【自分にとってベストなメンタルコンディションを見つける】〜意識的に行い続けることで無意識に落とし込む〜
試合中にミスを繰り返し、負のスパイラルに陥りがちだった久原選手。集中することが良いと思い込んでいた考え方を変え、自分に合ったリラックスする方法を身につけた。いい意味で開き直った状態でプレー出来たことで、実際の試合の終盤のクライマックスの場面でも得点取得に繋げることが出来た。
抱えていた問題
■ミスした時の焦りと不安
2020/2021リーグ戦開幕にあたって、リーグ戦での目標設定、さらに、数値的な目標やどんなプレーを目指すのかなどのパフォーマンス目標も設定した。しかし久原選手の中で不安に感じていることがあった。
久原選手:それまで「試合で活躍しないといけない」と気負ってしまっていたので、試合中にミスをして「全然だめだ」と気持ちが入り込みすぎてしまうことが多かったんです。1つミスをすると「やばい」「チームに申し訳ない」という気持ちになり、周りが見えなくなる。そしてまたミスをしてしまう状態になっていました。そういったミスをした時にどう対処していくかが課題でした。

写真提供: パナソニックパンサーズ
解決方法
■自分に合う切り替え方法を見つけ、練習時から意識的に行っていく
それまでは、試合だからこそ気合を入れ、集中状態になることがいいことだと思い込んでいた。だがリラックスしている状態の時の方がパフォーマンスがいいことに気づいた。
久原選手:コーチングの中で、リラックスして敢えて力を抜いて平常心でいる方が、いいパフォーマンスが出来ることに気づいたんです。それからリラックス状態の作り方を試し、自分らしいやり方を見つけていきました。それは「コントロール出来ることと、出来ないことを分け、コントロール出来ることに意識を向ける」「ミスした後は“終わったことは変わらない”と次のことを考えていく」「つい力が入ってしまう場面を事前に想定し、対応を想定しておく」などです。それらを普段の練習から意識的に行い、試合の日は無意識的に行っていけるよう取り組み続けました。

各要素一つ一つに対して数値化し、既に出来ている点や今後の探求項目を書き出し、無意識有能を目指す
得られた結果
■試合終盤のギリギリの場面でもリラックスした状態でプレー出来るようになった
普段の練習でも、試合でも、そのようなメンタル状態を作っていけるようになり、終盤に強くなっていった。今は自分に合ったベストなメンタルのコンディションを見つけつつある。
久原選手:以前は、試合の終盤は「点を決めないと負ける」と肩に力が入り、ほんの0.0何秒かもしれませんが、いつものタイミングとはずれたプレーをして、相手のブロックにかかったり、いいパスを返せなかったりしていました。今はギリギリの場面でも力を抜いたリラックスした状態で、いいプレーが出来ています。最近で言うと、天皇杯の準々決勝ウルフドッグス名古屋戦のファイナルセット(2020年12月12日)では、リラックスしていい意味で開き直った感覚でプレー出来ました。これまでだったら、気負って身体が固くなってブロックにかかってもおかしくない展開でも、しっかりアタックを決めて得点できたり、相手のアタックに反応できたりと、活躍することが出来ました。
コーチ補足
■意識的に行い続けることで、無意識でも出来るように
工藤コーチ:久原選手は「コントロール出来ないことにエネルギーを使っても求める結果は出ない、コントロール出来ることを増やす」取り組みを始めました。例えは、勝敗の結果、ミス、連続ミスへの不安などの代わりに、その瞬間に自分が出来る行動をとる事を、初めのうちは練習で意識的に行っていましたが、振り返りでは、上手くいった要因を抽出ししていくと、だんだんと試合でも無意識で出来る様になり、ミスを引きずらなくなっていきました。新しいことを習得するには、➀無意識的無能(意識していない/できない)、②意識的無能(意識している/できない)、③有意識的有能(意識している/できる)、④無意識的有能(意識していない/できる)の“学習の4段階”があります。車の運転をイメージすると分かりやすいと思いますが、技術スキルの習得も同じです。普段の練習から意識的に行い続けることで少しづつ出来るようになり、だんだん出来る確率が高まって、さらに意識的に行い続けることで、無意識でも出来るようになっていきます。

コーチングと出会って、サーブレシーブの技術面を向上し、楽観的に考えられるようになったことからリラックスして試合に挑み、メンタル面も強化した久原選手。今後の目標として、まずはVリーグでの優勝を掲げている。最後に、久原選手にとって成功とは何かを聞いてみた。
久原選手:もちろん目標を達成することが成功に繋がると思うんですけど、僕自身今までバレーボールをやってきて、目標を達成できなかったことの方が多かったので、自分が後悔せずに納得できる結果であれば、それも成功だと思います。