クリエイター達のスペシャルインタビュー。コロナウイルスの影響で受けた打撃や今後の業界の変化、気づいた大切なこと Part 2

2020/05/06

HIGHFLYERSの過去の出演者に、新型コロナウイルスを通して感じたことなどを取材したスペシャルインタビューPart 2。今回は、The SG Group ファウンダー/バーテンダーの後閑信吾、イタリアのフィレンツェを拠点に活動する木象嵌職人の望月貴文、そしてチェコのプラハを拠点に活動するチョーカーデザイナーのshinoに話を聞いた。

■ 後閑信吾 The SG Group ファウンダー/バーテンダー

ー最近はどんなことをして日々を送っていますか? 

お店はテイクアウトとお昼の営業は再開していて、オフィスも家から歩いてすぐなので大体毎日行ってますね。夜は料理したり、本を読んだり、葉巻を吸ったり、映画を観たりしてます。

ー人との接触ができない中、オンラインでしている活動があれば教えてください。

2月に発売したThe SG Shochuインスタライブを今週から始めます。毎週水曜16時と土曜21時で行う予定です。

ーあなたが携わっている業界はどのような打撃を受けていますか?

バーはかなり早い段階で、都知事から自粛要請が出たので影響受けるのも早かったです。通常バーはお酒をメインで売っているので、デリバリーなども出来ないのが厳しいです。またウチは上海に3店舗あるのとニューヨークの出店も控えてるので、2月頭からずーっと打撃を受け続けてます。

ーその業界は今後どのように変わっていくと思いますか? 

今後物流が滞ったり、海外のフルーツなどの生産量が落ちたりと、今まで当たり前に使っていた材料が手に入りにくくなることが予想されます。なので、今までと同じものを作り続けるのは難しくなりそうですね。国産の食材をより多く使ったりと、クリエイティヴィティを磨けるという意味では、ポジティブに受け止められると思います。それと近年、世界中を飛び回るバーテンダーは多かったのですが、酒類メーカーも同じく大打撃を受けていることを考えると、バー業界のイベント自体が減っていくと思われます。これも同じくポジティブに受け止めて、各々自国のバー文化の発展により向き合っていけると良いですね。

ーコロナを通して気づいた大事なことはありましたか?

会社はもちろん大変なのですが、僕は毎週毎週色んな国に行くのが当たり前だったので、時間に追われない日常も良いなと思ってます。普段考えないことも考えることができるし、たくさん本も読めるし。また、家族や友人との時間や仕事の時間など、当たり前のように過ごしてた日常の有り難みに気付くことができました。

ー自分と向き合う時間が長いと、自分がどんなことが好きなのかわかるようになると思いますが、新たに知った自分について何かあれば教えてください。 

料理ですかね。しばらくやってなかったんですけど、最近は積極的にやってます。何にでも酢を入れちゃうんですよね。自分でもそこまで酢が好きだとは知らなかったです(笑)。

最近の料理。タコス(左)とキッチャリーというデトックス料理(右)

ーコロナが落ち着いたらやりたいこと、挑戦してみたいことは?

The SG Shochuを通して、和酒や日本文化を世界に広める活動をもっとしていきたいですね。

ー最後に、読者に向けて一言メッセージをください。

自粛期間はもう少しの間続きそうですが、これも大切な時間。有効に使って自分を磨く良い時間にしていきましょう!

後閑信吾 過去のインタビューはこちらより

 

■ 望月貴文 木象嵌職人 イタリア・フィレンツェ在住

ー最近はどんなことをして日々を送っていますか?

3月10日にイタリアは外出規制となった為、それ以降はちょっとした道具と材料を工房から家に持って帰ってきて出来る限りの作業をしていました。せっかくなのでこのような時期にしか出来ない手間と時間のかかる作品にも挑戦して無事完成。5月4日から規制が緩和し、工房での作業も再開しましたが、顧客とのソーシャルディスタンスやマスク着用の義務など慣れるまでには時間がかかりそうです。

ー人との接触ができない中、オンラインでしている活動があれば教えてください。

以前から登録はしてあったYouTubeチャンネルやインスタグラム でのライブ配信など、普段電波の悪い工房では出来ない事もやり始めました。特にYouTubeの方は作品の紹介などのコンテンツも充実させていっています。

ーあなたが携わっている業界はどのような打撃を受けていますか?

家具修復の仕事や木象嵌の作品製作は時間のかかる仕事で、今はまだすでに受けている仕事を進めているという状況なので実感はあまりありませんが、この後どうなっていくかは予想がつきません。

ーその業界は今後どのように変わっていくと思いますか?

基本的には手仕事がメインなので作業面では大きく変わることはないと思いますが、営業的な仕事の取り方は変わってくるかと思います。オンライン上のプラットフォームをどれだけ上手く使えるかが生き残るためのポイントになりそうです。高齢化が進む職人の世界ではさらに縮小傾向になるかもしれません。

ーコロナを通して気づいた大事なことはありましたか?

普段からの人との付き合い方は本当に大切だなと改めて感じました。当初、様々な情報が錯綜する中でいろいろなことが疑心暗鬼になりましたが、そんな中、普段は挨拶くらいしかしない近所の方たちと情報交換をしたり励ましあったりと、外国人である自分にとってはとても心強く気持ちの支えになっています。

ー自分と向き合う時間が長いと、自分がどんなことが好きなのかわかるようになると思いますが、新たに知った自分について何かあれば教えてください。

どうしたものかと悩み考えていますが、モノを作っている時はそれを忘れて時間を過ごすことが出来るので、結局モノづくりが好きなのだなぁと改めて感じています。あとは何とかして生き残ろうという「しぶとい」自分を再発見しました(笑)。

最近製作した作品と作業の様子

ーコロナが落ち着いたらやりたいこと、挑戦してみたいことは?

オンラインを交えた新しい展示会の形を考えていてそれを実現させたいと思っています。でも、落ち着いたらというより落ち着く前にやっておきたいことも結構たくさんあります。ある職人さんが言っていた、「今のこの異常な状況だからこそ産み出せるモノがあるから、自分は手を動かし続ける」という言葉がとても印象的で、先述した自分の作品などにも着手しました。

ー最後に、読者に向けて一言メッセージをください。

大きな時代の転換期である今この瞬間、自分たち次第で良くも悪くも変わっていくと思います。考える事を止めず良い時代をつくっていきましょう!!

望月貴文 過去のインタビューはこちらより

 

■ Shino  チョーカーデザイナー(チェコ・プラハ在住)

―最近はどんなことをして日々を送っていますか?

もともと家にひきこもりで制作する生活なので、みなに呆れられるほど、以前となんら変わらぬ日々です。毎日休みなく制作しています。

―人との接触ができない中、オンラインでしている活動があれば教えてください。

日本の友人と妙なプロジェクトの話が持ち上がって、数日前に初めて3人でグループ会議したばかりですがまだ詳しくお話できるレベルではありません。それ以外は日本に高齢の母がいるので、オンラインで顔を見ながらおしゃべりしてるくらいです。

―あなたが携わっている業界はどのような打撃を受けていますか?

ギャラリーだけでなく美術館も閉じてますので、ほとんどの展覧会がキャンセル(もしくは延期)になっています。私も5月にチェコ人の友人でガラス作家の、Ivana Šrámková(イヴァナ・シュラムコヴァー) さんと名古屋で二人展を予定していましたが、チェコの出国禁止令がでたために、延期となりました。再開の目処はまだ立っていません。

―その業界は今後どのように変わっていくと思いますか?

ネット販売はもとより、動画中継で見せるところも増えているようです。ただ個人的には、チョーカーは、その方につけてもらって完成と思っているので、できるかぎり完成を自分の目で見届けたいという思いが強いんです。今の状況では試着すら安全にしてもらえないので、安心して試着してもらえる日がくることを願うのみです。

―コロナを通して気づいた大事なことはありましたか?

かつて共産主義国だったチェコにきて一番教えられたことは、平和も安全も誰かに与えてもらうものではなく、国民一人ひとりが自分の手で守るものだということ。それが民主主義の基本だということ。私もずっと日本にいたら気づけけなかったと思います。今回のことで、改めて具体的に教えられた気がします。

ボランティア(寄付を含む)のあり方にしてもそうなんですが、大袈裟なことではなく、個人レベルでできることをする大切さ。更に様々な共同体(地方自治体や学校、企業)とタッグを組んで迅速かつ円滑に進める姿勢にはただただ関心。「家の窓をノックしてくれたら、お手製マスクあげますよ」とか、3Dプリンターを持っている人はフェイスシールドを寄付したり、他にも、発令が出だ直後には建物のドアに「高齢者の買い物代行」というようなボランティアの張り紙が貼られたり、その行動の早さと自由さは見習うべきことばかりでした。

チェコでは3月中旬に緊急事態宣言が発令され、外出禁止令などの他に、欧州では初の外出時のマスク着用義務が施行されました(現在オーストリアやドイツでも条件付きでの着用義務は出ている)。厳密には口と鼻を覆えばOKなので、バンダナやスポーツ用のフェイスカバーをしている人もいます。もともと一般向けの不織布マスクというのものが商品として存在しなかった国での突然の発令にさすがに慌てましたが、すぐに地方自治体がボランティア(学生を含む)とタッグを組んで、あっという間に普及、今では手作りマスク大国と化しています。今でも市民から大量のマスクの寄付があり(区役所にはマスク寄付用の巨大なボックスが設置)素材を寄付する業者さんもいて、一般市民向けのマスクには困っていません。

マスクの効用については意見のわかれるところなので、見切り発車という見方もあるかもしれません。でも、そいういう意見に惑わされることのない潔い決断には説得力がありました。発令されてからは、メディアに登場する人は政治家であろうとテレビのアナウンサーであろうと100%マスクを着用、また、自社のロゴマークや看板にマスクを被せる企業などもあり、至るところがマスクだらけに。懲罰の対象だからマスクをつけるのではなく、こんな状況下でもユーモアを忘れないチェコ人の自由な発想によって徹底が図られたのだと思います。

その頃、日本ではまだオリンピック開催=安全という報道ばかりで、正直ギャップを感じずにはいられませんでしたが、今回のように何が正解か答えがわからないことに向き合う上で一番大切なのは、信頼関係を築くということだと感じました。そのためには情報の公開と共有、そして結果を云々するのではなく、他人事ではないという自覚と、想像力を持って行動すること。民主主義における個人の責任のあり方、なんていうと偉そうですが、今こうしてチェコに居るからこそ気づかせてもらえたことはたくあんりました。

―自分と向き合う時間が長いと、自分がどんなことが好きなのかわかるようになると思いますが、新たに知った自分について何かあれば教えてください。

特にありません。強いていうなら、在宅のストレスが色々取り沙汰される中で、自分には全く縁のないことだと気づいたといいますか…。一人暮らしでプライベートがしっかり守られているというのも大きいですが、家にいることが好きなんですよね。

―コロナが落ち着いたらやりたいこと、挑戦してみたいことは?

これも特にありません。友達に会ったら、ギュッとハグするくらいかな。仕事的には延期された、イヴァナさんとの二人展を実現させたいです。彼女のとのコラボ作品をぜひ見てもらいたいので。

イヴァナ・シュラムコヴァーと彼女の作品。右下はshinoとイヴァナのコラボ作品

―最後に、読者に向けて一言メッセージをください。

実は、先月、こちらで大変お世話になったアーティストの方が亡くなられました。インタビューの中でも紹介されたJaroslava Brychtová(ヤロスラヴァ・フリフトヴァ)さんです。その方が生前出演されたテレビ番組で残されたメッセージがあります。「dělali jsme, co jsme mohli. i vy si najdete prilezitosti a delejte ! (私達は自分たちにできることをしてきました。あなたも自分の可能性をみつけるでしょう、そうしたらそれをしなさい!)」どういう状況でもできることはあるはずです。ぜひそれをしてください。そしてどうか日々安全にお過ごしください。

shino 過去のインタビュー記事はこちらより

 

Part 3もお楽しみに!スペシャルインタビュー Part 1はこちらより。