埼玉県初のコーヒーフェス!年間約700万人が訪れる観光地、小江戸川越・蓮馨寺で「川越コーヒーフェスティバル」がまもなく開催【レポート】

2017/12/04

2017年12月9日(土)と10日(日)、室町時代に創建された浄土宗の寺・蓮馨寺で「第一回川越コーヒーフェスティバル」が開催される。川越は、「小江戸」と呼ばれる歴史的景観や独自の文化を持ち、年間700万人以上もの人々が訪れる埼玉屈指の観光地として知られる人口35万人の都市。その地で、今世界的に大きな動きとなっているコーヒーカルチャーを伝えるべく、コーヒーコミュニティがようやく動きだす。

開催場所の蓮馨寺(左)、ラテアート(中央)、東京・国分寺「Life Size Cribe」の吉田一毅バリスタ(右)

日本全国から選りすぐりのコーヒーショップが23店舗集結し、世界チャンピオンや国内競技会で優秀な成績を収めるバリスタが丁寧な一杯を提供するほか、興味のあるお店を飲み歩いてコーヒーの味を比べることのできる4杯分の飲み比べチケット(1000円税込)も販売。名乗りを挙げたコーヒーショップ、そして信頼の厚い人気バリスタが仲間に声をかけたことで、世界のコーヒーシーンで知名度の高い、名だたるコーヒーショップの数々が集まった。

オリジナリティ溢れるバリスタ達にも注目。PASSAGE COFFEEの佐々木修一(左)、Bespoke Coffee Roastersの畠山大輝(中央上)G☆P COFFEE ROASTERの実豪介(中央下)、WOODBERRY COFFEE ROASTERSの木原武蔵(右上)、Ants. Meals & Coffee BarのVu Tran Phihung(右下)

また、川越で人気のイタリア料理「コポリ」やベーカリー「ブーランジェ リュネット」が限定特別メニューを提供するほか、北海道から本州初出店のチーズケーキ専門店「ボーノボーノ」も登場し、コーヒーと食のペアリングも楽しめる。ほかには、人気アーティストharunachicoが川越コーヒーフェスティバルのために描き下ろした絵を料理研究家・小島和美がアイシングしたクッキーを限定販売。音楽はオーストラリア・メルボルンから、9日(土)に初来日のバンド「The Twoks」が、10日に(日)は国費留学中のジャズピアニスト「Marty Hicks」がライブを披露。コーヒー好き、音楽好き、食べ歩き好き、イベント好き、川越好きには見逃せない2日間だ。

オーストラリア・メロボルンより初来日のバンド「The Twoks」(左上)、ピアニストのMarty Hicks(右上)、枚数限定クッキー(左下)、料理研究家の小島和美(中央下)、FINRTIME COFFEE ROASTERSの浅煎りエチオピア(右下)

世界の新しい動きやクリエイティビティに敏感な HIGHFLYERSでも、2017年 5月号でコーヒーハンター・川島良彰を、2017年 11月号では世界バリスタ大会準優勝の鈴木樹をON COME UPで紹介しており、また、丸山珈琲表参道店やオールプレスエスプレッソなどのコーヒーショップの取材からもわかるように、近年は南米やアフリカのコーヒー農園を中心に、生産者が長年研究を重ねて作り上げた「スペシャルティコーヒー」に注目が集まっている。2000年頃からは、直接仕入れたそれらの豆を独自焙煎して、バリスタがお客様の目の前で丁寧に一杯ずつ淹れて提供するスタイルが世界に広がった。当初は一過性の流行に感じられたその流れも、 20年近く経った今では、新しいカルチャーとしてそれぞれの地域に定着しつつあり、メルボルン、ポートランド、サンフランシスコ、東京、京都、ニューヨークなど、文化度の高い都市を中心にコーヒーフェスティバルが催され、スペシャルティコーヒー文化定着の一役を担っている。

「Stumptown Coffee」の15周年記念マグ(左上)、「Stumptown Coffee」ポートランド・ダウンタウン(右上)、LAの伝説のコーヒーショップ「Handsome Coffee Roasters」(左下)、サウスキャロライナの「Counter Culture Coffee」ロースタリー(右下)

HIGHFLYERSのライターであり、川越コーヒーフェスティバルの主催兼オーガナイザーを務める高綱草子は、2004年に渡米しカリフォルニアで生活した10年間で、この動きを目の当たりにした。「Counter Culture Coffee(カウンター・カルチャー・コーヒー)、Stumptown Coffee Roasters(スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ)、Intelligentsia coffee(インテリジェンシア・コーヒー)という3つのコーヒーショップが同時期にアメリカ国内の別々の場所で生まれ、そこからコーヒーの新しい流れがアメリカ全土に広がって行きました。水のように薄いか、または苦いコーヒーに慣れていたアメリカ人の既存の概念を180度変えていくスペシャルティコーヒーの勢いは凄かったです。人々のコーヒーに対する感覚が変化していくのを日々体感するのは、とても刺激的でワクワクしました」。ジャーナリストとして多くの取材を終え、2013年に帰国すると、東京にも豆や焙煎にフォーカスした個人経営のコーヒーショップが増えていたことに感銘を受けた。また、日本には70年代の喫茶店ブームの影響が色濃く残っていたため、純喫茶と新しい波が融合して世界に類を見ない独自のユニークな文化が作られて行くことにも興味を持ったそうだ。

目まぐるしく変化したロサンゼルスの2000年代以降のコーヒーシーン。「Handsome Coffee Roasters」(左上)、「BLACKTOP COFFEE」(右上)、「Verve Coffee」(左下)、「TIAGO」(右下)

一時は、浅煎りで豆本来の特性を生かした上品な酸味を強調するものや、単一農園のみで育てられた「シングルオリジン」と呼ばれる血統書付きの豆ばかりがもてはやされた時期があったが、「サードウェーブ」というトレンドワードで象徴されたその流れもようやく落ち着き、店も淘汰され、本質を追求した浅煎り専門店が生き残って進化を遂げたり、良質のブレンドを豊富に取り揃える店が増えたり、深煎りで薫り高いコーヒーを提供するお店が出てきたりと、最近はコーヒーシーンが一段階進んだ印象だ。

欧米のバリスタ達も様々な器具でスペシャルティコーヒーを抽出する店舗が増え続けている。上段左よりバルセロナ「Onna Coffee」、フィレンツェ「Ditta Argentinale」、パリ「 Fragments Paris 」、ソウル「TERAROSA COFFEE」。下段左よりバルセロナ「 SlowMov」、パリ「Coutume Cafe」、フランクフルト「Café No. 48」、ロサンゼルス「Cognoscenti Coffee 」

ようやく流行に惑わされずに消費者が好きなコーヒーを選択できる環境が整いつつある昨今、生まれ育った川越でもコーヒーの新しい楽しみ方を広げるベストな時期が来たのではないかと感じた高綱は、地元の小学校のPTA会長や商工会議所理事として地域に貢献する近藤武弘に声をかけ、川越コーヒーフェスティバル実行委員会を発足。「どんなにコーヒーのプロフェッショナル達が技術や知識を積んでも、それを消費者が理解しなければカルチャーとしての広がりには限界があります。私はコーヒー店のオーナーでもバリスタでもありませんが、メディアとして消費者との間に立って、生産者の思いや、コーヒーのプロ達のプライドを咀嚼してわかりやすく伝え、コーヒーの素晴らしさをより多くの人に知ってもらいたい」と話す。今後は、コーヒーフェスティバルを継続させることに注力するとともに、上質のコーヒーと音楽を融合させたプレミアムイベントや、教育の現場とコラボした子供向け企画も計画中で、多くの人がコーヒーに親しみ楽しんだり、コーヒーを通して世界と繋がったりできる機会を増やしていく予定だ。

ところで、埼玉初のコーヒーフェスティバルを開催するにあたり、開催場所が由緒ある浄土宗のお寺というのも興味深い。室町時代に創建された蓮馨寺は、江戸時代は徳川幕府に定められた関東十八檀林の一つで僧侶を養成する学問所だった。またご本尊の阿弥陀如来像は鎌倉時代に作られた文化財であり、あらゆる困りごとを解決し、多くの人々を幸せにした生き仏様・呑龍上人(どんりゅうしょうにん)にゆかりのある寺としても知られている。そんな歴史ある寺がコーヒーフェスティバルを行うために場所を提供したのはなぜか。蓮馨寺の住職に話を伺った。

開催場所の川越・蓮馨寺境内にある手水舎(左)、本堂(中央)、鐘楼(右)

住職の粂原恒久は、47代目住職の息子として生まれた生粋の48代目。仏教の専門家として大正大学や淑徳大学などの講師、浄土宗宗議会議員、総本山知恩院長老、大本山増上寺布教師、埼玉県佛教会常務理事などを務めるほか、毎週日曜の朝は蓮馨寺で漢文の原典講読も行う。また現在までに仏教の専門書をシリーズで8冊出版している。小江戸川越観光協会の会長でもあり、とても明るく、温かいハートを持ったユーモア溢れる住職だ。

蓮馨寺48代目住職の粂原恒久

住職は次のように話した。「すべての人が幸せになるのが仏教の目的。美味しいコーヒーで人々を幸せにしようとするコーヒーフェスティバルは、仏教と目指すところが同じです。仏教とは宇宙の構造の教えであって、目に見えない宇宙は、全てが生かし合って生き続けるような働きをしています。だから人のために尽くしていると、自分自身も上手く回っていくんです。これ が仏の教えです。それに、蓮馨寺は江戸時代に困った人々を助けた呑龍上人の精神を今に伝える使命があるから、すべての人に開かれていなければならないですしね」。

47代目が取り寄せたコーヒー豆で毎日コーヒーを挽いて、一杯ずつ淹れて飲んでいたという昔のエピソードも聞けて、お寺とコーヒーの繋がりも感じることができた嬉しい時間だった。このように開かれた住職の見守る蓮馨寺から、独自の歴史とライフスタイルが息づく川越の街に、果たしてコーヒーカルチャーはどう広がりを見せるのか、今後の動きにも注目したい。12月9日(土)、10日(日)は、川越コーヒーフェスティバルに足を運んで、自分好みのコーヒーを見つけたら、コーヒーカップを片手に川越の街を是非散策してみよう。

Text & Photo: HIGHFLYERS

 

川越コーヒーフェスティバル

開催日時:2017年12月9日(土)10日(日)雨天決行

開催時間:10:00-16:00 入場無料

開催場所:川越蓮馨寺境内

アクセス:西武新宿線本川越駅より徒歩5分/東武東上線川越市駅より徒歩10分/川越駅東口市内バス神明町方面行きにて/蓮馨寺前下車(バス約7分)

内容:国内外の自家焙煎、スペシャルティコーヒーを扱う店舗を中心としたコーヒーショップと人気飲食店が一斉に集うイベント。入場無料。飲み比べチケット(1000円税込)を購入すると、全店舗にて4杯までテイスティングができるほか、一杯ごとにハンドドリップしたコーヒーも購入できる。 音楽のライブ演奏あり。

公式ホームページ https://www.kawagoecoffee.com/

FACEBOOK公式ページ https://www.facebook.com/kawagoecoffee/

主催:川越コーヒーフェスティバル実行委員会

後援:(公社)小江戸川越観光協会、川越商工会議所

参加店舗(順不同)

◆埼玉県: TOSHINO COFFEE/cafe Brick/344 coffee stop/SOLA COFFEE/ROASTERS/HOSHIKAWA CAFÉ/ LIMENAS COFFEE/ OIMO café/ Bespoke Coffee Roasters/ Loca Café/Akimoto Coffee Roasters

◆熊本県: AND COFFEE ROASTERS

◆山口県: CRAFTSMAN COFFEE ROASTERS

◆神奈川県: Ants. Meals & Coffee Bar

◆東京都: 4/4 SEASONS COFFEE /GLITCH COFFEE ROASTERS/FINETIME COFFEE ROASTERS/Life Size Cribe/G☆P COFFEE ROASTER/COFFEE VALLEY/PASSAGE COFFEE/WOODBERRY COFFEE ROASTERS/Paul Bassett/光珈琲