ドキュメンタリー映画『音響ハウス Melody-Go-Round』が、11月14日より全国順次公開!大貫妙子や高橋幸宏、葉加瀬太郎らによるコラボ曲も完成【インタビュー】
2020/10/19
創立45周年を迎えたレコーディングスタジオ・音響ハウスにスポットを当てたドキュメンタリー映画、『音響ハウス Melody-Go-Round』が11月14日より全国で順次公開される。
1974年12月に東京・銀座に設立された音響ハウスは、国内外の著名ミュージシャンによって数多くの名曲が生まれたレコーディングスタジオとして知られている。そして、45周年を記念して製作された本映画には、坂本龍一をはじめ、松任谷由実や佐野元春、矢野顕子、葉加瀬太郎、デイヴィッド・リー・ロス(ヴァン・ヘイレン)といった一流アーティストがゲストで登場。さらに当時のプロデューサーやレコーディングエンジニアも次々と加わり、スタジオにまつわる想い出や名曲の誕生秘話、今再び脚光を浴びているシティポップがどのように作られたかなどを語る。
また、ギタリストの佐橋佳幸とエンジニアの飯尾芳史が発起人となって、本作のテーマ曲「Melody-Go-Round」も制作された。作詞を大貫妙子が担当し、ヴォーカルには、13歳(当時)のシンガーHANAを起用。高橋幸宏、葉加瀬太郎、井上鑑など、音響ハウスにゆかりのあるミュージシャン達がサポートした制作模様も収録されている。
そこでHIGHFLYERSは大貫を取材し、音響ハウスのことや、活動を続けていく上で大切にしていること、11月3日(レコードの日)に発売のアナログ版のオリジナルアルバムを作ったきっかけ、そしてチャンスや成功についてを伺った。
音楽からは得たものだらけだし、後悔は一つもない。7月の久々のコンサートでは、本当に音楽が私を支えていたことを感じた
―音響ハウスが45周年を迎えましたが、大貫さんご自身はどのように感じていますか?
かなりお世話になりましたし、日本に限らず大きなスタジオがどんどん閉鎖されていく中で、よく頑張ってる!と思って。とても嬉しいです。
―今回映画のテーマ曲「Melody Go round」の作詞をされました。依頼が来た時は、どのようなお気持ちでしたか?
音楽はいつも生活の中にあって、若い頃は特にですよね。何よりHANAさんに気に入ってもらわないと!と思って、彼女の愛犬の名前も入れてみました。気持ちが弾むようなものにしようと。音楽は言葉も人種も超えて繋がることのできる素敵なものだと思います。
―HANAさんの印象はいかがでしたか?
レコーディングの時は、周りが大人ばかりだし、緊張しているようにも見えましたけれど、芯の強い感じがしたし、きっとすごい頑張り屋さんだと思います。
―その頃のご自身と重なる部分もありました?
う〜ん、私はもうその頃ギターを弾いて歌ってましたけど。HANAさんより生意気だったと思う(笑)。
―HANAさんの声がすごい綺麗だなと思いました。
声って最もその人が表れるものです。目を閉じていても、声だけでその人を判断できる。嘘は声に表れるって言うでしょ(笑)。その人そのものなんですね。ただ歌が上手くても声に魅力がないと、届かない。
―映画の中で、音響ハウス自体のことも、音楽も、次の世代に渡していくということをおっしゃっていたのが印象的でした。そういう考えはいつ頃からお持ちでしたか?
音楽活動を始めた時からずっとですね。たくさんの音楽を聴いて、本当に好きなアーティストと出会い、何故それほどまで私を魅了するのかを考えてきたので。私がそういう先輩たちから最も学んだことは、音楽に対する誠実さです。
―初めは好きだと思ったものでも、実は合わなかったということがあったんですか?
そうですね 。例えばモータウンとか、ロックと言われるジャンルのものも好きでしたから。初期の頃は、そういうものも試してみましたが、全然だめでした(笑)。自分をプロデュースするのってなかなか難しいですよ。客観的なことを言って下さる人との出会いや、才能あるミュージシャンの助けもあって、納得できるものにたどり着くまで、20年かかりました。
―活動を続けていく上で、普段から大切にしていることは何かありますか?
やっぱり身体の管理ですね。食べるものもそうですし、身体を冷やさないとか、色々です。私は医者にかかりませんし、薬も一切飲まないので。それでもう40年以上経ちます。その代わり才能のある素晴らしい整体師がいて、中学時代からの親友なんですが、ずっとお世話になっています。
―大きく体調を崩されたこともなく、続けていらっしゃるんですね。
具合が悪くなってコンサートをキャンセルしたことは一度もないですね。ツアーが決まると、その前から管理しますし。少し長いツアーの時は、足湯器とか、ホテルのベッドは寒いので寝具とか、必要なものを衣装ケースの中に入れて運んでもらいます。リハーサルが終わって本番までの間に時間があれば足湯している時もあります。美味しいものが出る打ち上げも、翌日歌うとなれば、大好きなお酒も飲まずに自制しています。歌手って辛い(笑)。
―ミュージシャンの方には両極端いそうな感じがしますが。
他の方はどうしていらっしゃるのかよく知りませんが、私はもう絶対、高音が綺麗に出なくなるので。お酒も黙って少し飲むくらいは問題ないんですが、それって楽しくないでしょ(笑)。飲んで楽しいと声が大きくなるでしょ。それがダメなんです。今はコロナで大声では喋れませんけど。
―なるほど。話は戻りますが、世代が変わり、音楽の環境も日々変化していますが、これから音響ハウスはどのような存在になる、もしくはどうなるべきだと思いますか?
機材は常に新しくしていく必要はあると思うんですけど、古いものもメンテナンスをしながら残していってもらいたいなと思いますね。今またアナログも求められる時代になったので。アナログのLP であろうが、CD だろうが、マスターは一つじゃないですか。私はエンンジニアではないので、よくわかりませんが、全てに対応するマスターのあり方について伺ってみたいですね。多分、そんなものは無いと言われるでしょうけれど。やはり一番大切なのは、プレイヤーの出す音色ですよね。日本でもトッププレイヤーの音色は本当に素晴らしい。それにつきると思います。
―大貫さんの東芝EMI時代にリリースしたオリジナルアルバム全てがアナログ化され、11月に発売されるそうですが、出すことになったきっかけは何かあったんですか?
「YOUは何しに日本へ?」でしょうか。1977年に出た私のセカンドアルバム「SUNSHOWER」を探しに来たアメリカ人が番組に出たことが話題になって。その時私は家にいたんですけど、弟から「姉さんのレコード探してる人がテレビに出てるよ」って、メールが来てテレビをつけたら、その人が一生懸命レコードを探してるとこで。見つかった時は「良かった!!」って(笑)。その前から海外でも日本のシティポップが話題になっていて、その流れもあったようで、レコード会社もLPの再発をし始めていて。そういう偶然が重なったんです。
―海外のミュージシャンを取材していても、最近シティポップを聴いてらっしゃる方によくお会いしますが、大貫さんはなぜだと感じますか?
わかりません。シティポップというジャンルは、70年代当時はありませんでしたし、う〜ん、今聴くと新鮮な感じがするのかな …。今そういう音楽がないですもんね。
―大貫さんにとってチャンスとは?
女性は7年に一回チャンスが巡って来ると言われてますけど。私も振り返ってみると概ねそうでした。自分は特にそれまでと変わらず、少しでも良いものをと頑張ってはいても、売り上げが伸びる時もあれば、沈滞気味が続く時もあります。そんな時「YOUは何しに」が話題になって、CD時代のものも含め、全てがLPで発売されることになりました。7年に1回のチャンスというより、突然追い風が吹いてくる感じですね。風ですから、凪の時も当然あるわけで、それが7年周期くらいの感じですかね。一番大切なのは、風の吹かない時もオールを離さず漕ぎ続ける努力が必要だということでしょう。
―素晴らしいです。それでは、大貫さんにとって成功とは何ですか?
考えたこと、ないですね。
―では、大貫さんが今まで音楽活動をされてきて得たものは?
若い時、夢中になった音楽を、ここまで続けられるとは思ってもいなかった。ひとえに、根強く支えてくださったファンの方々のおかげだと思っています。もちろんミュージシャン、スタッフ、全ての出会いに感謝しかありません。
一最後に、まだ叶っていないことや、これから実現したいことがあれば教えて下さい。
あともう、どう考えても20年は無理ですから(笑)。ということは、あと10年できるかどうかですよね、あっという間です。歌えなくなったと思ったら潮時ですね、それは自分にしかわからない。その後は自然の中に身を置いて、知り合いの農園でも手伝いながら暮らしたい。人生の大半を音楽と共に生きてきて、特に引退とか明確にしなくても、なんか最近姿を見ないな、くらいの感じでいつか静かにフェイドアウトできれば。それがいつなのかは自分でもわかりません。多くの方が感じているかと思いますが、コロナ禍で今まで体験したことの無い日々が続きましたし、これからも続くかもしれない。私も少し体力が落ちてしまった感じです。人は未来に生きているんだとしみじみ思います。そのために身体は常に準備をしている。先が見通せないというのは、夢や希望を奪っていくことなんだと。7月に半年ぶりに八ヶ岳でコンサートをしましたが、そのリハーサルの時、たった半年休んだだけで、「どうやって歌うんだっけ?」って一瞬パニックに(笑)。身体が閉じちゃってたみたいで。リハーサルを続けるうちに戻りましたけど。そうしたら身体中の毛穴が嬉しくてウワーッと開いた感じで、本当に音楽が私を支えていたんだなぁと強く思いました。
Interview: Kaya Takatsuna / Text & Photo: Atsuko Tanaka
『音響ハウス Melody-Go-Round』11月14日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
監督:相原裕美 エグゼクティブプロデューサー:高根護康 プロデューサー:尾崎紀身
出演:佐橋佳幸、飯尾芳史、高橋幸宏、井上鑑、滝瀬茂、坂本龍一、関口直人、矢野顕子、吉江一男、渡辺秀文、沖祐市、川上つよし、佐野元春、David Lee Roth、綾戸智恵、下河辺晴三、松任谷正隆、松任谷由実、山崎聖次、葉加瀬太郎、村田陽一、本田雅人、西村浩二、山本拓夫、牧村憲一、田中信一、オノセイゲン、鈴木慶一、大貫妙子、HANA、笹路正徳、山室久男、山根恒二、中里正男、遠藤誠、河野恵実、須田淳也、尾崎紀身、石井亘 <登場順>
大貫妙子、EMI時代のオリジナルアルバム10作品、待望の初アナログ化決定!
大貫妙子の東芝EMI時代(1992年~2005年)にリリースしたオリジナルアルバム全10作品が日本レコード協会によって定められた“レコードの日”11月3日(日・祝)を皮切りに、待望の初アナログ化が決定。2016年に同タイトルを高音質で再発した際の音源をもとに、イギリスの名門アビーロード・スタジオでハーフ・スピード・カッティング。ハーフ・スピード・マスタリング(マスタリングとカッティングを通常の半分のスピードで音源を再生しながら実行する技術、その音の良さは世界的に高く評価されている)のノウハウを持つ数少ないエンジニアの名匠miles showell氏が全作品のカッティングを手掛ける。さらに全作品180g重量盤仕様、と世界の音楽ファン、アナログファンからも注目の初アナログ化となる。特典として、全作品、大貫妙子2020年最新インタビューによる天辰保文氏の解説原稿付きも決定している。
第1弾リリース:2020年11月3日(日・祝)
第2弾リリース:2020年12月2日(水)
第3弾リリース:2020年12月23日(水)
*購入・予約はこちら
https://store.universal-music.co.jp/feature/recordday/
大貫妙子、4年ぶりのシンフォニックコンサート「大貫妙子 Symphonic Concert 2020」開催
【出演者】大貫妙子 / 指揮・編曲:千住明
Orchestra: Grand Philharmonic TOKYO Band: 小倉博和(G)/鈴木正人(B)/林立夫(Ds) /フェビアン・レザ・パネ(Pf)
【日程】2020年12月20日(日)16:00開場/17:00開演
【会場】昭和女子大学人見記念講堂 https://hall.swu.ac.jp
全席指定 ¥11,000-(税込) ※当日券¥500 up 未就学児童は保護者膝上に限り無料
チケット発売日10/31(土) 10:00〜
主催:キョードー東京 企画:ミニヨン/メイル 協力:千住明事務所/アーツイノベーター・ジャパン/クロックワイズ
■お問合せ キョードー東京0570-550−799(平日11時~18時 土日祝10時~18時)
■プレイガイド
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チケットぴあ 0570-02-9999 (Pコード:188-192)
ローソンチケット https://l-tike.com (Lコード:71512)
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