フランス在住の眼鏡職人・北村拓也さんの「KITAMURA Domont」お披露目会に行ってきた【HIGHFLYERSの現場レポVol.6】

2016/08/10

有望な若手の方々を紹介するコーナー「ON COME UP」の2015年10月号にご出演頂いた、パリを拠点に眼鏡職人として活躍されている北村拓也さん。先日、六本木にある眼鏡店「LUNETTES du JURA」さんで、北村さんのブランド「KITAMURA Domont」のお披露目会があり、ハイフライヤーズのディレクター・HAMAOさんと行って来ました。

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左: 北村拓也さん

北村さんは、日本の眼鏡産地として知られる福井県鯖江市で眼鏡職人としてキャリアをスタートし、その後、世界中の眼鏡店や工場、デザイナーの元で眼鏡作りを学ばれました。そして日本の眼鏡業界を変えたい想いでパリに渡り、2014年に自身のブランド、KITAMURA Domontをスタート。現在も精魂込めて毎日眼鏡作りに向き合っていらっしゃいます。

北村さんとLUNETTES du JURAさんとの出逢いは、2014年にパリで開いたKITAMURA Domontの展示会だそうで、それをきっかけに、北村さんの眼鏡を取り扱って頂くことになったそうです。今回は年に一度の北村さんの帰国に合わせて、お披露目会を8月6日と7日の2日間だけ開催し、新作を含む全てのコレクションを特別展示されていました。

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眼鏡の値段は43,000円前後から58,000前後。フレームの厚さによって値段が変わる

北村さんは、それぞれのお客様に合う眼鏡を作るため、オーダーメイドで眼鏡を制作されています。自分で好きなフレームの色や形を選べるのはもちろん、顔や鼻の幅を計って頂き、骨格にピッタリ合う眼鏡を作ってもらうことが可能です。洋服や靴の様に、眼鏡をオーダーメイドで作ろうという考えはあまり思い浮かばないかもしれないですが、毎日長時間かけるものであれば、やはり自分にピッタリくるものがいいですね。そんな希望を叶えてくれるのがKITAMURA Domontの魅力の一つだと思います。

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今回のお披露目会の感想を北村さんに聞いてみると、「まだまだ小さいブランドですが、お客様のお声を直接聞きながら眼鏡のご説明を出来た事は非常に嬉しく、今後の創作活動の励みになりました。海外ではデザインや物作りとして評価して頂けることはありますが、日本ではデザイナー・職人として私を見て下さる方が多いので、お客様とお話をしていても非常に楽しかったです」とおっしゃっていました。

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北村さんをON COME UPで取材させて頂いたのは、昨年の9月に私がパリを訪れた時。パリの街を案内して頂きながら、色々お話を聞かせて頂きました。自分のブランドを持っている人であれば、皆、自分の商品を雑誌などに掲載してもらうために必死に動いている方が多いと思いますが、北村さんは敢えてそういうことはせずに展開を考えていて、周りに流されず自分のビジョンをしっかり持っていらっしゃる姿がとてもかっこいいと思いました。また、その時のインタビューでお聞きした、「現在のメガネ産業における課題を一つあげるとしたら何ですか?」という問いに対する答えも印象に残っています。

「私が海外に出たきっかけの一つは、これからも眼鏡職人を存在し続けさせるべく、新しい方法を探す為でした。現在、格安の眼鏡店、3Dプリンターなど、眼鏡産業で大きな転機が来ています。“職人が作る”という価値観を守るという点では既に各々行っていると思いますが、価値観を守るのではなく、ある特定の職人が作らないといけない理由が必要になってくると思います。既に日本から無くなった工芸品があるように、眼鏡職人という仕事は50年、100年後に無くなる可能性が十分にあります。そうなった時に、特定の職人にしか出来ない技術や理由があれば、そういう時代が来ても戦えます。日本製だから当たり前に良いという感覚ではなく、将来に向けていかに準備が出来ているかが今は大事ではないかと思います」

職人に限らず、カメラマンやデザイナー、ミュージシャン始め、クリエイティブな技術を持った人達にも同じことが言えるのではないでしょうか。今は誰もが何でも簡単に出来てしまう時代ですから、北村さんのおっしゃるように、“その人にしか出来ない何か、その人ありきの何か”がなければ、今後、その職業を生業として続けていくのは難しくなっていくのだろうと思います。それも急激なスピードで・・・。肩書きを必要としない人達しか生き残れないのであれば、近い将来「職業」という言葉も必要なくなるのかもしれない。そんなことを感じている今日この頃です。

私も“私に出来ることで、私にしか出来ないこと”で世の役に立てることは何なのか、これからも追求し続けていきたいと思います。

 

ON COME UPでの北村さんのインタビュー記事は以下のリンクからお読み下さい。

 

文章: Atsuko Tanaka