カリスマラッパー・ANARCHYが監督に初挑戦!吃音症でコミュ障の青年がラップに出逢い、成長していく姿を描いた映画「WALKING MAN」が10月11日に公開【インタビュー】

2019/09/12

唯一無二な存在感を発し続けるラッパー・ANARCHY が映画監督に初挑戦した。作品のタイトルは「WALKING MAN」。主演のアトムには、ANARCHYと以前から交流があり、「ちはやふる」シリーズや「帝一の國」、「ビブリア古書堂の事件手帖」などに出演し、ファッション業界でも人気の野村周平が抜擢。そしてアトムの妹で今どきの女子高生・ウランには、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」、「デスノート」などに出演した優希美青(ゆうき みお)、職場の先輩で良き理解者の山本に柏原収史、アトムが想いを寄せる美女キムに伊藤ゆみが選ばれた。また、脚本を梶原阿貴、企画プロデュースを人気漫画家の高橋ツトムが務めている。

ANARCHY自身がラッパーとして感じてきた想いが詰まっているというこの作品のストーリーはこうだ。主人公・アトムは、極貧の母子家庭で育ち、幼い頃から吃音症でコミュ障(コミュニケーション障害)を抱えている。不用品回収業のアルバイトで生計を立て、平凡な毎日を送る中、ある日母が事故に遭い、重傷を負う。反抗期の妹の面倒も見ながら苦労するも、仕事中にラップと出会い、どん底の生活から抜け出すべく奮闘し、成長を遂げていく。

HIGHFLYERSはANARCHYをインタビューし、映画制作を通して感じたことや作品に込めた想い、日本のヒップホップシーンについて、好きな音楽や成功とはなどを聞いた。

人生一度きりだから、言いたいことを言って、やりたいことを見つけて、自分に正直に生きて欲しい。この映画を通してそんなメッセージが届けばいいなと思ってる

―20代の頃から映画制作に興味があったそうですが、今回初めて監督に挑戦してみていかがでしたか?

最初の方はわからないことだらけで大変でした。ストーリーや表現したいことは頭の中では思い描けていても、実際に撮り始めると、カメラワークや専門用語など、わからないことがたくさん出てきて、カメラマンや助監督、プロデューサーとかいろんな人に聞いて勉強して、だんだんとコツを掴んでいった感じです。

―全体を通して学んだことは?

やっぱり映画はチームで作るものなんだと思いました。俳優さんもスタッフも、みんなの気持ちを一つにするのは難しかったですけど、それが僕の役目なのかなと思いました。撮影は11日くらいで全部を撮りきるというタイトなスケジュールで、みんな寝る時間も少ない中、いいテンションを保ってできたので良かったです。

―主人公のアトムを演じた野村さんとは以前から交流があったそうですか、彼を選んだ理由は?

ラップをしたことがない人に、短い期間でラップを教えるってなかなか簡単なことではないんですけど、周平くんは普段からラッパーの僕にラップをしてくるくらい(笑)、もともと少しラップができたので、彼ならやれると思って。度胸があってかっこいいし、この作品が、映画好きな人や、ストリートにいる若者、いろんな人に届くと思ったので。

―アトムのラップはANARCHYさんが書かれたそうですね。滅多に他の人にラップを書くことはないと聞きましたが、今回はやはり別ですかね。

生い立ちをあまり知らない人に書くのは得意じゃないですけど、今回は自分でアトムという人物像を作っていったから、自分の曲を作っている感じでできたのかなと思います。

―撮影前に、クラブを貸し切って野村さんにラップを教えたと聞きましたが、教える際に特に気をつけたことなどありましたか?

ステージの上で歌うのはカラオケとは違うんで、動き方や、声の出し方とか強弱のつけ方、感情の伝え方などを意識して教えました。あとは、二人でお互いがラップするのをムービー撮り合いながら、ここはこうしたらいいとかやって。ステージに立って多くの人の前でラップするって簡単にできることじゃないけど、彼やからできたのかなと思います。

―野村さんは、大勢の前でラップして、緊張したようでしたか?

多少緊張したと言ってました。ラップバトルの相手は本物のラッパーやし、観客の中にもラッパーがいましたしね。でもそう言ってたわりには、度胸があって、さすがいい俳優やなって思いました。

―彼とのやり取りで最も印象に残る出来事などありますか?

言葉があまりない役なので、撮影時は感じにくかったですけど、編集で映像を観て、ちょっとした表情とか、いろんな部分で彼のすごさを感じましたね。現場ではムードメイカー的な存在で、冗談を言ったり、みんなを楽しませてくれました。

―この作品は、ANARCHYさんの実体験が盛り込まれているとのことですが、撮影を通して何か思い出した過去の出来事や想いなどがあれば教えてください。

実体験として僕に起きたことというよりも、いちラッパーとして感じる部分を盛り込んでます。この作品は、一人の男の子がラッパーになるまでの話ですが、僕自身ラッパーになる前は、本当にこれでご飯が食べられるのかとか、すごい葛藤がありました。ラッパーになるって大きい夢だから。そんな中、言いたいことを自分の中に抱えていたり、やりたいことを見つけたり、そういう部分で感じることは、性格や環境は違えど共通するものがあると思いました。

―アトムはラップという武器を通して言いたいことが言えるようになりますが、そのように自分の気持ちを言えずに悩んでいる人たちはどのように乗り越えたらいいでしょう?

この作品はラップ映画ではあるんですけど、僕は観ている人たちに「ラッパーになれ」と言うつもりはなくて、人生一度きりだから、言いたいことを言って、やりたいことを見つけて、自分に正直に生きて欲しい。そういうメッセージが届けばいいなと思ってるんです。もちろん大人や年配の方もそうだけど、一番届いて欲しいのは子供達。何をやっていいかわからない子達っていっぱいいるし、ラップじゃなくてもいいから、何か言いたいことがあるなら、心の中で思ってるだけではなくて口に出さないと。みんな、他人の心は読めないんで。

―確かにそうですね。

だから勇気を振り出して一言言う、足を動かして一歩を踏み出す、それが一番大事なことだと思います。歩み続けるという意味を込めて、この映画のタイトルを「WALKING MAN」にしました。夢や目標がなかったり、言いたいことがない時は、その一歩はなかなか出ないかもしれないけど、そんな時は立ち止まってよく考えて、そこで何かを見つけてまた一歩踏み出して、少しずつ進んでいって欲しいという気持ちを込めてます。

―なるほど。素晴らしいですね。

ヒップホップや夜の世界ってもっと派手に見えるから、この作品を地味でつまらないって思う人もいるかもしれないけど、俺が伝えたかったメッセージはブレずに真っ直ぐに伝えられたし、余計なものが入ってないので、僕の中では成功です。

―ところで、映画はもともとお好きだそうですが、これまでに影響を受けた作品や監督は?

「Lords of Dogtown」とか、ああいう青春映画が好きです。青春期って人生のすごく大事な時だと思っていて。若い時に葛藤して、それを経て大人になるっていう、そういう部分が描かれている映画はいいですね。あとは、コメディーが好きです。「Man on the Moon 」、「The Trueman Show」とか、ジム・キャリーの作品は全部好き。コメディの中にもシリアスなヒューマンドラマが詰まっていて、笑いだけじゃないところに心を動かされます。逆に、嫌な感じの終わり方をする、マフィア映画みたいなのは嫌いです。

―ANARCHYさんは、2014年にメジャーデビューして5年経ちましたが、ご自身の考え方とか、変わったことはありますか?

アーティストはみんなそうだと思いますけど、僕は常に迷って生きてきました。でも5年前に比べると今は迷いがないというか、自分が作りたいものを作りたいと思いますし、それができる環境にいることを幸せだと思ってます。最近は若いラッパーで人気な子もいっぱい出てきて、すごく嬉しく思うし、自分たちがやってきた意味があるなと感じていて。彼らにはラップでスターになって欲しいし、今はラップだけに専念するべきだと思う。代わりに僕がその子らにできないこととかをやる。この映画もそうだけど、違う形でヒップホップを広めていく立場になったのかなって思ってます。

―日本のヒップホップシーンはどうでしょう?アメリカのようにカルチャーとして根付いているとはまだ言えないと思いますが、シーンに変化は感じますか?

昔よりは一般の人たちもヒップホップに目を向けてくれるようになったし、「フリースタイルダンジョン」が注目されたり、CMでタレントがラップをするのが増えたり、ラップに対する免疫ができたと言うか、みんな聴く耳がつきましたよね。お母さんが子供にラップを聴かせて、そういう子たちが大きくなってラッパーになったりとかね。

―少しずつ一般にも受け入れられる態勢ができてきているようですね。

ただ、海外の国ではトップチャートが全てヒップホップやったりもするけど、日本はまだそこまで行ってないですよね。日本中の人が歌えるヒップホップというのもまだないですし。自分の曲の中にも、クラシックと思ってもらえるものもあるけど、俺はそう思ってなくて、日本の国歌のように、みんなが歌うようなラップを作ってみたいと思う。その曲を作るのは僕でも、僕でなくても、それこそフランク・シナトラの、アメリカ人全員が歌えるクラシックな曲のようなラップソングが生まれたら、もう一つ変わるかなって思います。あとは、映画にいろんなジャンルの映画があるように、お笑い界にいろんな芸人がいるように、ヒップホップも、いろんなスタイルを持ったラッパーが出てきたらもっと盛り上がると思う。

―では、最近の気になるアーティストや好きでよく聴いてる曲を教えてください。

音楽は聴くんですけど、ヒップホップはあまり聴かないんです。アーティストも特にこれといってなく。挙げるとしたら、自分のアーティストで悪いですけど、WILYWNKA(ウィリーウォンカ)は好きです。今の子達はピョンピョンするような曲が多いですけど、90年代、2000年代の王道ヒップホップを今やる彼がかっこいいなって思って。あとはロカビリーを聴いてます。

―え、ロカビリーを聴くんですか?

父親がロカビリーのバンドマンで、小さい頃からストレイ・キャッツとか聴いていたんで、今でもテンションを上げる時とかは聴きます。あと、気に入ってるアルバムは、10年、20年前とかのものしか入ってなくて、そればっかり聴いていて、新しい音楽を取り入れる気はあまりないですね。

―じゃあストリーミングで音楽を聴いたりとかはしないですか?

そうですね、音楽はクラブに行った時に聴いたり、ラジオを聴いてる時に気になる曲があれば調べるくらい。あとは、たまによく名前を聞くラッパーがいればYouTubeでチェックします。

―ロカビリーを好きだけれど、アーティストとしてやろうとは思わなかったんですね。

そうですね、ギターとか覚えないといけないし、当時、中3の僕にはできなかったです。それにロカビリーはセクシーに見えたし、ヒップホップに出会ってしまったので。

―お父様とセッションすることはありますか?

したことはないんですけど、今でも父親がライブをやったら観に行くし、僕がライブをやれば父が観に来ます。あと、父は地元の京都でロックンロールバーをやっているので、そこにたまに逢いに行きます。

―音楽のことを教わったりもします?

若い時はそうでした。ダメ出しとかしてくるんで、うざかったですけど(笑)。「ステージの上では背中を向けるな」とか。でも、たまには向けちゃうこともあるっしょ、って(笑)。

―お父様から言われた言葉で、今でもANARCHAYさんの中で活かされてる言葉はありますか?

(音楽を)楽しめ、ですね。

―それでは、ANARCHYさんにとって成功とは?

例えば、今回の映画制作で言えば、一緒に映画を作った人たち全員がやって良かったと満足してくれたら成功だと思います。スタッフとは一つのものを同じ気持ちで作ったつもりなんで。映画を観た人がつまらなかったと言ったとしても、僕らがいいものを作れたと思っていれば、僕の中では成功やと思ってます。

―最後に、今世の中で起こっていることで気になることはどんなことですか?

嫌なニュースがいっぱいあるから、いいニュースしかやらない番組があればいいのにって思います。いい話をしたかと思ったら、暗い顔になって嫌なニュースをするあの感じが嫌で。いい話だけのニュース番組があったらみんなめっちゃ観るのにって思う。

―私も本当にそう思います。ANARCHYさん、是非やってください。

やれるならやります。言うこと無責任ですけど(笑)。

Interview, Text & Photo: Atsuko Tanaka

 

ANARCHY監督登壇の『WALKING MAN』試写会に10組20名様ご招待いたします。

*9/18追記:試写会応募は定員を超えましたので、締め切らさせていただきました。大変申し訳ございません。

ご希望の方は下記メールアドレスまで、お名前と試写会チケット郵送先の住所をご記載の上、試写会参加希望の旨をご連絡ください。当選はHIGHFLYERSスタッフよりご連絡を持ってのお知らせとさせていただきます。

連絡先:contact@highflyers.nu

締め切り:9/20(金)

≪試写会詳細≫

  • 日時:10月3(木)18:30 開場/19:00 開映/20:30 ティーチイン舞台挨拶/21:00 終了
  • ティーチイン登壇予定ゲスト:ANARCHY監督
  • 場所ユーロライブ(渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)

*渋谷駅下車、Bunkamura前交差点左折。ユーロスペース内

 

「WALKING MAN」2019年10月11日(金) 公開

監督:ANARCHY / 脚本:梶原阿貴 /企画・プロデュース:髙橋ツトム

主題歌:ANARCHY “WALKING MAN”(1% | ONEPERCENT)

制作プロダクション:ブロードマークス / 配給:エイベックス・ピクチャーズ

製作:映画「WALKING MAN」製作委員会  (C) 2019 映画「WALKING MAN」製作委員会

オフィシャルHP: https://walkingman-movie.com/

 

「WALKING MAN THE ALBUM」2019年10月9日(水)発売

日本を代表する人気ラッパーANARCHYが初監督で挑む10月11日(金)ロードショーの完全オリジナル映画『WALKING MAN』を記念して制作されたコンピレーション・アルバム。映画の主題歌 ANARCHY「WALKING MAN」 (Prod. Ava1anche) をはじめ、映画にも登場するWILYWNKAは仙人掌とタッグを組んだ新曲「U&ME」、YENTOWNからDJ U-LEEプロデュースによるMONYPETZJNKMNの新曲「Yeah We Do」、LEON FANOURAKIS、BANK SOMSARRTによる新曲「アドレナリン」を収録。また、このアルバムのために企画されたコンテスト受賞者6名 (Kvi Baba、CREATURES、ESSENCIAL、RICK NOVA、RINOH、AMAYA)の楽曲を含む全10曲を収録。

<トラックリスト>

  1. WALKING MAN / ANARCHY (Prod. Ava1anche)
  2. U&ME feat. 仙人掌 / WILYWNKA (Prod. Endrun)
  3. Yeah We Do / MONYPETZJNKMN (Prod. U-LEE)
  4. アドレナリン feat. Bank.Somsaart / Leon Fanourakis (Prod. Young Xansei)
  5. Pillow Talk / Kvi Baba (Prod. BACHLOGIC)
  6. オマエノミカタ / CREATURES (Prod. CREATURES)
  7. end roll / ESSENCIAL (Prod. D BO¥$)
  8. SET ON / RICK NOVA (Prod. DAOS)
  9. If I Die Tomorrow / RINOH (Prod. Yenyen)
  10. 許し / AMAYA (Prod. scandibeats)