「映画 えんとつ町のプペル」が、2020年12月ついに公開!劇場公開に向けて動き出した、キングコング西野亮廣の作品にかける想いと成功への秘策【インタビュー】

2020/09/01

お笑いコンビ・キングコングとして活躍しながら、絵本作家としてもその名を轟かせ、現在は会員制コミュニケーションサロン「西野亮廣(にしのあきひろ)エンタメ研究所」を運営、会員数は約7万人と、常に世間で注目を集め続ける西野。2016年には脚本と監督を務め、30名以上のイラストレーターやアーティストによる完全分業制で製作した絵本「えんとつ町のプペル」を発売し、累計46万部という驚異的な数字を叩き出してロングラン大ヒットを記録したことも記憶に新しい。また、大人も泣ける物語として評価されたこの絵本は、価格が高くて買えないという子供達のために、全ページをウェブ上に無料公開して業界を騒然とさせたほか、今年1月には舞台版を上演したことも話題になった。そして、その絵本を原作としたアニメーション映画「映画 えんとつ町のプペル」が、2020年12月、ついに公開される。

公開まで数ヶ月となった現在は、製作の真っ只中。すでに7月には2種類の「西野亮廣直筆サイン入り暑中見舞いハガキ付き映画ペアチケット」の発売を開始し、数日前にはティーザーポスターと特報映像も公開されている。コロナ禍での劇場公開という新たなハードルが立ちはだかる今、西野は映画の成功に向けて、どのようなアイディアを温めているのだろうか。そこで、HIGHFLYERSは西野本人にインタビューし、現在の進捗状況や映画化までの経緯、コロナ禍での活動内容や、この作品とエンターテインメントにかける想いなどを伺った。

エンターテインメントより前に、全員の生活を守ることが一番という気持ちでやってきた。コロナ禍の今しかできないやり方で想いを繋ぎ、映画を成功に導きたい

—映画の製作は今どのような段階ですか?

もう大変です(笑)。アニメーターとか作る方達ももちろん大変ですし、コロナもあったので、スケジュールがぐちゃぐちゃとなったりしてますが、まぁでも何とかします。

―公開に向けて、コロナの影響はどう捉えていますか?

いろんな人の見方があると思うんですが、実は強がりでも何でもなく、僕個人的にはあまりネガティブに捉えていなくて。ただ確かなことは、映画館の座席数も制限されるし、このまままともにやっていたら沈んじゃうのは決定してるんで手を打たないといけない。それもあって、本来であれば「それはやめましょう」って却下されるような提案が、「コロナだから、これやってもいいよね」って説得して通りやすかったのはあります。例えば、映画公開前に台本を送るとかって、普段だったら多分ない話じゃないですか。

―今、目の前に積まれている台本は、 まだ映画を観ていないお客さんに公開前に送っちゃうんですか?

そうです。台本を読んで全部ストーリーを知った上で、映像が観たいっていう需要を取りに行こうと。元々は全国の映画館を周って行脚して、チケットを手売りしようみたいなことを言ってたんですけど、それができなくなっちゃって。でも、コロナだからこそできるアイディアはいくつかあるだろうと気持ちを切り替えて、既に2、3ヶ月前からクラファン(クラウドファンディング)を絡めて色々やっています。ネガティブなことだけじゃなくて、今しかできない届け方はいっぱいあるなって感じてますね。

―西野さんは、常に人と何かをやって動いてるイメージがありますが、コロナの期間中はいかがでしたか?

実はすごく忙しくしていました。ダイヤモンド・プリンセス号が横浜に停まった時の政府の対応を見た時に、今回の新型コロナウイルスは日本中に広がって、移動が制限されて、人が外に出られなくなるとわかったんで、結構早めに動いたんですよ。僕はオンラインサロンっていうものをやってるんですけど、3月あたりから、結構なサロンメンバーさんが職を失うことが見えていたんで、彼らを何とかしたいと思ってその準備をしてました。

—具体的にどのようなことをなさったのですか?

2月の後半には出来ていたんですけど、マップを作って、サロンメンバーさんの営む飲食店の情報を載せました。そうすると他のメンバーさんはそのお店を支援しようと、そこからデリバリーやテイクアウトをするじゃないですか。あとは、3〜4月頃には、約7万人いるサロンメンバーさんの、熊本県人会、北海道県人会とか、県人会を作って、近所のサロンメンバーさん同士がちゃんと支え合える仕組みを作りました。とにかく人と距離を取らないといけないっていうことだったので、地震や台風、水害があった時に、これまでのように避難所に逃げるのが難しくなったら、自宅待機して、被災者が個人で乗り切らなきゃいけないみたいな状況になっちゃうなぁと思ったんです。そうなったら絶対に情報が錯綜すると思ったので、県人会ごとにどこに何があって、物資がどこに溜まっているかなどの情報を把握できるようにしました。だから先月の熊本の水害の時はみんなすぐに助けに行けました。

―その時に作ったメンバーで?

そうです。熊本県外からのボランティアは禁止になっていましたが、すでに仕組みを作っていたので、サロンに1000人位いた熊本県内のメンバーの中から、誰か一人が困ったらすぐ助けに行ける状態を作っておくっていう。生活とか安心、安全が担保されていないとエンターテインメントって届かないので、そこは絶対に無視できないということで、まずはその交通整理をしてました。

―つまり西野さんのオンラインサロンって、国みたいな感じですか?

国です、要は。多分みんながストレス抱えてるのって、行政の動きの遅さからだと思うんですよ。ただ、行政の人もサボっているわけでは決してなくて、決定権を持ってる人が多すぎて、いろんなところの了承を得ないと物事を進められない。今回のコロナのように週単位で事態が変わるような状況は絶対に対応できないんで、誰か一人の決定で動かさないとっていうことで、色々やってました。

―もう総理大臣って感じですね。

いや、そんなに大それたものではないですけど(笑)。映画を届ける前に、この人たちの暮らしを守ってあげることがやっぱり大事だなと思って、絶対に全員守るって決めてやってました。

―いつもそうやって、まだ見えてない先のことを考えられるんですか?

ダイヤモンド・プリンセス号の対応を見た時に、これはヤバいことになるなってわかったじゃないですか。全然処理が出来てなくて追いついてないってことは、もっとヤバくなったら活動できなくなるなとか、移動制限されるなとか、じゃあ飲食店は潰れていくよねとか、行政はパンクしていくよね、じゃあどうやって守るんだ?っていう、全部見えてる未来だから、先に手を打っていくっていう。

―もう総理大臣になってください。そうしたら日本が良くなるのに。

大変そうなんで絶対に嫌です(笑)。ただ僕はエンタメをしたいっていうのがあるから、それをするためには整理をしておかないといけないという。

―西野さんが総理になったら、国中でエンタメが盛り上がりそうじゃないですか?

まあ確かに。でもそれで言うと、行政に任せるよりオンラインサロンの方が動かしやすい。サロンメンバーの数も7万人にもなると、ちょっとした市町村みたいになってくるので、その方が話を進めやすいですね。人を助けるということでは、今のやり方の方がいいかもしれないです。

―そうですか。では、絵本を映画化するに当たって、一番大変なことは何ですか?

一番大変なことは制限時間が決まっているっていうこと。映画館での上映期間はせいぜい5週間とか2ヶ月で、期間内に結果を出さないといけないじゃないですか。 それに、既に認知を得ているアニメやドラマと違って、絵本なんていうものは、本当に時間をかけてじっくりコトコトとっていうやつなんで、相性はあまり良くないと思いますね。テレビで毎週流れているアニメやドラマを映画化するのと、絵本の映画化はそもそも性質が全然違います。それもわかりきった上で始めたことだからあんまり言い訳にはならないけど、でも一つ大変なことって言うと、それかもしれないですね。もちろん手は打ちますけれど。

―絵本の製作段階から、すでに映画化を視野に入れていたそうですね。

まず文字で「えんとつ町のプペル」っていう話を書いてみたら、ストーリーが長いんですよ。その時点でこの長さに向いてるのは映画だなっていうのはわかったんですが、誰も知らない映画は誰も観に来ないから、まず知ってもらわないといけないと思って。それでストーリーの全体からちょこっとだけ切り抜いてまず絵本として出して、認知させて、全体を映画化っていう流れですね。

―あの絵本は、ほんの一部だったんですね。

そうです。そもそも主人公がまだ出てないっていう(笑)。主人公を描いちゃうと収まりきらないんで、絵本からは外しました。

ーじゃあ今の方が絵本の製作時より大変ですか?

そうですね。でも一番大変なのは現場のアニメーターの方だと思うんですよ。ものを作るという意味で一番辛いのはそこで。自分の仕事は映画を何としてでもヒットさせること。そこをずっと考えていて、年が明けてからはもう寝れないですよね。まあ寝てるんですけど。

ー完全なプロデューサー脳なんですね。

そこまで責任とるっていうか、ものを作る人と売る人を分離せずに届けるまでがものづくりだと考えてます。 「あとはお任せします」っていうやり方は絶対にやらないんで。つまり育児放棄せずに、生んだらちゃんと育てるっていうことです。「えんとつ町のプペル」に関しては、これまでミュージカルになったり、ニューヨークで個展をしたり、映画になるまでに、すでに本当にたくさんのスタッフさんとファンの方達が動いていて、彼らの想いを繋いでいるんで、それはちゃんと届けなきゃなっていうのはあります。

―きっと、西野さんご自身がずっと芸人さんとして作り手側にいたから、作る人の気持ちもわかるんですかね。

そうかもしれないですね。 みんな頑張っているんで届けないとなっていう。うまく届けられなくて、居酒屋とかで他の作品の愚痴とか言ってるのは絶対に嫌ですね(笑)。だったらもっと死ぬ気でやっとけよっていう。新宿駅の前で手売りをするとか、何でもいいから、できることは全てやったうえで言ってるか?って。思いつくことは全部やるっていうのは決めましたね。

―絵本のアイディアに始まり、コロナ禍での映画のプロモーションに至るまで、西野さんのそういった発想の源はどこにあるんですか?

サロンでは毎日3000文字は投稿しているんですが、とにかくアウトプットしないといけないから当然それだけのインプットをしないといけない。でも半ば強制的にインプットしないといけない状況は、いろんなものを知れていいですよ。ただそのためには、同じ場所にい続けても、同じ挑戦をし続けてもだめだし、勝ちパターンに入ったら捨てないといけない。そうするとまずやっちゃいけないのは何かと言うと、レギュラー番組を持つことなんですよ。レギュラー番組を持つと、ルーティーンになるんで。

―なるほど。ところで、西野さんは前々からディズニーを越えるとも宣言されてますね。

10年以上前から言っちゃってるんですけど、ディズニーを恨んでるとか、嫌いとかそういうことでは決してなくて。すごく好きだけど、やっぱりそこはちゃんと競争相手にしないと、自分のことを応援してくださってる方に示しがつかないというか、そこより下のものを届けるなんてあまりにも作り手として不誠実だと思うし、やるからにはちゃんと狙って、世界を獲りにいくというのは一応決めてますね。

―映画はまだ完成していないと思いますが、どのような方に観ていただきたいですか?

父ちゃんと母ちゃんと息子の話なんで、ファミリーに来ていただきたいと思いますね。

 

超多忙なスケジュールの中、一つ一つの質問に真摯に答えてくれる様子からも、映画にかける西野の熱い想いを感じることのできるインタビューだった。また、先日解禁されたティザーポスターには、煙に覆われるえんとつ町で空を見上げるプペルとルビッチとともに、「見上げることを忘れた世界で“星”を信じた少年の物語。」という言葉が添えられている。そして「挑戦している人への応援歌になってほしい」と西野自身もコメントを寄せているように、絵本とは一味違った映画のストーリーが徐々に見えてきた。今後ますます期待が高まる「映画 えんとつ町のプペル」に引き続き注目していきたい。

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka

 

「映画 えんとつ町のプペル」12月全国公開

原作:「えんとつ町のプペル」にしのあきひろ著(幻冬舎刊)

製作総指揮・原作・脚本:西野亮廣

監督:廣田裕介

アニメーション制作:STUDIO4℃

配給:東宝=吉本興業共同配給

©西野亮廣/「映画えんとつ町のプペル」製作委員会

もう一歩踏み出したいすべての人に贈る、感動の冒険物語。

いつも厚い煙に覆われ、空を知らないえんとつ町。煙の向こうに“星”があるなんて誰も信じていなかった。えんとつ掃除屋の少年ルビッチは、父の教えを守り、いつも空を見上げ、星を信じ続けていた。そして、みんなに笑われ、ひとりぼっちになってしまった彼の前に、ゴミから生まれた、ゴミ人間プペルが突然現れる。これは、二人が巻き起こす、“信じる勇気”の物語。

https://poupelle.com/

 

西野亮廣(にしのあきひろ)エンタメ研究所

西野と一緒に様々なプロジェクトに関わることのできる国内最大のオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」。コワーキングスペース「ZIP」の利用やサロンメンバーだけでの特典も多数。今回の「映画 えんとつ町のプペル」でも予告動画をサロンメンバーにだけ一足お先に公開したりなど、西野のモノヅクリを先んじて知れたり一緒に参加もできる。

https://salon.jp/nishino