パノラマパナマタウン初のワンマン全国ツアー「HUMAN PARTY」最終日。4人の溢れ出る想いが一瞬に詰まった、歓喜と熱狂の2時間【ライブレポート】

2019/06/12

今後の活躍が最も期待される新進気鋭のオルタナティヴロックバンド「パノラマパナマタウン」。今年2月にリリースしたアルバム『情熱とユーモア』のヒットに続き、5月19日に配信開始したばかりの新曲『ずっとマイペース』も好調なスタートを切ったばかり。さらに、今年8月の「rockin’on presents ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」にも出演が決定するなど絶好調だ。

パノラマパナマタウンは、岩渕想太(ヴォーカル、ギター)、タノ アキヒコ(ベース)、田村夢希(ドラムス)、浪越康平(ギター)の4人が神戸大学在学中の2014年に結成したバンド。大学3年の時にMASH A&Rのオーディションでグランプリを獲得して一躍脚光を浴び、「VIVA LA ROCK」や「ROCK IN JAPAN」などの大型フェスに参加して頭角を現し、2018年春にA-Sketchよりメジャーデビューを果たした。

2019年2月には早くも初のフルアルバム『情熱とユーモア』をリリースし、同時に全国ワンマンツアー『HUMAN PARTY』を9都市で行うことが決定。千葉を皮切りに始まったツアーは、仙台、札幌、福岡、広島、新潟、名古屋、大阪と廻って、5月18日の東京・恵比寿リキッドルームでついにファイナルを迎えた。HIGHFLYERSは、最終日のライブレポートをお届けする。

暗闇の中、 赤いムービングライトがステージを照らし出すと、メンバー四人がゆっくりとステージに登場。田村のドラムの合図と共にアルバム「情熱とユーモア」のリード曲『Top of the Head』のイントロが始まる。「HUMAN PARTY、始めようぜ〜!」という岩渕の言葉でライブはスタート。リキッドルームのステージをしっかり踏みしめながら、ひとつひとつの言葉を丁寧に、そして堂々と歌い上げていく。続けて同アルバムから『$UJI』、『Gaffe』が続く。「調子どうですか?みんなの声聞かせてくれよ」と言って、コール&レスポンスが始まると、徐々に会場とステージは一体になり始め『マジカルケミカル』へ。浪越が心地良いギターソロを聴かせると、続いて岩渕もギターを携え、「どれだけ離れても俺たちの地元は神戸。神戸新開地に捧げます!」と言って原点回帰するかのごとく、2016年に発表したデビューミニアルバムの1曲目に収録された『SHINKAICHI』を披露した。

その後、「変な奴が一番かっこいい」と言い放って始まったのは、アルバム2曲目に収録されたタノアキヒコ作詞の『Sick Boy』。パノラマ流パンク・ロックともいうべき軽快に刻むサウンドが、会場いっぱいの観客の鼓動とひとつに重なり、会場は一段と盛り上がりを見せた。

曲終わりのMCでは、今日のチケットが完売しなかったことを言及し、悔しさをにじませた岩渕。「それでも誰よりも負けないリキッドルームを作りたい。 全国9ヶ所回って、一人一人が待っててくれたんだなって思った。 一人一人違う人たちが集まって、それぞれの思いがあって今日が出来てる。最後までよろしくお願いします」と語ると、会場からは温かい大きな拍手が湧き上がった。タノ、田村、浪越の和気藹々としたMCの後は、 「人の裏側、誰にも分かち合えない秘密が一番大切」と言って、アルバム『情熱とユーモア』から『月の裏側』を。続いて『シェルター』、そして『真夜中の虹』を熱唱し、岩渕の感情に呼応するかのように浪越の熱いギターソロが会場中に響いた。

左上から時計回りに:岩渕想太(ヴォーカル、ギター)、浪越康平(ギター)、タノアキヒコ(ベース)、田村夢希(ドラムス)

歌い終えた後、岩渕は『真夜中の虹』の誕生エピソードをゆっくりと話し始めた。北九州のとある商店街で餅屋を営む両親のもとに生まれた岩渕は、街の再開発で近くにショッピングモールができると、賑わっていた商店街から次第に人が消え、シャッター街へと変化していく様を目の当たりにした。「差し込んだ夕日がシャッターに反射するような、寂しい商店街がすげぇ好き」で、 その光景を見て育った記憶から『真夜中の虹』は生まれた。そして今も、その商店街で岩渕の父は餅を作り続けている。「父親の作る餅が大好きなのは、俺の父さんしか作れない餅だから。だから俺は俺にしか歌えないことを歌い続けたいと思うし、俺らにしか作れない音楽を作り続けたい」と明言し、その後は「人生はいつだって水際」と言って『Waterfront』を、続けて『Who am I⁇?』、『distopia』、『くだらnation』を全力で叫ぶように歌った。そして、一人一人は、みんなバラバラで人間臭いし、それぞれがそのままでいいんだと自己肯定するために、今回のライブのタイトルを「ヒューマンパーティ(人間集会)」にしたことを、一人一人の心に届くようにしっかりと伝えた。

MCの後は空気を一転させ、自己紹介の曲『PPT』へ。観客が全員手を上にあげて 「相当やばいぜ」 のフレーズを大合唱してジャンプするところから始まり、ノリの良いリズムに合わせて一体感を増したままライブは最高潮に。そこからの『リバティーリバティー』、『ロールプレイング』、『フカンショウ』の流れは圧巻だった。リズム、スピード、サウンド、エネルギー、そしてステージのダイナミックなパワーとフロアの熱狂のベクトルがぴったり重なってラストのクライマックスへ進んでいく様子からは、多くのファンを携える一流バンドとしての貫禄さえ感じることができた。

絶頂のまま4曲が続き、完成度の高さを見せつけた後は、「限界まで行こうぜ!今日もこれ以上の夜はない」と叫び、『MOMO』が続く。「今ならなんでもできる気がする、体からパワーが湧き上がってくる気がする。この気持ち持って帰って!」と叫んで、ついにラストの『めちゃめちゃ生きてる』へ。歌い終わり、「明日からも頑張ろう〜!」とひとこと叫んで4人はステージを去った。

アンコールでは、撮影、SNS投稿オッケーの“パノパナパパラッチ”タイムに。「数十年後も変わらず歌い続けたい」と言って、『世界最後になる歌は』を歌ったあとは、翌日の0:00に配信をスタートした新曲『ずっとマイペース』を初披露。 最後は岩渕もギターを抱え、「5月18日恵比寿リキッドルームに来てくれて本当にありがとうございました。この日、この場所、この時間を選んだ皆さん、いい趣味してるね」と言って、2016年に発売したデビューミニアルバムに収録された『いい趣味してるね』を歌ってツアーファイナルの幕を閉じた。

“パノパナパパラッチ”タイムの間は、写真撮影、SNS投稿がOKとなる。スマホで撮影するファンに向けてポーズする岩渕

終演後に4人に今回のライブツアーを終えての感想を伺った。

岩渕は、「早かった。ずっとツアーファイナルのことばっかり考えてたけど、始まったらあっという間だった。今日のお客さんの盛り上がりは凄かった」と言い、ツアー全体を経験して得たものは何かという質問には、「伝わることと伝わらないことがクリアになったツアーだった。楽しいことや熱量だけじゃなく、自分たちが本質的に何を感じているかがちゃんと伝わるにはどうしたらいいかを考えた」と答えた。浪越は、「めっちゃ楽しかった。今日はリキッドが完売しなかったので、次は満員になるようにしたい」と次回への意気込みを語った。タノは、「ヒューマンパーティってつけた通りの人間味が溢れているライブだった。フロアの凄さは尋常じゃなかった」。田村は、「新しい挑戦をしたけど、7割くらいが成功。僕なりに見えたことがあったのでそれを次につなげていきたい」と未来への前向きな意欲をのぞかせた。

 

とてつもない可能性を秘めたバンドであると確信したライブだった。 最終目的地に向かって、彼らの旅はまだまだスタートしたばかり。これから彼らは、今よりもっと洗練されていくし、今日より遥かに大きな箱を満員にする日も遠くないだろう。でも、「今」が一番で、最高であることを教えてくれるのがこのバンドの魅力でもある。一瞬一瞬を見逃したくないほど、“めちゃめちゃ生きてる”のがパノラマパナマタウン。

パノラマパナマタウンは、今後夏から秋にかけて、様々な場所でライブやフェスに出演するので、未体験の方は今この瞬間もキラキラ生きている彼らを見逃さないように。なお、HIGHFLYERSでは、ヴォーカルの岩渕想太のインタビューも行なっている。併せて読んで、パノラマパナマタウンの成り立ち、思考や情熱をより深く知っていただきたい。

Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka