R&Bを主軸にジャンルに捉われない音楽の可能性を広げ続ける若手注目アーティスト・VivaOla。バークリー音楽院で作曲を学ぶ現役大学生が、日本でのプロ活動を本格的に始動【インタビュー】

2020/07/24

6月17日にリリースした初のミニアルバム「STRANDED」が好調のR&BシンガーソングライターでプロデューサーのVivaOla。孤独感や孤立感をテーマに収録された7曲は、本人も「前回のEPが足し算なら、今回は引き算」と話すように、一切の無駄がない洗練されたトラックと、ソフトに心地よく響くヴォーカル、そしてふと心に刺さる言葉が印象的な歌詞で綴られており、VivaOlaの生まれ持ったセンスが光る秀作だ。

若手注目アーティストで構成されるアート・コレクティブ「Solgasa」の一員としても積極的に音楽制作を続けるVivaOlaだが、実は米国ボストンのバークリー音楽院に通う大学2年生でもある。まさに今、プロとして日本で本格的に活動をスタートし、7月15日には、ニューシングル「The Artist」をリリースしたばかり。

HIGHFLYERSは、大学が夏休みになり、帰国したばかりのVivaOlaにインタビューし、生い立ちや生まれ育った環境、触れてきた音楽やこれから目指すスタイルなどを伺った。

寂しさとか孤独感が曲のテーマ。一人でいるのが好きだけど、ずっと一人は悲しい。大勢の人といても感じる孤独とかって、すごく愛おしくて興味がある

どちらで生まれ育ち、どんな子供時代を過ごしましたか?

韓国で生まれて、0歳の時に日本に来ました。初めて喋った言葉がママっていうくらいだから、国籍は韓国なんですけど日本人の感覚の方が強いです。 保育園、幼稚園、小学4年生まで、両親の仕事の都合で東京の日本の学校を転々としていて、5年生から高校に行くまでインターナショナルスクールに通いました。 高校3年間はまた日本の学校に行きました。友達ができたと思ったらバイバイして、また友達ができてバイバイして、そんな感じの繰り返しでした。

―それってどんな気持ちなんですか?

最初は環境が変わることに凄くイライラします。でもインターに行ってからいろんなバックグラウンドの人がいることを知って、自分だけじゃないんだって思えるようになりました。その頃にfacebookをやるようになって、どこにいてもみんなと繋がれるようになったので、どこに行っても疎外感はなかったです。

—言語は何ヶ国語話されるんですか?

3ヶ国語話せて、話せる順番にまず日本語、次がインターに通っていたので英語、それからK-popを歌うのが凄く好きで独学で学んだ韓国語です。

―幼い頃はどんな音楽を聴いてましたか?

小1から小3までピアノを英才教育のように習わされていました。先生が厳しくて、こうやらなきゃだめ、みたいな教え方をされるのが凄く嫌で、毎回お腹が痛い、頭が痛いって仮病しすぎて辞めさせられました。音楽が好きになったのは、中1くらいの時にギターを始めてからです。 邦楽だとワンオク(One OK Rock)、洋楽はリンキン(Linkin Park)とかが好きでした。

ー楽器はいくつも演奏されるんですね。

そうですね。教わるのが嫌な性格で、ギター教室に払うお金ももったいないし、「一人でやるから」って親にギターだけ買ってもらって、YouTube とかを見て独学で始めました。 ドラムとベースは弟に教えてもらい、高校の時に軽音部がなかったからジャズ部に入って、テナーサックスをやってました。ピアノは知識程度には弾けるので、全部で4、5楽器くらいできます。

―同時にデジタルでも音を作っていたんですか?

そうですね、でもそれはiPhoneのガレージバンドで趣味の延長で作っていた程度です。 同級生でアーティストのWez Atlas(ウェズ・アトラス)くんと、期末テストをサボって2人でゼミ室で作っていたのが先生に見つかってめっちゃ怒られた思い出があります。今思えば当たり前ですけど。

ーいつからプロになろうと思ったんですか?

手が器用だったので、最初は何となく音楽系のエンジニアの大学に行きたいと思って、ニューヨークにある大学とか受けたけど全部落ちちゃったんです。 それで日本の大学に1年間通っている間に留学プログラムでUCLA に行く機会があって、書類上はビジネスのクラスを申し込んで、実際は音楽のクラスだけ受けてたんですよ。その時にマックとロジックを買って、自分で曲を作りながら、「上手いな、できるな」と思って本格的にやり始めました。2017年の夏くらいからですね、本当にプロになろうって思ったのは。

―その後、バークリーに行かれましたが、選んだ理由は?

エンジニアやプロデューサーを目指しつつも、本当はミュージシャンがいいなっていうのはどこかにあったんです。アーティストは想像できないってずっと親にも反対されてたけど、バークリーに受かっちゃったので心が決まりました。

ーでもバークリーって名門で、錚々たるミュージシャンが出ているところじゃないですか。それに、ジャズのイメージがあるんですけど、今のバークリーはVivaOlaさんみたいな音楽をやっている人もたくさんいるんですか?

全然多いですし、むしろEDMをやっていてプロデューサー志向の人とかも凄く多くて。僕もそうですけど、その人たちも最初はジャズで来てしばらくやっていたけど、自分がどの道を選ぶかを考えて、敢えてジャズをやらなくなったみたいなところもあります。 あと、バークリーって作曲の学部だけでも専攻がいくつも分かれているんです。コンポジションっていうクラシックの作曲と、ジャズコンポジションていうビッグバンドなどのジャズ作曲、CWP(コンテンポラリーライティング&プロダクション)といって CM に書くような商業的な曲を書くのと、詩と歌を中心に学ぶソングライティングと4つあって、僕は一番興味のあったソングライティングを専攻しました。

―行ってみてどうですか?

良かったですね。自分の中でずっと歌が一番やりたかったんですけど、同時に一番自信がなかった。もともとどこか楽器思考なところがあるので、いかに作詞に力を置いて、歌で人に届きやすくするかを教わることができました。

―今バークリーを1年間休学する理由は?

コロナの問題があってどうなるかわからないし、学費も高いし、ちょっと色々ややこしいことがあるんです。でも、単純にそろそろ本気出そうかなみたいな感じはあって、しばらくは本格的に日本で活動することを決めました。もともと卒業はあまり興味ないし、 ミュージシャンに学歴も何もないんで、もう学校に戻らなくてもいいかなっていうのはありますね。

―ところでVivaOlaという名前の由来は?

中学の時にFPS ※っていう銃撃戦みたいなオンラインゲームをやってて、その時友達がつけてくれたハンドルネームがVivaOlaだったんです。響きがいいし、それをそのまま使ってます。

※First Person Shooterの略。主人公と同じ視点で操作するスタイルの3Dアクションシューティングゲーム。

ーVivaOlaさんの原点はR&B  なんですか?

そうですね、最初に好きになったのはロックなんですけど、ディアンジェロが言葉にできないくらい最高に好きで、あとはエリカ・バドゥとか、ブラックミュージックに一番ハマりました。R& B ならブライアン・マックナイトとか、もうちょっとモダンな人だったら韓国のディーン(DEAN)とかが好きです。彼は全然ベテランだし歳も僕より上だけど、 R&Bでももっとヒップホップやポップ寄りで、オルタナティブなので自分に近いと思っています。でもR&Bばっかり聴いているわけではなくて、アニメが凄く好きなのでアニソンも聴いてます。

ーアメリカと日本で音楽をやってきて、感じる違いは何かありますか?

作る場所によって、曲の雰囲気が変わります。東京のように、人が多くて街の感じがごちゃごちゃしてる場所で書いた曲はごちゃごちゃしてます。アルバムに入ってる曲は、LAとかボストンでしか書いてないので、曲によってはすごくオープンと言うか、楽器の数も少ないですね。 あと、アメリカでUberに乗ると絶対ラジオが流れてるじゃないですか。そこから耳に入ってくる音の影響も結構大きいです。

ー今までで一番の転機はいつになりますか?

アメリカに行くまでは、ライブとかもずっと映像で観ているだけだったんですよ。理論も独学でYouTube やデジタルで勉強して、英語も環境に教わった感じだったので。でも実際にアメリカに行って体験したら、例えば言語的に言ったら、日本語を英語に訳して書いていたのが、英語を英語で書いてるくらいの変化が起きました。あとは、なんでクラブで流行る曲をこんなに書ける人たちがいるんだろうなんてことも知れたし、感覚やものの見方が大きく変わりました。

―ご自身が日本で想像してたり映像で観てたものと、実際に体験してもので一番違ったものはなんですか?

僕もそうだったけど、意外と日本人の方って日本にすごくプライドがあるんだと思いました。例えば日本人は清潔だと思っているけど、別にそんな特別クオリティが高いわけでもないし、アメリカ人は時間にルーズって聞いてたけど、そんなことないし、ウガンダとかチベットとかの人でも変わらないです。そういう偏見を捨てられたのがすごく良かった。

ー先月リリースされたニューアルバムのタイトルを「STRANDED」にした経緯を教えてください。

曲のテーマが、寂しさとか孤独感なんですけど、僕がそういう人間なんです。一人でいるのが好き。でも自粛期間でみんな分かったと思うんですけど、ずっと一人でいるとやっぱり人間悲しいじゃないですか。このアルバムはコロナ前に書き終わっていたんで、あまり今の状況とは関係ないんですけど、一人が怖いっていうのを書きたかったんです。大勢の人といても感じる孤独とかがすごく愛おしくて興味があるので、そういうテーマで書いてます。

ーVivaOlaさんの世代ってそういう感じの人が多い気がします。

SNSとか、インスタとかやってて、寂しくなりません?華やかな写真が載ってたら、この人自分と違う世界にいるんじゃないかと思ったりして。そこに気軽に“いいね”って押せるけど、いいねっていう感情しかないっていう制限性とかも含めて色々考えて生きてます。哲学が好きなのもあって、アルバムはそういうテーマで書いてて、どういう単語を使えばまとまるのか分からなかったけど、 好きなアーティストが曲中で、「まるで僕はロビンソンクルーソーみたいだ」みたいなことを歌ってて、その作家(ダニエル・デフォーの本を読んだことがあったので、「STRANDED」というタイトルに辿り着きました。

ーアルバムの中で一番力を入れた曲は?

3曲目の「Runway」が一番個人的に好きです。最初の EP は、楽器がめちゃくちゃ多くて、ひたすら足して作った曲だったんですけど、今回一番考えたのは引き算。どれだけ抜いてその曲らしさを残せるかみたいな。だからこの曲からこれ以上抜いたら本当に何もないほどすごい簡素になってます。Jポップってめっちゃ音を入れたがりますよね。 サビが来て、はい、ストリングス、みたいな。いらないじゃんって思っていたので、Runwayは意外と楽器も使ってないです。

ー自分と他のアーティストと比べて、何が違うと思いますか?

難しいですね、あまり考えたことないんで。ただ、良い曲を作りたいということは一番大事にしています。 周りの友達の中には、目先の数字を追ったり、「これを聴いてくれれば友達がワオって言ってくれるよね」って、意外とその部分を忘れてる人もいる気がするけど、僕は数字とかはどうでも良くて、ただ良い曲を作りたいなって。

―VivaOlaさんにとって良い曲とは?

結局心に響かないと意味がないんで、伝わる曲ですかね。それはメッセージ性もそうだし、歌詞もそうだし。いい度合いっていうか、簡単すぎたら伝わらないし、いろんな形容詞を使って書いても逆に伝わらないし、一言で何か言われても伝わりきらないし、いいバランスというか、伝えようとする意思がこもってる歌詞が一番綺麗。でも聴いた人の人生や解釈があるんで、結果的に意外と自分が思ってた通りに伝わらないなという気もしています。たとえ思った通りに伝わらなくても、繋がることが一番大事だと思ってます。

ーでは、今まで生きてきた中で一番嬉しかったことはなんですか?

最近だったらアルバムが終わった時が、苦痛から解放されて嬉しかったです。セカンドオピニオンをくれるプロデューサーの友達と一緒に、「終わったね」って飲んだ日が一番楽しかった。普段はあんまり一喜一憂しない性格なんです。例えば歌だったらずっと練習してるから、友達に日に日に上手くなってるねって言われたら嬉しいけど、そこまで嬉しくはない。例えば、彼女がいて、デートに行って楽しくても、それはいっときの楽しみだし、音楽も、3人の曲ができてブチ上がっても、あんまりその気持ちは続かない。数字とかあんまり興味がないし、それよりも次は何ができるか、その次は、その次はってなります。

ー逆にしんどかったことは?

めっちゃあります。しんどいって言っても、ひたすら終わりの見えない苦痛というよりかは、だいたい終わりがありますけど。でも、今の二つの質問って紙一重だと思う。僕の人生って苦痛の先に幸せがあるから頑張るっていうか。アルバムも終わった瞬間は幸せですけど、終わった瞬間が1だとしたら、その後に10くらい苦痛があって、全然上手く行かないというか。幸せを得るまでのプロセスが苦痛でした。

ーVivaOlaさんにとってチャンスとは?

人が信じてくれること。自分でやってきて思ったんですけど、最初は誰も信じてくれないじゃないですか。成果を出さなきゃ誰も何も見えない世界。曲に関しても、僕が曲を出さなかったら、努力や才能は誰にも見えないですよね。でも、それがまだはっきり見えなくても、誰かが信じてくれることってチャンスだなって。それまでは自分を信じられるのは自分しかいないけど、それまでに折れてしまう人が友達に多いなって思います。

ーそういう意味で、今まで一番チャンスだったのはいつですか?

やっぱり今所属しているレーベル「FRIENDSHIP」の人が、EPの一曲だけ聞いて、「これからもすごいものが作れそう」って言ってくれた時がチャンスだと思いました。業界の人が言ってくれたのが嬉しかったです。友達は僕がもうちょっと有名になったりしたら、逆に連絡してくるようなうわべだけみたいな人が多いんです。

ーそれでは、VivaOlaさんにとって成功とはなんですか?

あんまり考えたことない。よくわからないですね。お金を得ても、僕の中ではそれは成功じゃないんで。例えばこの先にもっとたくさんアルバムを出してもそれも成功じゃないんですよ。それはいっときの成功であって、本当の成功じゃない。多分、死んでも自分のことを知ってくれる人がいたら成功。それにしておきます。

ーコロナで世の中の空気が一変しましたが、何か感じたことはありますか?

僕的にはすごいいいことが多くて、まずリモートがオッケーになったのが最高でした。電話で済ませようみたいなのが世間的に大丈夫になって、別に会わなくて良くなったじゃないですか。日本て、団体や組織で一つの総意みたいな概念があって、それが常識みたいになっているのが凄く嫌いなんです。「普通こうでしょ」とか、「男らしく生きろよ」って言われたら「普通って何?男らしくって?」ってブチ切れますね(笑)。それに、男性なんで見守ってる側ですけど、フェミニズムとかでも、「女尊男卑だね」みたいなことを言ってる人がいるけど、それはマイノリティじゃなくて、男尊女卑という社会のノルマに足湯的に浸かって楽をしてる人が言えることなんですよね。あと、3、4年前に流行った「イクメン」みたいな言葉も嫌で、「二人でやればいいじゃん」って思う。言葉って繋がるためのものなのに、決めつけて束縛するのは良くないなと。そういうのが嫌いだったので、今まで世間で普通とされていたことまでも壊してくれるコロナが好きです。でも人の命だけは脅かして欲しくない。

ー最後に、これから目指すスタイルがあれば教えてください。

普通にVivaOlaっていう名前はR&Bの代名詞にしたいんで、R&Bを主軸に、ちょっとポップっぽい曲や、ヒップホップっぽい要素の多いものがあったり、ちょっとロックとかオルタナティブが入っていたり、ジャンルを限定せずに歌いこなす感じとか色々やってみたいですね。R&Bだったらなんでもいいというか、自分が興味があることをひたすらやってみたいです。

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka

 

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