太宰府天満宮の鳥居がピンクになった!フラワーアーティスト、ニコライ バーグマンが描く30年後の花見『Nicolai Bergmann HANAMI 2050』開幕!【イベントレポート】
2018/03/31
日本列島が満開の桜で彩られるなか、福岡の太宰府天満宮では「Nicolai Bergmann HANAMI 2050 —花を愛で、未来を想うーFlower Exhibition in Dazaifu Tenmangu」が3月29日に華々しく開幕した。今回で3回目となった太宰府天満宮とニコライ バーグマンのコラボレーションは 、「未来の花見」をテーマに太宰府天満宮、宝満宮竈門神社、志賀海神社、柳川立花邸 御花の4会場で行われ、「未来とはどういうことか」を自問自答し続けたニコライが無限の創造性と想像力を駆使してクリエイションした、“誰も見たことのない花の未来”が1100年以上もの歴史を持つ神社で繰り広げられている。
メイン会場の太宰府天満宮へ向かって表参道を歩いていくと、まずはピンク色に変身を遂げた太宰府天満宮の鳥居に思わず目を奪われる。神社のシンボルともいうべき鳥居に斬新に手を加えさせる太宰府天満宮のアートに対する造詣の深さと、ニコライとの信頼関係が垣間見える大作だ。そして鳥居をくぐった正面にある延寿王院には、合計およそ1000メートルのクロタケを立体的に組み立て、グロリオサで華やかさを加えた作品が展示されている。その右手にある浮殿には、「未来の花見」を象徴し、ピンクにライトアップされた作品が施された。
太宰府天満宮のシンボルの一つ二重橋のある心字池にもアートがある。これは、池の中に竹の枠を浮かべてその中に太宰府の敷地内で採取した椿の葉とカーネーションで作られた作品。さらに橋を渡った本堂左手の絵馬堂は、ピンクの毛糸からたくさんの試験官がぶら下がっており、参加者が一本ずつ花を生けられるように一万本のピンクのスイートピーが用意されている。楼門にはプロテアでアリウムに動きをつけたユニークで印象的なオブジェが置かれ、通常は作品を設置できない御本殿にも、スイートピーとモカラ種のラン、ドラセナ、タマシダを使って左右7mの大型アレンジメントが施された。ちょうど満開で見頃がピークの桜とあいまって、学問の神様として名高い太宰府の神様が、まるで新しい門出を温かく祝福しているかのように優しくも晴れやかな空間が生まれている。
また、文書館ではニコライにとって新しい試みがなされている。モンステラ、アンスリウムの葉、シースターを使ったグリーンウォールの中の画面に、ニコライがデザイン・イメージしたデジタルアートの花が咲くという、植物の葉を融合させたアートだ。その隣のスペースでは、ペッパーベリーで覆い尽くした世界でひとつしかないアルネ・ヤコブセンデザインのエッグチェアの展示も。そして、文書館の一番大きな部屋のピンクのフラワーウォールや物販スペースのダリア、アンスリウム、菊、カーネーションで作られた壁は絶好のフォトスポットを演出し、来場者がSNSでも楽しめるような工夫がなされている。
別会場である竈門神社へは太宰府天満宮から送迎バスが運行しており、2会場を行ったり来たりできる。竈門神社では桜の木に苔のボールを吊るしたり、土の上にグリーンで埋め尽くされた作品が置かれていたり、自然の中に溶け込んだアートが目立つほか、御本殿の横にある参集殿では室内展示も。花見を楽しみながら、境内のあちこちにアートを発見しては写真を撮って楽しんでいる多くの来場者の様子が目立った。
HIGHFLYERSは、開幕に先立って行われたオープニングレセプションに出席。パーティーでは、静寂に包まれるなか、文書館の庭園にて神楽の舞が行われ、そのあとに主催者のニコライが「みなさんこんばんは。HANAMI 2050へようこそ。今日は夢のような夜になりました。 展示を見て『神社、作品、花の30数年後はどうなっているんだろう?』と想像を膨らませてほしいです」と挨拶した。今年8月で来日して20年になるというニコライ。地面がブルーのビニールシートで一面に覆われている花見がとても不思議だったと来日当初を振り返りつつ、今回の展示でピンクを多く用いたのは、その頃の花見の印象と結び付いているからだとも語った。「来日してから20年が経ち、日本人の花や季節に対しての愛がよく理解できるようになったし、自分も花の美しさがよりわかるようになりました。展示を見て、私と一緒に未来を楽しく感じてもらいたいと思っています」と挨拶を締めくくった。
宮司の西高辻信良による乾杯の挨拶では、「このコラボレーションについてニコライさんと話をするたびに悩まされるのですが、今回は何に悩んだかと言いますと、『鳥居をピンクにしたい』とニコライさんから言われたことですね。“神社ってこういう形じゃないといけない”っていう多くの皆さん方の先入観があるから、勇気がいるんです。でも一方で、いろいろな色や香りがあることが日本の美しさでもあるので、最終的にニコライさんが考えるピンクの鳥居だったらいいだろうと覚悟しました。後で、どういう批判をいただくか、お話いただければありがたいと思います」と話し、会場は大きな温かい笑いに包まれた。
パーティーで改めて、ニコライにこの展示の感想を伺うと、「今回は今までにない組み合わせだし、東京からも30人以上が来てスタッフの数も倍になったし、僕にとって最大の展示になりました。このイベントはアーティストとしていろんなクリエイションをするので、普段の仕事とは全く違う取り組み方をしているけれど、花市場に行ったり、好きな山へ行ったり、旅に行ったりすることでインスピレーションを得て毎回違うものを作ることがとても楽しい」と満足した様子だった 。
宮司は「最初は久しぶりに勇気がいりましたよ。『え?鳥居をピンクにするの?』って(笑)。でも、私はニコライの上品なセンスをとても信頼しているし、神様が喜んでもらうことを最優先して、それによって皆さんが喜んでいただければそれでいいんです。神社は、本当は文化に開かれている場所だし、最先端じゃなきゃいけない。難しいけれど、変わり続けることで変わらないものを守らないといけないんです。梅林は、弱ってきた木の隣に新しい木を植えて、30年後の梅林を想像しながら守っていくのですが、全ては手を入れ続けないと劣化していくだけ。1世代先を見据えて、そのためにどんなものを投資していくかを常に考えています」と話した。
BICULTURAL SOULS 2018年2月号のインタビューで、世界にはどんな変化が必要だと思うか?という質問に対し、ニコライは「自分もそうなんですが、ただ走り続けるだけじゃなくて途中で止まって考えることが大切。どうして今日仕事に行くのかとか、仕事の内容が好きなのか嫌いなのか、嫌いならそれをどうやって変えるのかというのをもうちょっと深く考えるべきですね。変化の必要性を考えることが欠けている。世界全体が先のことばかり見ようとしすぎていますが、そうしているからといって新しいものが生まれるとは限らないと思います」と答えた。そのように、未来に対する変化の必要性を熟考することの大切さが、この展示からも感じ取れる。
文化に対して非常に開かれた由緒ある神社と、常に一世代先の未来を見据えた宮司、そしてニコライのパッションとアートセンスが見事に融合して化学反応を起こした世界的にもオンリーワンの見事な展示『Nicolai Bergmann HANAMI 2050』。開幕当日は開場前から文書館入口に長蛇の列ができていたが、18000人以上を動員した昨年よりもさらに多くの来場者が予想されている。わずか4月1日までの開催なので、今週末は桜と共に福岡を彩るアートを見に出かけよう。
Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka
「Nicolai Bergmann HANAMI2050 —花を愛で、未来を想うーFlower Exhibition in Dazaifu Tenmangu」
日時:2018年3月29日(木) ~ 4月1日(日) 9:00 ~ 17:00
※開催時間は、一部会場により変更の場合あり
夜間展示(ライトアップ):太宰府天満宮・宝満宮竈門神社
3月30日(金)・31日(土) 19:30最終入場 – 20:00終了
柳川藩主立花邸 御花
3月30日(金) 20:30最終入場 – 21:00終了
場所:太宰府天満宮
宝満宮竈門神社
志賀海神社
柳川藩主立花邸 御花
入場料:野外展示 無料
屋内展示全館共通 1,000円(税込)
※12歳以下は入場無料
詳細はニコライ バーグマンHPにて