18回目を迎えた『GREENROOM FESTIVALʼ23』が大盛況のうちに終了!総勢38組の豪華アーティストの奏でる音楽と、サーフカルチャーの見事な融合に酔いしれた2日間 [後編・Oscar Jerome インタビュー]

2023/06/14

 

音楽を続けることで、自分自身が成長していくことがチャンスに繋がる。ミュージシャンとして、世界にポジティブなインパクトを与え続けたい

 

—初来日!とても嬉しいです。昨夜は渋谷でワンマンライブがありましたが、いかがでしたか?

本当は3年前に来るはずだったから、ずっとこの時を待ってたよ。ようやく来られてすごく嬉しい。昨日のライブはインクレディブル(信じられないくらい最高)だった。お客さんのノリもハイで、みんなでその瞬間の音楽を感じながら、会場全体のエネルギーを感じて最高に盛り上がったよ。

—日本の前にタイのバンコクに寄ってライブをしていましたが、バンコクはいかがでしたか?日本とは違いますか?
バンコクは37度くらいあって、とにかくすごく暑かった。今日の横浜よりもずっとね。タイは日本よりは規模が小さいんだけど、タイの人たちは皆すごく興味を持って集中して聴いてくれて、真剣にリスペクトしてくれてるのが伝わってとても良かった。ツアーでいろんな国を巡ると、国ごとに観客の反応が全然違うから面白いよね。

—日本には2日前に到着したそうですが、何をしていましたか?

だいたい食べてる(笑)。ラーメンに刺身、あと、エビとかタコを焼いて混ぜて食べるやつ、、、そうそうお好み焼きがすごく美味しかった。食べるのが大好きだから、できるだけ全部食べたい。このライブが終わったら2週間日本に滞在して、休暇を取って、東京、大阪、京都って旅するんだよ。

—それは楽しみですね。ところでGREEN ROOM FESTIVALはご存じでしたか?
出演のオファーが来るまでは知らなかった。でも、知っているアーティストが出演していたから楽しみだった。SOIL&”PIMP”SESSIONSは子供の頃から聴いていたんだ。だから、日本に来て同じステージを踏めるなんてすごくクールなことだよね。

—子供の頃にソイルを聴いていたなんてすごいですね!ところで、小さい頃から他にどんな音楽を聴いていたのですか?

すごくたくさんのタイプの音楽を聴いてきた。ジャズ、ファンク、HIPHOPも大好きだし、レゲエ、西アフリカミュージックも、たくさんのラテンアメリカ音楽も聴いてきた。実際、小さい頃からたくさん聴いて育ったのは、ロック、パンク、フォーク、、、、つまり全部だね(笑)。

—ご自身が曲を作る時、それらのジャンルはなんとなく整理されるんですか?

いつも曲を作る時は、このスタイルで書こうみたいなバリアは全くない。何かバリアを作っちゃうと、そっちの方向にしか行かないから、いつも違う場所からいろんな影響を受けて、その時に溢れ出たものを流れのままに書いている。どこから影響を受けているのかは、自分でもよくわからない。

—音楽が初めてあなたの心を捉えた瞬間は憶えてますか?

たぶん、小さい頃はディズニー映画だったと思う(笑)。一番興味があったのは歌うことで、一日中歌ってた。ママが話すのは、「あなたは小さい頃よくThe Prodigyを歌っていたわ。“I’m a firestarter…”って」(笑)。

—(笑)。すごい子供ですね。そんなにたくさんの音楽を聴く環境はどうやって作られたんですか?

まずは、父親が音楽好きで趣味でギターを弾いていたし、家で常にいろんなジャンルの音楽を聴いていたんだ。それからロンドンはマルチカルチャーだから、いろんな音楽がどこでも演奏されている。その生活に慣れているし、常に違ったスタイルの音楽に触れる環境にあるよね。

—なるほど。家庭環境は大きいですね。

両親が勧めてくれて、兄弟みんな音楽のレッスンに通っていたんだ。僕はギターやサックスを習い、兄はバイオリン、姉はピアノ、弟はクラリネットを習ったんだ。僕だけがプロのミュージシャンになったけど、1人はトラックメーカーとして演奏もしているよ。家族みんな音楽を愛してる。

—オスカーさんだけなぜプロに?

僕の前にはいつでも道があった。すごく自然なことだったんだ。「有名になってやる!」みたいな野望はなかったけど、音楽以外の道を考えたこともなかった。ただ「音楽をやっている自分のこの感覚は正しいな」っていうのは常にわかっていたつもり。

—影響を受けたアーティストは?

ジョージ・ベンソン、ジョニ・ミッチェル、ジョン・マーティンとか、ちょっと昔のアーティストも好き。今僕の周りにいるUKアーティストもみんな素晴らしいしね。

—ところでオスカーさんのMVがすごくユニークで面白いけど、あれはあなたのアイディアですか?

友人のマルコム・ヤング(Malcolm Yaeng)がディレクションをしてくれていて、お互いにアイディアを出し合って作ってる。僕の音楽は感情的にもたまにすごくヘビーなんだけど、シリアス一辺倒で伝えたいわけではない。だから、ビデオは単に楽しくなるように、シリアスになりすぎないように遊んでいるんだ。

—オスカーさんはすでに日本にファンが多いけど、何かきっかけはあったのですか?

まったくなくて、少しづつ、徐々に徐々に着実にって感じかな。多分僕の曲をJ-WAVEが流してくれて、多くの人がラジオで聴いてくれたのが大きかったんじゃないかな。それで、クチコミでいろんな人が友達に伝えてくれて広まっていったんだと思うよ。

—では、アーティストとして何を一番大切にしていますか?

まずライブは大好きだし、ステージに立つことをとても大切にしている。ライブでお客さんとインタラクションできたり、そこで音楽とちゃんとコネクトすることが僕にとってすごく大きな意味がある。それから、ミュージシャンとしては、僕のクリエイティビティは、「オスカー最高〜!」ってお客さんから評価されることよりも、もっと自分の中の深い部分にある。うまく言葉にできないけど、自分が辿るべき人生の道だし、自分と冷静に向き合う部分だから、作ったり、書いたりというクリエイティブな行為自体が僕にとってすごく重要なことだよ。

—オスカーさんは時々、環境問題や政治問題など社会的なことにも言及していますね。

僕の音楽を通して、そういういろんな社会情勢に触れることも好きなんだ。音楽はとてもパワフルなツールだから、たくさんの人にメッセージを届けられるよね。ミュージシャンとしてユニークなプラットフォームを持っているのだから、そこに感情を込めて伝えたら、すごく強い影響を与えることができると思うんだ。新聞を読んだり、ソーシャルメディアをスクロールして過ぎていってしまう情報よりも、もっと何か感じてもらえるかもしれない。今、世界はすごく難しい時代で、とんでもなく残酷なことがあちこちで起きているけれど、自分の持っている立場を利用して、世界が少しでも良くなるように何かアクションを起こしたいと思ってる。

—素晴らしい。

ただ、いつもそんなことを考えて音楽活動をしているわけじゃないよ。音楽を通して人に喜びを与えたり、現実のひどいことから目を背けさせたりすることだってとても大切で、「こんなに現実はひどい事ばかり起こるから、変えなくちゃ」って伝えたいわけではないんだ。

—とても興味深いお話をありがとうございます。それではオスカーさんにとってチャンスとは?

過去を振り返っても、これから先も、音楽をやり続けて、ミュージシャンとしても人間としても成長していくことがチャンスに繋がるんだと思う。自分の作った作品が僕を多くの人と繋げてくれるし、世界中を旅することでもっともっと素晴らしい人達と出会うことができるしね。それに、昔はこうなりたいと描いたとおりの自分になりたかったし、今も人気者になることはもちろん好きだけれど、もっと大事なのは、常に自分がハッピーで、安定していて、自分に正直に音楽を作れていることだと思う。

—では最後に成功とはなんですか?

常に自分自身が満たされていて、自分のやっていることで、世界にポジティブなインパクトを与え続けられることだね。

 

GREENROOM FESTIVAL前編のライブレポートはこちらからチェック。

Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka