クリエイター達のスペシャルインタビュー。コロナウイルスの影響で受けた打撃や今後の業界の変化、気づいた大切なこと Part 4

2020/05/09

HIGHFLYERSの過去の出演者に、新型コロナウイルスを通して感じたことなどを取材したスペシャルインタビューPart 4。今回は、フランス・パリを拠点に活動する撮影監督の小野山要、同じくパリで活躍するショコラティエールの佐野恵美子、格闘家の菊野克紀に話を聞いた。

 

■小野山要 撮影監督 (フランス・パリ在住)

Photo: Vikesh Govind

最近はどんなことをして日々を送っていますか?

毎朝同じ時間にジョギングや筋トレをするようになりました。料理の楽しさに目覚め、栄養を計算しながら3食自炊しています。撮影監督としての仕事はほとんどできないので、コロナショックがなければ現在撮影中だった映画のことを考えたり、仕事仲間と連絡を取りあったり、将来的に新しいプロジェクトを立ち上げることができないか検討したり、本当に撮りたい映画はどういうものなのかを改めて見つめる機会にしています。

ジョギングコースのモンマルトル

人との接触ができない中、オンラインでしている活動があれば教えてください。

普段から人との接触が多すぎたのか、人との接触がなくなったことでストレスから解放され、心からリラックスできるようになりました。ずっと歯を食いしばってきたので、ちょっと休憩が必要だったのかもしれません。なので今できることを無理に探さず、自分自身と向き合うことができる重要な機会と捉え、ひっそりと暮らしています。Zoomを利用した映画人によるオンライン講義が世界中で行われているので、時々観たりしています。

あなたが携わっている業界はどのような打撃を受けていますか?

世界中の映像撮影が一斉に中断され、全員が一時的な失業状態にあり、長引けば非常に厳しい状況です。

その業界は今後どのように変わっていくと思いますか?

まず映画の本質的な部分。映画というのは、人間の呼吸が聞こえる距離、毛穴に滲む汗が見える距離にカメラを持っていき、そこに浮き上がってくる感情を描く、という表現方法が基本にあります。なので、テレワークで何とかするということが非常に難しい業界だと思います。もちろん部分的には遠隔で済ませるケースは増えていくと思います。例えば、監督やクライアントは家にいて、僕たち撮影部だけ現場に行く、とか。でもやっぱり、人間の心の機微をカメラで敏感に捉えるために、広角レンズで被写体の懐に潜り込みたい。なので、映画の制作方法は本質的には変わらないと思います。

次に、撮影現場の実際。撮影は今後、段階的に可能になっていく予定です。まずは撮影現場の総人数の限度が設けられ、その中でできることをやることになります。マスクの着用、頻繁な手洗い、消毒の徹底、体温管理、スタッフ同士のソーシャルディスタンスの徹底などが撮影の条件になりそうです。フランスでは5月11日から学校も再開する予定で、撮影も少しずつ戻ってくるといいなと思います。

最後に、映像業界の国際化問題。僕のようにヨーロッパで広告やミュージックビデオを多く撮ってきた撮影監督は皆、パリやロンドンなどに住んでいても、人件費の安い東欧などを中心に撮影をしてきました。ロサンゼルスをベースにしている人も、カナダや南米に行って撮影することが多いです。世界中を飛び回ると言うと楽しそうに聞こえるかもしれませんが、毎週のように飛行機に乗る生活が続き、ほとんど家に帰ることができなくなってくると、いくら楽しくても辛くなってきます。これを機に、地元で消費される映像はできるだけ地元で撮影する「地産地消」のような流れが生まれたらいいなと思っています。少なくともコロナショックが完全に沈静化するまでは国境間の行き来ができないため、まずは家の周りでの撮影から再スタートしていくことになりそうです。

コロナを通して気づいた大事なことはありましたか?

震災の時と同じように、改めて人間の命の尊さ、健康的に笑顔で生活できることのありがたさ、人との繋がりの大切さを感じています。

自分と向き合う時間が長いと、自分がどんなことが好きなのかわかるようになると思いますが、新たに知った自分について何かあれば教えてください。

久しぶりに立ち止まって心に余裕ができて、映画を本気で観始めた頃に影響を受けた傑作を何本も見直し、やりたいことが全く変わっていない自分に気づきました。初心に戻って再出発したいです。

コロナが落ち着いたらやりたいこと、挑戦してみたいことは?

良い映画を撮りたい、それだけです。

最後に、読者に向けて一言メッセージをください。

こういう状況にあって辛い思いをされている方が多いと思います。1日も早く平穏な日々を取り戻すことができるよう願っています。

小野山要 過去の記事はこちらより

 

■佐野恵美子 ショコラティエール(フランス・パリ在住)

―最近はどんなことをして日々を送っていますか?

私のお店はテイクアウトの食料品屋なので、外出禁止令が出てからも営業は可能でしたが、20日間休業していました。ありがたいことにお客様から注文したいと何件も連絡を頂き、今は徒歩圏内に住んでいる私とシェフパティシエ2人で営業時間を短縮してやっています。 公共機関を利用するスタッフは未だに自宅待機なので、その日に売れる分しか作れない状況ですが、お近所さんからは本当に感謝されます。 あとは、医療従事者の方へチョコレートを届けるボランティアも積極的に行っています。

―人との接触ができない中、オンラインでしている活動があれば教えてください。

時間に余裕ができたので、この機会にお店のSNSを整理したり、SNSを使って情報収集したり、フランス語、英語のオンラインレッスンを受けたりしています。

―あなたが携わっている業界はどのような打撃を受けていますか?

5月11日でフランスのロックダウンは段階的に解除されますが、レストランやカフェは未だ見通しが立たず、非常に厳しい状況です。 街には空き物件が多くなったと感じます。 ロックダウンが終わっても、お客様が戻ってきてくれるかという不安や、長期的にみて観光客の方は来てくださらない。 どう考えても、何か手を打たなければお店を継続していくことは厳しいです。

―その業界は今後どのように変わっていくと思いますか?

オンラインやテイクアウトの需要は増えると思います。 しかし、ケーキなどは非常に壊れやすく、扱いづらいものです。 他社に頼らず、自社で配達まで行うべきか、配送可能なケーキなどを試作する必要があると思います。また、人が食べる事をやめない限り、私達職人だからこそできる、安全で最高に美味しい物を作り続け、お客様に笑顔で幸せを感じて頂きたいと変わらず思っています。

―コロナを通して気づいた大事なことはありましたか?

「ありがとう」という言葉の大切さです。 お客様から「ありがとう」と帰り際に言ってもらえると、辛い環境でも気持ちがとても強くなります。感謝の気持ちは団結力を生むと思うので、私も、 このロックダウン中にスーパーや薬局で働く方などには必ず“merci(ありがとう)”と言うのを心がけています。あとは、衛生面の重要性からくるキャッシュレス社会の普及です。 お店での支払いは8割のお客さんは現金ではなく、タッチレス決算を選ばれます。 日本も大分増えたと思いますが、もっと普及すればと思います。

―自分と向き合う時間が長いと、自分がどんなことが好きなのかわかるようになると思いますが、新たに知った自分について何かあれば教えてください。

以前は全力で仕事をして帰って寝るといった 毎日だったので、よく寝るとこんなにも体調が良くなるものなのかと実感しました。 あとは、自分と向き合う時間が増えたことで今までさらっとしか目を通す時間がなかったSNSなどをゆっくり見ることができて、「こんな活動してる人もいるんだ」とか、「こんなことを考えて行動してるんだ」など、たくさんの新たな刺激をもらいました。 あとは、レストランが全て休業しているので、どうしても食べたくなったラーメンを麺から作ってみました。でも、やっぱりお店で食べるのが一番だって気付きましたね。

―コロナが落ち着いたらやりたいこと、挑戦してみたいことは?

去年初めてNYの世界一大きなチョコレートの祭典に招待してもらい、素晴らしい経験をさせていただきました。 今年もフランス以外の祭典に出展したいと思っておりましたが、軒並み延期や中止になっているのでしばらくは行けないかもしれないですね。なので今のうちにもっと実力をつけ、また海外で挑戦したいと思います。

―最後に、読者に向けて一言メッセージをください。

今は全ての人が自分にやれる事、できる事を精一杯考えて、行動している時だと思います。 それを否定することよりも、ありがとうと感謝の気持ちを忘れず、ポジティブに踏ん張りましょう。

佐野恵美子 過去の記事はこちらより

 

■ 菊野克紀 格闘家

―最近はどんなことをして日々を送っていますか?

ちょうど空手の組織から独立しまして、新しい道場システムを作るために頑張っております。あとは、オンラインで指導をしたり、子どもと体を動かして遊んでいます。

―人との接触ができない中、オンラインでしている活動があれば教えてください。

道場の生徒向けに空手の指導をしています。また、このコロナ自粛期間中は、会員向けの有料の指導とは別に、無料で空手教室と沖縄拳法空手体験会を開催して、一般の大人やお子さんを対象に教えています。あと、昨年の10月からメンタルコーチとしてコーチングも始めました。一般的な会社員から経営者、プロ格闘家、オリンピック代表選手、芸能関係者などいろんな方をコーチングさせて頂いています。 一番力になれるのは「前に進みたい」方のサポートです。

―あなたが携わっている業界はどのような打撃を受けていますか?

基本的にはジムや道場、公共施設は使えない状態です。このまま長引くと潰れるところも多いと思います。 最大限の予防をして営業しているところもありますが、パーソナル指導やオンライン指導に切り替えているところもあります。

―その業界は今後どのように変わっていくと思いますか?

オンライン指導は一般的になっていくでしょうね。一方、オフラインの価値も高まるかと。 全国、世界がマーケットになると同時に競合にもなるので、淘汰されていくところも出てくると思います。

―コロナを通して気づいた大事なことはありましたか?

健康の有り難み、家族の大切さ、人の温かさと弱さ 、オンラインのメリット、 非常時の自由の危うさ、メディアの怖さ。

―自分と向き合う時間が長いと、自分がどんなことが好きなのかわかるようになると思いますが、新たに知った自分について何かあれば教えてください。

コロナの大変な時期に独立することになったのですが、独立して良かったと思っています。自分らしくありたいです。守破離ですね。

―コロナが落ち着いたらやりたいこと、挑戦してみたいことは?

思いっきり道場経営をしたいです!! 目指せ1000人! 目指せ常設道場! 僕が主催する「敬天愛人」という武道、武術、格闘技イベントも思いっきりやりたいです!

―最後に、読者に向けて一言メッセージをください。

苦しんだ分だけパワーアップするしかないですよね。やったりましょう!

菊野克紀 過去の記事はこちらより

 

Part 5もお楽しみに!Part 1Part 2Part 3はこちらより