「おうちでつくれる かんたんスパイスカクテル」が先日発売。スパイスとハーブを活用して、いつもの家飲みドリンクをワンランクアップ!

2022/05/03

いつもの家飲みを楽しくアレンジできる、40種類のカクテルと10種類のモクテルレシピが収録された本「おうちでつくれる かんたんスパイスカクテル」が先日発売された。⼿に⼊りやすいスパイスやハーブなどをカクテルに組み合わせることで、簡単にバーで飲めるようなワンランクアップした奥深い味を楽しむことができる。

著者は、バカルディで広報を11年間担当したのちに独立し、現在はフリーのライター、PRコンサルタントとして活躍する児島麻理子。バー巡りをライフワークとしており、バー文化を広めるよう日々務めている。

そんな児島がこの本のカクテルレシピの考案に依頼したのは、凄腕の4名のバーテンダー。2015年フランスで開催されたヘネシーミクソロジーコンペティションの世界大会優勝歴を持つ、池袋「BarLIBRE」の清崎雄二郎、自身の畑で栽培したハーブやスパイスを使ったドリンクを提供する「Bar BenFiddich」の鹿山博康、そしてニューヨークでバーテンディングスクールを卒業後、ヨーロッパでミクソロジーを学んだ、パークホテル東京「Bar The Society」の南木浩史と、国内外様々なカクテルコンペティションで受賞歴を持つ、ザ・ペニンシュラ東京「Peter: the bar」のシニアバーテンダー、鎌田真理。なんとも豪華な顔ぶれだ。

素晴らしいスキルを持つバーテンダーたちが考えたそのカクテルが、写真ではなく親しみやすい作風のイラストで描かれているのもこの本の特徴の一つ。レシピも見やすく、ハードルの高いイメージのカクテル作りが楽しく簡単にできそうだ。そこで、著者の児島とバーテンダーの清崎に、本の見どころやカクテルを美味しく作るコツなどを聞いた。

スパイスは、カクテルをより美味しく作るための一番手軽な材料。作る料理に合わせて、同じエリアのドリンクを楽しんでみて欲しい

―まずは児島さんにお聞きしたいです。この本を作ることになったきっかけを教えてください。

児島:もともとバカルディで広報をしていた頃から、バーや洋酒の文化をもっと広く伝えていきたいという想いがありました。今フリーランスとして活動している中で、架け橋として何かできることがないかと思っていた時に、出版社の方からスパイスを使ったカクテルの本を作らないかとお声がけいただいたんです。いろんな方にお酒に興味を持っていただくきっかけ作りができるんじゃないかと思って、やらせていただくことになりました。

―スパイスカクテルって今回初めて聞いたのですが、前からあったんですか?

児島:スパイスを使ってお酒を作るバーテンダーさんは前からいたと思いますが、スパイスカクテルというジャンルはなかったと思います。私もそうなんですが、家にスパイスはあるけれど、カレーや食べ物以外の使い道に困っている方って結構いらっしゃるんじゃないかと。スパイスは家でカクテルをより美味しく作るための一番手軽な材料になると思います。

―清崎さんはスパイスカクテルと聞いて、どう思いました?

清崎:僕はこの店以外も池袋に何店舗か持っていて、他の店ではクラフトコーラを作っていたり、前からスパイスと漢方を使ったドリンクはよく作っていたので、すごくマッチしていると思いました。

児島:この本を作るとなって、一番最初に思いついたバーテンダーさんが清崎さんでした。クラフトコーラを作っていることもそうですし、漢方に興味があることも聞いていたので。

―清崎さんはなぜ漢方に興味を持ったんですか?

清崎:漢方協会の方たちがよく店に来てくれて、漢方をお酒に落とし込めないかっていう話から興味を持ち始めました。お酒はもともと薬の文化から来ているんで親和性はあるし、カクテルにするのは面白いと思って。漢方を加えることによって、味にすごい立体感が出るというか、苦味だったりが合わさって奥行きがすごい広がるんですよね。

―この本は、アジア、中東・インド、ヨーロッパのスパイスで分けて、エリアごとに各バーテンダーが担当されているのが面白いと思いました。それは児島さんのアイデアだったんですか?

児島:編集者と話してる中で、そういう分け方してみるといいんじゃないかなって思いついたんです。例えば、今日はパスタを作るからヨーロッパの欄を見てみようとか、家で作る料理と同じエリアのドリンクを作ってみるとかって、わかりやすいかなと思って。それで、それぞれのエリアと一番イメージが近そうなバーテンダーさんを選びました。清崎さん以外の3名は、清崎さんから推薦いただいた方や、もともとスパイスを使われているような方で私が一緒に取り組んでみたいと思った方にお声がけさせていただきました。

―本を作るにあたってこだわったポイントはありますか?

児島:ノンアルコールを入れたことですね。最近は飲まない方も増えてて、モクテルの需要がバーでも増えているので。当初の企画にはなかったんですけど、是非ノンアルコールも入れたいとお願いして、ノンアルコールのコンペティションで優勝した経験もある鎌田さんにご相談しました。

―清崎さんは今回アジアのスパイスを使ったカクテルレシピを10種類考案されましたが、いかがでしたか?

清崎:僕はもともとベトナムでお店をやっていたこともあって、アジアの担当になりましたが、ベトナムでも日本でも、常にこういう感じのカクテルは考えていたんで、すんなりという感じでしたね。

ーいつも新しいカクテルレシピを考えるのに、どんなことからインスピレーションを受けることが多いですか?

清崎:やっぱり料理が多いですかね。食材屋さんをチェックしたり、外食したり、あとはネットを色々チェックしたりもします。お酒だと、洋酒を使うことが多いんで、敢えて日本酒などの和酒を飲むようにして、舌の経験値を積み上げるようにしてます。

児島:それぞれのドリンクのTIPSの欄に、料理との組み合わせの提案をバーテンダーさんのコメント付きで載せています。清崎さんが挙げてくださったものの中には、レモングラスの素揚げとか、知らないものが結構多かったです。

清崎:ベトナムではレモングラスを細く刻んで素揚げにして食べたりするんです。他にも料理はもちろん、お茶にしたり、香りとしておもてなしに使ったりもします。

―レモングラスを使ったドリンクは「火鍋ハイボール」、他にも「ゴマスクリュードライバー」などネーミングが面白いし、そそられますね。

児島:それぞれのバーテンダーさんの個性が出ていますよね。清崎さんのは面白いものが多いし、パークホテル東京の南木さんはおしゃれな感じとか。

清崎:そうですね。僕は基本はスタンダードカクテルが本筋にあって、そこから肉付けしているんで、そういうネーミングが多いと思います。

―今回考案したレシピの中で一番苦労したものは?

清崎:苦労した点は、おうちで作るカクテルのレシピを考えるというところですかね。テクニカルになりすぎると難しくなるので、なるべく単純にしつつも、複雑な味を出すのが難しかったです。道具があればなんでもできるけど、シェーカーとかバーツールを持ってない方も多いと思いますし、漬け込みとかオリジナルシロップとか考えても、それを皆さん果たして家でやるのかっていうところもあるので、その辺を考慮しながら考えるのが大変でした。でも、逆にシンプル化できて面白かったです。

児島:清崎さんが作ったもので私が面白いと思ったものは、今飲んでいる「火鍋ハイボール」。これにはポン酢が使われているんですが、家にある柑橘系の液体として、ポン酢はすごい使いやすいことがわかりました。

清崎:家で鍋をする時とかに使うことが多いと思いますけど、成分を見ると柑橘なんで、食べ物じゃなくて飲み物に入れてみるのもいいんじゃないかなって。

―清崎さんご自身の中で、今回のレシピで特に気に入っているのはどれですか?

清崎:火鍋ハイボールもそうですけど、表紙にもなった「アジアンブランデーバック」ですかね。これも家にありそうな、いちごジャムを使って、味も美味しくできたのでとても気に入ってます。フルーツカクテルはよく作るんで、ジャムはフルーツの加工品って考えると腑に落ちるというか。これをマーマレードとかブルーベリージャムに変えてもいいんで、多様性もすごくあると思います。エゴマの葉もポイントですね。鼻からくる香りを味覚に感じて楽しめると思います。

―簡単に作れるカクテルを考えてくださったと思いますが、その中でも美味しく作るポイントは何かありますか?

清崎:しっかり混ぜ合わせることが一番大事ですね。例えばジャムとかだと、ちゃんと混ぜないとなかなかうまく融合しないので。マドラーがなければ菜箸を使うでもいいですし、しっかり混ぜていただければ美味しくなると思います。

児島:他のポイントとしては、スパイスをグラスの淵にリムドしたり、すり鉢で潰してグラインドするなど、ちょっとしたことで香りがより立ちますね。

清崎:スパイスってグラインドした方が香りが立つから、使いやすいんですね。スパイスの香りがアルコールの液体に転写するんで、すごく簡単。実際に漬け込まなくても、漬け込んだみたいな味になります。

―児島さんはこれまでいろんなお酒をたしなまれてきていると思いますが、今回特に印象深かったカクテルを挙げるとしたら?

児島:それぞれのエリアの中で一つずつ挙げるとしたら、まず清崎さんのだと、先ほどの「火鍋ハイボール」と、あとは「ゴマスクリュードライバー」が好きです。私、前はすり鉢を持ってなかったんですけど、これをきっかけにすり鉢を買ったら料理もすごくするようになりました。鹿山さんは自分で畑もされていて、そこで作ったハーブをお店で出していらっしゃるんですが、「ノーボーダー」というドリンクは、しそとカルダモンを焼酎に入れて擂ると、綺麗に天然の緑色が出るんです。すごくいいなと思いました。また、南木さんは計算されたようなカクテルを作られるのが得意で、数式みたいなものに当てはめながらカクテルの比重を考えたりするんですけど、今回はそういう難しさは全く出さず、さらっと簡単に作れるレシピを出してくださいました。「マリーアントワネットの茶会」が気に入ってます。

―特に女性が好きそうなネーミングですね。

児島:サフランとローズを使っていて、私はローズってすごい女性っぽい感じがしていたけれども、彼に言わせると野性的な香りがすると、そしてそこに牛乳を入れることで中和されて美味しくなると言われて、なるほどと思いましたね。モクテルを作ってくださった鎌田さんのドリンクでは「ジッピーワイン」が好きです。クランベリージュースにスパイスをいくつか入れてワインっぽい味わいを出すんですが、料理ともすごく合うし、よく作って飲んでます。

―ところで、この本のイラストもとても素敵ですよね。

児島:カクテルやバーの本って、パキッとした写真で、かっこ良く見せるみたいのが多いんですけど、今回はカクテルに馴染みのない方にも手にしていただきたいという想いから、親しみを持ってもらえるように全部イラストでいこうとなりました。

清崎:僕のお客さんにもこの本をご紹をしていますが、お酒の専門書って写真がいっぱいあって見づらかったり、分厚くて読みづらかったりする中、イラストにすることで親しみやすさが出て、可愛いねとかレシピも読みやすいという声をいただいてます。

イラスト:くぼあやこ/ 西田真魚

―最後に、この本の見どころや、どんな方に読んでいただきたいかなど教えてください。

児島:これはおもてなし用の本と思っているので、家に人が来る時とか、もちろん自分用にも、いつもと違うおうち時間を過ごしたい時などに是非試していただきたいです。あとはスパイスカレーが好きな方などに贈り物として使っていただくのも良いかと思ってます。この本をきっかけに、カクテルやバーテンダーさんに興味を持っていただいたり、お酒への入り口になるといいなと思います。

Text & Photo: Atsuko Tanaka

 

「おうちでつくれる かんたんスパイスカクテル」

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