光の祭典「TOKYO LIGHTS」が12/9よりスタート!屋外型XRを活⽤したショーや、ファイバービームを駆使したトンネルなど最新技術が満載

2021/11/30

今年初開催となる、光をテーマにした最先端のエンターテインメントイベント「TOKYO LIGHTS」が12⽉9⽇(⽊)より3日間、明治神宮外苑 聖徳記念絵画館及び明治神宮外苑総合球技場軟式球場にて開催される。TOKYO LIGHTSは、⽇本が世界に誇る国際都市・東京に新たな光を灯し、エンターテインメントを通して東京から世界中へ希望を届けたいという想いの元、イベントの開催が実現化した。将来的には国内のみならず、海外からも⾜を運んでもらえるような⽇本・東京を代表するエンターテインメントイベントへ成⻑させていくことを⽬指していると言う。

コンテンツ内容は、「希望/HOPE」をテーマに、世界中から集まった246作品の中から上位19作品を聖徳記念絵画館に上映し、最優秀作品を決定する「1minute Projection Mapping in Competition」をはじめ、屋外型XR※テクノロジーを活⽤したエンターテインメントショー「REFLECTION‐いのりのひかり‐」、そしてエントランスを彩る光のレーザートンネル「MIRAI SANDO」や、共に生きる他者への幸せの願いを天まで届ける「TOKYO LIGHTS」などがあり、未だかつてない「光」と最新技術が融合したデジタルアートを存分体感することができる。

※XR=クロスリアリティとは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)など現実世界と仮想世界を融合することで、現実にはないものを知覚できる技術の総称

コンテンツのイメージ画像。上段左から右「REFLECTION」、「MIRAI SANDO」、「TOKYO LIGHTS」 下段「1minute Projection Mapping in Competition」

最新技術を体感できるイベントとして、それらを可能にするために様々なチャレンジを続けるクリエイター・技術チームの存在は欠かせない。演出は東京 2020 パラリンピック競技大会閉会式の演出を担当した潤間大仁が、XR技術はBACKSPACE Productions、また、レーザーデザインは2019年に行われた花火のエンターテインメントショー「STAR ISLAND」でレーザー演出を手がけたYAMACHAN、そして今回の目玉となる新技術、ファイバービーム/ビームツイスターは兒⽟⼤紀が務めている。HIGHFLYERSは、潤間と兒⽟をインタビューし、最新技術についてや、今イベントにかける想い、見どころなどを聞いた。

TOKYO LIGHTSは最新技術のコラボレーション。友人や家族、会場のみんなと一緒に作り上げるエンターテインメントの醍醐味を感じて欲しい

左:兒⽟⼤紀 右:潤間大仁

―まずは、TOKYO LIGHTSのテーマとコンテンツについてお聞かせください。

潤間:テーマは「希望」で、全てのコンテンツを一つのストーリーとして楽しんでいただけるよう、全体の演出を考えました。コンテンツは、100 メートル のレーザートンネル「MIRAI SANDO」、光のモニュメント「TOKYO LIGHTS」というインスタレーション、そしてプロジェクションマッピングのコンペティション作品の上映と、現代版獅子舞パフォーマンス「REFLECTION」があります。

―潤間さんは、プロジェクションマッピング以外のコンテンツの演出を手がけていらっしゃるんですよね。それぞれどのような内容になるのでしょうか?

潤間:「MIRAI SANDO」は参道のような道をイメージしていて、トンネルを通り抜けるともう一度生まれ変わるような、来場者の方達が心の内や未来への希望に気づける感覚が得られるといいなと思っています。「TOKYO LIGHTS」は、このイベントの希望や幸せを願うシンボルとなるような上空を照らす光の柱で、「REFLECTION」は獅子舞をモチーフにした現代版獅子舞パフォーマンスです。獅子舞は、以前アートグループのGRINDER-MANさん演出の作品で、映像クリエイティブチームのWOWさんが3Dモデリングして3Dプリンターでデザインされたものをお借りしています。その獅子舞と、シャーマンに扮したN’ism(振付家・末澤紀子が主宰の、東京2020パラリンピック閉会式セレモニーに出演したダンスチーム)さんがパフォーマンスするのですが、そこに兒⽟さんの会社、KAST(カスト)が開発したファイバービームとビームツイスターを使った光の演出が加わり、MRグラスを装着してXRを体感できるんです。現実なのか仮想空間なのか分からないような、カオスな空間になるのではないかと思っています。現状、MRグラスは実証実験という形なので、限定的な方にしかご覧いただけないんですが、MRグラスをつけていなくても、本当にバーチャルリアリティの中に入ってしまったような錯覚に陥ると思います。

―どれもとても興味深いです。いつ頃から着手されていたんですか?やっていく中で、面白い発見ややりがい、逆に大変なことなどはありましたか?

潤間:今年の年明けくらいから動いていて、こういうことをやりたいっていう何となくのイメージはあったんですけど、なかなか定まらなくて。ファイバービームのことを先月知ってようやく最終的なイメージが見えてきました。

―ということは、潤間さんと兒⽟さんが知り合ったのは最近ですか?

潤間:そうなんです。「STAR ISLAND」から一緒にやっているレーザーアーティストのYAMACHANGがここ(KASTのアトリエ)に実験しに来ていた時に、僕がフラっと見に来て初めて知って。これは絶対に使いたいとなって、STAR ISLADからずっと信じてくれているプロデューサーさんにその場ですぐ電話して、どうしても使いたいからKASTの社長と交渉をして欲しいってお願いしたんです。

ーそうだったんですね!その前は何かやりたいことがあっても、技術的に実現が難しいから具体的なイメージが見えず悩んでいたんですか?

潤間:そうですね。MRは絶対にやりたいと思っていたんですけど、体験者が限定されてしまうので、誰もが楽しめるようなものにしたいっていうのと、あとは「光の祭典」ということに対してどれだけ新しいことが海外に向けて日本発信で出来るかを考えた時に、“やりたいけどやれない”っていう、日本のテクニカル業界事情があって。いろんな会社に相談しに行っても、大体は今やれることの中での提案しかされないんですね。でも、10年くらい前に、シルクドソレイユの技術チームを紹介された時、日本と決定的に違うなと感じたことがあったんです。僕はいつもの癖で、「今持っている技術の中で何がやれますか?」って聞いたら、「そうじゃなくて、あなたの本当にやりたいことは何ですか?」って言われて。そういう聞かれ方をしたのは初めてで、彼らは「なければ作ればいいじゃん」っていう発想なんですよ。今回もまさに同じで、「なかったから作っちゃいました」みたいなものがここで見つかって、これを使いたいし、これを知ってもらいたいってなって、技術の核としてハマった感じでした。

ーなるほど。でも、そういった業界の事情は、きっと多くの方が抱えている問題でもあるんでしょうね。

潤間:そうだと思います。技術者が悪いわけではないと思いますし、作っても現状の様々な制約理由で結局使えないっていうパターンが多くて。でも、今回のイベントに多くの人に来て楽しんでいただいて成功すれば、新しい技術に合わせてルールも変化していくかもしれませんし、今年は無料ですけど、来年、再来年は有料にし、ちゃんと経済効果のあるイベントにできると思います。エンターテインメントが出来ることを考えた時、僕らの使命は、アーティストやクリエイターの押し付けではない、協力してくださっているイベントが開催される土地や主催者が経済効果を生めるものにすることだと思うので、そこまでをきちんとTOKYO LIGHTSとして育てることで、今後色々なことが変わるきっかけになったら良いなと思います。3年後、5年後には、冬の東京は面白いから、クリスマスや年越しは東京で過ごそうと、国内だけではなく、海外からの観光客が沢山訪れてくれるようなきっかけとなるイベントの一つになればと思います。

―素晴らしいですね。ところで、今までにない新しい演出方法を考えるのって大変だと思いますが、いつもどんなふうにアイデアを考えていらっしゃいますか?

潤間:演出家としてというよりは、単純に「こうだったらいいな」とか「こんな世界見てみたいな」って妄想する感じです。でも、自分のストッパーを外すのが大変ですね。決まった環境条件や予算の中でやるのも大事な仕事の一つなので、理論立てて考える癖がついてしまっていて、そのリミッターを外す作業をずっとしていますね。だから意外と夢うつつな時にアイデアが浮かぶことが多いです。いろんな情報をインプットし続けて、締め切りギリギリまでずっと考え続けて、一晩寝て、朝起きた時とかに、夢で半分見ていたような、でも多分これだなって感じで段々と定まっていく。それまで点であったものが一気に繋がり全体の絵が見えて確信に変わります。

―屋外XRパフォーマンスショーはあまり実施しているケースが少ないですが、プレッシャーは感じますか?

潤間:それはないですね。STAR ISLANDでも常に新しい表現にチャレンジしてきたので、挑戦者としての気持ちと、新しいことが生まれる期待感の方が大きく、プレッシャーを感じる余裕と隙間が無いと言った方が正しいかもしれないです。ただ、僕はデジタルだけでなく、生のパフォーマンスが大事だと思っていて、去年もコロナ禍でオンラインのイベントが増えて、ARやデジタルよりになってしまって、もちろんその分野も発展していくべきだとは思うんですけど、そのトリガーになるのは絶対人だと思っているんです。やっぱり人が人を感動させるというか、最終的には生のパフォーマンスがちゃんと核にならないといけないと思っているので、メッセージが見ている人にちゃんと伝わらないようなテクノロジーの使い方はしないように気をつけていますね。

―では、光のレーザートンネル「MIRAI SANDO」について、兒玉さんにお伺いしたいです。これはどんなものになるのでしょうか?

兒⽟:約100メートルのレーザーのトンネルになります。レーザーのトンネルって、通常は出射光が一個で、そこから円錐上に広がるような、出口のないものが基本になるんですが、今回はレーザーとファイバービームを一緒におり混ぜて、出口のあるトンネルを作りました。これは確実に世界初と言えると思います。と言うのは、レーザーは人間の目に近い距離で入射されるととても危険ですので、これまでレーザートンネルを作ることはできても、トンネル内に人が目を開けたまま光を横切るのは無理でした。ですが、うちが開発したファイバービームはとても安全な光ですので、目を開けたまま横切ることが可能なんです。

―ファイバービームとレーザーを組み合わせているとおっしゃいましたが、どのように?

兒⽟:人の目に入射するようなトンネルの側面にはファイバービームを使っていて、人が触れないような上のところにはレーザーを使っています。

―ファイバービームとレーザーの違いというのは、人の目に入ったら危険ということだけですか?

兒⽟:そうですね、細かくご説明するととても難しい話になりますが、簡単に言うと、まず光ファイバー(光を通す繊維)の中にレーザー光を集光して入射します。特殊な光ファイバーを使っているので、光ファイバーを乱反射して通って出てきた光は、レーザー光とは全く違った質の光に変換されるんです。そうすると人の目に入っても、目の中にあるレンズで集光される点がとても大きくなって、安全になるんですね。

―見た目的にも違いはわかりますか?

兒⽟:違いは分かる人じゃないと分からないですが、ファイバービームはすごく綺麗です。なぜかと言うと、レーザー光は RGB の三原色を重ね合わせて、中間色、水色とか黄色とかいろんな色を表現するのに対して、ファイバービームは光ファイバーの中に集光して全ての波長を混ぜ合わせるので、光がとても綺麗に混ざり合って、よりしっかりと美しい色に変わるんです。横に並べて見ると一目瞭然です。

ファイバービームとレーザーの比較画像(それぞれ左がファイバービーム、右がレーザー)ファイバービームは光ファイバー内で混ざり合って面光源として出射されるので、色がより綺麗になる

―ちなみに、世界基準で見ると日本のレーザー技術は高いのですか?

兒⽟:レーザーを作る技術は日本国内でたくさんあり、それも世界と比べてかなり高いレベルなのですが、それらは工業用のレーザーや医療用であって、コンサートやディスプレイで使ったり出来るような製品ではないんです。コンサートやイベントでのディスプレイ用のレーザーとして、日本で生産している企業はありません。弊社ではハンガリー、ドイツ、中国、アメリカ等からレーザーの大本となるとなる半導体を購入し、独自で調整してファイバービームを作り上げております。

―KASTさんがファイバービームを開発されたとのことですが、いつ頃開発に成功されたのですか?

兒⽟:実は20年以上前から、ファイバービーム自体は存在していたんですが、当時はファイバービームという名前もついてなかったですし、それが安全な光だということを物理学的に証明する気はなかったと言うか、そもそも安全性というメリットを重視して作ったものではなかったんですよ。コンサートなどのステージ上に置くレーザー機材ってとても大きくて、それを並べてしまうとすごい場所を取ってしまうので、小さくすればセットの中に組み込めるということで、機材を最小化することにチャレンジしていったんです。最終的にとても小さいサイズを作ることに成功して、しかも気づいたら、光が自分たちの目に入っても大丈夫だし、これは安全だとなって。そこから何故そうなのかを研究していった結果、物理学的に安全なことが証明できるようになりました。それが3年前ぐらいですかね。それでファイバービームとネーミングして、自社のオリジナル商品として使っています。

―成功するまではいろんな実験を何回も重ねて色々失敗や苦労などあったかと思います。大変だったことや印象に残る出来事などありますか?

兒⽟:大体は、真っ直ぐに行くレーザービームを束ねて太くして、それをレーザービームだって言ってることが多いようですが、レーザーのサイズは全部違いますし、明るくするためにはたくさんの量を束ねないと明るくならないので、サイズが違うものを集光して一点に見えるようにするのは結構難しいです。あと、光ファイバー(光を通す繊維)の中にレーザー光を集光する際、光ファイバーの入り口が大きければ、微調整もある程度適当でも入射できるので、コストも削減出来ますし実現は容易になるのですが、光ファイバー自体の直径が大きすぎると、それだけ光ファイバー内のロスが多くなり、光は減衰し密度も下がるので明るさも落ちるという問題が出てきます。また、光が太くなるので絵が綺麗に出せなかったり、コンサート等では照明や背景のLED映像等の明るさではっきりと認識出来るレベルに明るくすることも無理です。なので、出来るだけサイズを小さくすることにとても苦労しました。また、レーザーを入射できたとしても、それが数コンマ何ミリとかずれただけで、その点が燃えて故障してしまうので、ずれずに、かつ軽量化にする構造を考えるのも大変でした。

―いろんな試行錯誤があったんですね。でも、兒⽟さんはまだお若いですよね?小さい頃からお父様の近くで見て、色々やっていたんですか?

兒⽟:小さい頃はそんなに関わっていなかったですけど、ものづくりが好きだったので、関わり始めたらどっぷりのめり込んじゃいました。アトリエをここに2年前に移して、もともとはでかい倉庫だったんですが、天井をぶち抜いて、壁を塗って、床を貼って、全部自分たちでDIYして。精密な作業も多いですし、ものづくりが好きなスタッフ達に助けられていますね。

―では最後に、来場者に期待して欲しいこと、特に意識して見て欲しいポイントなどあれば教えてください。

潤間:コロナ禍で 2年近く、みんな自粛で自宅に閉じこもらざるを得なかったり、なかなか友人と会えなかったりした中、やっと外出出来るような状況になったので、改めて外に出て、友人や家族と、それ以外の他のお客さんも含めて、一緒に作り上げるエンターテインメント空間の醍醐味を感じてもらえると嬉しいなと思っています。そういう共有体験の中でしか生まれない感動や力があると思い単純に美しいものを見て感動するでもいいですし、そこから新しい想像力が生まれたり、元気になったり、何かしらのきっかけになったらいいなと思います。

兒⽟:最新技術と最新技術のコラボレーションというのは、なかなか実現できないと思うので、そういうところをまとめ上げた潤間さんは本当にすごいなって思いますし、僕自身も、ホログラムやプロジェクションマッピングなど、知らない技術を見ると感動して、こんなことできたんだって興味がすごい沸いてしまいます。みんなの技術が合わさって一つのものを作っているので、なかなか体感できないイベントになると思いますし、皆さんにすごく感激してもらえると思います。

潤間:YAMACHANGと兒⽟さんは、お互い刺激を受け合って、新しい発想がどんどん生まれてるみたいなんです。そうやってクリエイター同士が刺激を受けて、ステージがさらに上がっていくような場にもなればいいし、兒⽟さんのように若い人たちがどんどん世の中に広まっていくきっかけにもなると、TOKYO LIGHTSというイベントとしてすごくふさわしいんじゃないかなって。また、そういうクリエイター達がいるのが東京なんだよって、海外から来た人達がびっくりするのが望ましいですね。

Text & Photo: Atsuko Tanaka

TOKYO LIGHTS

開催⽇程時間: 2021年12⽉9⽇(⽊)〜12⽉12⽇(⽇)

開場: 12月9日〜12月11日 第1部 16:45-18:45 / 第2部 19:00-21:00(各日2部制)
12月12日 1回公演・公開審査会及び授賞式 17:30-21:00

会場: 明治神宮外苑 聖徳記念絵画館及び総合球技場軟式球場

収容⼈数: 3万5千⼈想定 *1day/1万⼈事前予約制(無料)

主催: プロジェクションマッピング国際アワードTOKYO実⾏委員会

共催: 東京都

後援: 新宿区

制作: エイベックス・エンタテインメント株式会社

公式サイト: tokyolights.jp