フラワーボックス誕生20周年を記念して著書「いい我慢」を出版。我慢の先に良いことが待っていることを、これから夢に向かう人やビジネスを始める人たちに知ってもらいたい【インタビュー】

2020/02/14

デンマーク出身のフラワーアーティスト、ニコライ・バーグマン。フラワーギフトの定番として広く認知されているフラワーボックスの考案者として知られるほか、国内外に14店舗のフラワーブティック、国内に3つのカフェを展開し、ファッションやデザインなどジャンルを超えたコラボレーションでフラワーデザインの可能性を広げ続ける稀有な存在だ。

19歳で単身日本にやってきて修業を積み、フラワーアーティストとしても、ビジネスマンとしても成功を掴んだニコライ。北欧テイストと細部にこだわる日本の感性を融合させた独自のスタイルをコンセプトとしたフラワーボックスは、誕生から今年で20年を迎える。その20周年を記念して、今年は国内の様々な場所でアニバーサリー展示やプロジェクトが企画されているが、それに先駆けてこれまでの仕事にフォーカスをしたビジネス書「いい我慢~日本で見つけた夢を叶える努力の言葉~」が1月26日に発売された。

ニコライの好きな日本語「我慢」がタイトルに。「我慢とは、けっして辛いことや、苦しいことを耐え抜くという意味ではなく、夢や成功を成し遂げるためにやるべきことやり抜く力」だと言う。本書では、日本で成功を掴むまでに学んだ大切な働き方を紹介している。

そこで、HIGHFLYERSはニコライにインタビューし、著書のことや20周年を迎えたフラワーボックスについて、また、昨年オープンした海外の新店舗、そして今後の展望などを伺った。

周りを気にせず、「私はこんな人です」って堂々と言えるのは40代になった今だから。やりたいことがあるなら、何もしないよりもその不安に賭けた方がいい

―今回本のタイトルを「いい我慢」にしようと思った一番の理由を教えてください。

「我慢」という言葉は、昔から自分のテーマでもあったので、本の内容はやっぱりこれしかないと思ったんです。「我慢」って、人によって受け取り方が違うし、一般的にポジティブな言葉として使わないので、言葉遊びの一つとして、「いい我慢」というのは逆に面白いかなと思いました。

―「我慢」という言葉には、初めて聞いた時から良い印象を持っていました?

それ自体が良い言葉という印象よりも、我慢すると良いことがある、という捉え方です。「我慢」は英語に訳すと、“Persistency” とか“Do one’s best(自分のベストを尽くす)”といった言葉が出てくるけど、意味合いが違いますよね。日本らしい言葉ですし、いろんな意味で好きなんですよね。

―著書には、ニコライさんご自身の半生が描かれていますね。10代から40代にかけて、ご自身が大きく変化した部分はどのようなところですか?

20代はあまり深く考えず、とにかく走りっぱなしで、「とにかくやってみればいいじゃん」って、怖いものなしでした。だから、上手くいく時はいいんですけど、上手くいかなかった時は最悪。でも、それはそれで勉強になったと思う。20代の頃は、上の世代の人から意見を言われたとしても聞かなかっただろうし、実際言われてもわざと聞こうとしていなかったのかもしれない。今僕は43歳で、これからも時代ごとに目線が変わってくると思うけど、それを意識して楽しんでいきたいというのはあります。人はそれぞれ違うし、仕事も目的も違うので、僕の考えを押し付ける気は全くないです。

―今が一番楽しいですか?

それぞれの時でいいところがあります。でも、「私はこんな人です」って堂々と言えるのは今です。そんなに悩むことはないし、周りの人にどう思われているかとかもあまり気にしてない。でも、30代の時は、周りの意見や評価を心配していたところがたくさんありました。

—著書の中に、「完璧に準備するのに1年かかるんだったら、中途半端でもいいから1ヶ月で始める」と、そして、そこに運が生まれるとあって、とても共感できたのですが、昔からニコライさんはそういう考え方なんですか?

昔も今もそういう考えです。早く形にしたいんです。結局問題を先延ばしにするんだったら、どっちにしても見えないし、やってみないとわからない。完璧が悪いということではないんですけれども、僕のスタイルは、「とりあえずやってみて、ダメでも後で調整すればなんとかなるでしょう」っていう感じです。

―私もよく周りから「よくその状態でスタートしちゃうね」って言われるんですけど、ニコライさんもそう言われたことはありますか?

ありますね。実は、私の奥さんが真逆で、全部完璧じゃないとダメなタイプなんです。でも、最初から起こりうる可能性を全部洗い出したとしても、余計に無駄な心配や気持ちが増えて、ストレスもすごく溜まるんじゃないかと思います。

―ご自身のイメージを意識して作り上げていくともありましたが、周りからのイメージはやはり大事だと実感しますか?若い頃からすごく意識していたそうですね。

最初は意識していなかったんだけど、途中でわかったんです。超貧乏な生活をしていたのに、 千円札をかき集めて、頑張って49万円の外車を買った。するとその後、2005年くらいから周りが僕に抱くイメージが大きく変わったことを実感し始めたんです。あれは凄く面白かったです。

―著書の中では、可能性があるところに球を転がすっておっしゃっていますが、その行動が怖い人って結構いると思うんです。そういう怖さはないですか?

怖いのはありますよ。でも、何もしないよりかはその不安に賭けた方がいい。何かをやる前から、「どうしようかな」って不安になることもあるけど、実際にやってみたら、「もっと早くやれば良かった」って思うなら早くやってしまった方がいい。それに、不安な気持ちや緊張感を持つことは、人間として必要なことでもあると思うので、それをいい風にマネージメントするのがコツというか。例えば大きな展示をするとなった時に、簡単に「じゃあやりましょう!」って決めるのではなく、自分の本心にもしっかり問いかけて、長い間不安な気持ちが続くのであればやめると判断することもあります。ずっとあやふやな状態が続くよりは、何かアクションを起こすことが大切です。

―ビジネスは、数字よりもワクワクする気持ちが大切だとする一方で、店舗を始める前には将来3年間の見通しを立てるとおっしゃっていますね。常にご自身の中で理想と現実のバランスは計っていますか?

最近の20代の人たちは我慢が足りなく、すぐに形にしたいし、すぐに上手くいくって思っている人が多いと思うんですけど、実際はそう簡単には上手くはいかない。ソーシャルメディアでは、全てが美しくてパーフェクトに見えても、そうなるには時間がかかるわけです。フラワーショップ以外に、チョコレートやジュエリーなど今まで20店舗以上を開いた経験上、ある程度形になるには2、3年は少なくともかかります。特にリテールはどんどん厳しくなっているので、リテールを始めるなら3年くらいのお金がないと大変です。とは言っても、 3年間の家賃や従業員の給料を全部を先に揃えられなくても、少しずつ形にはできるんですけど、1年目に形にするのは難しいと思います。1年目で行列ができるお店というのは、その前に何千万のPR費をかけたりしていますから。自然に行列が発生する店はなかなかないと思います。

―どういう人にこの本を読んで欲しいですか?

幅広い人たちに読んでいただきたいですけど、特にビジネスに興味がある人たちや、何かをしたいと思っている人たちですね。私自身、最近いろんなビジネス書を読むと、僕も色々心配だけど頑張ってみようって、インスピレーションやモチベーション、ワクワク感をもらえるんです。

―やりたいことがまだ見つかってない人はどうしたらいいと思いますか?

そういった人たちも、インスピレーションを得ることがあると思います。私のストーリーは、 どんなビジネスでも、一生懸命働いて頑張らないといけないっていうのは当たり前なので、花の世界以外にも通ずると思うし、幸せそうでキラキラした部分だけでなく、その裏側にあるものも見てもらえると面白いかなと思います。コンセプトがあっても、それをフィロソフィーまで落とし込むには時間がかかりますから。

―最近、LA とコペンハーゲンにオープンした新店舗についてもお聞かせください。LAにオープンしたきっかけは?

特徴のある街だからです。ニューヨークのような大都市でもないけど、エンターテイメントが盛んな街で、世界中から集まる人たちがすごく面白いなって思って。10年間、年に2回くらい行って、ずっと長い間探していました。本当に国際色豊かな環境で面白いです。それに、LA はアトリエやワークショップなどの形の花屋はいくらでもあって、そういうオフィスを構えている人はいても、ショップはやってないんです。それにしても、こんなに大きなお店を出す予定はなかったんですけどね。250坪より少し大きいくらいの広さです。昨年4月にオープンしました。

LAのショップ

―半年経っていかがですか?

今はリピーターが増えてきました。あまり宣伝してないのに、結構いい感じには入っています。日本では『ニコライ バーグマン』というブランドとして既に認識されているので、同じ価格帯ならうちを選んでくれるけど、LAはまだそうではない。それに、イベントの仕事を取るのは思ったより少し難しいです。なので、その辺はこれから調整していかないといけないです。

—去年の11月にオープンした、コペンハーゲンの方はいかがですか?

2店舗目ですが、自分の地元ということもあり、開きたいとずっと思っていました。ここ10年でコペンハーゲンの高級ギフトを扱う人たちがすごく増えましたし、今、コペンハーゲンは街がいい感じに盛り上がっていて、景気がかなりいい。やるのであれば今しかないと思ってチャレンジしました。まだ2ヶ月しか経ってないですが、おかげさまで思ったよりいい感じです。

― そして、ニコライさんの代名詞でもある、フラワーボックスも20周年を迎えました。

フラワーボックスは僕にとって一番大事な存在です。最初の頃はしばらくそれで生計を立てていたんです。だから、フラワーボックスができてから20周年という節目は、僕にとってとても大きな意味がある。ニコライ・バーグマンと言えばフラワーボックスというイメージも定着しているので、20周年のお祝いとして、表参道ヒルズのスペース オーと、太宰府天満宮、清水寺、六本木ヒルズと4箇所でアーカイブ展を開催します。たくさんの作品を展示する予定で、面白いコラボレーションを予定しています。

フラワーボックス

―今、ニコライさんのボックスを真似たようなものって巷に結構いっぱいありますけど、それは別に何とも思わないですか?

やり方によって、ですね。小さい花屋さんが出したりっていうのは別に何も思わないですけど、中には自分が考えたと言ったり、僕の言葉まで使って新聞に出したりする人もいますからね。そういうのは正直ちょっと辛いです。フラワーボックスは、自分が作ったものであることをちゃんと知ってもらいたい意味もあって、今回この本でも誕生の経緯をしっかり書いています。

―今年は20周年を記念して、様々な場所で展覧会が予定されていますが、そちらについても教えてください。

フラワーボックスのストーリー性や、過去のアーカイブ、そして未来も感じてもらいたいです。デジタルや、ライト、モニターを使った作品もいくつか出します。また、様々なアーティストさんに、フラワーボックスの20周年に伴って作品を一つ作ってもらっています。面白いことに、中にはボックスではなく違うものに仕上がったものもあって、僕はどうやってそれをボックスに見せるかを考えなければいけない。あとは、これまでフラワーボックスをもらったことがあるお客様に、展示会場で好きなフラワーボックスを選んでもらって、もらった時にどういう気持ちになったのか、例えば嬉しかったとか、結婚記念日で彼にプロポーズされたとか、そういうメッセージを書いてもらって、それを飾りたいと考えています。まずはそれを東京で行い、福岡そして京都、最後にまた東京と、いろんな都市で行い、回を重ねるごとにみなさんの感想が増えていったらいいなと。

―楽しみです。箱根に公園を作っているそうですが、それについても教えてください。

少しずつできています。大きなプロジェクトなので、若干進行が遅れていますが、年末前くらいにちょっとしたオープニングができることを期待しています。

―既に多すぎるくらいプロジェクトがありますが、まださらにやりたいことはあるんですか?

まだいっぱいありますね。 最近は海外での活動が多くなってきて、何をしているか日本の皆さんに見えづらいところもあるので、そこをお伝えするという意味も含めて、YouTubeを始めました。 ワールドワイドに発信していきたいので、英語で毎週水曜日に更新しています。

働き方が多様化する今だからこそ、大切になる思考や行動、哲学が詰まった一冊。夢に向かう人、これから新しく何かを始めたい人必読の内容だ。ニコライの華々しいキャリアを支える裏側を知り、未来へのヒントを吸収しよう。

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka

 

「いい我慢~日本で見つけた夢を叶える努力の言葉~」あさ出版

http://www.asa21.com/book/b492468.html

The Flower BOX Exhibition Celebrating 20 years with the original Nicolai Bergmann flower box」

■2020年4月25日(土)~4月27日(月)  表参道ヒルズ スペース オー

■2020年6月18日(木)~6月21日(日) 太宰府天満宮、宝満宮竈門神社

■2020年6月18日(木)~7月26日(日) 太宰府天満宮 宝物殿

■2020年9月25日(金)~9月27日(日) 清水寺

■2020年11月20日(金)~11月30日(月)  六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー スカイギャラリー

フラワーボックス20周年の展覧会の詳細は、こちらのスペシャルサイトでご確認ください。