが、春頃から調子を上げることができ、6月には目標のS級昇格を狙える位置まで来ていた。しかし、いろいろ考えすぎて頭の中がごちゃごちゃになってしまい、パフォーマンスを出し切れずにいた。
徳田選手:「競輪は1~6月/7月~12月の半年ごとの成績で級班(戦うランク)が上がれる制度なんです。6月頃は「点数を上げないといけない」、「S級を狙える」、「成績を出そう」など結果を意識すぎていたり、展開の中で動いての失敗も何度もあって「また失敗したらどうしよう」と考えすぎて、身体が動かなくなって上手くいかないことがありました」
解決方法
■意識の向け先を変え、本来の自分の良さや自分の成長に気づく
過去に失敗経験があると、同じような場面になった時に、「また失敗するかもしれない」という不安にフォーカスしがちである。だが、そんな時こそ「自分らしさ」や「自分の強み」、「自分の成長」に意識を向けていくことにした。
徳田選手:「僕は長距離タイプで、競輪の勝負のラスト800mをフルで動ける力があるので、短距離タイプの選手にしたら一番やっかいな存在。自分の土俵で戦えるレースをできることが強みなんです。さらに、そこに自分のレース展開に対する直感がマッチしていくと、より自分らしいレースをできていることに阿部さんと話す中で再認識できました。また、自分のレースやトレーニングの内容の現状把握を行ったことで自分の成長を再確認でき、自分のトレーニングと自分の脳みそが上手くマッチした感覚があって。「今の自分ならこの距離踏めるぞ!」と、仕掛けられる自分らしい自分が戻ってきた感じでした」
得られた結果
■勝負のかかった1戦で、自分らしく勝ち切り優勝
2023年前半のレースも残り弥彦(新潟)での1戦のみとなり、全て1着で優勝してもS級は無理かもしれないと思っていたところに、弥彦の前に平塚(神奈川)でのレースへの追加エントリーが来た。そして、その平塚でしっかりと優勝することができ、いよいよS級への昇級が見えてきた。
増田選手: 「セッションのおかげでスッキリしてレースを迎えられました。決勝では若い選手とラインを組み、「自分も結果残せる様に走ってね」と彼に伝えたのですが、「徳田さんが勝負かかってると僕も理解してるんで」と、僕の為に思いっきり走ってくれて。その気持ちに応えられ優勝を決められたのは自分にとって大きかったです。また、当初考えていた作戦とは違うレース展開となりましたが、それもレース前から「この場面でこの動きになったら、俺はこう行く」と想定を、敢えて頭の片隅に置けていたので、直感的に上手く動くことができました」
5:39:00頃から徳田選手が出場する第11レースの模様がスタート
コーチ補足
■自分らしさ、自分の強み、自分の成長に意識を向ける
阿部コーチ:人は過去の失敗を記憶として持っていると、同じような場面になった時に、「また同じようなことが起きたらどうしよう」と不安な部分にフォーカスしてしまいがちです。ですがそういう時こそ、「自分らしさ」や「自分の強み」、「自分の成長」に意識を向けていくことが大切です。「自分らしさ」や「自分の強み」は、自分らしくプレーできている時やその時の自分の状態を深ぼりしていくことで気づけることが多くあります。徳田選手はそれらを探求した結果、「自分の強み」が自分の土俵で戦い続けられること、また、直感的に状況に応じて臨機応変していけることが「自分らしさ」であることだと思い出しました。また、「自分の成長」は、現状把握やこれまで歩んできた道を振り返り、検証する中で気づけることがあります。徳田選手はこれまでのレース内容や結果、トレーニングのメニューや取組み方などを再確認できたことで、自分の成長に目を向けられるようになり、自分を信じていけるようになりました。
自分らしさや強みを再認識し、レースの結果に繋げることができた。S級昇格を目の前に控える今、最後に成功とは何かを聞いてみた。
徳田選手:一番の成功は、自分が立てた引退時期まで競輪選手を続けることです。引退は、後悔なくスパッと辞められる時、50歳くらいと今は考えています。一番最高のグレードの走りができて、自分で終わりをしっかり見極められた時が成功だと思います。