HIGHFLYERS/#26 Vol.2 | Nov 16, 2017

恐怖を払拭し、お笑いを楽しいものに変えてくれた「夢で逢えたら」の”伊集院みどり”という強烈なキャラクター

Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka / Cover Image Design: Kenzi Gong

清水ミチコさんインタビュー、第2回目はジャズ喫茶を営む両親のもと、岐阜で過ごした幼少期と学生時代から、「渋谷ジァンジァン」でプロとしてデビューし、フジテレビの「笑っていいとも!」や「夢で逢えたら」に出演するまでを伺いました。モノマネを始めたきっかけから、中学時代に大人数を笑わせる醍醐味を知った出来事、上京後の永六輔さんとの出会いを経てテレビ界にデビューしブレイクするまでの軌跡は、笑いと感動に溢れた素敵なお話ばかりです。また実家のジャズ喫茶でアルバイトしていた頃の清水さんらしい鋭い観察力が光るエピソードもお聞かせくださいました。
PROFILE

タレント 清水ミチコ

岐阜県高山市出身。学生時代よりラジオ『オールナイト・ニッポン』、雑誌『ビックリハウス』等に投稿。1983年、ラジオ番組の構成作家を始める。次第に出演機会も増え、翌年からはテレビCMの声のキャラクターを務め始める。1986年、渋谷ジァンジァンにて初ライブ。1987年、フジテレビ系『笑っていいとも!』レギュラーとして全国区デビューを果たす。また、同年12月発売『幸せの骨頂』でCDデビュー。翌1988年スタートの『夢で逢えたら』にはダウンタウン、ウッチャンナンチャン、野沢直子とともにレギュラー出演、「伊集院みどり」のキャラクターが大ブレイク。以後、独特のモノマネと上質な音楽パロディで注目され、テレビ、ラジオ、映画、エッセイ、CD制作等、幅広い分野で活躍中。毎年の武道館単独公演も恒例となっている。近著に酒井順子氏とのリレーエッセイ集『芸と能』(幻冬舎)、『顔マネ辞典』(宝島社)、CDに『趣味の演芸』(ソニーミュージック)、DVDに『私という他人』(ソニーミュージック)などがある。

永六輔が客席で大きな声で笑ってくれたことが自信に繋がった、渋谷ジァンジァンでの初ライブ

岐阜県高山市で生まれ育ったそうですが、どのような子供でしたか?

私が赤ちゃんの時の笑えるエピソードがあります。実家は商売をやっていたのですが、お客さんが来た時に母が私から目を離すと、私がとめどなく食べてしまうので、ある時絶対手の届かないところにビスケットを置いて、私を赤ちゃん用の高い椅子にベルトをつけて寝かせて出て行ったんですって。ところが、帰って来たらそのビスケットをムシャムシャと食べていたらしいんです。自分が寝かされていた椅子をカッタン、カッタンって自力で動かして遠くにあるビスケットを取りに行ったんですよ(笑)。確かに今も食に関しては執着が強いところがあるけど、母はあの時地獄絵図を見たって言ってました(笑)。小さい頃はおとなしい性格で、勉強はあまり興味なかったですね。

少女時代の清水ミチコ

モノマネをやったきっかけは、同級生のよっちゃんという女の子を笑わせるためだったそうですね。

よっちゃんは、小3から中3までの同級生で、美人でスポーツも勉強もできる、ちょっと笑いに厳しい子でした。私がパッと感じたことをふと口にすると笑うんだけど、もっと笑わせようと身体を使ってギャグっぽいことをやると急に笑わない。例えばもの凄く練って「オットセイになってバレーボールを取ってみせます」みたいなことをやるとすごい引いてるのね(笑)。身体を使ったり、しつこくやったりしたらダメだっていう基礎はよっちゃんから教わりました。

清水(右)と同級生のよっちゃん(左)

小学校の頃からすでにモノマネをやっていたのですか?

小学校の頃は自分が率先してというよりは、学校のみんなと一緒に天地真理さんや、桜田淳子さん、山口百恵さんのモノマネをやっていた気がします。矢野顕子さんやユーミンさん、桃井かおりさんなどがテレビに出てきたのは高校一年生の頃で、今の私の基本はその頃形成されたような気がしますね。家に帰って一人自分の部屋にこもるとそこから桃井かおりさんになりきって、「時間表合わせなきゃ〜、宿題やらなきゃ〜」なんて言ってました。若い頃に語学を身につけたらずっと話せるのと同じで、桃井かおり語だったら今でもベラベラで考えなくても話せるんですけど、小池百合子語とか比較的新しいとまだ日常会話しかできないレベルです(笑)。

学生時代に同級生を笑わせた経験で憶えていることはありますか?

中学1年の時に、一学年上の大前君という男の子から生徒会長に立候補したいから応援演説をやって欲しいと頼まれたことがありました。当時の応援演説って面白いことを言えば当選するみたいな風潮があったので、私は真面目な顔をして体育館の演台に立って、「私の感激した鼻水が今床に着こうとしている」みたいな内容の詩を朗読したんです。そうしたら生まれて初めて全校生徒が揺れるように笑ったのを経験して。演説終了後は「ありがとうございました」って言って真顔で去ったんですけど、その時に「すごい!これだ!」っていう感じを味わって、そこから2、3人が笑うのとは別の、もう一つ何か大きな楽しみがあることを知った気がします。ちなみに大前君も晴れて生徒会長になりました(笑)。

幼い頃になりたかった職業は?

私が小学生の頃から両親はジャズ喫茶を始めて、高校の頃には3軒の喫茶店と、他にスパゲティー屋もやっていたので、これは私と弟が継ぐしかないと、二人でそれぞれ2軒ずつ、なんて勝手に計画していました。高校生の頃から店を手伝い始めたんですけど、お客が注文する前に 「この人は絶対にホットコーヒーを頼むな」とか、予想するのが好きでした(笑)。わりと自分をしっかり持っているような人ってホットコーヒーを注文するし、優柔不断な人はずーっとメニューを見て迷って結局頼むのはミックスジュース(笑)。「ミックスジュースなんて美味しくないよ」って心の中で思いながら出すんですよ(笑)。そうやってお客さんを観察するのが本当に楽しくて、喫茶店のバイトほど面白い仕事なんて他にあるのかなって思っていましたね。

ご実家がジャズ喫茶だったことは、その後の人生に何か影響しましたか?

私が幼い頃はまだレコードが貴重で、ジャズ喫茶でお客さんがリクエストした曲をマスターが聴かせるのが流行っていたんです。うちの店も、夜になると常連のお客さんと、今回の新譜はダメだとか、あの演奏は良くないとか口論になるのが面白くてずっと聞いていましたね。その経験は今、アーティストごとの特徴を説明しながら歌う「作曲法」というネタのヒントになっています。

その後、芸能界を目指して上京なさったのですか?

上京したのは短大に進学するためです。というのも、モノマネはみんなができるものだと思っていたの。色気づく年頃だし恥ずかしいから言わないだけで、夜中になると日本全国のみんなが自分の部屋でモノマネをしてるもんだって本気で思ってたんですよ(笑)。

実家を継ごうとしていらしたのに、どのあたりから気持ちが変化していったのですか?

短大の家政科を卒業後、昼間は田園調布にあったデリカテッセンで働きながら、夜はパルコ出版の「ビックリハウス」という当時あったパロディ雑誌に原稿を書いて投稿したり、ラジオ番組に投稿したりしていました。それを知っていたバイト先の人が、「親戚にNHKのディレクターがいるから紹介しましょう」と言ってくれて、「さすが東京!」って思って(笑)、そこから構成作家をしながらラジオに出演する仕事が始まりました。その後、「渋谷ジァンジァン」でテープ審査に合格し、半年後の日曜日に午後2時から2時間、素人が無料でライブをやれるという企画に出演したのがデビューですね。

渋谷ジァンジァンでのライブ

「渋谷ジァンジァン」でのパフォーマンスはいかがでしたか?

友達に声をかけたりして30人くらい集まった会場に、たまたまジァンジァンの経営者と仲が良かった永六輔さんが観に来て下さって、私のライブを凄く大きな声で笑って下さったんです。それが自信に繋がりましたね。ライブが終わってから永さんにお会いすると、当時は照れちゃって舞台上でお辞儀ができなかった私に、「君は芸はプロだけど、生き方がアマチュア。始まる前と終わった後にちゃんとお辞儀ができて初めて芸人なんだよ」って教えてくださいました。その後もご自身のライブに呼んでくださったり、テレビ関係者の方を紹介してくださったりして、永さんにお会いしてから急にこの世界が面白く刺激的に感じるようになりましたね。

その後、フジテレビの番組に出演するようになったんですよね。

1985、86年頃に、フジテレビのスタッフがいろんなライブハウスに出向いて面白い人を探していたことがあったんです。それで私のライブを観に来てくれた人が、注目の新人のライブだけを見せるという、泉麻人さんが司会の「冗談画報」という番組を作っていたので、それに出演することになり、その翌年には「笑っていいとも!」に出演することができました。あの頃は毎回ワクワクしていましたし、タモリさんに認めてもらいたいっていう気持ちがとても強かったですね。

88年から放送されたフジテレビのバラエティ番組「夢で逢えたら」には、レギュラーとして出演されました。今でも伝説的な番組として多くの人の心に刻まれていますけど、あの番組のメンバーの方とは今でも仲が良いですか?

そうですね、仲が良いと言っても、久しぶりに会ったのに浜田さんに回し蹴りされるような感じです(笑)。

「伊集院みどり」という強烈なキャラクターは当時衝撃的なほど面白く、今でも鮮明に覚えていますが、あのキャラクターはどうやって誕生したのですか?

あれは元々作家が書いたコントで、「後ろ姿が凄く綺麗な女性をナンパしようと声をかけたけど、振り向いたら凄いブスだった」っていうのをやって欲しいと言われたんです。めちゃくちゃなメイクをしたら自分でもすごいって思えるほどの出来で(笑)、それが大ヒットしたんで命拾いしましたね。実はあの頃は本当に楽しくなかった、というか怖かったんですよ。

伝説のキャラクター「伊集院みどり」

怖いとはどういうことですか?

他の出演者はみんな自分より2、3歳若いのに場数を多く踏んでいて、コントもやってきた人達だったので、私のようなお笑いの素人が飛び込んでいって「あなたお上手ですね」って言ってもらえるような雰囲気ではなかったんです。アドリブをすぐ笑いに変えるゲームをみんなでしようとしているところに、モノマネというボールしか持ってない私が入ることで、足手まといになっていると思っていて。でもみどりがヒットしてくれたおかげで助かって、それから本当に楽しくなりました。

伊集院みどりのキャラクターとともにお笑いに進まれて、その先の目標みたいなものはありましたか?

いや、なかったです。いつも明日のことで頭がいっぱいなの。それに結局需要と供給だから、私はこうなりたいって思ってもそう簡単になれる空気じゃなかったですね。

次回へ続く

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 国民の叔母 清水ミチコのひとりジャンボリー

「 国民の叔母 清水ミチコのひとりジャンボリー」

ツアースケジュール

2017年
  • 11月03日(金・祝) 神奈川/相模女子大学グリーンホール 17:00開場/17:30開演
  • 11月12日(日) 岡山/倉敷市芸文館 15:30開場/16:00開演
  • 11月21日(火) 鹿児島/宝山ホール 18:00開場/18:30開演
  • 11月26日(日) 新潟/りゅーとぴあ劇場 15:30開場/16:00開演
  • 12月01日(金) 広島/広島NTTクレドホール 18:00開場/18:30開演
  • 12月08日(金) 北海道/わくわくホリデーホール 18:00開場/18:30開演
  • 12月10日(日) 宮城/東京エレクトロンホール宮城 15:30開場/16:00開演
  • 12月16日(土) 大阪/大阪国際会議場 グランキューブ゙大阪メインホール 15:15開場/16:00開演
  • 12月22日(金) 沖縄/浦添市てだこホール 大ホール 18:30開場/19:00開演
  • 12月24日(日) 福岡/福岡市民会館 15:30開場/16:00開演
  • 12月26日(火) 愛知/名古屋市芸術創造センター 18:00開場/18:30開演
  • 12月27日(水) 静岡/静岡市民文化会館 中ホール 18:00開場/18:30開演

「 国民の叔母 清水ミチコのひとりジャンボリー RETURNS」

ツアースケジュール

2018年
  • 2018年2月4日(日) 岩手/盛岡市民文化ホール 大ホール 開場15:30/開演16:00
    【問】キョードー東北022-217-7788
  • 2018年2月9日(金) 埼玉/さいたま市民会館おおみや 開場18:00/開演18:30
    【問】ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-999
  • 2018年2月23日(金) 秋田/秋田市文化会館 大ホール 開場18:00/開演18:30
    【問】キョードー東北022-217-7788
  • 2018年3月2日(金) 千葉/千葉県文化会館  開場18:00/開演18:30
    【問】ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-999
  • 2018年3月10日(土) 愛知/名古屋市芸術創造センター 開場15:30/開演16:00
    【問】サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
  • 2018年3月11日(日) 兵庫/神戸国際会館こくさいホール 開場15:15/開演16:00
    【問】サウンドクリエーター 06-6357-4400
  • 2018年3月23日(金) 青森/リンクモア平安閣市民ホール 開場18:00/開演18:30
    【問】キョードー東北022-217-7788
  • 2018年3月30日(金) 東京/中野サンプラザ 開場17:45/開演18:30
    【問】キョードー東京 0570-550-799
  • 2018年3月31日(土) 東京/中野サンプラザ 開場14:15/開演15:00
    【問】キョードー東京 0570-550-799

チケット/全席指定¥5,800円(税込)
詳しくは清水ミチコホームページ 4325.net まで。

<最速!!抽選先行予約受付詳細>
〜お申込みはコチラ〜

  • 受付URL:http://eplus.jp/4325hp2018/
  • 受付期間:2017年11月15日(水)12:00〜~11/26(日)23:59
    ※ 抽選受付となります。受付期間内にお申し込みください。お座席も抽選となります。
    ※ 注意事項をご確認の上お申し込み下さい。
    ※ 毎月第1・第3木曜日2:00-8:00はメンテナンスの為、全ての受付が不可となります。

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