TAITTINGERが、日本のアート、文化を取り入れ、食とのマリアージュを楽しめるラグジュアリーイベントを東京国立博物館にて開催【レポート】
2017/09/13
フランスはシャンパーニュ地方に18世紀から伝わるシャンパーニュ醸造家の老舗「TAITTINGER(テタンジェ)」の秋のエクスペリエンスナイトが、2017年9月4日(月)、東京国立博物館の法隆寺宝物館を会場に盛大に行われた。このイベントはテタンジェの世界観をより深く知ってもらおうというもので、日頃からフランスと日本に造詣の深いビジネスパーソンや文化人、メディア関係者が一堂にかいしテタンジェの夕べを楽しんだ。
テタンジェは、その名を社名に掲げるテタンジェ家が今なおオーナー兼経営者として同族経営を続ける数少ない大手シャンパーニュ・メゾン。現在は4代目のピエール・エマニュエル・テタンジェ氏が社長となり、長きにわたり培われてきたテタンジェ・ファミリーの精神を継承している。ぶどう畑はシャンパーニュ地方屈指の288ヘクタールという広大な面積を誇り、シャルドネ種を主体とする繊細でエレガントな安定した高い品質が特長のブリュットが人気。また、ル・テタンジェ国際料理賞コンクールの開催や、テタンジェ・コレクションというアーティストによって描かれたスペシャルボトルの発売など、アートと美食との融合を積極的に行い、テタンジェの伝統を守りつつも芸術性や文化性を高めながら進化し続けている。
「今日は第二の故郷ともいうべき私の愛する日本で、グラスの中に注がれているシャンパーニュに込めた想いを、文化を愛し、深く理解することのできる方々と共有できることを幸せに思います」と乾杯の挨拶をしたピエール・エマニュエル・テタンジェ社長。ウェルカムドリンクとして、バカラ製のシャンパーニュグラスに注がれたテタンジェのフラグシップ「コント・ド・シャンパーニュ」がゲストに振舞われた。
料理は、ホテルオークラがこの日のために特別に仕立てたシャンパーニュに合わせたフレンチオードブル。シャンパーニュ地方の南にある街で12世紀ごろから作られている伝統のチーズ「シャウルス」をシャンパーニュ地方から取り寄せ、マーマーレードにドライイチジク、アプリコットを一緒に煮込んだコンフィチュール、フォアグラムースとバゲットやマカロンなどフランスに伝わるレシピのほか、マティーニ入りのスイカのジュレなどの見た目も華やかなフードがパーティに花を添えた。
「テタンジェは、長年ガストロノミーをテーマに取り組んでこられましたが、テタンジェの世界観をもっと広げるため、今回はアートや文学といった芸術と共に披露したいというテタンジェ家からの強いご希望がございまして、この宝物館をお借りしました。テタンジェの新たな世界観を味わっていただきたいと思っています」とイベントに先立って、テタンジェを日本に輸入しているサッポロビール取締役常務執行役員の時松浩が今回の趣旨を説明したように、このイベントは、踊絵師の神田さおりとDJの沖野修也によるアートと音楽のコラボレーションパフォーマンスも行われた。
実はこの日のパフォーマンスに先立って、テタンジェ家はアーティストである神田と沖野をフランス、シャンパーニュ地方にあるテタンジェの醸造所に招き、生産者や 歴史に触れて世界を体験してもらうという粋な計らいがなされていた。神田は、「アーティスト冥利につきる。地下18メートルにある、元修道院だったセラーを拝見した時からテタンジェ家のみなさんが大切にしてきた誇り高いものを感じました。実際に旅をする中で、沖野さんともゆったりした心で親しくインスピレーションを交わせて、一緒に分かち合った体験から今日のセッションが生まれて、うわべではないマリアージュができたと思います」と話した 。
旅を通して、飲むだけがシャンパーニュではないことを強く感じたと言う神田は、「豊かに育つシャルドネの畑を訪ね、大切に育ったぶどうが 美しいシャンパーニュになるまでの丁寧な工程を拝見して胸がいっぱいになった時のことを思い出しながら、今日の雨の雫一つ一つにも感動しながら気持ちよく描かせていただきました。どんなシチュエーションで、誰とどんな時間にいただくのか、その全てをマリアージュすることがシャンパーニュの楽しみ方であり、ロマンティックなひとときなんだということを感じながら描きました」と感動をパフォーマンス後に語った。
淡いブルーやパープルをふんだんに使った幻想的な神田独特の世界は、テタンジェの歩んできた歴史や工程にかけてきた雄大な時間と、まるでシャンパーニュの泡が弾けたような軽さと華やかさが見事にマリアージュし、優雅でエレガントな色気ある空間を作り上げていた。完成されたアートは突然降り出した雨の雫と相まってまるで水々しく実ったブドウの木ようにも見えた。
そして、沖野の音楽がこのパフォーマンスをさらなる高みへ誘う。建築、アート、文化、食とのマリアージュを大切にするテタンジェ家のことを想い、文化としてのジャンパンをまず念頭に置きつつ、歴史と現在、時空を超えて受け継がれるものを選曲のテーマにしたという沖野。「旅して、理解しながらコラボレーションするのは初めての経験だったので緊張したのですが、こうして形になって良かったです。ランス地方に2泊した後にパリに移動してレコード屋に立ち寄りました。今夜はそこで出会ったレコードからも選曲して、フランスを全体に散りばめました。ぶどう畑を訪れたことも含め、フランスで体験した全てが今日の選曲に反映しています」と語った。普段はジャズを得意とする沖野だが、カマシ・ワシントンのドビュッシーのカバーなど、クラシックの要素も積極的に取り入れ、ゴージャスかつ厚みあるテタンジェの世界に彩りを加えた。
また、以前HIGHFLYERSのBICULTURAL SOULSに出演いただいたロバート キャンベルとピーター・バラカンにも再会。
「エマニュエルさんと乾杯したとき、いろんな国がある中でも日本は一つ抜きん出てる、理屈では説明できないオンリーワンの国だと言ってました。僕が30年日本に住んでいるって言ったら、普通は大体『30年て長いですね〜』って引かれたりするんだけど、『いいですねぇ』って言ってくれたのは、嬉しかったです」とキャンベル。
バラカンは、「家では特別な時はシャンパーニュを飲むけど、普段はスパークリングワインが多いですね。お酒は好きですけど、うんちくはゼロなんですよ。でもテタンジェはさすがに美味しいですし、今夜のショーはとても素敵だった。私は決してパーティ人間ではないけど、今日は涼しくて過ごしやすくて気分が良かったです」と話した。
最後に、私たちにロゼワインを勧めてくれた、とても気さくな紳士であるエマニュエル社長にも一言いただいた。「デリカシーがありエレガントで上品な日本はテタンジェにぴったり。日本人は飲むことだけでなく、シャンパンの裏側のストーリーまで理解できる教育レベルや真摯な心があります。世界のどこを取ってもここまでシャンパンを理解してくれる国は日本の他にありません」と話し、フランスと日本の食、文化、アートのマリアージュは素晴らしい盛り上がりを見せてうっとりをした夜を作り上げた。
Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka
過去の記事は以下のリンクより。
ON COME UP 2016年1月号 神田さおり
BICULTURAL SOULS 2016年 8月号 ピーター・バラカン
BICULTURAL SOULS 2016年10月号 ロバート キャンベル