世界にひとつだけの作品の数々。今年6回目を迎えた 個展「リュネット・ジュラx harunachico vol.6」が11月26日まで絶賛開催中!【レポート】

2017/11/19

鮮やかに染められた豊かな色彩に、今にも動き出しそうなリズミカルで愉快な人物や動物の細かい描写が特徴的で、一瞬見れば心奪われワクワクが止まらなくなるアーティストharunachicoの世界は、国内外でコアなファンの心を掴み続けている。そのharunachicoが、布やシャツ、カバンなどの生地や、ポットやコーヒーカップなどの器に描いた作品の数々を展示した個展「Lunettes du Jura x harunachico vol.6」が11月26日まで、表参道ヒルズの 「Lunettes du jura(リュネット・ジュラ)」で開催中だ。

表参道ヒルズの リュネット・ジュラで開催中の個展「Lunettes du Jura x harunachico vol.6」

harunachico(ハルナチコ)とは、滋賀県出身の作家市橋聡子と三重出身の染工人三村誠が二人で制作するユニットのこと。歴代の愛犬達、「ハル」「ナツ」「チコ」の3匹の名前を繋げたのが名前の由来で、動物好きな市橋らしく、作品には犬、猫、うさぎ、くま、などの 動物が常に登場する。表現は額縁の中の絵画だけにどどまらず、ブラウスやTシャツ、主に布革糸を使った立体造形、陶器やガラスなど多岐にわたり、近年はショップやビルの壁画のほか、パッケージ商品のイラストなど、活動の幅がさらに広がっている。

harunachicoの作品の一部

今回リュネット・ジュラに展示されている器は、フランスの陶器やガラス用の絵付け絵具「ポーセレン」でひとつひとつ描き、一日乾燥させてから焼いたもの。市橋は、絵の具や染料が入った袋を搾り出しながら布や陶器に直接描いていく手のかかる表現法「筒描き」を用いて制作する。筆で描くと一旦止まって絵具を付ける手間があるけれど、筒描きはノンストップで描く事が出来るので逆に本人には合っているそうだ。筒描きは、手作りの風合いや細かい表現が出やすく、プリント出来なかったり描きにくかったりする場所に描けることが魅力だと言う。

一つひとつ丁寧にharunachicoのイラストが描かれたポットやコップなど。値段は約5500円〜約15000円

市橋が絵を描くようになったきっかけは、母の日のプレゼントに描いたTシャツの絵。その後、京都の手作り市にTシャツを出店するようになり、そこで購入した人がそのシャツを着て動き、それを見た人が購入するという口コミの広がりに面白さを見出したという。2003年に京都造形芸術大学情報デザイン学科卒業後、神戸で行われたオーディションイベント「ドラフト!」で入選し、大丸百貨店にてTシャツセレクションを展開した。2005年には京都 の“モノヅクリ”をコンセプトにしたお店が集まる「Duce mixビルヂング」から 壁画制作の依頼があり、生まれて初めて壁画制作をすることになる。「1階から5階までの室内の壁を自由に好きなように描いていいよ、と言われてドキドキしながら描いたのを覚えています。これがきっかけで大胆に描くことができるようになった」と市橋。

京都のDuce mixビルヂングに描かれた壁画

そしてそのビルの4階がアトリエ用のフロアとなっていたため、その一室を借りて同時にアトリエ「harunachico」もスタートした。「壁画を見てアトリエまで訪問して下さる方が多く、そこで沢山の嬉しい出会いがありました。そういう方たちとの出会いを大事にしながら表現し続けてきた結果、自然に今の形になりました」とゆったり優しく語る市橋の、そのおおらかでキラキラとした人間性はやはり作品の魅力に通じるところがある。リュネット・ジュラ表参道ヒルズ店の店長・菅野恵子もその壁画に心奪われた一人で、それがきっかけとなりリュネット・ジュラでの個展が始まった。こうして harunachicoの原点となった京都の壁画は、今も訪れる人たちの心を魅了し続けている。

京都を拠点に個展やグループ展を中心に活動を続けていた市橋だが、2008年、フランス・パリのルーブル宮殿内にある装飾美術館での企画展「感性 Japan Design Exhibition(日本のデザイン展)」で日傘と暖簾を展示し、国外で初めて作品を発表する機会を得た。 2009年には ニューヨークのジャビッツセンターでも作品を発表するなど海外でも注目されるようになり、2010年により広い制作スペースを求めて三重県にアトリエを移設した。

アートやクラフトとは異なり、非常に自由な発想で、弾んだ呼吸に合わせて手を動かして描き進めていくのが市橋のスタイル。「止まらずに描き続けていると、にやにやしてくる。手をノンストップに動かす勢いが快感。特にアイディアがあって描き始めるのではなく、描き出すといろいろなことを思い出すし、新たに思いつく感じです」と話す市橋の尊敬するアーティストは、ピカソ。「昔、『ピカソ-天才の秘密/ミステリアス・ピカソ』という映画があり、永遠と絵描き続ける姿を観ていると、描きたくてたまらなくなって、上映中に突然スケッチブックを取り出して描きまくりました(笑)。「こんなに自由に、描いていいんだ!」って勢いの新鮮さに自分の中で何かが溶けた感じだった。その映画が横顔を描けるようになったきっかけでもあります」。

カフェで壁画を描く市橋。hermit green cafe 京都・大山崎店

また、スカートや布バッグなどの染物は、夫でもある染工人、三村の役割がさらに重要となる。蛸糸で四方八方を船の帆のように張った布を大きな木枠に収めて制作をスタート。市橋がボトルに入った顔料を上から垂らしながら描き、木枠を一旦裏返したら、布に顔料が通っていないところを今度は三村が補正していく。補正しきれていないと色が漏れてしまうので、ミスができない。その後、市橋が色を指定し、三村が色チップを見ながら染料で色をつくり挿していき、乾いたら定着液につけ、そのあと熱湯で手洗いしていく。夏場は最も辛い作業だという。木枠は現在6個。スカートなら1枠で作れるのはたったの2着。ローテーションで染色していくため、染め上がるまでに一週間以上かかり、そこから仕立てに2週間を要する。その後、さらに書き足しするなど手を加えるため、全行程に、1ヶ月以上かかることも珍しくない。

今回の展示で販売されている洋服やタペストリー、布バッグ。値段は約15000円〜約42000円

次々と生み出される作品に、誰よりも真っ先に反応してくれるのは6歳になった息子。「蛸が墨を吹き掛けてきたので、その人がよけたら、その奥に真っ白い服を着た人がいて、墨が吹き掛けられちゃった!真っ白な服に墨が!」など、息子がアイディアをくれる時もあると言う。「よけた人の俊敏さと白くて汚れたくないのに汚されるという、滑稽でシュールなアイディアが面白いです。新しさに敏感で、時にドキッとするし、子供は大人とは全く違う考えを持っている特別な存在」と市橋。描き続けることで出会うつながりの楽しいスパイラルに、敏感に、大切に反応しながら作品を作り続けているスタイルは今後も変わらない。今後も壁画制作はプロジェクトとして続けていきたいそうで、「建物を絵で埋め尽くしてみたい(笑)」と楽しそうに語ってくれた。憩いの場を創造していくharunachicoの唯一無二の人との繋がり方と、世界にひとつだけの作品の数々。今後も二人の活動から目が離せない。

ところで、現在個展を開催中のリュネット・ジュラは、国内に4店舗を展開する、今年で創業28年目を迎えたヨーロッパ直輸入のメガネ専門店である。「リュネット」はフランス語でメガネ、「ジュラ」はフランスとスイスの国境にまたがる地域で、ヨーロッパのメガネの中心的産地の意味を持つ。ジュラ地方のメガネに代表されるような「小さなアトリエで作られた、きれいで楽しく、日本ではまだ知られていない、素顔の雰囲気をどんどん変える」をコンセプトにメガネやサングラスを厳選して紹介しているユニークなお店だ。毎回評価も高く人気の高いharunachicoの個展は今年で6回目。メガネ専門店での個展にちなんで、作品の中にはメガネが多く登場する。表参道店の取扱いブランドは、TRACTION PRODUCTIONStheoMYKITAfrost REIZ GERMANYHENAUなど。ちなみに、以前HIGHFLYERSのON COME UPで2015年12月号に登場した フランス在住のメガネ職人、北村拓也のブランド「北村DOMONT」は リュネット・ジュラ六本木店で取り扱っている。

リュネット・ジュラ表参道店

「Lunettes du Jura x harunachico vol.6」は、11月26日までの開催。期間中、「#harunachico」、「#リュネットジュラ」を付けてSNSに投稿された方に先着でピンバッチをプレゼント。お早めに。

プレゼントでもらえるピンバッジ

 

Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka(一部はharunachico所有の写真を使用)

 

リュネット・ジュラ表参道ヒルズ

住所:東京都渋谷区神宮前4-12-10表参道ヒルズ同潤会2F

電話:03-3401-3858

営業時間:11:00-20:00

www.lunettes.jurajura.jp